土木学会論文集F4(建設マネジメント)
Online ISSN : 2185-6605
ISSN-L : 2185-6605
75 巻, 2 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
特集号(論文)
  • 城古 雅典, 森脇 明夫, 宮本 勝則, 福士 直子, 矢吹 信喜
    2019 年75 巻2 号 p. I_1-I_14
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     公共事業の図面には理論的に正確な寸法が記載されており,許容値は出来形管理基準に測定項目と規格値が記載されている.一方,製造業の図面には,寸法に加え許容値である寸法公差や幾何公差が記載されている.3次元モデルを作成する3次元CADは複雑な形状モデリングができるため,3次元モデルの幾何特性についての公差の設定は,寸法に着目した寸法公差ではなく幾何特性に着目した幾何公差を用いることの方がより的確に表現できると考えられる.

     本研究では,広く幾何公差の3次元での適用に関する文献調査を行い,幾何公差を導入したことによる,効果,課題,変革を抽出,分析し,次に,公共事業の課題を国土交通省の施策から抽出,分析し,最後にブレーンストーミングを行って,公共事業の課題に対し,3次元情報技術と幾何公差を適用することにより課題解決できる事象を考察することとした.

  • 堤 浩志, 小濱 健吾, 中村 葵, 小泉 圭吾
    2019 年75 巻2 号 p. I_15-I_26
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     斜面防災のための様々なモニタリングデータが獲得されはじめている.本研究では,GNSSデータを用いて,斜面に変位が生じたか否かを自動的に検知するような斜面管理のための変化点検知手法を提案する.具体的には,Change Finderを援用したGNSSデータの変化点検知による管理を考え,変化点検知のための管理指標を設定する方法論を提案した.さらに,GNSSデータに含まれる測定誤差と急激な斜面の変位を区別して変化点を検知できるか否かといったChange Finderの適用可能性と適用範囲を,実際の高速道路のGNSSデータを用いて検証し,その結果,GNSSデータの示す斜面の変位量が標本標準偏差の2.5倍を超える場合に変化点を検知できることを示した.

  • 福岡 知隆, 南 貴大, 浦田 渡, 藤生 慎, 高山 純一
    2019 年75 巻2 号 p. I_27-I_35
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     橋梁の保守点検作業は多大な労力を要しており,技術者不足や予算の問題で十分な保守点検作業が行われていない.近年ではこの問題に対して,これまで人手で行ってきた作業を自動化する様々な取り組みが研究されている.その手法の一つとして,深層学習を用いた画像処理手法が研究されているが,深層学習には膨大な訓練データが必要であり,その収集コストが問題点の一つとして挙げられる.これまでの既存研究では元となる画像に対して回転や反転などの水増し処理を行うが,この手法では生成可能なデータの特徴が元画像に大きく依存する.本研究では深層学習を用いた生成モデルの一種であるGANを用いた疑似ひび割れコンクリート画像生成手法を提案し,生成画像によるひび割れ検出モデルの性能評価を行い,その有用性を確認した.

  • 浅野 和香奈, 子田 康弘, 岩城 一郎
    2019 年75 巻2 号 p. I_36-I_49
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     社会インフラの老朽化が社会問題となる中,財政力・技術力の不足している自治体の橋梁では,定期点検に加え日常点検を行うことが極めて厳しい状況にある.そこで,本研究では,簡易橋梁点検チェックシートと橋マップを活用し,住民が主体となって地域の橋のセルフメンテナンスを可能にするモデルを構築した.その結果,住民による橋梁の日常点検結果に対する妥当性と,点検結果を可視化した橋マップの有用性が認められ,橋の劣化因子を取り除くための清掃活動につなげる,セルフメンテナンスサイクルを回すことに成功した.さらに,本モデルは住民のみならず道路管理者や学生にも波及し,各地に展開することができた.

  • 南 貴大, 浦田 渡, 藤生 慎, 福岡 知隆, 髙山 純一
    2019 年75 巻2 号 p. I_50-I_57
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     高齢化が急速に進んでいる橋梁に対する予防保全的な維持管理が求められており,全ての橋梁に対して定期点検が義務付けられている.近接目視点検は財源・人材・技術力の不足によって今後継続的に行うことは困難である.このような背景のもと,近年,維持管理の効率化に向けて画像データの活用が期待されている.筆者らは,超高解像度のカメラを用いることで近接目視点検同様の環境を屋内に構築し,人が画像上で損傷の検出・診断を行う画像目視点検システムを提案している.本研究では,コンクリートひびわれについて着目し,画像の属性が損傷の検出結果に与える影響と点検経験年数が損傷の検出結果に与える影響について分散分析を用いて明らかにした.画像を用いたひびわれ検出において彩度が影響を与えていることが明らかになった.また,画像を用いたひびわれ検出において,点検経験年数によってひびわれの検出精度に有意な差がないことが明らかになった.

  • 細川 智徳, 南 正昭
    2019 年75 巻2 号 p. I_58-I_72
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     近年の建設業界では人手不足や技術継承問題が懸念され,地方自治体では発注体制を確保できなくなる恐れからCM方式へのニーズが高まっているが,普及が進んでいないのが現状である.これまでCM方式の導入効果やCMRの役割に関する研究,CM方式の制度検討が行われているが,CM方式導入時に発注者自らが実施体制を検討する手法についてまだ明らかにはなっていない.

     本研究では,CM方式実施体制の検討の考え方を明らかにすることを目的に,既往研究から5つの評価項目を抽出した.東日本大震災復興事業CM方式の活用事例を基に,評価項目とCMタイプとの関連付けと,発注者補完の観点からピュア型CMとアットリスク型CMの比較を行い,CM方式導入検討時の客観的な考え方を示した.1次CMという概念を提案し,CM方式導入促進と発注者補完への効果について考察した.

  • 二宮 仁志, 渡邊 法美
    2019 年75 巻2 号 p. I_73-I_87
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     近年,人口減少・少子高齢化に伴う税収減少・社会保障費の増大が進展する中,多様化・高度化する市民ニーズに行政が単独で応えていくことは益々困難となることなどから,市民と行政が資源を持ち寄り地域の課題解決に取り組む「市民協働」のまちづくりが注目されている.一方,何から始めて,具体的にどのようなプログラムでどう展開・マネジメントすれば「協働」に至れるのかについて分からず,各自治体では試行錯誤が続いている.急速な地域社会の変化や多様なニーズにあわせ市民協働のまちづくりを実践するための柔軟なデザイン・マネジメントが求められる.本研究は「市民協働」のまちづくりの実践的デザイン手法について検討・提案することを目的とする.大分県豊後大野市のまちづくり活動において,ワークショップ・社会実験を展開し,提案したデザイン手法の有効性について検証を試みた.

  • 寺野 聡恭, 小金丸 暁, 松田 浩, 佐々木 博, 古賀 掲維, 西川 貴文
    2019 年75 巻2 号 p. I_88-I_95
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     高速道路や国道の道路舗装の維持管理は,平たん性,ひび割れ率,わだち掘れ量から評価される維持管理指数MCI(Maintenance Control Index)を用いて実施されてきた。平たん性,ひび割れ率,わだち掘れ量を計測するには専用の機材や車両が必要であり多大なコストを要するため,地方自治体管理の道路舗装の維持管理を高速道路や国道と同じようにMCIで実施することは不可能に近く,低コストで簡易に維持管理を実施できる方策が求められている。本研究では,スマートフォンの加速度センサーにより取得・蓄積した走行データを元に,舗装性能の簡易測定を行い,MCI点検が必要な区間をスクリーニングするとともに,スマートフォンで撮影した路面画像の画像解析を行い,ひび割れ率の算出方法についての検証を行った。

  • 鳩山 紀一郎, 渡部 真大, 佐野 可寸志, 高橋 貴生
    2019 年75 巻2 号 p. I_96-I_104
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     わが国における橋梁点検は今後の技術革新により大幅に効率性向上が見込まれる一方,その効率性の向上が橋梁の補修費用にどう影響を与え,更には将来の橋梁の健全度分布がどう変化していくのかは明らかではない.本研究はこの点を明らかにするために,新潟市を対象に実際の補修費データを利用して,橋梁の供用年数に対する健全度自然低下傾向,健全度低下による補修費増大傾向を分析した.また,点検時に精度に応じて健全度が正しく判定される確率も定義し,点検精度と点検頻度,補修予算を設計変数とし,健全度の分布状況を出力する維持管理シミュレーションモデルを作成した.シナリオ分析の結果,現行の補修予算下では点検精度向上は健全度の低い橋梁の減少には繋がらず,補修予算の拡大と点検頻度の効率化が健全度の高い橋梁の割合を増加させる可能性が示唆された.

  • 宮原 史, 七澤 利明
    2019 年75 巻2 号 p. I_105-I_119
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     道路橋をはじめ我が国の道路構造物は急速に高齢化が進行しつつある.シェッド,大型カルバートは,道路橋やトンネルとともに2014(平成26)年より道路法に基づく定期点検が各道路管理者において行われているものの,これらの中長期的な維持管理戦略の立案等に資する点検データに基づく統計的手法による劣化特性の分析はこれまで行われていない.

     そこで本研究は,2014(平成26)年から国管理のシェッド,大型カルバートで蓄積されてきた近接目視に基づく定期点検データを用いて,医学・薬学分野において多数の応用事例が存在する統計手法である生存時間解析によりシェッド,大型カルバートの基礎的な劣化特性を分析する.

  • 宮原 慎, 中村 憲明, 塚原 健一, 秋山 祐樹
    2019 年75 巻2 号 p. I_120-I_131
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     人口減少社会の中で、都市の行政効率の維持、災害の未然防止などの観点から、全国400都市で立地適正化計画の策定が進められ、うち154都市で市街地を縮退し居住を誘導する区域(以下「居住誘導区域」という。)の設定が進みつつある。本研究では、この居住誘導区域から除外された区域(以下「居住誘導区域外」という。)について、既に整備されているインフラ資産のうち、人口減少の影響が著しい資産と考えられる下水道管きょに着目。下水道の整備が概成し、居住誘導区域の設定が行われている都市を対象に、居住誘導区域外の下水道管きょの改築更新に替えて代替手段の導入が可能か、費用比較することによって検証を行った。

     その結果、立地適正化計画に基づき居住誘導を進めることによって、人口減少が見込まれる居住誘導区域外については、代替手段導入が有利となるケースもあり、各都道府県で策定済みの汚水処理システムに関する都道府県構想の見直しや、下水道管きょに係る中長期のストックマネジメント計画の策定に当たっても一定の検討の必要性を示すことができた。

  • 安間 匡明
    2019 年75 巻2 号 p. I_132-I_149
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     Public Private Partnership(PPP)においては,プロジェクトファイナンス(PF)による融資が行われるため,金融機関による対象事業の事前審査と事後モニタリングが行われ,実施可能な事業の選別と安定的な事業実施に寄与できるとされる. しかし,インドでは金融機関のかかる役割が適切に機能せず,2008年にピークとなったPPP事業への貸付ブームが巨額の不良債権発生に繋がった.本稿では,PF審査において特に重要な3つの構成要素とPPPを実施する公共側からみたPFの意義を示したうえで,インドの不良債権化の構造的要因を分析し,ノンリコース性の高いPFが公共側にもたらす意義および金融監督行政とPPP推進施策の政策協調の必要性を具体的に明らかにする.

  • 中洲 啓太, 光谷 友樹, 島田 浩樹, 和田 卓
    2019 年75 巻2 号 p. I_150-I_159
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     近年,国土交通省直轄の大規模災害復旧・復興事業,大規模事業等において,調査・設計等の事業の上流段階から,官民双方の技術者の多様な知識・経験を融合させることにより,効率的な事業マネジメントを行う事業促進PPP等の事業監理業務の導入が進んでいる.土木学会は,事業監理業務を導入する際の参考図書として,監理業務標準委託契約約款及び監理業務共通仕様書1)を制定しているものの,土木学会の契約約款及び共通仕様書は,技術職員が少ない地方公共団体にも参考となるよう,委託する業務項目や内容が広範にわたっており,国土交通省が事業促進PPPを必要なときに速やかに導入するためには,技術職員を有する国土交通省の事業実施体制に対応した事業促進PPPの標準的な実施手法,業務内容,共通・特記仕様書の記載例等を示すことが必要であった.本研究は,平成24年度以降,東北地方整備局の三陸沿岸道路等の復興道路事業,九州地方整備局の熊本災害復旧・復興事業,関東地方整備局の平常時の大規模事業で導入された事業促進PPP等の実施状況,課題を整理,分析することにより,国土交通省直轄の事業促進PPPの実施手法を提案するものである.

  • 岩井 翔太, 北詰 恵一, 清水 裕子
    2019 年75 巻2 号 p. I_160-I_167
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     民間資金等の活用による公共施設等の整備に関する法律(PFI法)の施行以後,我が国ではPFI事業の推進が図られ,事業件数が増加してきている.平成23年,民間提案制度の導入により,先進的な地方自治体では民間事業者の事業提案の検討や,この事業に関する情報の共有化を進められている.しかし,「PPP/PFI推進アクションプラン」に示されているようなPFI事業の一層の事業規模拡大と,より良質な公共サービスを生み出すためには,対象となる公共施設のニーズ等のデータを取得し,分析していく必要がある.本研究では,香芝市のプール事業をケーススタディとして,ニーズ等に関するデータをヒアリング調査やアンケート調査を実施して分析し,この事業の発展のための方策を明らかにした.

  • 堀 仁, 渡邊 法美
    2019 年75 巻2 号 p. I_168-I_184
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     東日本大震災の復興事業をはじめとし,建設コンサルタントが発注者の代理・代行的な役割を担うCM業務の展開が広がりつつある.筆者が復興事業CM業務に携わった経験を踏まえ,発注者とCMRの人的関係性が業務に大きく影響することに着目し,CMRのモチベーションの構造,並びに変化の過程を,モチベーション理論(期待理論,内発的動機付け)によって分析・検証することを試みる.また,CMRのモチベーション向上をもたらした環境の特徴を明らかとし,通常の建設コンサルタント業務への適用性を検討することで,コンサルタント技術者のモチベーション向上を成し得る環境形成について考察する.

  • 松本 美紀, 木下 誠也, 笛田 俊治
    2019 年75 巻2 号 p. I_185-I_199
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     公共事業の生産性を向上しつつ品質を確保するためには発注者・設計者・施工者の技術力の結集が不可欠であり,特に発注者のマネジメント力が重要である.本研究では,発注者に必要なマネジメント力を明らかにして不足する場合の技術力補完方策を検討する観点から,全国の地方公共団体を対象にアンケート調査を実施し,得られた719件の回答について整理・分析を行った.その結果,職員の研修等による組織の内側からと民間委託等による組織の外側からの2つの取組みが組織の技術力向上策となる可能性を示唆した.そして,それらの取組みを適切に実施するためには,マネジメント力の評価や資格制度の構築,外部委託時の事業責任の所在を明確化することが重要と考えられていることが明らかになった.

  • 渡邊 法美, 二宮 仁志, 王 玲玲
    2019 年75 巻2 号 p. I_200-I_211
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     日本の社会資本整備は,施設の老朽化,整備財源の不足,高齢化社会の進展と若年労働者の減少,地球温暖化の影響と思われる自然災害の激化等,多くの困難に直面している.この困難を克服するためには,建設業従事者の動機付けを向上させることが不可欠である.本稿では,業務にICTを主体的に導入することによって,業務生産性の向上と社員の仕事への動機付け向上を実現している徳島県牟岐町の(株)大竹組,北海道奈井江町の(株)砂子組,金杉建設(株)を選び,後者の要因を調査・分析した.その結果として三社では,①社員の多くは,総体的に高い内発的動機付けを有している,②内発的動機付けを高める三要素である自律性・有能感・関係性を向上する方策が「企業文化」として根付いている,③自律性の支援連鎖(サポートチェーン」)を上手く機能させている,④社員の内発的動機付けの向上には,ICTを始めとする新技術導入は大きな役割を果たしており,それに際して,三社とも適切な,しかし独自のリスクマネジメントを実施している,と考えられた.

  • 関 健太郎, 堀田 昌英, 北見 裕二, 伊沢 友宏, 杉山 泰啓
    2019 年75 巻2 号 p. I_212-I_224
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     国土交通省は,欧米諸国で多く用いられている施工の実態等が反映された応札価格を積算に取り入れる方式であるユニットプライス型積算方式,施工パッケージ型積算方式を導入したが,応札価格が施工の実態等を反映した価格であることが確認できないことから,未だ応札価格を積算に取り入れられていない.

     本研究は,積算基準類が応札価格の価格形成に与える影響の大きさ,施工の実態等が応札価格に反映されていない状況,原因と考えられる応札者の積算基準類への依存の大きさを明らかにし,その構造について考察した.応札者が発注者の積算を推算し,応札価格を形成している実態を確認するとともに,応札前に下請企業を確保することが,応札価格算出時の積算基準類に依存する割合を下げることに繋がることを確認した.

  • 西田 成佑, 堀田 昌英
    2019 年75 巻2 号 p. I_225-I_237
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     近年,地方部におけるインフラの維持管理の担い手不足を背景として,発注者が維持管理に関する包括的な契約を地域の複数の建設企業からなる組合やJVと結ぶ地域維持型契約方式が注目されている.本研究の目的は,地域維持型契約によって事業の効率性が向上しているかを検証することである.事業の効率性の指標としては,入札価格・落札価格を用いた.具体的には,三重県および岐阜県の地域維持型契約を対象として,入札価格の変化について回帰分析を行った.結果として,地域維持型契約による価格低下効果はいずれの県においても見られないことが明らかになった.

  • 山口 真司, 谷本 圭志
    2019 年75 巻2 号 p. I_238-I_246
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     地方の建設業は担い手の減少等により衰退が進んでいる.このため,災害が発生した場合,地元の企業だけでは地域の維持に十分な貢献できないことが懸念される.しかし,現在の企業がどの程度の災害まで対応でき,その限界はどの程度かが明らかでないため,この懸念への対応の緊急性や必要性が判断できない.そこで本研究では,災害時における被災規模と復旧費用の関係に着目して,地元の建設業の業務受容能力を評価する手法を構築する.その上で,近年における各都道府県のデータを用いて,実証的に業務受容能力を推計するとともに,その妥当性をいくつかの観点で検証する.

  • 太田 秀平, 佐藤 徹治
    2019 年75 巻2 号 p. I_247-I_255
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     本研究では,都市間道路の震災・豪雨等による途絶・復旧が地域経済に及ぼす時系列の影響を評価可能なマクロ計量経済モデルの理論的枠組みを示した.モデルでは,都市間道路が途絶した場合には移輸出の減少がもたらされるとの仮説の下,これらを外生変数として考慮した.さらに,道路途絶時には,各原材料の搬入減少率のうちもっとも大きな減少率に等しい割合で平均労働時間指数と民間資本稼働率指数を減少させることにより,道路途絶が潜在生産力に及ぼす影響を分析できるものとした.

     また,和歌山県を対象に四半期ベースの実証モデルを構築し,県中部の御坊市が道路途絶により孤立するケースを想定し,道路途絶や復旧時期が和歌山県経済に及ぼす影響について,シミュレーション分析を行った.分析の結果,道路途絶の影響は復旧後も長期に渡って継続すること,早期復旧は長期に渡って地域内総生産の減少を緩和することなどが示唆された.

  • 井上 惟人, 堀田 昌英
    2019 年75 巻2 号 p. I_256-I_264
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     本研究では,故障率を有する部材の取引において,逆選択とモラル・ハザードの問題を克服する誘因両立的な性能水準,支払,保証期間をモデルを通じて理論的に明らかにした.また,部材の寿命をワイブル分布で仮定し,部材の故障型の違いによる保証期間の長短を比較した.その結果,調達者は保証期間を適切に設定することによって,逆選択の問題を生じさせることなく調達者が望む性能水準の部材を入手できるが,調達者の効用は調達者の部材の判別能力に依存することが明らかとなった.さらに,部材の故障の性質と最適な保証期間との関係を明らかにした.

特集号(報告)
  • 高橋 和雄, 松田 浩, 中村 聖三, 吉田 裕子
    2019 年75 巻2 号 p. I_265-I_281
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/02/28
    ジャーナル フリー

     長崎大学は,2008年度より道路の維持管理の人材を育成する道守養成講座を実施してきた.2015年に実施した道守認定者アンケート調査は,国土交通省の民間資格の登録直後で,公共事業への参画がない時点であった.その後,公共事業への活用,道守認定者の組織の結成,養成講座の実施方法の見直しがなされた.以上を踏まえて,2018年9月に道守認定者を対象に,技術者やボランティアとしての活動,道守養成ユニットの会での活動,SIPインフラへの対応,道守養成講座の今後,民間資格への新たな登録,道守認定者の自己評価・満足状況等をアンケート調査した.さらに,所属事業所と道路の異常通報に対応している道路管理者へのアンケート調査も併せて実施した.本報告ではこれらのアンケートの結果をまとめるとともに,課題解決に向けて考察と提案を述べる.

feedback
Top