土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
67 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.27
  • 中村 孝幸, ニエン センラット, 東 和希, 山先 達也
    2011 年67 巻2 号 p. I_892-I_896
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     ロングビーチ港(ピア-J)の港口部には周期が約1分以上の長周期波から港内を守るために共振装置型の防波施設が建設された。共振装置型の防波施設の主な役割は係留船舶の荷役の際に発生しやすい長周期船体動揺を低減することである。数分以上のより長い長周期波に対する防波施設の性能を向上させるために新型共振装置を提案した。それは従来型の矩形共振装置の側壁に一対の直立堤を付加したものである。この研究では従来型の矩形共振装置と今回の新型共振装置の両者について長周期波に対する港内の制御効果を比較検討したものである。また、斜め入射波が港内静穏度に及ぼす影響についても検討した。
  • 小林 雄一, 泉宮 尊司
    2011 年67 巻2 号 p. I_897-I_902
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     deconvolution法を用いた干渉法が港湾近傍の中水深を伝播する長周期波の水位波形の推定に応用されている.このdeconvolution法を用いた干渉法は,波源関数のスペクトル形状に依存する相関法と異なり,それに依存しない利点がある.deconvolution法を用いた干渉法によって推定された長周期波の波形は,相関法によって推定された波形よりも実測値とより一致することが確かめられた.
  • 横田 雅紀, 橋本 典明, 田中 雄太, 児玉 充由
    2011 年67 巻2 号 p. I_903-I_907
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     著者らはデータ同化機能を有する波浪推算モデルADWAMを間接的な観測装置とし、観測値を満たすパラメータとして暴風時における海面抵抗係数を逆推定する手法を開発している.本研究では強風の発生域から離れた観測点の波浪を観測値としてデータ同化実験を行った結果,台風経路の延長線上の観測点では強風が発生していない条件であっても,強風域で発生し伝播してきたうねりが観測されていれば,データ同化により観測が極めて困難な強風速範囲のCDが逆推定可能であることが確認できた.さらに,台風経路から離れた観測点においても,強風速範囲のCDのみを未知パラメータとし,逆推定するパラメータ数を減少させることで,観測点で発生する風速範囲を超えて強風速範囲のCDが精度良く逆推定できることを明らかにした.
  • 松﨑 義孝, 藤田 勇, 吉江 宗生
    2011 年67 巻2 号 p. I_908-I_913
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     油流出事故が発生した際,漂流ブイは流出油を追跡・観測する手段のひとつとして有効である.流出油の漂流予測に用いる漂流ブイには以下の特性・機能が求められる.まず,漂流ブイは風,流れの存在する状況での漂流特性を知っている必要がある.しかしながら多くの漂流ブイは漂流特性がよく調べられていない.また,油漂流予測には現地海象情報が有効であるため,流況,風況が観測できると効果的である.そこで本研究では,海象情報を収集できる漂流ブイを試作した.実海域において緯度経度,風向風速が計測・収集できることを確認し,室内実験及び実海域実験において漂流ブイの漂流特性を計測し,風係数として評価した.
  • 鈴木 靖, 道広 有理, 叶木 律子, 吉村 豊
    2011 年67 巻2 号 p. I_914-I_919
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     風力発電事業推進のためには風速の過去から将来の変化を把握しておくことが重要である.本研究では気象官署の過去の風速観測値を解析するとともに,IPCC AR4のCMIP3マルチ気候モデルのデータを用いて,日本沿岸の風速長期変動の過去の特性とその将来変化傾向を検討することを目的とする.
     1986年以降の気象官署冬季風速のトレンド解析によると,北海道北部と九州南部で風速の増加傾向が見られ,東北地方と中国・四国地方では減少傾向が見られる.冬季風速と大気大循環指標である北極振動指数AOIとの関係を調べた結果,北海道・東北の日本海側から山陰・九州にかけて,両者は負の相関が高い.複数の気候モデルから気候変動情報データベースを作成し,アンサンブル平均は年平均風速,冬季平均風速ともに若干の風速増加傾向を示すことがわかった.
  • 山口 正隆, 大福 学, 野中 浩一, 畑田 佳男, 日野 幹雄
    2011 年67 巻2 号 p. I_920-I_925
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     気象官署で取得された風観測資料(SDP風資料)を利用して,内湾・内海の海上風分布を合理的に評価しうる著者らの方法を用いて東京湾,伊勢湾,瀬戸内海における海上風分布を推定した.この海上風分布資料から推定された最長1911~2005年の間の年最大風速資料に対する解析に基づいて,期間最大風速や100年確率風速を求めた.これらのうち3海域における100年確率風速は大略35m/sから45m/sあるいは局所的には45m/s以上と推測される.3海域の中でも地形の複雑な瀬戸内海では小海域への強い依存性を示す.変動係数は5~12%の範囲にある.また,100年弱の資料期間における期間最大風速の再現期間は設定した再現期間の100年におおむね近い値を与えた.
  • 鈴木 高二朗, 河合 弘泰, 仲井 圭二
    2011 年67 巻2 号 p. I_926-I_931
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     南関東沿岸の異常潮位に関する研究を行った.異常潮位はその継続時間によって2種類に分類できる.継続時間が短い異常潮位に関しては,銚子付近における北系の強風と高波が異常潮位の生成に重要な役割を果たし,異常潮位は南関東沿岸を伝播する.継続時間の長い異常潮位に関しては,黒潮の離岸距離が異常潮位の大きさと関係している.野島崎から黒潮までの距離が近いほど,異常潮位は発達する傾向がある.
  • 川口 浩二
    2011 年67 巻2 号 p. I_932-I_937
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     近年,波浪モデルの高度化や気象に関する長期間の再解析データが提供されるなど,過去に遡って手軽に長期の波浪推算が実施できる環境が整ってきた.近年,日本周辺における地球温暖化に伴う波浪特性について議論がなされているが,長期間の波浪推算結果を基にすれば,過去から現在までの日本沿岸での長期的な波浪特性の検討が可能と考えられる.本研究では,ECMWFによる長期間の気象の客観解析値と第3世代波浪推算モデルWAMに基づく長期間(40年間)の波浪推算結果を基に日本沿岸における長期的な波浪の出現特性を検討した.その結果,年平均有義波の顕著な経年的な変化傾向はみられなかったが,高波上位のみ着目した検討では,海域によっては若干の変化傾向が確認された.
  • 片山 裕之, 関本 恒浩
    2011 年67 巻2 号 p. I_938-I_942
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     高波の継続時間は,構造物への外力評価の際に重要であり,設計体系の性能設計への移行に伴い高精度な時化のモデル化の必要性が高まっている.また高波の繰り返し間隔は,海上工事の施工稼働率を検討する際,作業船の待避時間あるいは連続静穏日の確保の観点からも重要である.
     波の繰返し間隔(連なり)については,合田(1976),GODA(1983),KIMURA(1980)などが既に検討しており,隣合う波高の相関を考慮した包絡波形に基づく波高の連長の理論が,波高の連の特性をよく表せることが示されている.
     本研究では,観測波浪の統計値を用いた高波の継続時間のモデル化を念頭に,日本海の冬季風浪を対象に,実海域の有義波高の基準波高に対する変化を波の連なりとして取扱うことにより高波の継続時間を抽出し,その発生状況および継続時間の出現確率特性について検討した。その結果、日本海広域に渡って高波継続時間(J1),繰り返しサイクル時間(J2),次の高波までの静穏日(J3)は観測地点による差異がほとんどないこと,高波の繰り返しサイクル(J1)と時化のピーク波高Hpとは相関が高いこと,各観測地点の平均有義波高を基準波高としたJ1,J2,J3の出現確率は地点によらず出現確率分布がほぼ同様であり、また出現確率は基準波高毎に近似できる可能性が確認された.
  • Muhammad ZIKRA, Noriaki HASHIMOTO, Masaki YOKOTA, Masaru YAMASHIRO, Ko ...
    2011 年67 巻2 号 p. I_943-I_948
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,まず,デジタルビデオカメラによる撮影画像をもとに海岸に来襲する波浪の周波数スペクトルを求め,超音波式波高計による観測結果との比較により,画像解析手法の妥当性について検討した.ビデオ映像は茨城県波崎海岸に設置されたビデオカメラ観測装置により撮影されたもので,連続画像から画素の輝度の時間変動データを取得してスペクトルを求める.波高計による観測結果は,港湾空港技術研究所波崎海洋研究施設(HORS)の観測用桟橋で得られたものである.両者の比較から,画像解析により得られたスペクトルのピーク周波数が観測結果によく一致することが確認された.次いで,撮影画像から方向スペクトルの推定を試みた.得られた方向スペクトルは,方向集中度が高く周波数分布も狭い,鋭い形状のスペクトルであった.
  • 合田 良実
    2011 年67 巻2 号 p. I_949-I_954
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     モンテカルロ法による数値実験の結果,年数が数百年程度の年最大値データから推計したGEV分布のグループに漸近しないことが判明した.GEV, GPA, およびワイブル分布の標本から抽出された年最大値に対する最適合分布は,その形状母数がそれぞれの母集団よりも大きくなる.数十年程度の年最大値から推計されるQuantileは再現期間が50年程度以上では母集団値よりも若干小さくなる.
  • 岩崎 裕志, 横田 雅紀, 橋本 典明, 三井 正雄, 河合 弘泰
    2011 年67 巻2 号 p. I_955-I_960
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     NOWPHASでは全国沿岸における有義波高、有義波周期、波向などの情報を提供している。波浪観測には主に海象計が用いられており、水面変動と斜め3方向の上層の水粒子速度の計4成分の波動量が方向スペクトルの推定に利用されている。本研究では、1方向の水粒子速度が欠測となった場合を仮定し、残る2方向の波動量と水面変動から方向スペクトルを推定した際の推定精度について検討を行った。その結果、波高1.5m以上の条件ではピーク波向を精度良く推定できることを明らかにした。さらに、表層における気泡混入に伴い水面変動が欠測した場合を仮定し、斜め3方向の水粒子速度に加え、別途取得されている水圧変動を用いた4成分で方向スペクトルを推定した。その結果、ピーク周波数、ピーク波向ともに精度良く推定できることを明らかにした。
  • 永井 紀彦, 川口 浩二, 吉村 豊, 吉岡 健, 谷川 亮一, 青木 功
    2011 年67 巻2 号 p. I_961-I_966
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本稿では,国土交通省港湾局関係機関の相互協力によって開発・展開されたGPS波浪計などのNOWPHAS(全国港湾海洋波浪情報網)海象観測の現状を述べ1),洋上風力発電実用化に向けたNOWPHAS海象観測情報の活用の検討事例を示す.すなわち,これまで観測データが少なかった洋上での風観測データに注目し,海洋構造物への外力条件として重要となる洋上風の乱れ,および,海洋構造物の設計条件設定の上で重要となる洋上風と波浪との同時生起性2)についての,実証的検討結果を紹介する.
  • 澁谷 仁史, 泉宮 尊司
    2011 年67 巻2 号 p. I_967-I_972
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,著者ら提案したIC基準等の適合度基準を用いた評価で,上位3位までに入った分布関数の中に,真の分布関数が高い確率で含まれることを考慮して,それらの分布のN年最大値の平均値をresampling手法により算定している.さらに推定された母数から算定される理論値と比較することにより,分布関数を最終的に採択する手法を提案している.この手法によると,母分布関数を誤ってもN年最大統計量が小さくなる分布を避けることができるという利点を有している.
  • 木梨 行宏, 中野 俊夫, 横田 雅紀, 橋本 典明, 山城 賢
    2011 年67 巻2 号 p. I_973-I_978
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     我が国は台風常襲地帯であり,特に九州地方は多くの台風が来襲するため,これまで高潮,高波により大きな被害を受けてきた.台風による高潮,高波災害に対する適応策を考える上で,より精度の高い高潮推算モデルの開発が急務となっている.本研究では,風場・気圧場の入力時間間隔が推算結果に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする.台風9918号を例に高潮推算を行い,急激に変化する風場を表現するためには,より細かい入力データの時間間隔を設定する必要性を示した.
  • 村上 智一, 吉野 純, 深尾 宏矩, 安田 孝志, 飯塚 聡, 下川 信也
    2011 年67 巻2 号 p. I_979-I_984
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,まず,東京湾に来襲した台風0709号による高潮を対象に大気-海洋-波浪結合モデルの精度検証を行い,これによって東京湾の高潮の高精度計算が可能となる一方で,経験的台風モデルでは精度的に不十分であることを示した.ついで,台風渦位ボーガスと結合モデルを用いて可能最大級台風50ケースによる東京湾の潮位偏差の最大値分布を予測した.その結果,現在気候の下であっても東京湾台風による高潮(潮位偏差2.3m)を超える潮位偏差3.3mの高潮が湾最奥部で発生し,東京湾台風による潮位偏差2.3mを超える継続時間が54分に及ぶことを明らかにした.
  • 村上 智一, 深尾 宏矩, 吉野 純, 安田 孝志
    2011 年67 巻2 号 p. I_985-I_990
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,結合モデルを用い,現在気候の下でコースおよび中心気圧が物理的に変化する50個の最大級台風による伊勢湾における可能最大級高潮・高波の予測を行った.その結果,伊勢湾台風時の名古屋港で発生した既往最大の潮位偏差3.5mの高潮だけでなく,これまでその可能性が指摘されて来た4.5mの高潮をさらに上回る5.6mの高潮が現在気候において発生する可能性が示された.また,四日市港以北の湾奥全域で潮位偏差が3.5mを超える高潮発生の可能性がある一方,それより南の中部国際空港では,最悪の場合,潮位がT.P.+3.99mに達し,水没の危険があることが示された.
  • 川崎 浩司, 丹羽 竜也
    2011 年67 巻2 号 p. I_991-I_996
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,伊勢湾湾奥部を対象に,地球温暖化による台風の強大化に伴う高潮・高波による氾濫特性を数値シミュレーションにより解明すること,また氾濫による危険度を評価することを目的とする.本研究で用いた数値モデルは,マイヤーズモデルに基づく台風モデル,one-wayネスティング手法を導入した水深方向に積分平均化した流動モデル,波浪モデルSWAN,CIP法を導入した氾濫モデルから構成されている.本数値シミュレーションの結果,将来起こりうる大型台風により1959年の伊勢湾台風と同等以上の規模の被害が生じることが示唆された.また,本数値シミュレーション結果に基づき,将来起こりうる氾濫に対し,6つの危険度指標及び6つの指標を統合した指標を用いて危険度評価を行った.
  • 鈴木 武, 根木 貴史, 柴木 秀之
    2011 年67 巻2 号 p. I_997-I_1002
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     地球温暖化による高潮浸水被害リスクの変化の予測を行った.気候変動シナリオをIPCC第4次報告書のA1FIおよびA1Bとし,地球温暖化による海面上昇と台風の強大化を,中期を2040年および2060年,長期を2100年として予測した.伊勢湾奥部の低平地を対象に「期待越波・越流計算モデル」を組み込んだ高潮浸水モデルを構築し,海面上昇と台風強大化の予測値を与えてシミュレーションを実施した.被害指標を浸水面積,浸水人口,浸水被害額とし,高潮浸水被害を予測した.
  • 加藤 一行
    2011 年67 巻2 号 p. I_1003-I_1008
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     荷重-抵抗係数法において、特定氷荷重を算定する必要がある。特定氷荷重はモンテカルロ法により求められる可能性が高い。シミュレーションを実行するのに強度に関する確率分布が必要である。しかしながら、信頼できる確率密度関数を確立するのに十分な強度データを見いだすのは困難である。この研究では海氷の設計参照強度のデータを発生させる手法が提案されている。提案している方法の試計算が行われ、その結果は実際に測定されたアラスカボーフォート海での計測値と同じ範囲であることが確認された。この手法は設計特定荷重の決定に使用できる。
  • 菅原 吉浩, 大塚 淳一, 山本 泰司, 山下 俊彦
    2011 年67 巻2 号 p. I_1009-I_1014
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     気候変動に伴う流氷減少が沿岸域に与える影響を明らかとするため、オホーツク海沿岸を対象に観測データの解析および波浪推算による基礎的検討を行った。観測データの解析結果からは、近年の冬期波浪は増加傾向であり、流氷面積の減少が冬期波浪の増大に影響している可能性が大きいことが明らかとなった。また、波浪推算による流氷減少時の冬期の波浪変化を検討した結果、50年確率波高は約10cm増大し、高波浪が来襲しやすい確率分布に変化することが明らかとなった。
  • 竹内 貴弘, 木岡 信治, 河合 孝治
    2011 年67 巻2 号 p. I_1015-I_1020
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     結氷海域に建設される海洋構造物は海氷の運動に伴い氷荷重を受ける。海氷には幾つかのタイプがあるが、ハンモック氷や圧力氷脈などの変形氷の氷厚は周囲の平坦氷のそれよりはるかに大きいため、変形氷による氷荷重を見積もることが非常に重要となる。また、変形氷の固結層部分の強度は、セール・キール部分よりも比較的大きいため、氷荷重の推定にあたってはその強度特性の把握が必要である。特に、変形速度が小さい条件下では、構造物との接触面積が大きくなることで荷重の増大に繋がるにもかかわらず、固結層の変形特性についてはよく知られていない。このため、室内低温室でモデル化した変形氷固結層のクリープ試験を行い、クリープ特性に与える氷温と載荷圧力の効果、さらに、二次クリープへのノートン(グレン)則の適用性を検討した。
  • 木岡 信治, 竹内 貴弘
    2011 年67 巻2 号 p. I_1021-I_1026
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     サロマ湖では,過去に多発していた湖内への流氷流入によるホタテなどの養殖施設の被害を防止するために湖口部にアイスブームが設置されており,今後も多目的でのアイスブームの活用が考えられ,より合理的な設計方法が望まれる.本研究では,水理模型実験を実施し,特に流氷下面の凹凸の摩擦抗力成分に着目した様々な凹凸状態の氷群の伝達荷重や抗力係数などについて調べた.平坦な氷群の場合と同様,アイスブームへの伝達荷重は流速の二乗に比例した.抗力係数は,10-2のオーダーであること,凹凸の周期と振幅の比が1のオーダーでCsが最大となることが推察された.さらに,本実験結果から,オホーツク海における流氷群の摩擦抗力係数の概略推定を試みた.現地観測結果の有義振幅と標準偏差との関係から,およそ0.03~0.04と推定された.
  • 藤田 勇, 松崎 義孝, 白石 哲也
    2011 年67 巻2 号 p. I_1027-I_1032
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     C重油と水の混合により形成されたW/O型エマルジョンは非ニュートン流体としてのレオロジー特性を持つと同時に見かけ上の粘度が増大する.このため,管内輸送時の摩擦損失が大きく,非常に大きなポンプ動力を要するなどの問題が生じる.
     本研究ではこうしたC重油と水で形成されたW/O型エマルジョンの管内摩擦損失抵抗に関して検討した.エマルジョン化油の管内摩擦損失の推算式を提示するとともに,摩擦損失の低減手法として,少量の界面活性剤を添加する手法に関して実験を行った.スルホコハク酸ジエチルヘキシルナトリウム,ソルビタンモノラウレート及び市販の油処理剤を少量添加した場合の,水平管内で生じる摩擦損失を測定した.薬剤の添加により1/10あるいはそれ以上の摩擦損失低減効果が得られることを明らかにした.
  • 吉田 正貴, 田島 芳満, 佐藤 愼司
    2011 年67 巻2 号 p. I_1033-I_1038
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     沿岸漂砂の連続性を維持し、かつ、河口閉塞を緩和する新しい漂砂制御技術のひとつとして、潜堤や河口部への導水に基づくシステムを提案し、その機能や実現性について実験を通じて検証した。提案するシステムは化石燃料を用いることなく、来襲波浪などの自然営力に基づき河口部の流況場を制御するものである。固定床および移動床での室内実験に基づき、河口部における流況場やそれに伴う河口部での地形変化を観察するとともに、設置する潜堤の最適な配置について検討した。さらに現象を再現可能な非線形分散波モデルに基づく数値実験を実施し、提案した技術では河道から河口部において漂砂移動を有意に促進する効果が確認された。河口周辺沿岸部における漂砂特性の把握や出水時における流下抵抗への影響の分析等が今後の課題である。
  • 宇多 高明, 三波 俊郎, 宮原 志帆, 芹沢 真澄, 福澤 一博
    2011 年67 巻2 号 p. I_1039-I_1044
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     干潟と海浜との間の砂移動機構について,瀬戸内海の周防灘に面した沓尾海岸を例として調べた.過去の空中写真による汀線変化解析を行うとともに,祓川河口周辺で深浅測量を実施し,祓川河口沖の干潟に洪水によって供給された砂が細長い砂州を形成しつつ岸向きに移動し,最終的に上陸する過程を実測データを基に明らかにした.
  • 田島 芳満, 丹治 雄一, 三宅 健一, 加藤 広之, 中山 哲嚴
    2011 年67 巻2 号 p. I_1045-I_1050
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では、連続静止画像データに基づき浅海域地形をモニタリングする手法の構築を試み、山口県島田川河口部において構築したシステムを適用する。まず定点監視カメラを島田川河口部に設置し、2秒間隔で河口部を撮影した。得られた画像は平面直角座標系上に座標変換されるが、その際の変換パラメタは画像のブレに応じて自動的に補正されるシステムを構築し、微小にずれる画像を同一の平面直角座標系上への図示を可能とした。河口部には水圧センサを設置して潮位を計測し、等間隔に設定した潮位時における汀線位置を対応する静止画像からそれぞれ抽出した。異なる潮位におけるこれらの汀線位置データに基づき、テラス地形を含む河口部周辺地形を再現し、その時間変化と外力場との関係を分析した。
  • 山崎 彰吾, 引山 誠, 宇多 高明, 星上 幸良, 小澤 宏樹, 清水 達也, 野志 保仁
    2011 年67 巻2 号 p. I_1051-I_1056
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     琵琶湖では流入河川の治水対策の一環として河道の掘削や新放水路の開削が各地で行われてきた.この結果,改修が行われた河川では湖への流入土砂が激減し,河口からの土砂流入を前提として形成されてきた湖浜において沿岸漂砂とのバランスが失われ,河口部を中心とする湖浜で著しい侵食が起きている.琵琶湖中央部,安曇川河口デルタの一部をなす鴨川河口部においても,同様な原因により侵食が進んできており,現在隣接の近江白浜での湖浜復元が課題となっている.本研究では,琵琶湖(北湖)の中央部に流入する鴨川の河口部の変遷を調べ,河川から湖浜への土砂供給量の減少が周辺湖浜に及ぼす影響について考察する.
  • 西 隆一郎, 又野 友之輔, 山城 徹, 日高 正康, 林 健太郎, JANSEN Tommy
    2011 年67 巻2 号 p. I_1057-I_1062
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     インレットは感潮狭口と呼ばれる沿岸域の地形である.わが国の代表的なインレットとしては,浜名湖やサロマ湖がある.これらのインレットは,外海側からの波や場合によっては津波の作用,あるいは内海側の内水量増加(例えば,雪解け水など)により,外海と内海を分断する砂嘴や砂州の一部が切断された結果形成される場合が多い.外洋に面しかつ砂質材料で形成された一般的なインレットでは,潮汐に伴う海水の流入・流出が可能であるため,潮汐に伴う流れおよび底質移動と,入射波浪に伴う沿岸流と底質移動(沿岸漂砂)の相互作用で常に変形している.本論文では,インレットを適切に維持・利用するためには,インレットの安定な断面形状に関する定式化が必要と考え,世界中のどこでも第一近似として利用できる汎用A-P式(タイダルプリズムと感潮狭口断面積(流積)の関係)について考察する.次いで,人工化したインレットが増加し,海岸管理上の問題ともなっているので,インレットを人工化した場合のし,A-P関係(タイダルプリズムと感潮狭口断面積(流積)の関係)について考察することにした.
  • 渡辺 国広, 諏訪 義雄, 高田 保彦, 土橋 和敬, 弘中 淳市, 梶原 幸治, 野口 賢二, 関口 陽高
    2011 年67 巻2 号 p. I_1063-I_1068
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     西湘海岸で試験体設置が計画されている袋詰め工の形状および構造を決めるために2次元断面の水理模型実験を実施した。高波浪下では1/30スケールの袋詰め工の模型は同程度の質量をもつコンクリートブロックよりも不安定であり、安定にするためにはコンクリートブロックの50倍以上の質量が必要であることがわかった。また、袋詰め工による施設に特徴的な変形として、構造物先端の浮き上がりや横方向へのねじれが確認された。これらの変形は構造物の幅と高さを増加させることで、解消されることが水理模型実験の結果から明らかとなった。最終的には西湘海岸における過去15年間の既往最大波にも耐えられるようにするためには、幅8m、長さ10m、高さ1.5m以上の強大な形状とする必要があることがわかった。
  • 土橋 和敬, 高垣 勝彦, 黄檗 敏弘, 諏訪 義雄, 野口 賢二, 渡辺 国広, 関口 陽高
    2011 年67 巻2 号 p. I_1069-I_1074
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     ジオテキスタイル等で構成される袋材に土砂等を詰める工(以下,袋詰め工)は,現地発生土の利用,施工の省力化,変形への追従性,砂利・石材等の資源の枯渇への対応の面から注目されており,海岸保全施設への適用の期待が高まっている.しかし,我が国では海岸で本格的に袋詰め工を施工した事例がないために,日本の海岸において適用可能なのか,施工の省力化がどの程度可能であるのか不明である.そこで本研究では,袋詰め工の試験施工を実施し,施工性向上のための工夫について検討した.検討の結果,海岸の底質や波浪条件,地形に応じて充填方法の工夫を施せば,日本の海岸においても袋詰め工の施工は十分に可能であることが確認された.
  • 酒井 和也, 宇多 高明, 足利 由紀子, 清野 聡子, 山本 真哉, 三原 博起, 沖 靖弘
    2011 年67 巻2 号 p. I_1075-I_1080
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     大分県中津干潟の三百間地区の砂州においては、隣接する蛎瀬川の河口閉塞が著しいことから、対策として河口前面の堆積土砂を除去する一方、その砂を三百間砂州の西部へ運んで養浜するというサンドリサイクルの計画が立てられた。養浜砂は、三百間砂州の頂部から3600m3浚渫され、西端の斜路前に投入された。その際、投入砂が先端部へと急速に戻るのを防止するために、砂州の中央部に袋詰め石製の長さ24mの突堤が設置された。本研究では、この間、2007年から2010年までに4回の空中写真撮影と縦断形測量を行って海浜状況の変化を調べ、サンドリサイクルの効果と沿岸漂砂の制御を目的とした袋詰め石突堤の効果を調べた。この結果、袋詰め石突堤は延長が短く天端高も低いことから、既存の突堤と比較して、緩やかな汀線変化をおこすことがわかった。
  • 片野 明良, 久留島 暢之
    2011 年67 巻2 号 p. I_1081-I_1086
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     海岸侵食対策として養浜により砂浜を回復する海岸保全事業や,海岸利用促進を図るために人工海浜の造成事業が実施される.海岸保全,砂浜および後背地の保全の観点から,飛砂対策が重要な海岸保全の一つとなるものの,飛砂対策工に関する定量的な評価に関する研究は少ない.本研究は植生帯とフェンスやトレンチを組み合わせた面的防護方式による飛砂対策工の定量的な効果について,浮遊飛砂捕捉調査,地形測量を基に検討した.植生帯に砂が十分に堆積すると,そこから飛砂が発生して後背地への飛砂が増大することがある.フェンスは堆砂効果が高いものの,フェンス周辺が堆砂により小砂丘化する.小砂丘は飛砂を舞い上げるため植生帯を越えて後背地に飛砂が到達する.トレンチは飛砂トラップ効果が高く,トラップが埋没しても効果が継続する.また,維持管理の観点からもトラップと植生帯の組み合わせによる対策が有効である.
  • 宇多 高明, 野志 保仁, 星上 幸良
    2011 年67 巻2 号 p. I_1087-I_1092
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では離岸堤の設計基準について議論する.現在の設計基準の問題点を明らかにするために,モデル計算として離岸堤を設置した場合の海浜変形をBGモデルで計算を行った.また,鐘崎海岸を例として,海浜変形に対して離岸堤と似たような変化を起こさせる人工リーフを設置した場合の海浜変形と取り上げた.その結果,過去の定性的な記述の代わりに数値シミュレーションによる予測が必要であることが示唆された.
  • 鈴木 崇之
    2011 年67 巻2 号 p. I_1093-I_1098
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     波崎海岸にて計測された5年間の地形断面データを用いて,汀線位置変化量から後退,停滞,前進イベントを抽出し,これらのイベントと沖波波浪データを用いて,汀線位置変動と周波数帯別波浪との関係を検討した.さらに,抽出した後退イベントを用いて,汀線後退速度と前浜地形形状との関係についても検討した.その結果,汀線位置の停滞と前進イベントの分離は困難であるけれども,後退イベントと停滞・前進イベントの分離は,有義波高のエネルギーフラックス,または,波浪スペクトル密度の高い周波数帯のエネルギーフラックスにより可能であることがわかった.また,後退イベントの後退速度と前浜形状(バームの有無)の検討により,汀線位置変動の予測には,汀線の岸沖方向位置に加え地形形状も考慮する必要があることが示唆された.
  • 鷲見 浩一, 出村 拓也, 山 清太郎, 小田 晃, 落合 実, 遠藤 茂勝
    2011 年67 巻2 号 p. I_1099-I_1104
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では、千里浜海岸の汀線の基礎的な変動特性について、汀線位置の現地観測と波浪数値モデルによる波浪場の計算結果などに基づいて検討し、漂砂特性について新たな知見を得た。千里浜海岸の入射波の波向は年間を通じ、北北西と北西が卓越し、冬期に高波浪が出現していた。千里浜海岸における汀線位置の時空間変化は、滝崎の回折に伴う波の遮蔽域に関連して、変動特性が異なる。千里浜海岸での漂砂方向は遮蔽域よりも南側の領域では南方向と判明した。波の遮蔽域外の調査点での漂砂は南方向であり、砂浜は浸食傾向にある。一方、羽咋側以北の調査点では砂浜は堆積傾向にある。
  • 宇多 高明, 熊田 貴之, 清水 達也, 中山 拓也, 石井 光男, 保田 英明
    2011 年67 巻2 号 p. I_1105-I_1110
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     太平洋に面した九十九里浜南部に位置する一宮海岸では、北向きの沿岸漂砂を制御するために、10基のヘッドランドの建設が進められてきた。しかしながら、ヘッドランドの建設と同じ時期に太東漁港の南防波堤も建設され、それに伴って波の遮蔽域が形成された結果、南向きの沿岸漂砂が生じた。現在ヘッドランドは、漁港内の堆砂を防ぐために南向きの沿岸漂砂を制御している。
  • 三波 俊郎, 宇多 高明, 石川 仁憲, 細川 順一, 塩入 同
    2011 年67 巻2 号 p. I_1111-I_1116
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     相模川河口~大磯港間の長さ5kmの海岸線に着目し,まず過去の空中写真により海岸線の変遷を調べるとともに汀線変化解析を行い,さらにNMB測量データを用いた地形変化分析を行って海浜変形の実態を明らかにした.汀線変化から推定した沿岸漂砂量分布の変遷より,相模川が大きな人為改変を受ける前の時期における,砂以上の粒径成分の供給土砂量はほぼ1.5×105 m3/yrと推定された.
  • 石川 仁憲, 宇多 高明, 古池 鋼, 三波 俊郎, 三枝 薫, 進藤 豊, 和田 昌明
    2011 年67 巻2 号 p. I_1117-I_1122
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     湘南サザーンビーチとして有名な海水浴場への茅ヶ崎中海岸からの礫の拡散を防止する手法について,芹沢らによる粒径を考慮したBGモデルを用いて検討した.養浜材の粒径を変えた場合における,突堤長が礫の流出防止に与える効果について調べ,6号水路を20m延長すれば礫の拡散を防げることを明らかにした.
  • 林 健太郎, 佐々木 崇之, 山本 明広, 苫米地 庄吾, 中山 哲嚴, 近藤 俶郎, 川森 晃
    2011 年67 巻2 号 p. I_1123-I_1128
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     国縫漁港は北海道内浦湾(噴火湾)西岸最奥部に位置し,我が国初の島式漁港として建設された漁港である.昭和59年度に着工し平成5年度に外郭施設は完成しており,近年では平成20年度に北防波堤を延伸する整備を実施した.国縫漁港では,港内での土砂の堆積は確認されているものの計画水深は十分に確保されており,現在まで航路・泊地における浚渫は必要とされていない.本研究では,国縫漁港において継続的に実施されているモニタリング結果(深浅測量調査)を取りまとめ,近年の地形変化特性と舌状砂州の変形特性を明らかにするとともに,整備開始後約15年間の既往の深浅測量結果をもとに経験的固有値関数解析(EOF解析)を適用させ,漁港整備に伴う周辺における長期的な漂砂特性を解析した.
  • 戸巻 昭三, 佐藤 寿彦, 竹沢 三雄, 後藤 浩
    2011 年67 巻2 号 p. I_1129-I_1134
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本論文は, 港口からの漂砂の流入と突堤の延伸による流入防止対策工を石狩湾新港周辺の深浅測量や波高、流況などの現地観測データから考察している.そして, 現地観測データの解析と重回帰分析の結果から, 港口から港内への流入土砂は, 石狩湾新港東側海岸周辺の波高と海底面上0.3m水粒子速度と隣接する石狩川からの流出土砂によって影響されることが明らかとなった.
  • 斉藤 知秀, 小林 正典, 池野 正明, 吉井 匠, 張 旭紅
    2011 年67 巻2 号 p. I_1135-I_1140
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     東北電力原町火力発電所専用港湾は,発電所南方にシルトの供給源と考えられる海蝕崖と河川が存在している。さらに当発電所はシルトが多く存在する海域に立地しており,浚渫コストの低減が維持管理上の課題となっている。堆砂対策として一般に防波堤改築等が考えられるが,実現への課題も多く,新たな対策工として,シルト供給源での対策が考えられる。一方,既往数値モデルでは,海蝕崖からの土砂供給を考慮していないことから,対策工による港内堆砂への影響を定量的に評価できない。本研究では,現地観測等により港湾へのシルト流入メカニズム,海蝕崖からのシルト供給量を推定した。さらに,既往数値モデルを応用することにより,堆砂予測を実施し,海蝕崖からの土砂供給が及ぼす港内堆砂への影響について考察した。
  • 佐々木 淳, LAKNATH D.P.C., 鈴木 崇之
    2011 年67 巻2 号 p. I_1141-I_1146
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     スリランカ・キリンダ漁港は1985年に建設されて以来,港内堆砂による機能不全に陥り,1994年の漁港改修以降も改善されず現在に至っている.この地域は南西および北東モンスーンの影響を強く受けているが,これらが堆砂に及ぼすメカニズムを理解するため,現地調査,既往の調査データや衛星画像の収集解析,および数値シミュレーションによる検討を行った.キリンダ漁港では現在は浚渫が常時行われているが,浚渫の行われていない期間のデータを解析することにより,人為影響を排除した南西モンスーン下および北東モンスーン下それぞれにおける土砂の堆積・侵食過程の空間分布を明らかにした.南西モンスーン下では主防波堤の南側および港口で堆砂がみられ,一方,北東モンスーン下では漁港内での堆砂が顕著にみられた.これらの堆砂傾向の差異は各モンスーン下における波浪場の差異に起因し,特に南西モンスーン下における港口閉塞が課題であることを示した.
  • 中村 友昭, 石原 遼, 水谷 法美, 尾上 幸一郎, 藤永 聖一, 山田 耕三, 石川 正紀
    2011 年67 巻2 号 p. I_1147-I_1152
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,土砂の堆積により必要な水深の確保が困難になっている現地の岸壁を対象に,3次元流体・地形変化連成数値計算モデルを用いて浚渫範囲の違いによる流動場と地形変化の特性を明らかにするとともに,それに基づいた効果的な浚渫範囲の検討を行った.その結果,浚渫範囲の土砂堆積傾向は浚渫の広さやその周辺の勾配により異なり,流れが上流側から直接流入しない程度に浚渫範囲を上流側に広げた場合に,より長期に渡って必要な水深を確保でき,最も効果的であることを明らかにした.また,浚渫範囲の土砂堆積傾向は地形の影響を大きく受けることから,流動場が地形変化に与える影響だけではなく地形変化が流動場に与える影響も考慮することの重要性を確認し,効果的な浚渫範囲を検討するツールとしての本数値計算モデルの有用性を明らかにした.
  • 石川 仁憲, 宇多 高明
    2011 年67 巻2 号 p. I_1153-I_1158
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     粗粒材を用いた養浜効果の相違を,6海岸の事例を基に検討した.6海岸の事例は2グループに分類された.第一はポケットビーチのように閉空間での養浜であり,第二は沿岸漂砂の卓越する開空間での養浜である.前者では,粗粒材は安定海浜を形成したが,後者では,養浜区間の直下手で侵食が起きた.これは粒径の大きな礫の移動速度が小さいことに起因し,たとえ養浜を行ったにもかかわらず下手侵食が起こる.これらの相違が現地海岸の実例で示された.
  • 澁谷 容子, 八尾 規子, 砂後 聡子, 松原 雄平, 黒岩 正光
    2011 年67 巻2 号 p. I_1159-I_1164
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     海岸侵食対策として,養浜工法などのソフト的な対策が施されることが多くなってきている.最近では,特に,粗粒材を用いた養浜に注目が集まっている.このような状況から,現地実験や室内実験により粗粒材養浜の有用性を明らかにする試みがおこなわれているが,養浜後の詳細な地形変化は不明である.このため,本研究では養浜砂の粒径や量,養浜位置に着目し2次元断面水槽により室内実験を行った.
  • 岡田 昌之, 田中 浩充, 宇多 高明, 石川 仁憲, 三波 俊郎, 芹沢 真澄, 神田 康嗣
    2011 年67 巻2 号 p. I_1165-I_1170
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     2009年10月8日,台風18号に伴って有義波高6.51m(周期12.8s)の高波が駿河海岸を襲った.台風後の現地踏査によれば,礫浜では岸向き漂砂により高いバームが形成されたことが見出された.また,海岸堤防の前面の養浜地盤高と堤防天端高の差が小さい場所では越波が見られた.測定された海浜変形は等深線変化モデルで再現された.また,堤防と地盤高の相違がもたらす越波量の相違をCADMAS-SURFモデルで計算し,地盤高と天端高の差を大きくすることが越波防止に有効なことを示した.
  • 宇多 高明, 渡辺 宗介, 細川 順一, 塩入 同, 三波 俊郎, 石川 仁憲
    2011 年67 巻2 号 p. I_1171-I_1176
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     逗子海岸での養浜の効果について芹沢らのBGモデルを用いて予測した.この海岸では葉山新港の防波堤による波の遮蔽効果により南向きの沿岸漂砂が誘起されているが,計算によると海浜維持のためには田越川河口からの500m/yrのサンドリサイクルが,また海浜中央部の浜幅を広げるには500m/yr以上の養浜が必要となる.さらに,港建設前の汀線を回復するには2000m/yrの養浜が必要なことが分かった.
  • 小林 正博, 村上 義隆, 田村 貴久, 泉 正寿
    2011 年67 巻2 号 p. I_1177-I_1182
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     秋谷海岸は三浦半島西岸の相模湾に面する延長約1.3kmのポケットビーチ状の海岸である.侵食対策の検討が地域住民,漁業者,海岸利用者および行政から成る協議会により2003年から開始され,レキ養浜が計画された.計画養浜量は約8万m3,中央粒径は約15mmであり,2007年から2010年の間に約4万m3のレキが投入された.モニタリング調査により養浜レキは沿岸方向へは予測より速く移動するものの水深1mより沖へは移動しない結果が得られた.また,レキは磨耗して長辺に対する厚さ,幅と長辺の長さの標準偏差は0.3程度になるという結果が得られた.
  • 中村 友昭, 水谷 法美
    2011 年67 巻2 号 p. I_1183-I_1188
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,LES(Large-Eddy Simulation)で解像できないスケールの渦の影響を地形変化の計算において考慮するために,LESで直接計算可能なGS(Grid Scale)成分にLESでモデル化されていて直接計算できないSGS(Sub-Grid Scale)成分の影響を考慮した実流速の近似値を求め,その値を用いて摩擦速度を計算する手法を提案した.そして,提案した手法をLESに基づく3次元流体・構造・地形変化連成数値計算モデルに組み込むとともに,遡上津波による角柱周辺の洗掘現象に関する水理実験に適用し,水理実験結果との比較により提案した手法の妥当性を検証した.その結果,角柱の沖側隅角部に生じる局所洗掘に関して,細かな計算格子を用いて小さなスケールの渦まで解像したことによる再現性の向上が,提案した手法を用いることで計算効率の良い比較的粗い格子においても得られることを明らかにした.
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