土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
67 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.27
  • 照屋 雅彦, 酒井 洋一, 具志 良太, 與儀 成也, 坂井 隆行, 池田 宗平, 加地 智彦, 細谷 誠一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_298-I_303
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     沖縄本島の中城湾港泡瀬地区において、熱帯性海草類の生育場を創出する藻場造成の実証実験を実施した。過去に実施した移植試験では、場所によっては移植後に造成藻場の面積減少が確認され、その要因はその場の環境条件であると考えられた。そのため、本研究は恒久的に維持される藻場を造成する手法の確立を目的に実施した。恒久的に維持される藻場の造成にあたっては、その場の海草生育制限要因の除去が必要という考えに基づき、実施場所の海草の生育制限要因と考えられた砂層厚の不足と高波浪を取り除くために、低天端堤(天端が干出する潜堤)を設置して波浪を制御し、その背後に海草を根を含む底質ごと移植した。その結果、造成した藻場は造成から約3年経過後でも面積が拡大しているのが確認され、今回実施した藻場造成手法の実現性が立証された。
  • 加村 聡, 藤澤 真也, 片山 貴之, 齋藤 達昭, 田原 実, 岸本 英昭
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_304-I_309
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     貝殻基質における水質浄化能の定量的評価のため、敦賀港内に9カ月設置した同基質を水槽内に静置し生物・化学的変化を追った。基質には植物プランクトンを捕捉する動物群を中心に計88種が固着・潜入しており、この水槽に珪藻を添加したところ、クロロフィルa量、懸濁物量ともに添加直後より急速な減少が見られ12時間後には両者ともにほぼ0になり、また、徐々に透明になっていく様子が確認できた。有機炭素量、有機態窒素量でも同様の傾向が見られた一方、硝酸態窒素は増加した。これらの除去速度を算出したところ、干潟に生息するヤマトシジミ、アサリなどと比較して1.7~17.2倍の効果があった。同基質は港湾内で立体的な構造を作ることが出来、設置面積当たりの環境浄化能力は平面的な干潟のそれを十分に補完できるものと確信する。
  • 小西 望美, 瀬戸 雅文, 山本 岳男, 高橋 庸一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_310-I_315
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     ズワイガニ人工幼生は,孵化後,水中光に誘因されて表層付近まで上昇し,成長に伴う幼生の重量が鉛直上方への遊泳能力を上回ると降下を開始するものとして,浮遊幼生の浮遊から着底に至る一連の遊泳動態をモデル化した.水質条件の一様な水槽内に幼生を収容し,上方より発光波長430~645nmの単色光を照射したところ,ゾエア期の浮遊幼生は青色光に敏感に反応し正の走行性を示した.更に,暗条件下で水温を3~24℃まで,塩分を30.0~35.0psuまで変化させて幼生の走地性を調べたところ,水温21℃以上で顕著な遊泳阻害が発生したが塩分による影響は認められなかった.これらの遊泳諸元をもとに,幼生の鉛直推力を算定し幼生の重量と比較した結果,重量の増加に伴う沈降がメガロパ期に発生することがわかった.
  • 瀬戸 雅文, 佐藤 総一郎, 巻口 範人, 小形 孝
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_316-I_321
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     マナマコ人工種苗の成長に伴う管足の数や吸盤部の表面積の変化を計測し,引っ張り試験を実施して管足の基質への固着力を測定した.更に,基質に着底したマナマコ人工種苗の流動耐性を調べた.稚ナマコの管足数と吸盤部の表面積は体長に比例して増加した.管足より発生する稚ナマコの固着力は付着基質の粗度に依存し,管足吸盤部の直径とほぼ等しい相当粗度で最小値をとりながら成長とともに増加した.吸盤部の単位面積当たりの固着力は,成長とともに付着基質の粗度に依存しながら一定値に収束した.定常流の増加とともにマナマコの形態は防水形状に変化し,他の棘皮動物と同等以上の流動耐性をもつことがわかった.マナマコ人工種苗の放流海域における波浪条件をもとに,適正放流サイズや放流水深を決定することが可能である.
  • 宮武 誠, 吉江 祐人, 湊 賢一, 松村 一弘
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_322-I_327
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     函館港内における水質と流動の変動特性について,現地観測及び数値解析の両面から検証した.港湾全域を対象とした現地観測では潮位,栄養塩,溶存酸素量,化学的酸素要求量,濁度に関して測定を行った.その結果,下げ潮時において潮流流動により巻き上げられた底質によって,海中の被酸化性物質の濃度が高まり,海底付近の酸素消費が加速することを示している.また,港奥海域に蓄積するリンは,函館湾に注ぐ流入河川から供給されていることを明らかにしている.物質循環に基づく生態系モデルを考慮に入れたマルチレベルモデルにより,函館港内における水質の日変動を推定した結果,定性的ではあるが,現地観測の結果を概ね良好な結果で再現できることを示している.
  • アイヌル アブリズ, 丸谷 靖幸, 中山 恵介, 仲江川 敏之, 古川 恵太
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_328-I_333
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     東京湾は典型的な閉鎖性内湾であり,夏季には強い日射,淡水の流入により成層が発達し,鉛直方向の物質輸送が抑制され,底泥が酸素を消費し,湾奥底層付近に貧酸素水塊が発生する.また,これまでの周辺地域の開発,生活排水などによる栄養塩等の負荷が大きく,湾央,湾奥底層に有機物が堆積しており,貧酸素水塊が発生し易い状況となっている.そこに北風などの外力が与えられると,青潮の発生で知られるように貧酸素水塊が水表面まで湧昇し,水生生物に多大な影響を与える.そのため,どのように貧酸素水塊が発生・輸送・消滅しているかを理解することは,東京湾における水環境を考える上で重要である.
  • 岡田 知也, 吉田 潤, 古川 恵太
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_334-I_339
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     我々は,青潮の原因となる硫化物を直接測定できるセンサーの海域での環境モニタリングへの適用性を検討した.また,硫化物の詳細な鉛直分布や底層近傍の硫化物を測定し,硫化物の鉛直分布特性について調べた.観測は,東京湾奥部,浚渫窪地,東京港内および芝浦運河において,2010年の8月および9月に実施された.分析値とセンサー値を比較したところ,両者の相関は高かったが,両者の値には2倍以上の差があった.しかたがって,現状では,本センサーは定性的な関係を評価するのに留めた方が良いであろう.硫化物の鉛直分布の特性に関しては,湾奥において,濃度は浚渫窪地内の1/10だったが,底層2mに硫化物が存在していたこと,また,水深4mの芝浦運河においても,比較的効高濃度の硫化物が水深3m以深に存在していたことが確認された.
  • 横山 佳裕, 吉次 祥子, 中嶋 雅孝, 内田 唯史, 中西 弘
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_340-I_345
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     多様な生物生息空間を有する博多湾を対象に,栄養塩濃度の変化に伴う植物プランクトンの種の変化を既存調査結果により解析した.博多湾では,下水道の普及や高度処理の導入に伴うリン除去により,植物プランクトンの一次生産が抑制され,chl-aは減少傾向にあったが,夏季の赤潮発生日数は経年的に増加していた.冬季では珪藻類の赤潮は減少したが,渦鞭毛藻類の赤潮発生日数は下水の高度処理導入後に増加していた.栄養塩と植物プランクトンの関係を解析した結果,夏季の赤潮発生日数の増加要因はわからなかったが,冬季では下水の高度処理によるリン除去に伴い,博多湾内のリン制限が経年的に強くなり,珪藻類が増えにくい環境となった.また,珪藻類の減少により増殖抑制作用を受けがたくなった渦鞭毛藻類のAkashiwo sanguineaが増えやすい状況となっていた.
  • 古林 将, 島田 広昭, 市瀬 友啓
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_346-I_351
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     日本では,漁業資源を維持するために,様々な事業を行っています.しかし,漁場と環境の関係に関して調査費用が高くなり,これらの事業の影響を評価することは,簡単でありません.本論文では,環境アセスメントの簡便な評価手法として,HEPを用いました.2指数によるHSIモデルは,潮間帯の環境を評価するのに用いられます.これらの2指数は,水質と付着生物の確認種数です.結果から,HSI値が統計データに基づく漁獲量に密接に関連があることが分かります.これは,この手法が潮間帯で環境変化の漁場の資源に対する効果を評価することに利用できることを意味します.
  • 田井 明, 矢野 真一郎, 扇塚 修平, 齋田 倫範, 小松 利光
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_352-I_357
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     我が国の閉鎖性内湾では,M2潮やS2潮に代表される半日周期の潮汐振幅が卓越している場合がおおい.この潮汐振幅により生じる潮流により様々な水環境が成立していると考えられる.この半日周期の潮汐振幅は外海から湾内に入射後,共振作用や浅海変形により増幅する.そのため埋め立てなどの人為的な海岸線の改変によりその特性は変化する.しかし,その詳細な特性に関して具体的な研究が少なく不明な点が多い.本研究では東京湾,伊勢湾,有明海を対象にM2潮とS2潮の増幅率の変動特性を潮汐データの調和解析を用いて検討した.本研究により,外海のM2潮の大きさにより湾内のM2潮とS2潮の増幅率が変化する場合があることが示された.
  • 宇野 宏司, 菅野 拓馬, 辻本 剛三, 柿木 哲哉
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_358-I_363
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,兵庫県西宮市の御前浜を研究対象に,地形改変や航走波といった都市閉鎖性水域独自の外力が自然砂浜の地形変化や流動場へ与える影響について,現地調査,画像解析,数値シミュレーションを通じて検討した.その結果,御前浜では,戦後の埋め立て造成により極めて静穏な空間となり,過去50年間にわたり砂浜面積に大きな変化は見られなかった.このような都市部の閉鎖性の強い水域では,船舶通過によって生じた航走波が大きな外力となりうることが予想されるが,現在の利用頻度であれば地形変化を招くような事態には至らないことが明らかにされた.既存の閉鎖空間を活用した小規模な砂浜の再生を進め,砂浜間のネットワークを構築していくことで,消失・分断化された「なぎさ回廊」の再生が期待できるものと思われる.
  • 陸田 秀実, 村上 一樹, 土井 康明, 山本 民次, 川口 修
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_364-I_369
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
      To evaluate impacts of oyster raft placement on tidal current and seawater exchange in Etajima Bay, northern part of Hiroshima Bay, we have developed a coastal circulation model incorporating the drag force of the oyster raft in Etajima Bay. We found that the number of oyster rafts in summer season is twice as large as that in winter season. In Etajima Bay, the seawater exchange is relatively large in the northwest part, whereas the term of the seawater exchange is about one year in the southern part. Moreover, we computed some scenarios which the oyster rafts are reduced at each zone, and then it could be desirable to reduce 40% of the total number of oyster rafts in order to make a plane for reducing organic matter load from the oyster culture.
  • 藤澤 真也, 近藤 正美, 岩本 俊樹, 鳥井 正也, 穴口 裕司, 片山 真基, 田原 実
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_370-I_375
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     底質は長年にわたる沿岸開発や海砂利採取,汚濁付加の蓄積により悪化しており,これが水産資源や生態系に多大な影響を及ぼしている.そこで閉鎖性の強い港湾区域内において,約1,000m2の海底にカキ殻を厚さ0.5m敷設して,海域環境の改善と生態系の回復が行われるかを約1年間調査した.その結果,試験区では64~94種の底生生物が生息し,最大個体数,最大湿重量はそれぞれ3800個体/m2,1.14kg/m2で対照区のそれぞれ1.9倍,28.5倍となった.また試験区では,マナマコ,イイダコなど水産有用種も出現した.このことより,カキ殻を底質改良材として底質のシルト化や有機汚濁が進んだ港湾区域内に敷設することは有効であり,底質環境の改善に役立つと考えられた.
  • 作野 裕司, 小林 拓, 比嘉 紘士, 鯉渕 幸生, 虎谷 充浩
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_376-I_381
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     青潮は半閉鎖性内湾の環境において最も深刻な問題の一つである.この研究の目的は,青潮時と非青潮時における海色の分類をすることである.この目的を達成するために,青潮発生域の分光反射率特性の概略を示した後,CIE色度座標を使って青潮時における海色の評価を試みた.東京湾湾奥の青潮時(2010年9月25日)と非青潮時(2010年9月1日,10月6日,9月25日)の分光反射率測定を2010年9月~10月まで行った.その結果,基本的な分光反射率特性(450-600nm波長の高い反射率と550-570nm付近の反射率ピークのシフト)と青潮時の色度座標(x:0.23-0.33;y:0.32-0.38)がそれぞれ明らかになった.
  • 小林 薫, 中房 悟, 西村 友良, 森井 俊広
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_382-I_387
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本論文は,主成分が炭酸カルシウム(CaCO3)で化学的, 物理的に安定した貝殻を天然の砂材や礫材の土質代替材として,キャピラリーバリアに有効利用することを目的に,これまで着目されていない破砕した貝殻の保水性について検討し,水分特性曲線と貝殻の粒径および垂直応力(以後,拘束圧と記す)との関係について明らかにする.また,メスシリンダー(以後,容器と記す)に砂材と礫材,砂材と破砕した貝殻で構成する2種類の土層を空中落下により作製し,その後に打撃による振動を容器に与えて,砂材が下部の礫層または破砕した貝殻層に混入する状況を観察する.観察の様子から破砕した貝殻を有効活用することで,砂材が混入し難い長期的に安定したキャピラリーバリアを構築できる可能性について実験的に検証する.
  • 岡本 健太郎, 山本 潤, 福田 光男, 林田 健志, 峰 寛明, 大橋 正臣, 田畑 真一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_388-I_393
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     著者らは,廃棄物を利用することで“ホタテ貝殻の人工礁”を開発した。貝殻礁は,貝殻の空隙に有機堆積物の捕食生物のための生息空間を作り,港内の有機汚染物質を除去するのに有効である.小型試験礁を用いて試した結果,設置後3年が経過しても浄化効果が持続することが確認された.そして,その過程は生態系モデルによって再現された.より大きな効果を得るため,大型ホタテ貝殻礁の設置を行った.蝟集生物量は減少していくが,それは貝殻礁中心部の海水交換不足のためと考えられた.そこで,通水孔を設けた“実用的ホタテ貝殻礁”を開発した.その結果,生物は中心部に集まり,その効果は証明された.
  • 宮田 康人, 本田 秀樹, 薮田 和哉, 林 明夫, 山本 民次
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_394-I_399
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     海域環境修復材として製鋼スラグ製品を組み合わせた製鋼スラグマウンドの適用性を検討するため,実海域試験を実施した.設置15ヶ月までの調査の結果,ミルが繁茂し11ヵ月後の被度調査において100%近い被度であったこと,クロダイ,メバルなどの魚類の蝟集が観察されたこと,底生生物の個体数や湿重量が砂泥質の原地盤よりも多くメバルなどの摂餌対象の種が多く認められた.以上より,製鋼スラグマウンドの藻場・魚礁としての有用性が示唆された.今後,効果の継続性を明らかにする必要がある.
  • 川端 雄一郎, 岩波 光保, 加藤 絵万
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_400-I_405
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     近年,産業副産物として排出されるスラグ細骨材の有効利用拡大が求められている.スラグ細骨材のさらなる有効利用拡大のためには,スラグ細骨材を大量混合したコンクリートを,品質改善を行わずとも要求性能を満たすことが可能な構造物に適用することが必要であると考えられる.本論は,品質改善を行わずにスラグ細骨材を大量混合したコンクリート(HVSAコンクリート)の港湾の無筋コンクリート構造物への適用性について検討したものである.その結果,ブリーディングが0.5cm3/cm2以下であれば,ブリーディングがHVSAコンクリートの力学特性に及ぼす影響は小さく,また長期耐久性も普通コンクリートと同等であることが確認された。これらの結果から,ブリーディングが0.5cm3/cm2以下であれば,HVSAコンクリートを港湾の無筋コンクリート構造物に適用可能であると考えられた.
  • 山崎 智弘, 澤田 豊, 横井 敦
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_406-I_410
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     サンドマスチックは遮水性に優れており,管理型処分場などにおける異質材料間の接合部や目地部での変形追随性遮水材として利用されている.本研究では,温度と載荷速度がサンドマスチックの強度に与える影響について,系統的に三軸圧縮試験を実施し評価した.試験の結果,高温,低ひずみ,遅変位速度,高ストレートアスファルト配合で強度低下し,土質材として強度設定する場合はC材として評価すべきことを明らかにした.また品質管理試験の圧縮強度基準値1000kN/m2(10℃,20mm/min)と,現地環境実力値1~10kN/m2(26℃,0.5mm/min)は大きく乖離していることを示唆し,土質材として強度設定する場合は注意が必要であることを指摘した.また品質管理試験の実施には温度管理が重要であることを示した.
  • 森川 嘉之, 桑原 拓馬, 早野 公敏, 高橋 英紀
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_411-I_416
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     近年,沿岸域において人工海浜を造成することが多く検討されているが,海砂の供給が困難になりつつある.一方で,港湾地域における航路浚渫土,特に粘土・シルト系の浚渫土は,新たな利用方法が求められている.粘土・シルト系の浚渫土を利用する場合の改良技術の一例として,浚渫土にセメントと含水比低下材を混合して砂礫程度の粒径の土に改良する技術が挙げられる.この方法で改良された浚渫土(以降,造粒固化土と呼ぶ)は一定の強度を持つ粒状体を成し,軽量で透水性が高い.このため,造粒固化土を人工海浜に適用した場合,長期間の圧密や覆砂の潜り込みの問題を回避でき,波浪に対する表層材の安定性も高いと考えられる.そこで本研究では,波浪作用時の海浜の挙動に関する遠心模型実験を実施し,造粒固化土の人工海浜材への適用性を検討した.
  • 熊谷 隆宏, 高 将真, 安田 淳一, 濱谷 拓, 貞山 直毅, 小野 大和
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_417-I_422
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     軟弱地盤内にドレーンを打設後,吸引装置である真空ポンプによって地盤内に負圧を作用させて圧密改良を行う地盤改良工法は,真空圧密工法として知られている.真空圧密工法による圧密改良効果は吸引装置による作用負圧に依存し,一般に真空圧密工法では,真空ポンプを備えた減圧室における作用負圧は,完全な真空状態の負圧が-100kN/m2であるのに対して,-70~80kN/m2程度が限界である.本研究では,鉛直管内を液体が流下する時に現れるサイフォン機能を利用して作用負圧をさらに高めることにより,真空圧密工法の地盤改良効果を高める方法を提案する.鉛直管内で気液二相流を形成させる条件に関して検討を行い,鉛直管の径の適切な設定方法を明らかにするとともに,提案方法の圧密改良効果を室内および現地実験により検証した.
  • 稲富 祐太郎, 善 功企, 陳 光斉, 笠間 清伸
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_423-I_428
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     地盤の液状化対策の一つとして,事前混合処理工法のように地盤内に固化材を混合することで,液状化強度を向上させる工法がある.このようにして改良した液状化対策地盤は,固化材の混合の不均一性および対象地盤の土質の不均一性などが要因となり,せん断弾性係数や液状化強度に空間的不均質性を有する.このような空間的不均質性に起因して地震時に局所的な液状化が発生し,地盤の支持力や破壊モードに影響すると予想される.そこで本文では,空間的不均質性に起因して生じる目標改良強度を下回る地盤の空間占有率に着目し,液状化対策地盤の液状化リスク分析を行った.
  • 堺谷 常廣, 高橋 充, 木内 大介, 野口 孝俊
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_429-I_433
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     東京国際空港D滑走路プロジェクトは、現空港の沖合いに4本目の滑走路を新しく建設する工事である。D滑走路の基礎は軟弱地盤である。そのため、圧密による強度増加を期待した設計を採用した。そのため、地盤の強度を正確に把握することは非常に重要である。RI-CPTは、地盤の強度管理のために採用された。この論文は、RI-CPTの調査方法について述べるものである。また、その調査結果について記述した。この調査法によりD滑走路は41ヶ月で完成した。
  • 山崎 宏和, 山田 耕一, 羽田 晃, 道中 彰, 梅田 諭, 渡部 要一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_434-I_439
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     平成10年6月に,「一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令」(総理府・厚生省共同命令)が改正され,最終処分場の遮水工に関する基準が強化・明確化された.その結果,陸上,海上を問わず,新たに建設される管理型最終処分場はこの改正命令を満足する遮水構造が必要となった.筆者らは,これらの問題を解決するべく,海面処分場に用いる新しい遮水材料の開発に取り組んでおり,浚渫粘土とベントナイトを混合した変形追随可能な粘土遮水材料を提案している.本論文では,鉛直遮水壁に土質遮水材料を適用した海面処分場の実施工において実施した,土質遮水材料の配合設計手法や施工法,品質管理手法について報告する.
  • 山下 祐佳, 善 功企, 陳 光斉, 笠間 清伸
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_440-I_444
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     浚渫土の効果的な減容化や再資源化の方法が考え出されている.著者らの研究グループでは, 浚渫土に脱水固化処理を施すことで,大型の高強度構造体を作製し,消波ブロックや根固めブロックとしての利用を試みている.本論文では,大型脱水固化装置を用いて作製した大型浚渫土ブロックの脱水特性の把握および均質性と強度特性の評価を行った.得られた主な結果を以下に示す.(1)大型浚渫土ブロックの均質性向上には,脱水終了時間の短縮が有効と考えられる.(2)大型脱水固化装置を用いて作製したブロックは,固化材添加率を調整することにより,コンクリートに匹敵する強度を有する浚渫土ブロックが作製できる.(3)一軸圧縮強さの増大には,セメントの固化反応が深く関係しており,その関係性は,水セメント重量比を用いてあらわすことができる.
  • 松見 吉晴, 青野 利夫, 長田 慶一, 片上 智之, 原 洋平, 関根 信寛, 高瀬 和彦
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_445-I_450
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     人工海底山脈は,深層水の富栄養塩水塊の湧昇流効果による生産性の高い漁場造成を目的に,土運船を用いて大量な石材投入によって築造される.従って,効率的な施工には投入前の堆積形状予測と投入座標算出,投入時の流れによる投入材の移動変位を考慮した投入位置管理が要求される.著者らの堆積形状予測モデルは,現場での堆積形状に関する実測結果と概ね一致するが,人工海底山脈の最終施工段階における斜面部の造築の際に,予測結果の斜面勾配がたち過ぎる傾向にある.本研究は,まず堆積形状予測モデルにおける多点多数回投入時の堆積斜面勾配が投入石材の安息勾配以上になる問題を改良し,ついで,これまでの石材による人工海底山脈の施工を対象に,著者らの石材投入工法管理システムの現地適用性を検証したものである.
  • 横田 華奈子, 織田 幸伸, 本田 隆英
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_451-I_456
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     汚濁底泥対策の一つに覆砂工法が挙げられる.従来工法では砂を海上やトレミー管を通じて直接投入している。これらは施工が簡便であると考えられるが,(1)濁りの発生,(2)覆砂厚の不均一性,(3)施工効率の向上,の3つの課題がある。これらを解決するための新たな覆砂工法を考案した。覆砂装置にスラリーが注入されると,断面が漸拡しており,砂粒子の速度が減少する。落下時には,砂粒子の水平及び鉛直速度がほぼ0となるため,濁りを抑制することができる。砂粒子が排出される覆砂装置の開口部は粗い網で覆われている。この網によって,装置の内外の流れを砂粒子の動きを阻害することなく分離することができる。模型実験を行い,開発した装置により薄層で均一に覆砂可能であることを示した。
  • 武田 将英, 山田 良平, 中澤 慎一, 五明 美智男, 篠原 邦彦, 上野 雅明
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_457-I_462
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,薄層覆砂における堆積特性の把握を目的とする現地調査を実施した.調査では,覆砂厚への主要な支配要因と考えられる投入材料,投入方式,投入時の水面衝撃の有無,1投当たりの投入時間を変化させた.その結果,バックホウによる直接投入では,湿潤状態にある浚渫砂は,投入時間が長いほど投入直下に堆積しやすく,ばらつきも小さくなる傾向が見られた.一方,表乾状態の山砂では,投入時間の長短に関わらず堆積厚及び変動係数はほぼ同じであった.計画覆砂厚が薄くなるほど,堆積厚の変動係数が大きくなる傾向が顕著に見られ,薄層覆砂では出来形のばらつきが大きくなることが分かった.覆砂工事での出来形管理では,計画覆砂厚より薄いことを許容しない場合が多く,薄層覆砂では,覆砂材料の割増を多く設定する必要があることが分かった.
  • 増田 龍哉, 御園生 敏治, 櫨本 麻菜美, 重石 光弘, 浪平 隆男, 滝川 清
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_463-I_468
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     近年,有明海や八代海では赤潮の頻発化や大規模化,貧酸素水塊の発生といった海域環境の悪化に伴う諸現象が顕在化し,大きな社会問題となっている.特に,アサリは急激な漁獲量の減少が問題となっており,水産庁や沿岸各県などによって覆砂等の対策事業が行なわれている.しかし,覆砂材とする天然砂が不足しているのが現状である.本研究では水中パルスパワー放電法により廃コンクリートから再生細骨材を回収し,覆砂材としての適用性を検討するために,アサリを用いたバイオアッセイ試験を行った.その結果,パルス再生細骨材に含まれるモルタル分を除去すれば,生態への影響は少なく,覆砂材への適用可能と考えられる.
  • 村上 和仁
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_469-I_474
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,東京湾沿岸に位置する前浜干潟(三番瀬),河口干潟(盤洲干潟),潟湖化干潟(谷津干潟)を対象として,干潟環境の保全に供する基礎的知見の蓄積を目的として,水環境健全性指標による干潟環境の評価における問題点と干潟の形状による評価結果への影響について検討をおこなった.
  • 古谷 貴洋, 山本 浩一, 速水 祐一, 濱田 孝治, 吉野 健児, 関根 雅彦
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_475-I_480
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     有明海の干潟にて懸濁物質の長期的なデータ観測を行い、長期的なSSの輸送特性について考察した。係留観測の超音波流向流速計から得た、反射音響強度と流速データからSSフラックスを計算した。また、毎月1度の採泥調査によってせん断強度の鉛直分布を得た。干潟では梅雨時期以外、常にSSが堆積する傾向にあった。浅海域では梅雨時期は干潟からのSSが、ノリ漁期(1月、2月)は沖合のSSが堆積していた。SSフラックスの観測結果と軟泥の堆積状態が整合していたことから、係留観測と採泥調査の結果は整合していたことがわかった。
  • 松尾 幸平, 増田 龍哉, 御園生 敏治, 五十嵐 学, 森本 剣太郎, 滝川 清
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_481-I_486
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     近年,有明海では干拓や高度経済成長期の港湾施設等の造成により,干潟底生生物の生息場が失われてきた.そのため生物多様性の高いとされる沿岸干潟域では生物多様性が低くなっている.そこで,有明海の沿岸干潟域に生物多様性の高い場を回復させるために,海辺の自然再生を目的とした現地実証試験が行われている.しかし,海辺の自然再生を行う場合の包括的目標の設定において,指標種の選定が困難となっているのが現状である.また,有明海では底質環境の悪化も問題となっており,その対策工の実施が求められているが,干潟域の底生生物を指標として栄養性(トロフィ性)や汚水性(サプロビ性)等の評価を行えば生物相からその実施場所の選定が可能となる.そこで本研究では,有明海の干潟域における地形,底質,底生生物調査結果から,自然再生で指標となりうるレッドデータブック記載種等の重要種や注目種の生息環境を調べるとともに,栄養性と汚水性を判断するための指標化を試みた.その結果,自然再生の際に指標となる希少種や特産種は中潮帯から高潮帯の泥質に生息していることが分かった.また,汚濁に耐えうる種は低潮帯から中潮帯の砂泥質,泥質の場所に多く見られた.
  • 大谷 壮介, 上月 康則, 山中 亮一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_487-I_492
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では東京湾では絶滅したといわれているヘナタリの分布特性および個体群動態といった生活史を明らかにすることを目的に,徳島県勝浦川河口干潟において調査研究を行った.ヘナタリが生息していた物理的な底質環境項目に着目して,粒度組成および地盤高さの定量化を行った.さらに,6年間の毎月調査より,干潟には少なくとも2~3つのヘナタリの個体群が存在し,夏期に大きく成長すると同時に新規加入個体群が確認され,個体群密度は最大で246個体/m2であった.ヘナタリのP/B比は0.37~1.26で変動し,他の腹足類に比べると低く,世代交代の入れ替わりが遅いことがわかった.また,P/B比を用いて生態系の詳細な機能解析を行うことは場合には注意しなければならないことがわかった.
  • 佐々木 奈々, 梅田 悠輔, 野嵜 勝己, 村上 和男, 桑江 朝比呂, 三好 英一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_493-I_498
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     東京港野鳥公園干潟における栄養塩のフラックスの算定結果から,干潟内ではリンの生産および窒素の消費がなされているという結果が得られている.この要因は幾つか挙げられるが,窒素に関しては底泥中の脱窒によるものが大きいと考えられる.そこで,窒素の安定同位体を用いて干潟堆積物からの脱窒およびアナモックスの測定を行った.測定は改訂安定同位体法(r-IPT : revised IPT)を用い,2010年6月,8月,12月の3回実施した.測定の結果,東京港野鳥公園干潟の堆積物からの脱窒,アナモックスの速度は,最も低くて112μmol-N/m2/hであり,最も高くて935μmol-N/m2/hであった.このことから脱窒,アナモックスが東京港野鳥公園干潟における窒素消費に大きく影響していると考えられる.
  • 岩尾 大輔, 五十嵐 学, 増田 龍哉, 御園生 敏治, 滝川 清
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_499-I_504
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     近年,有明海では底質の泥化・嫌気化といった底質環境の悪化が顕在化してきており,有効な対策の実施が求められている.そこで筆者らは,水位差や潮流を利用し,堆積物内部へ酸素を豊富に含んだ海水を供給することで底質の改善を図る「人工巣穴」を考案した.本研究では,2009年6月から現地実証試験を行なっている改良型人工巣穴の底質及び生物の追跡調査のうち,既報の設置6ヶ月後までの結果に対して新たに設置14ヶ月後までの結果を加えて考察を行なった.さらに,本研究で得られた知見と今後の課題を踏まえ,人工巣穴の実用化に向けた検討を行なった.そのうち,課題であった現地における人工巣穴の設置間隔については,浸透流解析を用いた人工巣穴の底質改善効果が及ぶ影響範囲の推定結果より検討した.底質環境の悪化した場所に改良型人工巣穴を設置することにより有機物の堆積しにくい場が形成され,有機物及び硫化物の改善効果がみられた.改良型人工巣穴は,生物着床基盤としての機能を有することが確認された.浸透流解析により,アクリルパイプの長さ100cmの多孔性タイプを埋め込み深さ50cmで設置することによって,1基当りの底質改善が及ぶ影響範囲は本解析中最大となり,その水平方向の面積は0.25m2であった.
  • 日比野 忠史, 藤原 哲宏, 田多 一史, 中川 保夫
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_505-I_510
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     有機泥は,湾内の流れによって動いている.それは,上げ潮期に河川を遡上し,干潟の河床に着底する.もし,有機泥の浄化能力が小さい場合,干潟のヘドロ化が進行する.その着底した有機泥は,環境悪化と水辺の景観機能の低下を招く.そこで,廃棄物リサイクル品を用いた環境改善技術を提案する.大きな空隙のある溝を堆積泥内に埋設する.それは,潮の干満によって溝の中に水循環を生起させることができ,堆積泥内に酸素を供給することによって,生物生息環境を改善する.
  • 井上 省吾, 西野 博史, 木村 道夫, 日比野 忠史, 首藤 啓
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_511-I_516
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     ヘドロが堆積する汚濁した海域において, 石炭灰造粒物の海底被覆による海域環境の改善効果を検証する現地実験を行なった. 実験場所は, 広島湾の奥に位置する海田湾であり, 被覆層の厚さを変えた3ケースの実験場所を施工した. 実験開始から約半間において, モニタリング調査を行い, その結果に基づき改善効果について評価した. 水質, 底質, 被覆層間隙部, 及び生物の調査より, 石炭灰造粒物が浮泥抑制効果があること, ヘドロの分解に寄与する可能性が高いこと, 硫化水素の解消などの水質改善によって生物生息に適した環境に変化したことなど, 海域環境の改善効果が認められた.
  • 日比野 忠史, 三戸 勇吾, 齊藤 直, 木村 道夫
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_517-I_522
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     広島湾奥部のヘドロ化した海域において石炭灰造粒物をヘドロ上に散布し,造成した高間隙層の浄化能力の評価を行った.造粒物層(高間隙内でのヘドロ浄化層)における有効間隙の保持期間の予測モデルを構築した.有機泥の堆積過程のモデルに用いたパラメータは現地調査および室内実験結果から求められた.施工5ヶ月後に現地で得られた結果は間隙量が施工直後よりも多くなっており,侵入有機泥が分解される以上の現象が造粒物層内で起こったことがわかった.
  • 末次 弘道, 三戸 勇吾, 木村 道夫, 日比野 忠史
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_523-I_528
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     海田湾における実証試験の施工直前直後の調査結果から、石炭灰造粒物のめり込み量を評価するとともにその予測手法を考案した。
    石炭灰造粒物のめり込み量は3cmから7cm生じており、散布層厚に依存しないことが明らかとなった。このことからは、最初に7cmの層厚分の石炭灰造粒物を海底へ散布し、その後、必要な層厚分の石炭灰造粒物を散布することで、めり込み量が最小なることが実証された。
     石炭灰造粒物のめり込み量は施工前の含水比と強い関連性が見られ、施工前の表層の含水比と含水比の鉛直プロファイルから、石炭灰造粒物のめり込み深度を予測することが可能になると考えられた。加えて、より簡便にめり込み量の予測を得るため、柱状採泥した試料に錘を落とすことで石炭灰造粒物の海底落下状況を再現し、めり込み量の予測値を得る手法を開発した。
  • 三上 貴仁, 柴山 知也, 武若 聡, ESTEBAN Miguel, 大平 幸一郎, ARANGUIZ Rafael, VILLAGRAN ...
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_529-I_534
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     2010年2月27日3時34分(現地夏時間),チリ中部沿岸でMw8.8の地震が発生し,この地震に伴って発生した津波は,チリ沿岸の広範囲にわたって被害をもたらした.本稿では,チリで行った現地調査と沿岸の海底地形に注目した分析をもとに,チリでの被災実態を明らかにした.浸水高さは広い範囲で4-10m程度であり,遡上高さは最大で20mを超えていた.沿岸域の大陸棚上や湾内にトラップされた津波が,場所によっては4時間以上の長時間にわたって何度も襲ってきた.地震の規模が大きく揺れが大きかったため,住民にとって具体的に津波の来襲を感じることができたことや,1960年チリ地震津波,2004年インド洋津波を契機として,沿岸で生活する住民の間に津波に関する知識が広く行き渡っており,多くの住民が高台に避難したことが,被害軽減につながった.
  • 辰巳 大介, 富田 孝史
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_535-I_540
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,GPS波浪計・DARTブイ・チリ沿岸の検潮所が観測した津波波形を利用して,インバージョン手法により2010年チリ地震津波の津波波源を推定することを目的とする。地震波の逆推定に基づく津波波源を使用した津波数値計算では,GPS波浪計・DARTブイ・震央の北側の検潮所において計算結果が観測値よりも早く到達し,震央の南側の検潮所において計算結果が観測値よりも遅く到達する,という課題が見られた。本研究が津波観測波形から推定した津波波源は,地震波の逆推定に基づく津波波源よりも南米大陸側に寄り,また南側に寄った。この結果,津波観測波形の逆推定に基づく津波波源を使用した津波数値計算では,計算結果と観測波形の一致度が向上した。
  • 川上 哲太朗, 川崎 一平, 山田 吉彦
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_541-I_546
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     漁業者は漁港近くに居住し,生活の経済的基盤を漁船,海面養殖施設等に依存しており,津波の被害を受けた場合,生命の危険と生活及び経済的基盤への影響は甚大なものとなることが容易に予測される.したがって,津波に対する漁業者の避難行動や漁船等の対策行動は重要な課題であると考えられる.そこで,2010年チリ地震によって静岡県沿岸に発令された津波警報に対して,静岡県内漁業関係者の避難行動や漁船等の津波対策行動に関するアンケート調査を実施した.本研究では調査結果に基づき,津波来襲の危険に対し漁業者の津波に対する避難行動や対策行動と,その判断要因や発表された警報や津波情報に対する意識等について分析を行い,今後の漁業者および漁港に対する現実的な津波対策計画の策定を目指すものである.
  • 杉本 晃洋, 大年 邦雄, 石垣 泰輔, 島田 広昭
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_547-I_552
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     現在進められている津波防災対策は地域住民を主体としている.それゆえ,多くの観光客が訪れる海水浴場では防災対策の効果が十分ではない.津波が到達するまでの短時間に迅速な避難を促すために津波に対する危機意識や知識を海水浴場利用者が持つ必要がある.この研究では,近い将来高い確率で発生するとされている南海・東南海地震による津波被害が大きいと考えられている5つの海水浴場で海水浴場利用者の津波防災意識を調べるためにアンケート調査を行った.研究の結果,防災教育や防災対策の違いとともに津波による被害がなかった阪神淡路大震災の経験が津波防災意識に影響を与えていることがわかった.
  • 柿沼 太郎, 山下 啓, 帖佐 繁明, 藤間 功司, 中山 恵介
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_553-I_558
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     変分原理より得られた非線形波動方程式系に基づく数値モデルを適用し,津波の生成・伝播の1次元数値解析を行ない,津波の生成や伝播に対する流速分布及び密度成層の影響を調べた.津波の生成に関して,底面隆起の速度及び加速度が大きい場合,非線形浅水方程式系を適用すると,津波のtailに発生する短周期波が再現されない.一方,津波の伝播に関して,非線形浅水方程式系を適用すると,津波の第1波の津波高さが過大となり,また,長距離伝播において,全長が比較的長い波群が形成される現象が再現されず,長距離伝播後の第1波の波長が初期水面形の波長に依存しなくなるという現象が再現されない.海洋の密度が2層に分布している場合,1層の場合よりも津波の波高が大きくなるが,対象とした程度の密度分布は,津波の到達時刻に殆ど影響しない.
  • 中村 友昭, 田邊 卓, 水谷 法美
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_559-I_564
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,砂地盤上に置いた非固定の矩形構造物を対象に,遡上津波の作用に伴って構造物の周囲に生じる洗掘の特性を水理実験により考究した.また,戻り流れの影響を考慮する必要性を確認するために陸域に反射板を設置した水理実験を行い,遡上津波とその後の戻り流れにより生じる洗掘の特性を検討した.その結果,戻り流れの有無に関わらず構造物の沖側隅角部周辺が最も大きく洗掘され,その無次元最大深さは入射津波の無次元越流高と構造物の無次元根入れ深さにより評価できることを明らかにした.また,陸域からの戻り流れによって構造物の沖側隅角部だけではなく岸側隅角部周辺にも洗掘が生じることに加えて,戻り流れによる岸側からの流体力も作用することから,構造物の移動を評価する際には戻り流れを考慮した検討が不可欠であることを示した.
  • 澁谷 陽, 新井 信一, 高橋 敏彦, 相原 昭洋
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_565-I_570
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     沿岸地域の平野部では遡上津波により住宅が被害に遭う危険性がある.このような被害を低減するために,ある程度以上の力が加わったときに1階部分の壁が壊れて柱だけになる住宅は実現可能な案であり,そうすることにより主要な津波の力を逃がすことができ,2階が無事残り,主要な財産を守ることが可能となる.ここでは,孤立波による漂流物が柱に衝突力する場合の力積が計測され,漂流物の付加質量に変換されている.衝突の位相で力積と付加質量は変化するが,力積はおよそ波高の頂点で最大となり,そこでは付加質量係数が1.0となる.これにより,もし漂流物の衝突速度を求めることができれば,住宅などの構造設計上必要な漂流物による衝突力の力積を求めることが可能となる。
  • 林 建二郎, 斉藤 良, 浅野 敏之, 浦島 三朗
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_571-I_576
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     円柱群、模型樹木ならびに小型実樹木等に作用する抗力の直接計測を力計を用いて行った。樹木に作用する主流速度が増加するにつれて樹冠部の投影面積が減少する結果、抗力係数はRe数の増加に伴い減少することを確認した。これら抗力係数のKC数とFr数に対する変化特性も計測された。海岸林を通過する段波のエネルギ消費量を、段波流速の実計測と海岸林の抗力係数より算定した。この損失エネルギ-を考慮し計算した海岸林内の水深と、その実測値との一致は良好であった。
  • 浅野 敏之, 植村 潤一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_577-I_582
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     環境保全と防災を両立させる津波対策として海岸林の活用が注目されている.沿岸部に位置する海岸林は,その地域の自然・景観・文化の大きな構成要素となっている.海岸林が地域の景観・環境に貢献するとともに,その存在が津波防災効果を持てば,たいへん望ましいことである.本研究は, 上述の観点から海岸林の持つ津波防災能力を, 海岸林の林帯幅や地形条件などの客観的データから評価しようとした.わが国の代表的な海岸林で津波災害が危惧される地域のものを選定し,それぞれについて地盤標高や海岸林の規模と位置,背後地の状況を調査した.中央防災会議や各自治体によって公開されている想定地震津波の津波高さと,その地の海岸林の林帯幅や地盤標高を比較・検討し,個々の地域の海岸林が持つ津波防災能力の評価を行った.
  • 安野 浩一朗, 森屋 陽一, 西畑 剛
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_583-I_588
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     巨大地震津波により,浸水被害,津波波力による家屋や構造物の損傷,流出,人的被害などの発生が予想されるとともに,船舶や車等の漂流物による衝突災害の発生が指摘されている.近年,拡張個別要素法や粒子法を用いての船舶,コンテナ等の漂流挙動や衝突状況に関する研究が多くなされており,漂流物の基本特性や衝突力などについて多く検証されている.しかしながら,既往の研究は極めて精緻な計算を用いているため,津波被害を想定する上で必要な広領域の計算には不向きである.また,漂流物の挙動解析は領域毎の流体場の計算結果に準じる副次的な評価となることや,各流体場への到達時間や初期位置の若干の違いが漂流挙動全体へ大きな相違を招く傾向があることなどから,被害想定の特定は困難となりがちである.本研究では,これまで筆者らが提案した個別要素法と漂流物を剛体要素として解析する計算負荷が小さい解析手法を用いて気仙沼大川北部地点を対象に検討を行った.解析においては,津波流体力による漂流物挙動の不確定要素を組み込んだ手法を用いた広領域計算を行うとともに,漂流物による被害評価において構造物の性能設計に反映可能な確率的評価手法を新たに提案することを目的とした.
  • 岡本 修
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_589-I_594
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     東海地震,東南海・南海地震等,大規模な海溝型地震に伴う津波発生の切迫性が指摘されている.本研究は,津波時の港内船舶の安全性を向上させるための方策を検討・提案するとともに,船舶の被害軽減に見合った適正なハードへの投資規模について検討するものである.なお,船舶の安全性向上に関する方策を体系的にとりまとめた事例はこれまでに見当たらないのが現状である.
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