土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
67 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.27
  • Usman FADLY, keisuke MURAKAMI
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_595-I_600
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     社会インフラが十分に行き渡っていない途上国において防災施策を推進する場合,どの防災戦略を優先的に選択すべきかを事前に決定することは,効果的な事業の実施において極めて重要なステップとなる.本研究では,インドネシアのパチタン市の4つの村を対象に現地調査を実施し,SWOT分析を用いて効果的な防災戦略の探索を試みた.分析結果より,当該地域の防災戦略としてRapid Growth Strategyが最も相応しいことを示すとともに,その具体的な取り組み方針として公的施設の一時津波避難場所としての利活用と,都市周辺地域の街路ネットワークの確保が重要であることを示した.さらに,その方針に沿って,現状の避難施設の配置や避難路の確保状況が避難可能範囲に及ぼす影響を評価した.
  • 増田 光一, 居駒 知樹, 小泉 佐和子, 増田 光弘
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_601-I_606
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     津波被害に対するソフト対策の一つである津波ハザードマップは全国の市町村において整備が進んでいる.特に地震とそれに伴う津波の被害が懸念される太平洋沿岸域で作成が進んでおり,その内容は陸域の浸水予想域を掲載した津波浸水予測図が主たるものである.これらは,シミュレーション結果を示す位置づけにあり,対象者である住民の危険意識への働きかけには適していない場合があると考えられる.また,船舶被害や漂流物による被害といった海域の情報を掲載したハザードマップは極めて少なく,整備が進んでいないという現状もある.そこで,本研究では津波来襲時の港湾物流機能の維持とそれに対する対策を検討するための海域津波ハザードマップの開発を目的とする.清水港をケーススタディに操船者と港湾管理者を対象とした
  • Mohammad Bagus ADITYAWAN, Hitoshi TANAKA
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_607-I_612
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     長波の数値計算には浅水流方程式を用いることが多い.この際,抵抗則にはマニングの粗度係数などの定常流の知見を援用するが,非定常性が卓越する場においてはこのような手法の精度が十分でないと考えられる.そこで,著者らは浅水流方程式とk-ωモデルを連立させて解く手法を提案している1).ただし,前報の数値計算では非砕波のケースに限定されていた.そこで,一様斜面上を遡上する砕波を伴う孤立波を対象に,前報のモデルにShock Capturing Schemeを組み合わせたモデルを開発した.数値計算の結果,本モデルにより遡上波の波形,遡上高さを精度良く計算できることが分かった.また,底面せん断力の経時変化は流速の二乗と異なる波形を示し,マニングの粗度係数では表現できない変化特性を示すことが明らかになった.
  • Bambang WINARTA, Hitoshi TANAKA
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_613-I_618
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     孤立波に伴う底面境界層に関する水理実験を行うための装置を考案し,その基本特性の検討を行った.土砂移動や波高減衰に大きく関わる底面せん断力の変動については,加速位相において層流解と良い一致を示すものの,減速期には大きく外れることが明らかになった.これは,減速期の乱流への遷移によるものである.一方,津波の抵抗則として多用されるマニングの粗度係数を用いた算定結果は,せん断力の波形・大きさのいずれも実験値から大きく外れていることが確認された.さらに,境界層厚さ,摩擦係数の実験結果は,Sumer et al.2)の実験結果やVittory & Blondeaux9)によるDNSの結果と良い一致を示すことが確認された.今後,孤立波による土砂移動の実験などに応用することが可能である.
  • 木村 雄一郎, 柳 浩敏, 森西 晃嗣, 森 信人, 間瀬 肇
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_619-I_624
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     フラップゲートは、通常海底に倒伏し、津波あるいは高潮の発生が予測される際、浮力によって水面まで浮上し港口を短時間で閉鎖できる可動式の防波堤である。従来の水理模型実験により、津波に対するフラップゲートの防災性能が確認されている。本研究では、流体と構造体との連成運動を取り扱う数値解析モデルにより、段波津波に対するフラップゲートの応答特性を検証する。数値解析の結果、衝撃力を緩和するための流体抵抗板を備えたフラップゲートの運動を良好に評価することができ、実機設計のための有用なデータを得ることができた。
  • Indradi WIJATMIKO, keisuke MURAKAMI
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_625-I_630
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     沿岸域には石油や危険物を貯蔵するための施設が数多くある.これらの施設には,内容物の外部への漏洩を防ぐ目的で防油壁などの施設を構造物を取り囲むように付帯させることが義務付けられている.これらの付帯施設は,津波浸水時の本体構造物周辺の流況に強く影響を及ぼし,構造物に作用する流体力や周辺流速を大きく変化させることが予想される.このような流体運動場の変化を適切に把握することは,構造物の安定性を評価する際に極めて重要である.本研究では,波と構造物の相互干渉解析手法の一つとして開発された数値波動水路(CADMAS-SURF/3D)を用い,3次元構造物(本研究では円筒構造物)に作用する流体力と周辺流場の特性を検討した.
  • 小竹 康夫, 金澤 剛, 山崎 圭, 松村 章子
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_631-I_636
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     起伏式天端を有する津波・高潮減災構造物を提案し,水理模型実験で性能を確認した.その結果,高波浪に対しては天端を固定した場合に比べて越波量が0.3倍程度となり,津波を模擬した水位上昇に対しては,起伏式天端を鉄筋コンクリートより軽量な部材で製作することにより,浸水時間を遅延する効果があることが分かった.
  • Nyein Zin LATT, Takayuki NAKAMURA
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_637-I_642
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,従来,制御することが難しいとされてきた超長周期波を対象にして,港口部あるいは湾口部に設けた波浪共振装置による制御効果を主に理論的に検討したものである.この際,超長周期波としては,揺り返し周期が20~30分程度の津波を想定した.算定では,現地のリアス式湾を簡単化したものを対象として,現状でよく利用されている突堤形式の津波防波堤や,これを二重構造にした矩形共振装置型防波堤およびこの装置に付加的な平行堤を設けた新型堤を湾口部に設けることによる湾内津波高の低減効果などを比較検討した.その結果,新型堤は津波の揺り返し周期が比較的長い条件下でも優れた効果が発揮できることなどが判明した.
  • 國松 靖, 田村 節雄, 芝 清久, 小原 恒平, 金正 富雄, 田代 徹, 内山 一郎, 鈴木 雄太
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_643-I_648
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
      In tsunami disaster, not only direct damages by run-up wave but also indirect damages like collision caused by drifted bodies such as boats, automobiles, containers, lumbers, etc. may occur. It is important to set up the facility against drifted lumbers to reduce damages.
      In this study, we conducted the field experiments and the numerical calculations in order to investigate the characteristics of the protective performance of the facility for collision lumbers.
      As the result of the field experiments and the numerical calculations, we come to the conclusion that it was necessary to review K-value in the equation of Ellinas and the elastic coefficient of wire-rope.
  • 三上 信雄, 浅川 典敬, 藤田 孝康, 岡野 崇裕, 水野 敏雄, 笠井 哲郎
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_649-I_654
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     漁業地域における主要沿岸構造物である漁港施設は,膨大な既存ストックを有していることからその老朽化が懸念されている.そのため,既存施設の耐久性の向上・延命化に努め,ライフサイクルコストの低減を図るストックマネジメントの導入が求められている.本論では,漁港施設にストックマネジメントを適用するための課題・問題点に関して,現場での取組状況を踏まえて整理するとともに,今後の対応方向について論じた.さらに,漁港施設に対するストックマネジメントの円滑な導入に資するため,点検・調査データを蓄積・活用,施設の劣化状態の適切な診断,合理的な劣化予測と適切な対策工法の選定,ライフサイクルコストの算定と平準化,といった一連のストックマネジメントの行程を体系化した漁港施設ストックマネジメントシステムを提案した.
  • 加藤 絵万, 川端 雄一郎, 岩波 光保
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_655-I_660
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     著者らは,係留施設の利便性および利用上の安全性が失われることを係留施設の機能低下と位置付け,エプロンや附帯設備等の変状が施設の機能低下に及ぼす影響を定量的に評価する手法の構築を目指している.本稿では,変状が生じた場合,船舶の接岸に及ぼす影響が懸念されるものとして,岸壁法線,防舷材,係船柱を,荷役作業の安全に及ぼす影響が懸念されるものとして,エプロンおよび車止めを取り上げ,各部位・部材および設備(以下,設備等と称する)の変状と施設の機能低下の関連について,港湾施設管理者(以下,管理者)および利用者を対象として行ったアンケートによる実態調査の結果を報告する.また,実態調査の結果を基に,係留施設の機能低下の定量評価手法の構築に向けて解決すべき課題についてとりまとめた.
  • 岩波 光保, 加藤 絵万, 川端 雄一郎
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_661-I_666
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     実構造物の保有性能を定量的に評価するには,高度な専門知識を要する詳細調査が必要となる.しかし,全ての部位・部材について詳細調査を行うことは労力や費用の面からも困難であり,現状では,全ての部材について外観上の不具合を目視により調査し,これを劣化度に置き換えて,部材の保有性能の評価指標として用いている.そこで,本研究では,長期間供用された既設港湾構造物から切り出した鉄筋コンクリート(RC)部材を対象として,外観上の不具合から確率論的に部材の保有性能を評価する手法を構築した.そして,この手法を用いて,既存の桟橋10施設の上部工の保有性能を評価し,施設の対策優先順位を決定するための手法について提案した.
  • 菅原 吉浩, 山之内 順, 上久保 勝美, 山本 泰司, 岩田 真
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_667-I_672
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     高波浪が来襲する防波護岸における防砂シートの耐久性と対策工の効果を明らかにするため現地実験を実施した。その結果、3m以上の有義波高が作用する時に技術基準上の最低規格の防砂シートだけでは損傷が発生するが、粒径の小さい砕石によりフィルター層を併用することにより損傷防止効果が確認された。また、通常のシートに比べ質量が2倍、伸び率が3倍大きいシートでは、フィルター層を設置しなくても損傷が全く発生しなかった。このことから、防波護岸のような波当たりの強い場所においては、最低規格の防砂シートでは波に対する耐久性が不十分であり、シートの強度を上げる等の対策が必要である。
  • 武田 将英, 魚住 健治, 重松 孝昌, 津田 宗男, 羽渕 貴士, 網野 貴彦
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_673-I_678
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究は,鉛直壁に波が衝突した際の飛沫の発生過程について,高速度カメラを用いた可視化を行い,画像解析によって得られた飛沫個数・飛沫径などの飛沫の特性量と,作用波諸元が特性量に与える影響について検討を行った.検討の結果,飛沫発生の有無は,一様水深部におけるアーセル数によって区分できた.次に,飛沫発生個数に着目すると,いずれも無次元時間t*=0.15までにピークを迎えるが,飛沫個数や飛沫個数が急増する時刻やその増加率は,作用波の諸元によって大きく異なった.また,飛沫径に着目すると,作用波にかかわらず,飛沫径最頻値は0.002~0.003mであり,抜山-棚澤分布に従うことが分かった.
  • 石川 仁憲, 岡辺 拓巳, 堀口 敬洋, 青木 伸一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_679-I_684
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     静穏時の海は海水浴などのレクリエーションに適しているが,利用者が居ない荒天時と比べて溺水事故が発生する可能性は相対的に大きくなる.本研究は,溺水事故防止の観点から静穏時の離岸流発生メカニズムを明らかにすることを目的とし,静岡県相良海岸における2週間の波・流れの観測結果にサーファーやライフセーバーの知見を加えて,静穏時の離岸流の発生特性を分析したものである.その結果,波高が小さく比較的静穏な条件であっても,防波堤に沿って幅10m以上の速い離岸流が突発的発生することが分かった.また風と離岸流の発生を検討し,卓越風向の風下側に開けている相良海岸の地形的な条件と風況が離岸流の発生に関係している可能性を示した.
  • 小澤 裕介, 阿久津 匠市, 村上 和男
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_685-I_690
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     東京湾において、HFレーダーにより、流れの観測がされている。しかし、表層流は海上風の影響を受けるため、潮流成分と吹送流成分に分離した。それらのデータを用いて重回帰分析により、海上風が表層流に与える影響を平面的に調べた。その結果、海上風の影響は水深の浅い千葉沿岸部で大きく、水深のある神奈川沿岸では小さかった。また、表層流の収束を計算し、ゴミ回収船によって集められたゴミの集積位置との一致を示した。
  • 高橋 吉弘, 森田 真治, 木村 誠, 柴木 秀之, 高尾 敏幸, 古泉 統義
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_691-I_696
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     松山港周辺海域における15昼夜連続の多層定点観測と防波堤近傍の2測線の航行観測が行われた.潮汐・潮流数値シミュレーションモデルにより,松山港周辺海域の潮汐及び潮流場の再現が行われ,観測データにより検証される.松山港周辺海域の潮汐・潮流の特性は,観測結果とシミュレーションによる計算結果の解析により明らかにされる.松山港周辺海域の潮流予測システムは,松山港を利用者の航行案内のために開発される.このシステムは,2種類の予測方法により構成される.1つの方法は,潮流成分の調和定数による予報手法であり,他の予測方法は潮流シミュレーション法である.潮流情報は,高精度なシミュレーション結果に基づいている.
  • 瀬賀 康浩, 西岡 正則, 栗田 健太郎, 湯浅 泰三, 柴木 秀之, 高尾 敏幸
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_697-I_702
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     高松港朝日地区における海上工事による濁りの拡散の予測を現地事務所で実施可能とするため,高精度の流況と濁り拡散の予測が簡易に可能な濁り拡散予測システムを適用した.濁りの拡散は,海上工事による濁りの拡散と海域の濁りの拡散を予測可能とした.予測システムの現地適用性を確保するため,現地観測データをもとに,流況と海域の濁りの特徴を把握し,流況予測モデルおよび濁り拡散予測モデルの計算条件の設定と再現性の検証に活用した.海上工事による濁りの発生量は,国土交通省のマニュアルを基本としている.水深方向の濁りの発生量の割合を示す濁り発生源モデルは,高松港における既往の水質監視データを用いて改良を行った.
  • 金澤 剛, 鶴ヶ崎 和博, 重松 孝昌, 平野 辰昇, 森田 研志
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_703-I_708
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     浚渫による海底の窪地を埋め戻す際には,投入土砂にともなう濁りの発生を低減し,窪地内の停滞水塊の流出を抑制することが強く求められている.本研究では,濁りの発生を低減するための鉛直管に取付ける装置を開発した.室内水理模型実験では,鉛直管から投入された土砂によって誘起された流動の速度と濁りの分布が詳細に計測された.実験の結果,開発した装置が濁水塊の流動とその厚さを低減できることが示された.さらに,建設工事において実機を使った現地実験が行われた.計測された流速と濁度の時系列データから,開発された装置の有効性が示された.
  • 河野 泰士, 落合 弘志, 山城 徹, 城本 一義, 経塚 雄策, 永瀬 恭一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_709-I_714
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     長崎県の五島列島周辺海域において潮流発電の適地を見つけるために,2010年5月5日~20日に奈留瀬戸および滝河原瀬戸で,2010年11月1日~16日に若松瀬戸で,流速の直接測定を実施した.観測した流速記録から,これらの瀬戸の潮流特性を明らかにした.さらに,奈留瀬戸と若松瀬戸で測定された潮流は非常に強いことを示した.これらの強潮流は奈留瀬戸と若松瀬戸が潮流発電の適地であることを示唆している.
  • 高田 雅司, 山城 徹, 城本 一義, 中村 啓彦, 内山 正樹, 福田 隆二, 仁科 文子
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_715-I_720
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     水温と流速,赤外線画像データを用いて,鹿児島湾への外洋水の流入特性を明らかにした.水平スケール150km以下の黒潮暖水舌がトカラ海峡を通過するときに外洋水が大隅半島側から鹿児島湾に流入していることを示した.さらに,湾内に流入した外洋水は小潮あるいは若潮時に0.16m/s~0.26m/sの速度で湾口部から湾中央部へ移動していることを示唆した.
  • 舘山 一孝, 榎本 浩之
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_721-I_726
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     東南極海とオホーツク海における電磁誘導式氷厚計と可搬型マイクロ波放射計を用いた現場観測をもとに,衛星マイクロ波放射計SSM/Iデータから海氷厚分布を推定する手法を開発した.現場観測の結果から,マイクロ波放射計の36GHzの垂直・水平偏波比が海氷厚と良い相関を示したことから,この偏波比を海氷厚識別パラメータとしてSSM/Iデータに応用し,1988年から2010年までのオホーツク海の海氷厚分布の経年変動を調べた.
  • 舘山 一孝, 榎本 浩之
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_727-I_731
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     NOAA衛星の可視近赤外放射計AVHRRを用いて推定した雪氷表面温度(IST)から,サロマ湖の結氷面積の経年変動と気温との関係を調査した.AVHRRから推定したISTはサロマ湖氷上に設置した放射計温度計データから大気中の水蒸気等の補正を加られた.補正ISTから判断したサロマ湖結氷面積の正解率は,MODISの高分解可視画像から求めた.その結果,結氷検知性能は良好で,融解期に誤差があるものの結氷初期の薄氷の検出は可視画像よりも優れていることがわかった.1997-2007年のサロマ湖の結氷率と気温の積算寒度の関係は,12-2月の積算感度との相関係数が0.81と最も高かった.
  • 仲座 栄三, 渡邊 康志, 川原 大典, 入部 綱清, Rusila Savou
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_732-I_737
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     沖縄県石垣島の名蔵川,宮良川および吹通川流域のマングローブ生息域の変化を1962から2007年の役10年感覚の航空写真をGIS解析により研究を行った.その解析結果より,名蔵川のラグーンでは排水路の建設後急激なマングローブ生息息の変化が見られた.しかしながら名蔵川と同程度の流域面積の宮良川流域のマングローブ生息域では変化は小規模であった.吹通川流域は自然状態のマングローブ林で構成されており,ここではほとんど変化が見られない.研究結果より,海岸付近のマググローブ生息息の前進は波浪の到達範囲の影の領域に限られることが判明した.
  • 加藤 史訓, 笹岡 信吾, 諏訪 義雄, 松藤 絵理子, 上原 謙太郎, 冨田 雄一郎, 北村 康司, 田向 順光
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_738-I_743
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     うちあげ高は、海岸での水防活動にとって重要な外力指標である。本研究では、ステップ式波高計、演算装置、表示装置から成るうちあげ高の観測システムを開発し、2010年11月から2011年2月までうちあげ高の観測を行った。観測期間を通じて継続的に観測されたうちあげ高は、観測地点で撮影されたビデオ映像によって検証された。
  • 神野 有生, 鯉渕 幸生, 磯部 雅彦, 寺田 一美, 関根 雅彦, 胡 忠
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_744-I_749
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
      Multispectral remote sensing methods of water depth using high-resolution satellite imagery can potentially play an important role in coral reef bathymetry. The popular method by Lyzenga et al. predicts water depth by a linear function of variables derived from observed radiance for each band. Up to now, the predictor has been calibrated image to image independently using corresponding in-situ depth measurements. However, a recent study has shown some inter-image compatibility of the predictor.
      Based on the result, in this study we tried to build a predictor which can be applied to a wide range of coral reef images. We used four WorldView-2 images of three coral reef areas of different bottom types and water qualities. As a result, we successfully obtained a predictor which has good accuracy over all the images. The generality of the predictor will reduce the amount of the depth measurements necessary for calibration of each image to be predicted.
  • 吉井 匠, 松山 昌史, 石井 孝
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_750-I_755
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     長期的な漂砂環境の変化を把握するために,本研究ではビデオカメラを用いた汀線測量を実施し,画像の自動解析手法と観測の有効性を検討した.汀線抽出方法を検討した結果,汀線抽出にmSLIM法を適用することにより,自動的な汀線測量が可能となった.実際に測量した汀線と比較した結果,mSLIM法による汀線抽出は長期的な汀線変化を把握するのに十分な精度を有していることが分かった.また,撮影された画像から波向の情報が得られる可能性がある事が示唆された.
  • 押川 英夫, 石原 耕一, 小島 治幸, エン 曙光, 小松 利光
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_756-I_761
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     福岡県北部の三里松原海岸における沿岸漂砂の動向を把握するために,空中写真を用いた長期的な土砂収支解析と蛍光砂を用いた比較的短期間の底質の動向調査が夏季と冬季に実施された.その結果,三里松原海岸では平均的に東向きの沿岸漂砂が卓越していることが明らかとなった.
  • 長山 昭夫, 浅野 敏之
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_762-I_767
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究は定点カメラ観測を行い、鹿児島県指宿市の指宿海岸とその沖合の知林ヶ島の間に形成される陸繋砂州の形成過程について検討したものである。砂州を構成している底質は知林ヶ島と本土側のみを移動することがわかった。結果として、以下の砂州の特異なポイントを記載する。研究対象とした砂州は日変動と年変動を有している特異な砂州ということがわかった。さらに断面勾配もこの季節変化と連動していることがわかった。またこれらの期間は季節風の風向の変化とよく一致する。
  • 松原 雄平, 黒岩 正光, 市村 康, 藤原 博昭
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_768-I_772
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     鳥取県米子市皆生温泉街地先の皆生海岸では,既設離岸提の施設改良事業として,海岸防御のみならず海岸景観の向上も兼ね備えた整備事業が行われ人工リーフが2005年11月に完成した.その後,皆生海岸の利用者に施設整備による事業評価の調査を行ってきた.この間,道路利用に関しては,ガソリン価格の高騰、揮発油税の低減と復活ならびに高速道路の利用料金の値下げ等,さまざまな社会環境の変化があった.TCMによる便益に変遷は,社会情勢に変化にも係らず,皆生海岸整備事業の事業便益は約10億円から12億円を示しており,社会情勢により若干の価値の上下はあるものの,ほぼ同じ事業価値を示していた.また,一人当たりの事業価値も2,000円/人/年から2,700円/人/年の値を示した.
  • MANU Julianti, 西 隆一郎, 細谷 和範
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_773-I_777
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     インドネシアは約81,000kmの海岸線延長を有する島嶼国家であり,海岸管理において地域事情に適した海岸保全事業が必要とされている.近年では日本と同様に海岸侵食対策が重要な問題の一つとなっており,侵食対策のためにハード・ソフト両面から有効なアプローチが求められているが,現地において一般的に用いられる工法は護岸,防波堤,防砂突堤,離岸堤,突堤等のハードストラクチャーである.日本の技術者が技術支援や輸出で現地に適した工法を検討するためには,インドネシアの気象や海象,経済,環境影響,社会背景の理解が必要である.本研究はインドネシアを対象に海岸保全の地域特性を明らかにし,現地に適した低コストの護岸工法を検証するものである.
  • 増田 龍哉, 坂井 真幸, 御園生 敏治, 原田 稔, 岡本 憲明, 滝川 清
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_778-I_783
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     平成11年の海岸法改正により,防護・環境・利用の調和の取れた総合的な海岸管理を目的とした海岸保全事業の実施が求められている.有明海東部に位置する玉名横島海岸においても,従来の押さえ盛石に傾斜を付け,突堤を配置することで漂砂が堆積しやすい構造にすることで,生物の生息場を創成する環境配慮型の海岸保全事業が行われている.しかしながら,当該海岸保全事業のような環境配慮において,成功度合を図るための明確な基準がないため,今後どのような維持管理を行うべきか等の方針が定められないのが実状である.そこで本研究では,玉名横島海岸保全事業において順応的管理の考え方を基に,HEP(Habitat Evaluation Procedure)による環境配慮の成功度合を評価するための基準の設定と,今後の管理のあり方について検討した結果を報告する.防護・環境・利用に関する個別目標を設定することで,目標に応じた効果的なモニタリング項目の設定や,堤防前面における堆砂の標高や底質性状を評価対象生物のハビタットとして維持するための管理メニューの設定が明確となった.
  • 清野 聡子
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_784-I_789
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     日本では、海洋保護区は海洋環境政策としては正式に位置づけられてこなかった。日本における海洋保護の方法は、伝統と海外からの導入の双方の考え方を統合化したものと考えられる。2010年に開催された生物多様性条約第10回締約国会議(CBD/COP10)は、日本での海洋保護区の設定推進への引き金であった。島嶼は、観光や漁業の資源である海洋と沿岸の自然に恵まれている。国内的には、離島地域の政策は転換点を迎えている。近年、海洋ゴミの越境的環境汚染が島の沿岸を襲ってきた。これは、島に共通する問題として共有すべき段階に入っている。海洋保護区には、国内的な仕組と国際的な枠組をつなぐ高い潜在力がある。日本の百年にわたる海洋保護の歴史は、優良事例や反省すべき教訓があり、将来的には国際的な事例として経験や予防に役立たせられる可能性がある。海洋・沿岸工学は、空間計測とモニタリングには様々な経験と方法をもっている。海洋保護区管理は、工学の新たな領域と考えられる。
  • 後藤 浩, 前野 賀彦, 竹澤 三雄
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_790-I_795
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     平成22年度のレジャー白書によれば、海水浴は多様なレジャーの台頭により減衰傾向にはあるものの、我が国の余暇活動の項目の中で重要な地位を占め、平成21年度には年間延べ約1680万人の人々が海水浴場を訪れているとの報告がなされている。人にとってはトイレの利用は不可欠で、公共の場所である海水浴場においても適切にトイレ施設が設置されている必要がある。また、近年、人々の衛生に対する期待の高まりから、いずれの場所においても快海水浴は多様なレジャーの台頭により減衰傾向にはあるものの、今なお我が国の余暇活動の項目の中で重要な地位を占めている。人にとってはトイレの利用は不可欠で、海水浴場においても適切なトイレ施設が設置されている必要がある。また、近年、いずれでも快適にトイレが利用できることが常となってきており、海水浴場に設置されるトイレ施設も例外とはならないと考えるが、必要なトイレ施設数などや既設トイレの管理方針としての清掃の時間間隔の決定などについては不明確な点が多い。本研究では、首都圏近郊の海水浴場を選択し、公衆トイレを利用した人にトイレ利用に関する聞き取り調査を実施し、トイレの清潔度および清掃回数、トイレまでの最適距離、設置するトイレ施設の数などの推算を試み、海岸における環境衛生施設の改善策を考察した。適にトイレが利用できることが常となってきており、海水浴場に設置されるトイレ施設も例外とはならないと考える。しかしながら、トイレ施設の設置方針としての必要なトイレ施設数などや既設トイレの管理方針としての清掃の時間間隔の決定などについては、著者らの知るところによれば、東京都福祉保健局が公共トイレ設置に関して指針を提示しているのみで、検討の余地がある。本研究では、現状把握のために、首都圏近郊の日帰りの海水浴客が大多数を占める3つの海水浴場を選択し、公衆トイレを利用した約1000名の人にトイレ利用に関する聞き取り調査を実施した。そして、利用者が感じるトイレの清潔度および清掃回数、利用者からトイレまでの最適距離、設置するトイレ施設の数などの推算を試み、海岸における環境衛生施設の改善策を考察した。
  • 岸田 弘之
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_796-I_801
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     公物概念の形成と管理の確立に関して,海岸について管理面の歴史的な変遷を分析することにより,海岸に位置する地域の管理の成立過程を把握するとともに,自然公物である河川と海岸の管理に関して法制度面から歴史的な変遷を比較分析することにより,両者の管理に関する制度設計における生成過程が異なっていることを明らかにした.またこの相違点が,土地所有権・土地利用といった陸域からのストレスと,場の変化・水域の利用といった海域からのストレスの関係によって導き出されたものであることを整理した.その上で,今後の沿岸域管理の構築に向けては,公物管理に関する制度設計における陸域と海域との位置関係を踏まえ,場の変化につながる行為規制・海域の利用調整を主とした環境管理により重きを置いた具体的な制度設計が必要であることを示した.
  • 田代 優秋, 鎌田 磨人
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_802-I_807
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     本研究では,専門家が一般的なアウトリーチ活動を通じて地域住民と連携・協働へと発展した事例を取り上げ,1)どのようにして連携関係が構築され,発展したか,2)このプロセスで専門家が果たした役割について整理した.ここでは人と人との連携が重要であるとの視座から,専門家の技術的側面ではなく社会的側面である人的ネットワーク構造に着目した.その結果,地域環境課題の解決を目標とする専門家が地域住民と協働関係を創始・発展・継続するためには,地域住民のやりたいことや困っていることを尊重し,隔たりのない意見交換をする場を獲得し,課題の相互扶助を行うことが必要であった.また,専門家コミュニティー内の誰か1人でも,専門家内のファシリテータ役,主体間のコーディネート役を担うことが重要であった.
  • 袖山 和志, 松浦 繁徳, 木島 克己, 山本 宏樹, 柴田 あずさ
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_808-I_813
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     消波ブロックは特に日本の海岸において広く使われてきており,通常は設計波高に対して安定となるように設計されている。近年,「景観」は海岸構造物の設計における重要な要素となりつつある。そこで,初めての試みとしてアンケート調査を実施し,得られた1,186の回答に基づき,消波ブロック個々の形状と居住者や旅行者など一般市民が受ける印象との関係について分析を行った。その結果,丸みを帯びたブロックは一般市民に好意的に受け入れられていることが確認された。丸みを帯びたブロックの場合,表面の交線長がより短くなることが好感を持たれた理由と考えられる。
  • 中瀬 浩太, 岩井 克巳, 倉本 誠司, 中山 憲治, 上嶋 英機
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_814-I_819
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     沿岸環境技術を開発するとき実験の許認可を得ることが大きな負担である.この負担を緩和し,海洋環境産業を振興するため,2002年に立ち上げられた海洋環境産業創出ワーキングループが広島県呉市が許認可等の手続きをまとめて行い,共同の実験施設で誰でも海域での実験が行える行う仕組み「オープンフィールドラボ」を作った.実験施設は2007年8月に呉市阿賀地区の埋立地護岸に設けられ,7グループが参加して実験が行われている.オープンフィールドラボは実験場所の提供のみならず,参加者の議論の場や発表の場の提供も行う.これらの実験と統合したものが2008,9,10年度の環境省環境技術実証事業の中で,複合的沿岸環境改善技術として評価された.
  • 小泉 哲也, 渡部 富博, 鈴木 恒平
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_820-I_825
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     世界経済のグローバル化や、パナマ運河の拡張等に伴い、100000DWT級を超える超大型のコンテナ船の就航が進み、対応する超大型のコンテナターミナル(CT)整備が各国で進められている。我が国港湾の国際競争力の強化のためには、コンテナ船の大型化に対応した整備が必要であり、これら海外の動向等を適切に考慮した国際海上CTの設計が必要である。本研究では、岸壁水深が-16mより深い海外の6箇所の超大型CTを対象に、岸壁諸元(水深、延長等)、岸壁附帯施設(係船柱、防舷材)、ガントリークレーン、CTの施工法等について分析した.これらのCTでは、設計変更により大水深化を図るケース(釜山港等)や将来の増深(ロッテルダム港等)に対応した構造等が多い。我が国でも設計段階で将来性を担保したCTの構造が必要である。
  • 赤倉 康寛
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_826-I_831
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     パナマ運河の拡張工事は,2014年の供用開始に向けて順調に進んでいる.本研究は,米国-東アジア(北東~東南アジア)間の主要貨物であるコンテナ貨物及びバルク貨物(穀物)を対象とし,パナマ運河通航統計や新造船の最新データ,拡張後のパナマ運河の運用情報等により,運河拡張が貨物流動に与える影響を分析・考察するものである.また,この結果により,我が国において実施・検討されている,「選択」と「集中」による国際コンテナ・バルク港湾施策についても考察する.
  • 笹 健児, 若林 伸和, 小林 英一, 寺田 大介, 塩谷 茂明
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_832-I_837
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     船舶海難は人命の損失だけでなく,積載貨物や燃料油,船舶が海洋中を漂流し沿岸環境の被害も伴う.近年,ナウファスの沿岸波浪データがWEB上で提供され,船舶関係者に貴重な情報源となっている.しかし,一昨年に大きな船体動揺にて航行不能となったフェリーA丸の海難事故など荒天時における安全管理は未だ課題も多く,波浪情報から船舶や貨物の安全限界を推定する方法論に改善の余地がある.本研究では航行中に船体破損した上記海難時の波浪データと船舶AISデータの関係を分析し,船体動揺の数値解析により海難を誘発した要因を考察した.検討の結果,A丸が海難に発展する大きな横揺れが発生した理由としては,変針によって横揺れが増大する相対波向となったことが大きい.波浪外力のみでは25°の横揺れが発生するとは考えにくいが,操舵による当て舵時の外方傾斜と同位相になった場合には横揺れ角が大きく増大する可能性がある.また変針後に10°前後の横揺れが2時間ほど継続した影響で,積載貨物の固縛が弱まり,カオス現象等で見られる貨物の荷崩れが突然発生したため,25°の横傾斜につながった可能性の両方が考えられる.
  • 塩谷 茂明, 牧野 秀成, 永吉 優也, 柳 馨竹, 嶋田 陽一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_838-I_843
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     航海の安全のため、航海情報は非常に重要である。航行船舶の安全性は海難回避のために要求される。海難の原因の第1位は衝突、第2位は乗揚である。船舶の乗揚は沿岸域の比較的浅い海域で発生している。そのため、乗揚回避のために水深情報の有効な提供が非常に重要である。さらに、航行船舶に影響を与える気象・海象の情報提供も重要である。本研究の目的は、船舶乗揚回避のための水深、気象・海象に関する有効な航海情報をGISを用いて提供することである。航海シミュレーションによるこれらの情報提供が有効であることを示した。
  • 森本 剣太郎
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_844-I_849
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     近年,個々の余暇活動は海との結びつきが弱くなっていることが指摘され,人々の余暇活動も時代とともに変化している.本研究では,遊覧船による地域活性化を最終目的として,現状の内航旅客不定期航路の現状を整理し,運行状況や船体特性などについて明らかにする.その結果,フェリーなどの定期旅客船は輸送人員,事業者数,航路数いずれも減少傾向にあるが,遊覧船は輸送人員は横ばい,事業者数と航路数は増加傾向にあった.遊覧船の事業者は遊覧船だけを操業する者が多く,また事業規模も地元企業が支配的であった.また,遊覧船が地域資源としての可能性について考察した.
  • 嶋田 陽一, 高橋 桂子, 塩谷 茂明
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_850-I_855
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     航海に対して気候変動の影響を調べる基礎研究として、気候変動指数(北太平洋指数)を使って北太平洋における航海時間と気候変動の関係を調べた。東京とサンフランシスコ間の大圏航路上の航海シミュレーションを実行した。気候変動(大規模な大気変動)、波浪、航海はそれぞれ異なる時間及び空間スケールであるが、単純な処理したデータにもかかわらず、夏季及び秋季において航海と気候変動の関係がある可能性を示した。しかし、冬季及び春季においてのその関係は明確ではない。
  • 森屋 陽一, 安野 浩一朗, 長尾 毅
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_856-I_861
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     合理的な設計という観点から,ケーソン式混成堤の滑動破壊に対して,滑動量を考慮した設計法が提案され,実務に使われ始めている.滑動量を算定する際の高波の継続時間は,本来確率変数であるが 2時間の確定値として扱われている例が多く,日本海側の高波の継続時間は太平洋側に比べて一般に長い言うこれまでの知見と異なっている.本研究では,全国の事例に適用できる高波の継続時間を考慮したケーソン式混成堤の許容滑動量に対する破壊確率の算定法を提案した.また,設計条件に偏りがない全国の32事例を用いて検討した結果,継続時間を2時間の確定値とした場合に比べて,提案モデルでは滑動破壊確率は1.5倍程度大きくなり,提案モデルによる滑動破壊確率の全国平均値は,実構造物の被災確率とほぼ整合することを示した.
  • 上久保 勝美, 菅原 健司, 山本 泰司, 木村 克俊, 今井 浩平, 小原 康信, 名越 隆雄, 上北 正一
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_862-I_867
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     消波護岸における越波流量、車両への作用波圧および防波フェンスへの作用波圧について、2次元水理模型実験を実施した。MPS法を用いた数値計算を実施して,走行中の車両のフロントガラスの破壊限界と走行速度の関係を明らかにした。越波流量および車両のフロントガラスの破壊限界から求まる防波フェンスの必要高さを明らかにした。海岸道路用フェンスに作用する波圧および作用高さは、合田式のおよそ1.6倍になることが明らかになった.
  • 佐藤 典之, 長尾 毅
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_868-I_873
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     防波堤の滑動に対する性能照査において、モンテカルロシミュレーションを用いて滑動量の確率分布を計算し滑動量による制御を行う方法か提案されているが、計算時間の問題が無視できないため実務上はより簡易な方法で計算できることが望まれている。そこで本研究は、滑動量の確率分布と破壊確率を簡易に計算するために、防波堤前面波の確率分布を既存の確率分布関数を用いて定式化することを目的とした。その結果、防波堤前面波の確率分布において、滑動の発生する範囲である確率分布の右側すそ野部分は、砕波の発生条件に応じてワイブル分布もしくは極値III型分布によって近似でき、近似した分布関数は防波堤の設計パラメータを用いた重回帰式により定式化できることを明らかにした。
  • 吉野 真史, 丸山 和英, 山本 泰司, 上久保 勝美, 木村 克俊
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_874-I_879
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     2008年11月、北海道B海岸の傾斜護岸にて、男性が高波にさらわれて死亡する事故が発生した。事故時の気象データを整理するとともに、傾斜護岸上で人体に作用する波力を2次元水理模型実験及び数値解析にて再現して事故原因を明らかとした。人の転倒を定量的に検討するため、浮力を考慮した人の重量と波力の比で求められる転倒限界比を新たに提案した。また、波高と傾斜護岸勾配をパラメータとした海表面からの人の転倒限界高さ算定手法を提案した。以上を基に、傾斜護岸における安全管理の基本的考えを提案した。
  • 琴浦 毅, 森屋 陽一, 関本 恒浩
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_880-I_885
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     海上作業を伴う海洋工事では,波浪条件が作業の安全性や可否判断に大きく影響するため,波浪観測網の整備やその活用が行われてきた.また,波浪推算モデルも作業可否判断に利用され始めつつあり,波浪推算結果をリアルタイムに配信するシステムも構築されつつあるが,作業可否判断に使用するための精度は明らかになっていない.
     そこで,本研究では太平洋の計算領域に着目して,気象庁配信のGPV(GSMgl,GSMjp)の海上風を入力値としたWAMモデルを用いた波浪推算を実施し,観測結果と比較することで,波浪の予測精度を明確にした.また,作業可否基準値を有義波高1.0m,有義波周期7.0秒とし,実際のケーソン据付工事の作業実施状況と波浪予測結果を比較から波浪予測の作業可否判断への適用の可能性を検討した.
  • 浅野 敏之, 島田 知樹, 山本 竜太郎, 片山 裕之
    2011 年 67 巻 2 号 p. I_886-I_891
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/08
    ジャーナル フリー
     鹿児島県上甑島の浦内湾は,東シナ海に面するT字型に入りくんだ細長い湾で,毎年のようにあびき被害を受けてきた.漁船や水産施設をあびきによる損壊から守るためには,予知・避難という対策もあるが,沖合であびき発生の原因となる微気圧変動を検出したとしても,1~2時間で甑島現地にあびきが到達するため現実的とは言えない.湾内に防波堤を設置することで振動モードを変化させたり,渦形成によるエネルギー減衰により湾内の増幅を低減させることは,従来から行われてきた長周期波対策である.しかし浦内湾のように細長く2つに分岐する特異な地形の湾に対して,防波堤設置による副振動低減効果を調べた研究例は見当たらない.本研究は,副振動対策としての防波堤設置の効果を数値計算により調べたものである.
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