日本透析療法学会雑誌
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23 巻, 3 号
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  • 阿岸 鉄三, 酒井 清孝
    1990 年 23 巻 3 号 p. 215-226
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
  • 坂井 瑠実, 西岡 正登, 駒場 啓太郎, 奥平 浩, 松本 正典, 金 基潤, 金田一 博司
    1990 年 23 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    無尿および非糖尿病のCAPD患者14名につき, 血液および排液中の尿素窒素, クレアチニン, β2-マイクログロブリン, リゾチーム, α1-マイクログロブリン, アルブミン, グルコース濃度を測定し, クリアランス, 透析排液/血漿濃度比 (D/P比), 除去量, 除水量/総糖負荷量比 (除水能) を求め分子量, CAPD歴, 腹膜炎経験との関係を調べ以下の結果を得た. 腹膜機能の指標としてクリアランス, D/P比に差を認めなかった. 除水能とCAPD歴には有意差は認めなかったが, 除水能低下と腹膜炎回数には有意差を認め, 腹膜炎予防の重要性が示された. 除水能低下時および腹膜炎後は尿素窒素より大きい分子量の物質のクリアランス, D/P比とも, 高値にあったが, 一方, CAPDを中断し除水能回復を認めた症例ではクリアランス, D/P比とも, 中断前に比べ低下した. これより中分子以上のクリアランス, D/P比を求めることがクリアランス機能亢進による二次的な除水能低下を早期に予測し加えてCAPDを中断することが除水能回復を図る治療法として有用であることが示された.
  • 斉藤 幸美, 鈴木 和代, 林田 順子, 森 晶子
    1990 年 23 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者の延命と生活の質を向上させる看護方針を明らかにする目的で, 過去7年間に当センターで透析を施行した560名中, 64名の糖尿病患者を対象に, 合併症の頻度, 程度, 社会復帰, 予後, 看護上の留意点を検討した. 糖尿病患者の86%が腎不全以外の合併症を有し, 合併症中視力障害が94.5% (視力喪失9.6%, 介助を要する視力障害42.3%), 末梢神経障害が42% (糖尿病性壊疽34.7%, 四肢の切断17.3%), 循環器系合併症が89%を占めた (重複を含む). 糖尿病患者中, 外来透析に移行し社会復帰に成功した例はわずか15.6%で, 他は入院あるいは家庭内療養を継続, 現在生存しているのは53%であった. 看護上, 1. これからの人生に希望と意欲を持たせるとともに血管病変・合併症進行抑制のため, 血糖, 体重をはじめとする日常生活管理の重要性を認識させる, 2. 壊疽を防止する局所管理指導, 3. 血圧低下や出血に対する透析施行上の工夫などが重要で, 特に予後の向上・社会復帰には適切な透析法の選択とともに, 家族の協力が大切であった. 糖尿病の透析患者に対しては, 糖尿病の特殊性を勘案し, 意欲を持たせる働きかけと同時に介助者も含めた自己管理・日常生活指導が不可欠である.
  • 岸本 卓巳, 長宅 芳男, 小野 哲也, 岡田 啓成
    1990 年 23 巻 3 号 p. 241-244
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性透析患者50例の免疫能の指標として, 血清immunosuppressive substance (IS) 物質, immunosuppressive acidic protein (IAP), stimulation index (SI), soluble IL-2 receptor, IL-2 receptor bearing lymphocyte (CD25陽性細胞) について検討し, 以下の結論を得た. 血清IS物質, IAPは健常人に比較して有意に高値を示した. そして, 透析導入後1年未満で高値を示したが, 透析年数と共に一時改善を認めたものの, 5年以上の長期例では再び上昇した. またSIは健常人に比較して高値を示した. Soluble IL-2 receptorとCD25陽性細胞は健常人に比較して高値を示し, 透析年数別では血清IS物質, IAPと同様のパターンを示した. 慢性透析患者の免疫能は, 透析導入後1年以上で一時的に改善が認められるものの, 5年以上経過すると再び低下することが示唆された. Soluble IL-2 receptor, CD25陽性細胞の免疫学的意義は不明であるが, 免疫抑制と何らかの関係があるものと考えられた.
  • 短時間透析の臨床評価
    窪田 実, 浜田 千江子, 前田 国見, 斎藤 絹子, 斎藤 和洋, 福井 光峰, 武田 理夫, 小出 輝
    1990 年 23 巻 3 号 p. 245-248
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析時間の短縮化は患者ばかりではなく, 従事するスタッフにとっても重要な関心事である. 今回, 著者らは透析時間を2.5時間に設定した短時間透析 (rapid high efficiency dialysis; RHED) を, 外来慢性血液透析患者10名に16か月間施行し, 観察評価した.
    短時間透析は重炭酸透析とし, 単位時間の溶質のクリアランスを増加させるために大面積のダイアライザー (平均1.7m2) を使用し, 高血液流量 (平均300ml/分) とした. 従来の4時間の重炭酸透析と短時間透析との比較で, 生化学・臨床データに増悪は認められず, 透析中の低血圧, 悪心・嘔吐の発生率は減少した. 透析時間の短縮によって患者のquality of lifeの向上も認められ, この短時間透析は優れた透析方法と考えられた.
  • 永井 哲士, 木村 玄次郎, 佐内 透, 今西 政仁, 河野 雄平, 小嶋 俊一, 川村 実, 倉持 衛夫, 尾前 照雄
    1990 年 23 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    人工腎治療患者の理想体重 (BWi) は, 血圧, 心胸比等から臨床的に決定されているが, 未だ, これを算出する方法は確立されていない. そこで, ureaおよびクレアチニンのkineticsを応用し, 総体液量 (TBF) と固形重量 (除脂肪体重-TBF) を算出し, 体液生理学的なBWiを決定した. 人工腎治療患者9名 (男7名, 女2名) を対象に血液濾過 (HF) を施行した. 後希釈法で約5時間, 20lの限外濾過, 体液置換を行い, HF前後の体重 (BW), 血清尿素窒素濃度, 濾液量, 濾液中の平均尿素窒素濃度, HF後と次回HF前の血清クレアチニン濃度とその間の尿中クレアチニン排泄量を測定した. TBFはurea kineticsを応用してHF前後のBW, 血清尿素窒素濃度, 濾液中の尿素窒素濃度から算出した. 固形重量 (S) はクレアチニン産生量 (GCr) と比例関係が成立することを利用して算出した. GCrは尿中クレアチニン排泄量, 体内クレアチニン蓄積量, 腎外性クレアチニン排泄量の総和から求めた. また, 理想状態におけるTBFと除脂肪体重 (LBM) との比は一定 (TBF/LBM=0.735) であることに基づき, 理想総体液量 (TBFi) の推定が可能である. 算出したTBFi, S, 脂肪重量は各々36.7±1.8l, 13.7±1.1kg, 3.7±2.3kgであった. これら3者の総和として求めたBWiは55.1±4.2kgで, 臨床上のdry weight (54.0±3.5kg) との間には有意な相関があり (r=0.9, p<0.01), かつ有意差は認められなかった. このように, BWiは, 臨床上のdry weightとほぼ一致したことから, 今回, 我々が開発した理想体重の算出法は臨床的に応用可能と考えた.
  • 田所 正人, 坂田 英雄, 安森 亮吉, 大園 恵幸, 原田 孝司, 原 耕平, 広瀬 建, 松隈 玄一郎, 船越 衛一
    1990 年 23 巻 3 号 p. 255-260
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    腹膜硬化症の1例を含むCAPD 6例について, 腹膜の機能および形態変化を検討した.
    症例1はCAPD導入時より, 十分な除水を行うために高張液を使用していた. 除水量の減少が徐々に進行し, 4年7か月でCAPD継続困難と判断され, カテーテルを抜去した. カテーテル抜去時の腹膜生検にて, 腹膜の著明な肥厚とともに血管内膜の肥厚と内腔の狭小化を認めたことより腹膜硬化症と考えた.
    除水能の対照的な2例について2.5%透析液2lを使用し, 腹膜機能の検討を行った. 透析液・血漿浸透圧比の時間的推移の検討では, 除水能良好例 (症例2) は浸透圧比の低下を認めず, 除水量は経過とともに順調に増加したのに対し, 除水能不良例 (症例3) では浸透圧比の低下が急速に進行し, 2時間目以後は除水量増加がほとんど認められなかった. 尿素窒素とクレアチニンの透析液/血漿比の時間的推移は両例に差を認めなかった.
    CAPD剖検例 (症例4-6) について腹膜の病理組織学的変化を検討した. いずれもCAPD導入後1年未満のものであったが, すでに腹膜の肥厚をきたしていた. なかでも2か月間の短期CAPDにて除水能, 溶質除去能ともに良好であった症例において, すでに腹膜の軽度肥厚が認められたことは注目すべきことと思われた.
  • 大矢 晃, 山口 哲, 小倉 泰伸, 染野 敬, 高橋 徳男, 網野 洋一郎
    1990 年 23 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    症例は46歳, 女性. 1988年10月28日鯉の生胆嚢5個を食べ, 4時間後に嘔吐, 下痢および全身倦怠感が出現した. 翌日, 近医に入院したが無尿となり, 11月1日血液透析を施行するために当院に転院となった. 入院時検査ではGOT 35IU/l, GPT 1,109IU/l, BUN 89.4mg/dl, Cr 10.5mg/dl, UA 15.6mg/dlと高度の腎・肝機能障害を認めた. 鯉の胆嚢による中毒と診断, 同日直ちに血液透析を開始した. 血液透析は11月12日までに総計9回行い離脱できた. また肝機能は11月15日までに正常化した. 12月8日に施行した腎生検では糸球体に異常所見は認められず, 急性尿細管壊死と考えられた.
    本邦における鯉の胆嚢生食による中毒の報告は1977年以降に見られるようになり, 自験例が第17例目と思われた. この17例についてまとめてみると, 男性10名, 女性7名, 発症年齢は19歳から67歳で平均47.6歳であった. 生食した月別では5月が4名と最も多く, 次いで10月と12月の各3名であり, 地域別では関東甲信越 (福島, 茨城, 栃木, 新潟) と九州の一部地域 (宮崎) に限定されていた. 毒性成分については不明な点が多く, 未だに特定されていない.
  • 園部 美弥彦, 刀禰 佳典, 西井 文吾, 湯川 進, 野本 拓, 橋本 昇, 足立 由利子, 西川 紀子, 西出 巌
    1990 年 23 巻 3 号 p. 267-271
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Uremic toxinは正常の細胞機能を種々に障害することはよく知られているが, 腫瘍細胞のような増殖能の高い細胞にも抑制的に働くのかどうかは現在のところよく知られていない. そこで今回uremic toxinの培養腫瘍細胞におよぼす影響について, hexosaminidase assayを用いて検討した. すべての細胞株で濃度依存的な抑制が認められた. 個々の細胞株ではヒト肝癌細胞 (HCC) は正常血清添加に比べ透析患者血清添加で著明な抑制がみられ, 透析前血清では30%添加にて増殖が完全に抑制された. 透析後血清添加ではこの濃度で, 抑制率は50%まで回復した. 一方尿添加による影響は血清添加による場合とは全く逆で, 腎不全尿を3%添加しても増殖に影響がなかったが, 健常人尿は1%添加でも50%の増殖抑制を示した. 他のP3U1細胞およびNUGC-4細胞でも程度の差はあるがほぼ同様の結果を示した. さらに正常人尿をSephadex G-15カラムにて細分画に分けて検討すると, 溶出の早い方から2番目の分画で最も強い抑制作用がみられた. 以上により透析患者の悪性腫瘍ではこの蓄積された因子が, 直接的には腫瘍の増殖を抑制する方向に働いて担癌状態を修飾していると考えられる.
  • 生物学的測定およびradioimmunoassayの比較
    本宮 善恢, 吉田 克法, 坂田 進, 榎 泰義
    1990 年 23 巻 3 号 p. 273-278
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    維持透析患者40名を対象として, 血漿エリスロポエチン (EPO) 活性および濃度を測定した. EPO活性は胎仔肝細胞を用いたin vitro培養法によるcolony forming unit-erythroid (CFU-E) 形成能で測定し, 対象として健常者20名の血漿を用いた. EPO濃度はRIA法により測定した. その結果, 1. EPO濃度 (RIA値) はほとんどの症例で正常範囲内であったが, 低Hbに対する上昇はみられなかった. 2. EPO活性は健常者158±33.4mU/mlに対し患者群では74.4±29.1mU/mlと明らかな低活性を示し, 90mU/ml以下の症例が40例中19例 (47.5%) みられた. 3. EPO濃度 (RIA値) はHb濃度, 網状赤血球数とは相関を示さなかった. 4. 反面EPO活性値はHb濃度および網状赤血球数と正の相関を示した. 5. EPO活性値と濃度値 (RIA) には正の相関を認められなかったが, 活性値70mU/ml以上の21例においては正相関がみられた. 以上により維持透析患者の血漿中には, EPO活性発現に対する抑制物質の存在が強く示唆され, またRIA値は真のEPO活性を反映していないことが確認された.
  • 大平 整爾, 阿部 憲司, 長山 誠, 佐々木 千恵子, 原田 やよい
    1990 年 23 巻 3 号 p. 279-284
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPD治療期間の長期化に伴って, 除水能の低下を示す症例が散見されるようになってきている. 今回, 11例 (CAPD期間; 6か月-6年7か月) の腹膜機能をurea, creatinine (Cr) のD/P, 糖吸収率, 1日除水量, 除水率, 腹膜CCrで測定し, CAPD開始時の成績と比較した.
    CCrは経年的に低下傾向を示したが, D/Pは11例全て正常域に止どまり血清Cr値も増加傾向を示さなかった. 一方, 除水率は1-2例で下降を認め, 糖吸収率は3例で高値をとった. 総合的には現時点で溶質除去能の低下を示す症例はなく, CAPD 3年以上の自験5例のうち血液透析12年, 間歇的腹膜透析1年, CAPD 6年7か月の1例が除水能低下と判定された.
    除水能低下の原因は不詳であるが, 腹膜炎および高浸透圧透析液の頻用は誘因の一つと推測された. 腹膜機能の把握は本療法を継続する上で最重要点の一つであり, 定期的な測定と分析が向後, 課題となろう.
  • 本田 宏, 菅 英育, 仲里 聡, 河合 達郎, 林 武利, 中島 一朗, 中川 芳彦, 藤川 博康, 藤田 省吾, 唐仁原 全, 君川 正 ...
    1990 年 23 巻 3 号 p. 285-287
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    CAPDカテーテル挿入術後の合併症であるカテーテル周囲からの灌流液漏れを根絶する目的で, 山本のカテーテル挿入法 (第1カフを腹膜で包み込む) を行った. さらに本術式をより簡便にするためにCAPDカテーテル (トラベノール社製) の第1カフの長さを短縮し, カテーテルの長軸方向に対して斜めに装着した新しいカテーテルを作製して, これを使用した. 昭和63年11月から平成元年5月の7か月間に10名の患者に対して12回のカテーテル植え込み術を行い経過を観察した.
    10名の患者 (男:女=7:3, 平均年齢: 49.2歳) に計12回の挿入術を施行したが, 第1カフの腹膜による包み込みは容易に行え, 挿入後の貯液量もスムーズに増加しえた. 術後の観察期間は平均76.6日 (7-180日) であるがカテーテル周囲からの灌流液漏れは1例もなく, 全例が術翌日から安静解除可能であった. しかし10例中2例はカテ先の位置異常により注排液が不良となり再挿入術を要した.
    山本の提唱したCAPDカテーテル植え込み法を追試し, これに著者らの作成したカテーテルを使用することにより, 手術操作をより簡略化できた.
  • dry weight決定における有用性について
    佐藤 滋, 工藤 卓次, 佐久間 芳文, 藤塚 勲, 久保 隆, 伊藤 隆司, 小原 礼子
    1990 年 23 巻 3 号 p. 289-294
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    血液透析 (HD) 患者の血漿α-ANP濃度を測定し体重・平均血圧・CTRと比較検討するとともに, dry weight (DW) 決定における有用性について考察した. 対象は岩手医大および北上済生会病院でHD施行している患者中, 無作為に10例を選んだ. 年齢は22歳から76歳で平均50.5歳であった. 方法はHD施行前後に採血し血漿分離しRIAにて測定した. その結果, 次の結論を得た. 1. HD前後の平均血中濃度は, 前値126.8±58.2pg/ml, 後値77.0±43.7pg/mlで有意 (p<0.01) に低下した. 2. HDによる体重変動値と血中濃度変動値に相関はみられなかった. 3. 平均血圧の変動値との間にも相関はみられなかった. 4. CTRとの間に有意の相関 (r=0.74, p<0.05) が認められた. 5. 経時的に測定した症例でもCTRと有意の相関 (r=0.89, p<0.01) が認められた. 6. CTRとα-ANP濃度の両方を測定することで, より適切なDWの設定が可能性となると考えられた.
  • 村上 信乃, 伊良部 徳次, 五十嵐 辰男, 丹波 嘉一郎, 浅田 学, 関根 智紀
    1990 年 23 巻 3 号 p. 295-298
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    透析患者での多嚢胞化萎縮腎の発生する時期を調べる目的で, 120例の透析患者に定期的腹部超音波検査を行った.
    その結果, 各年度別の本症の発生率は, 透析期間の延長と共に増加し, 透析歴3年で28%, 5年49%, 10年86%の患者に本症の合併を認めたが, 男女差や, 腎不全の原因となった基礎疾患による差は認めなかった.
    また一旦発生した嚢胞は時間の経過と共に大きくなり, その数も増加した.
    以上の結果より, すべての透析患者で導入5年以降は, 本症の発生に注意する必要があると考えられた.
  • 岩元 則幸, 田中 稔之, 川瀬 義夫, 山崎 悟, 近藤 守寛, 平竹 康祐, 宮本 達也, 今井 亮, 山本 則之, 福田 豊史, 小野 ...
    1990 年 23 巻 3 号 p. 299-305
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    筆者らは, 当院および関連病院にて10年以上の長期血液透析患者87例 (男女比50:37, 年齢51.9歳, 透析期間13.6年) を対象とし, 破壊性頸椎関節症群 (I群) 22例, 境界群 (II群) 22例, 正常群 (III群) 43例に分け, その背景 (生化学所見: 血清C-PTH, ALP, Al, β2-MG, 透析歴, 透析開始時年齢, 代謝性骨病変, CTSの有無) を検討した. また, 頸椎亜脱臼を呈した2例の組織所見を検討した. その結果, 透析歴および開始時年齢は各々I群とIII群, 14.7年と12.8年 (p<0.01), I群とIII群43.5歳と36.5歳 (p<0.05) と有意差を認めた. 生化学所見, 骨病変の頻度, 骨透亮像の発生頻度 (大腿骨, 寛骨, 手根骨) に有意差を認めなかった. 破壊性頸椎関節症とCTSは同様の経年的増加傾向を示した. 結論1.10年以上の長期血液透析患者87例中破壊性頸椎関節症22例を認めた. 2. 血液生化学所見とは相関を認めなかった. 3. 破壊性頸椎関節症群は透析開始時年齢が有意に高齢であり, かつ長期透析例であった. 4. 破壊性頸椎関節症はアミロイド骨関節症の分症と考えられた.
  • 倉持 元, 小樋山 勝志, 片桐 正則
    1990 年 23 巻 3 号 p. 307-312
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    Biofiltrationにおける透析液浸透圧の透析時間短縮化と溶質除去に及ぼす影響を検討するため, 維持透析患者13人においてbiofiltration (Na+ 155mEq/l, Cl- 55mEq/l, HCO3- 100mEq/l, 1l/hrのpost-dilutionにて注入) を施行した. 透析液浸透圧は270mOsm/kg・H2Oと310mOsm/kg・H2Oとし, 重曹透析にて施行した. 透析時間は3, 4時間とした. 血流量は200ml/min, 透析液流量は500ml/minにて行い, high flux membrane dialyzer (1.0m2) を用いた. Biofiltrationでは, 通常透析 (透析液浸透圧270mOsm/Kg・H2O) 5時間値と比べてK, P, β2-microglobulin (β2-MG) の除去については2時間の短縮は可能と考えられた. またBUN, クレアチニン, 尿酸の除去については, 高浸透圧透析との併用にて1時間の短縮が可能と考えられた. 透析液浸透圧の影響は, K, P, β2-MGの除去については認められなかったが, BUN, クレアチニン, 尿酸の除去については, 高浸透圧透析との併用で有意の増加が認められた. さらにbiofiltration施行時の透析開始30分でのP, BUN, クレアチニンのクリアランスは, 高浸透圧透析との併用にて有意に増加した. また血液ガス分析では, 透析後のpHとHCO3-は有意に増加した.
    よって, biofiltrationは透析時間の短縮化に有用な方法であると考えられ, 透析時間短縮化に伴う小分子量物質 (BUN, クレアチニン, 尿酸) の除去の低下に対しては, 高浸透圧透析との併用が好ましいと考えられた. また代謝性アシドーシスの過補正を避けるために, 定期的に酸塩基状態を検査する必要があると考えられた.
  • 保元 徳宏, 出口 隆志, 北本 康則, 中山 眞人, 佐藤 辰男
    1990 年 23 巻 3 号 p. 313-317
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    当院で過去3.5年間に経験された腎不全を合併し体外循環を必要とした多発性骨髄腫患老9例 (Group A) と, 腎不全を呈さない多発性骨髄腫患者18例 (Group B) および慢性腎炎末期にて透析導入となった27例 (Group C) について比較検討した. Group Aの内訳は, IgA myelomaが4例 (44.4%), light chain myelomaが5例 (55.6%) で, 男性4名, 女性5名で平均年齢は61.9歳であった. Group Bに比べ, Group AはHb値が有意に低く, Group Cと比べるとGroup Aでは, Hb値が低くCa値が有意に高かったが, その平均値は正常範囲にあった.
    Myeloma診断後のmedian servival timeは15か月であり, Group Bに比べ生存率に有意差を認めなかった. 透析離脱率は9例中2例 (22.2%) と低くその一因に血漿交換の併用率の低さが考えられた. 今後, 腎不全合併のmyeloma患者の早期診断には, 免疫蛋白電気泳動法などを積極的に行うべきであり, 治療については, 化学療法と血液透析に加えて, 血漿交換を積極的に行い, 腎機能回復率が向上するか否かを検討したいと考える.
  • 頼岡 徳在, 小川 貴彦, 金原 幸司, 小田 弘明, 浜口 直樹, 高杉 敬久, 重本 憲一郎, 有田 美智子, 原田 知
    1990 年 23 巻 3 号 p. 319-322
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    慢性糸球体腎炎を原疾患とする慢性血液透析 (HD) 患者30例 (男性20例, 女性10例, 平均年齢31.8±6.1歳) および健常者50例 (男性31例, 女性19例, 平均年齢32.4±5.9歳) の血中可溶性インターロイキン2レセプター (IL-2R) をELISA法を用い測定した.
    その結果, HD患者においては, 1. 血中可溶性IL-2Rは1,349.2±497.9U/mlであり, 健常者の157.4±46.5U/mlに比し, 有意の高値が認められた. 2. 血中可溶性IL-2RとCD3との間には有意の正の相関が認められた. 3. 排尿が全くみられない群では排尿がみられる群に比し, 血中可溶性IL-2Rの高値の傾向が認められた. 4. 血中可溶性IL-2Rとβ2-microglobulinとの間には有意の正の相関が認められた.
    以上より, HD患者の血中可溶性IL-2Rの高値の機序として免疫異常, 尿中排泄低下等が示唆された.
  • 血液吸着との比較と, IRS類似例の検討を中心に
    添田 耕司, 小高 通夫, 田畑 陽一郎, 磯野 可一
    1990 年 23 巻 3 号 p. 323-329
    発行日: 1990/03/28
    公開日: 2010/03/16
    ジャーナル フリー
    急性肝不全 (AHF) に対する血漿交換 (PE) の効果と限界について検討した. 1975年9月から1987年2月までに当科でAHFで血液浄化法を施行した44例をPE中心治療群26例と血液吸着 (HA) 治療群18例に分け検討した.
    救命率はそれぞれ27%, 22%と両群に差がなく, 剖検時肝重量にも差を認めなかった. PE施行平均回数は, 死亡例で救命例の2倍であった. PE前後でビリルビン, 胆汁酸は除去され, アンチトロンビンIII, C4は補充されるが正常値まで改善しなかった. PEはAHF治療に対し延命効果があるが, 除去, 補充療法としては不十分であった. PE施行例の中に長期間覚醒後肝不全で死亡した4例を経験した. その剖検時肝病理組織像はimpaired regeneration syndrome (IRS) に類似していた. AHFのIRS類似例の肝再生不良像に注目し, 肝再生を促す人工補助肝の開発が必要と思われた.
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