昭和学士会雑誌
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81 巻, 4 号
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原著
  • 小島 康孝, 黒木 知明, 佐々木 淑恵, 福田 貴巳佳, 青木 絢子, 宇都宮 裕己, 門松 香一
    2021 年 81 巻 4 号 p. 297-305
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    主に曲面から構成される乳房は,測定対象として明確な測定点を設定しにくく,体位や接触により容易に変形するため,徒手的に正確な測定を行うことが難しい部位である.今回,われわれは,乳癌患者の乳房に対し,乳房切除前に製図器具による徒手的測定と3Dスキャナーを用いた測定の両方を行い,乳房の横径,縦径,突出度の3つの測定値を比較し,3Dスキャナーを用いた測定で適切な乳房再建用シリコンインプラント(Silicone Breast Implant:以下,SBI)のサイズ選択が可能か検討した.2018年1月から9月に昭和大学病院形成外科で乳房再建術を予定した乳癌患者45名90乳房(平均年齢48.1±10.7歳(SD))を対象とした.3Dスキャナーは,「Kinect V1®」(Microsoft Corporation, America)を使用し,キャプチャーソフトは「Artec Studio PRO®」(Artec group, Luxembourg),画像解析ソフトは「Breast Rugle®」(Medic Engineering Corporation, Japan)を用いた.測定は乳房切除術前に行い,3Dスキャナーによる測定値と,定規等の製図器具を用いて徒手的に測定した値を比較した.3Dスキャナーを用いた測定値は,横径,縦径,突出度の全てにおいて製図器具による徒手的測定値より大きい傾向を認めた.両測定値間には正の相関を認め,回帰式を算出することができた.回帰式の自由度調整済み決定係数は,横径および突出度は高い精度を示したが,縦径においては低い精度であった.一方,3Dスキャナーによる乳房体積は,実際に使用したSBIの体積と高い相関を示した.3Dスキャナーを用いた測定は,製図器具を用いた徒手的測定とよく相関し,乳房再建のSBIのサイズ選択に有用であったが,縦径の計測の精度にやや問題があり,今後の検討課題と考えられた.
  • 佐々木 陽平, 服部 憲路, 上杉 由香, 中田 彩香, 島田 翔太郎, 綿貫 めぐみ, 藤原 峻, 荒井 奈々, 宇藤 唯, 村井 聡, ...
    2021 年 81 巻 4 号 p. 306-315
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(Diffuse large B-cell lymphoma,DLBCL)は日本で最も頻度の高いB細胞リンパ腫であるが,約30%はリンパ節以外でリンパ系腫瘍細胞が増殖する節外性DLBCLとして発症する.節性DLBCLと節外性リンパ腫の治療指針に明瞭な違いはない.われわれは節外性リンパ腫の層別化治療の構築を目的とし,MYC蛋白を中心に免疫組織化学染色の観点から臨床的特徴を解析した.昭和大学病院で節外性DLBCLと診断された症例の中でMYC蛋白発現が検討可能な63例を対象とした.MYCの免疫組織化学染色を行い,低倍率視野でリンパ腫細胞の陽性率の最も高い部分を求め数値化し,MYC蛋白の陽性細胞の割合が40%以上ならば高発現とし,40%未満ならば低発現とした.節外部位は咽頭/扁桃が最も頻度が高く,次に胃が多く見られた.対象症例の中で21例(33%)がMYC蛋白高発現であった.症例の節外の初発部位の比較では,胸膜がMYC蛋白高発現症例に有意に多かった(p=0.042).MYC蛋白高発現症例は低発現症例よりも,臨床病期および国際予後指標(International Prognostic Index,IPI)が有意に高く(それぞれp<0.0010,p<0.0010),全生存期間は有意に短かった(p=0.0017).MYC蛋白発現率と年齢,白血球数,乳酸脱水素酵素,可溶性インターロイキン2レセプターおよびC反応性蛋白との相関関係について解析し,乳酸脱水素酵素と正の相関関係を認めた(r=0.30,p=0.019).MYC蛋白発現率はIPIのhigh risk群で有意に高かった(p=0.020).免疫組織化学染色を用いたMYC蛋白発現は節外性DLBCLの治療予後に関連する指標となりうることを報告した.
  • 和田 沙也加, 関 美穂, 芳賀 秀郷, 槇 宏太郎
    2021 年 81 巻 4 号 p. 316-324
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    患者が自身の顔貌や歯並び・咬合の特徴についてどのように認識し,矯正歯科治療において何を望んでいるのかを正確に把握することは重要である.また治療開始前に患者と歯科医師での認識の差異を検討し共有することにより,より予知性の高い治療が可能となる.昭和大学歯科病院矯正歯科に来院した不正咬合患者60名(男性22名,女性38名)を対象とし,矯正歯科治療開始前にアンケート調査を行った.主訴の割合については「歯並び」と返答した者が85.0%,「横顔」と返答した者が15.0%であった.「歯並び」を主訴とした内訳は「叢生」が最も多く32.0%であった.来院動機に関しては「母に指摘されて」が50.0%,「本人が気になって」が25.0%,「検診で指摘されて」が23.0%であった.周囲に指摘された場合の主訴が気になり始めた時期は,平均で9.7歳であったのに対し,患者本人が自覚した場合は平均13.8歳であった.水平被蓋量・側貌・叢生量のうち,初診時の患者の自己評価は,水平被蓋量が最も歯科医師との評価の一致率が高く,反対に,前歯部叢生量が最も一致率が低かった.患者の自身の叢生量に対しての評価は,歯科医師と認識の差異が大きい傾向があった.本研究を通して,患者がどの程度自身の口腔内や顔貌を正確に認識しているのか,および患者と歯科医師での認識の差を明らかにすることができた.これらの認識の違いを十分考慮した上で今後も矯正相談や患者説明用の視覚素材にフィードバックしていきたいと考える.社会への矯正歯科受診の啓発方法を探るとともに得られたデータの蓄積により診断システムの一助となりうる可能性も考えられた.
  • 北川 真希, 田 啓樹, 村國 穣, 小風 暁, 末木 博彦
    2021 年 81 巻 4 号 p. 325-332
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    鶏眼と胼胝は皮膚科領域で頻度の高い疾患であり,その臨床的特徴から区別されるが,同一の病態に基づく一連の疾患として扱われる.2008年から2018年の10年間にむらくに皮フ科を受診し,足底の鶏眼・胼胝と診断された患者2,133例を対象とし,診療録情報をもとに鶏眼・胼胝患者の年齢,性別,発生部位,発生数を中心に統計学的解析を加え,鶏眼・胼胝の疫学的事項につき共通点,相違点を明示することを目的とした.さらに生活習慣に関する問診事項から患者背景,発症誘因を検討した.その結果,以下の事実が明らかになった.鶏眼病変と胼胝病変はともに年齢層を問わず単発例より多発例が多い.鶏眼と胼胝を合わせた全体の男女比は1:2.1と女性に多い.対象者全体の34.4%に鶏眼と胼胝が合併し,合併例では鶏眼と胼胝が別部位に生じる症例より同一部位に混在する症例が多い.患者の年齢分布を鶏眼と胼胝で比較すると,男女を合算したピークはともに30歳代であった.男性の鶏眼は,高齢者では足底外側に,若年者では中間足趾に好発する(χ二乗検定事後解析,p<0.001).女性の鶏眼は,高齢者では中間足趾に,若年者では足底外側に好発する(χ二乗検定事後解析,p<0.001).女性の胼胝は,若年者の胼胝は第2, 第3中足骨関節部に多く発症する(χ二乗検定事後解析,p<0.001).ハイヒール使用群は非使用群と比較し第2, 第3中足骨関節部で有意に胼胝を多発する(χ二乗検定事後解析,p<0.001).以上より鶏眼と胼胝の好発部位は年齢層,性別により異なるため,属性別に発症のリスク因子を解析し,それぞれの再発予防策を検討する必要があると考えた.
  • 磯邉 崇, 中村 大介
    2021 年 81 巻 4 号 p. 333-341
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    心臓血管外科手術後の体液管理状況は体内水分量の増減を反映し,肺うっ血などの組織の浮腫や低心拍出による尿量低下を示唆する重要な因子であり,心臓血管外科手術後のリハビリテーション進行の可否を判断するうえでも重要な因子と考えられている.そのため心臓血管外科手術後のリハビリテーションを適切に進行するために,術後体重変化や症例の術式の推移を把握して介入することが重要なのではないかと推測される.そこで本研究では2018年4月1日から2019年3月31日までに当院で心臓血管外科手術後にリハビリテーションを施行した82例(男性42例,女性40例)を対象とし,術後体重変化が術後のリハビリテーション進行に与える影響を検討した.まず術後体重増加率が105%以上となる症例を術後体重増加群,105%未満の非術後体重増加群の2群で比較した.次に弁単独手術群,狭心症単独手術群,弁・狭心症複合手術群,大血管手術群の術式別による4群に分類し比較した.その結果を踏まえて患者情報,手術関連情報の中から重回帰モデルを作成し,術後体重率と患者情報,手術関連情報との関連性を検討した.測定値は中央値(25%-75%)で示した.すべての解析において有意水準は5%未満とした.術後体重増加率は102(101.1-103.8)%,術前体重に戻るまでの日数は6(5.1-6.5)日,歩行獲得日数は4(4.4-5.9)日,リハパス完遂日数は8(7-10)日,入院日数は18(14.7-22.7)日であった.術後体重増加率による2群の比較ではリハパス完遂日数,入院日数が有意に長かった(リハパス完遂日数P=0.004,入院日数P=0.004).術式による4群の術後体重増加率,術前体重に戻るまでの日数,歩行獲得日数,リハパス完遂日数,入院日数に差を認めなかった.重回帰分析の結果,術中IN(β標準化回帰係数:0.352,P=0.02)が有意な項目として抽出された(自由度調整R2乗=0.306).心臓血管外科術後のリハビリテーション進行において,術後体重増加率がリハビリテーション進行の遅延に関連していることが示唆された.術式による術後体重増加率,術前体重に戻るまでの日数,歩行獲得日数,リハパス完遂日数,入院日数に差を認めなかった.重回帰分析の結果から術後体重増加率と有意に関連する項目として,術中INが抽出された. これらの結果から術中の体液管理状況,術後の体重増加率を評価することにより循環動態の変化に起因する症状の出現を予測し安全なリハビリテーションを進行するための評価指標として活用することが可能である.
  • 年齢層と卵巣刺激法からみた検討
    鈴木 葵, 齋藤 未來, 奥田 剛
    2021 年 81 巻 4 号 p. 342-346
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    近年のわが国では結婚年齢や挙児希望年齢の上昇により,不妊治療開始年齢が高齢化してきている.加齢は重要な不妊の原因の一つとされており,若年生殖期患者と同じプロトコールでの治療は,高年生殖期患者にとっては負担が大きくなってしまう.そこでわれわれは,開院した当初(2016年7月)から2019年12月までに当院で行った25歳以上のART治療患者の凍結融解胚移植を施行した774症例1,404月経周期を対象に,卵巣刺激プロトコールを調節卵巣刺激群と低刺激群に分けて年齢群別に平均採卵数,臨床妊娠率を比較した.卵巣刺激プロトコールの違いにより平均採卵数に有意差を認め,調節卵巣刺激群で12.4±3.7 S.D.個,低刺激群で4.8±2.2 S.D.個だった.しかし,凍結融解胚移植治療件数(調節卵巣刺激群79.6±63.2 S.D.件,低刺激群80.3±56.8 S.D.件)や臨床妊娠率(調節卵巣刺激群37.4±0.2 S.D.%,低刺激群37.6±0.2 S.D.%)には有意差が見られなかった.また,加齢に伴い低刺激での治療件数が増加傾向にあった.刺激法の違いで平均採卵数に有意差が生じたのに対し,凍結融解胚移植治療件数や臨床妊娠率には差が見られなかったことから,採卵数の増加を優先するだけでなく,注射などの痛みや薬剤による身体的負担,経済的負担を考慮すると,低刺激での治療は好ましい卵巣刺激法であると思われた.しかし,症例によっては卵巣予備能から調節卵巣刺激法を推奨する場合や患者希望を考慮する必要があるため,個人に合わせた排卵誘発プロトコールを慎重に検討することが重要であると推察された.
  • 芳賀 秀郷, 船登 雅彦, 新田 雅一, 松浦 光洋, 龍 家圭, 三邉 武彦, 西中 直也, 槇 宏太郎, 三邉 武幸
    2021 年 81 巻 4 号 p. 347-354
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    アスリートの競技力向上や外傷予防に医科学サポートを取り入れることは重要であり,口腔内環境もまたパフォーマンスに影響を及ぼす要因の1つである.競技パフォーマンスに支障となりうる問題を早期に抽出し対応することが重要となるが,本邦における大学アスリートへのデンタルチェックを含むメディカルチェックの普及率は未だ低く,また同一アスリートが継続的に受診した報告も多くはない.今回,大学ラグビーアスリートのデンタルチェックを分析評価しその詳細について報告する.2019年度に昭和大学スポーツ運動科学研究所のメディカルチェックを受診した同一チームに所属する大学ラグビーアスリート45名(男性,平均年齢19.3歳)を対象とした.マウスガード(以下,MG)の装着率は73.3%であり,そのうちカスタムメイドタイプが84.8%であった.またプラークコントロールレコード(以下,PCR)の平均は60.3±18.4%,DMF歯率は平均18.3%,1人平均DMF歯数(DMFT指数)は5.4本であった.統計解析より,カリスクリーンの測定値とPCRに有意な正の相関が認められた.また唾液量とDMF歯率,唾液量と歯周組織検査の際の出血(bleeding on probing:以下,BOP)ともに有意な負の相関が認められた.咬合接触面積とポジションを検討した結果,咬合接触面積はバックスに比べてフォワードが有意に大きい結果となった.本結果より過去の報告同様,大学アスリートの口腔内環境は早期に改善が必要な状況が示唆された.本対象集団のようにチーム単位での定期的なメディカルチェック受診は非常に重要である.今後も継続的に得られたデンタルチェック結果をデータベース化し,医療面からアスリートに貢献していきたいと考える.
  • 北島 徹也, 楯 玄秀, 南雲 佑, 三浦 咲子, 本間 まゆみ, 塩沢 英輔, 村上 雅彦, 瀧本 雅文, 矢持 淑子
    2021 年 81 巻 4 号 p. 355-362
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    Kruppel-like factor 4(KLF4)は腸管や皮膚をはじめとする生体内のさまざまな組織で発現する転写因子であり,癌においては,細胞周期の抑制という点から癌抑制遺伝子として,アポトーシスの抑制という点から癌遺伝子として働く二面性が知られている.今回,食道扁平上皮癌の病理組織検体を用いて,KLF4の発現とその組織学的悪性度との関係性について検討した.昭和大学病院において食道扁平上皮癌と診断された患者に対し,外科的に切除された88症例を対象とした.切除検体を用いてKLF4とp53の免疫染色を行い,その発現率と臨床病理学的特徴(腫瘍径,分化度,深達度,リンパ管・静脈侵襲,リンパ節転移の有無,進行度)について比較した.食道扁平上皮癌組織でのKLF4の発現率は51.1%(45/88)であり,正常食道粘膜組織での発現率88.6%(78/88)と比較すると,その発現率は低い傾向にあった.また,浸潤癌やリンパ節転移症例では,有意差をもってKLF4の発現率の低下がみられた(P<0.05).一方で,食道扁平上皮癌組織でのp53の発現率は82.9%(73/88)であったが,臨床病理学的特徴との有意な相関関係はみられなかった.今回の検討では,食道扁平上皮癌におけるKLF4の発現と悪性度との間に相関がみられた.即ち,進行した食道扁平上皮癌組織では有意にKLF4発現量が低下しており,食道においては,KLF4の癌抑制因子としての側面が見いだされた.
症例報告
  • 筑田 洵一郎, 葭葉 清香, 笹間 雄志, 安田 有沙, 八十 篤聡, 代田 達夫
    2021 年 81 巻 4 号 p. 363-367
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー
    魚骨の迷入は,咽頭や食道壁に多く生じるとされ,舌筋内においては比較的稀である.魚骨が舌に迷入した場合には視診あるいは触診での確認が困難となり,魚骨の有無や迷入部位の診断に難渋することがある.今回われわれは,舌背部に魚骨が迷入した1例を経験したので,その概要を報告する.患者は64歳の女性で,2017年1月夕食時にメジナを煮て食べていたところ舌に骨が刺入した.魚骨は深部に迷入していたため,自身での除去は困難であったことから,翌日当科を受診した.初診時,舌背中央部に魚骨が迷入したと思われる部位に点状の出血斑を認め,その周囲粘膜が発赤,腫脹していた.CT所見では,舌背正中よりやや右側に,垂直方向に位置する長さ約13mmの線状の不透過像を認めた.舌背中央部への魚骨の迷入と診断し,局所麻酔下で魚骨摘出術を施行した.迷入部を含むように,周囲粘膜に紡錘形の切開を加え,上皮下組織を鈍的に剥離し魚骨を確認し,鑷子で把持し摘出した.摘出物はやや弯曲した13mmの硬固物であった.迅速に迷入した魚骨の摘出術を行うことが可能であったため,術後経過は良好であった.
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