目的:本研究は血液浄化用機器に関する事故報告(以下,事故),ヒヤリ・ハット報告(以下,ヒヤリ)を用
いて,事故の特徴と要因を検討することを目的とする.
対象と方法:1)データ:公益財団法人日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業により公表する事例から報告年が2012~2021年で,医療機器等の血液浄化用機器に関する事故26件とヒヤリ事例658例を分析対象とした.2)分析:数量データは事故とヒヤリの特徴の比較を,テキストデータは内容分析の経験のある看護系研究者2名が事故要因を記した分類表を用いて分類し,その後,臨床工学技士が分類結果を確認し,三者の分類結果が一致するまで検討を重ねた.3)倫理的配慮:本研究は事業が公開するデータを二次利用してお
り,データは匿名化処理を終えた状態で事業により公開されている.
結果:発生時間帯について,事故はヒヤリに比べて夜間が有意に多かった(事故38.5%vsヒヤリ12.2%,p<0.001).加えて,医療の実施の有無(事故92.3%vsヒヤリ52.6%,p<0.001),当事者人数2名以上の割合も高かった(事故34.6%vsヒヤリ8.1%,p<0.001).発生要因はSoftwareに関して「デバイスの使用前・
中・後の管理に関するルール不足(17件,65.4%)」が,Hardwareは「操作の透明性が担保されていない(3件,11.5%)」,Livewareは「うっかり,失念(19件,73.1%)」,「リスクに対する認識の欠如またはリスクに関する認識の低さ(19件,73.1%)」が多かった.
結論:本研究の結果から血液浄化用機器に関する事故にはSoftwareやHardwareに関する発生要因の関与が示唆されること,治療に伴う手技や操作の煩雑さがLivewareの発生要因となっていることが示唆された.ヒューマンエラーを防ぐために器機側の改善と,医療機器に関するインシデントレポートの収集が必要と考える.
抄録全体を表示