火山灰土壌は,自然条件下もしくは人間活動によって容易に劣化する。また,土壌保全の方策は地域性が高く,各々の現地ですでに確立していることが多い。そこで本論では,インドネシア国ジャワ島およびバリ島の火山灰傾斜地における土壌特性,農法および保全方策の実態について検討した。調査地域の火山灰土壌は,高い肥沃性を持つ反面,低い有機物含有量であることが明らかにされた。この場合,粘土含有量,陽イオン交換能(CEC),液性限界(LL)および塑性限界(PL)などが低い火山灰土壌では高い受食性を持つ特徴があった。調査地域では野菜生産や小規模の畜産が共通に見られた。このような地域では主として間作および混作が行われ,土壌侵食を制御するための農法的およびエ法的手段が適切に組み合わされ実践されていた。現地には多層的アグロフォレストリー方式があった。そこでは,たとえば急傾斜地のベンチテラス上に縦畝が作られ,さらに等高線に沿って草帯が取り入れられるというような工法的•農法的制御方法が組み合わされていた。この例のように効果的かつ適切な土壌侵食制御が実践され,その結果土地生産性が高められるような保全方策が確立されていることが明らかとなった。
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