日本健康教育学会誌
Online ISSN : 1884-5053
Print ISSN : 1340-2560
23 巻 , 3 号
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巻頭言
原著
  • 甲斐 寿美子
    2015 年 23 巻 3 号 p. 171-181
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:妊婦のセルフケア自己効力感の構成要素を明らかにし,特性的自己効力感と非妊娠時の健康に注意する意識,健康取組行動,心身症状が,妊婦のセルフケア自己効力感に与える影響を検討した.
    方法:妊婦590名に対して質問紙調査による横断研究を行った.有効回答は589名であった.調査項目は妊婦のセルフケア自己効力感,特性的自己効力感,非妊娠時の健康に注意する意識,健康取組行動,自覚症状,基本属性とした.妊婦のセルフケア自己効力感の調査項目に対して探索的因子分析を行った.各質問項目を得点化して独立変数とし,妊婦のセルフケア自己効力感の3因子を従属変数とする回帰分析を行った.
    結果:妊婦のセルフケア自己効力感を構成する3つの因子が特定された.「健康管理と生活調整の確信」「日常的体調自覚の確信」「正常妊娠経過・正常分娩に向けた確信」である.この妊婦のセルフケア自己効力感の3因子は,特性的自己効力感(β=0.36,0.16,0.32,p<0.01),非妊娠時の健康に注意する意識(β=0.25,0.12,0.26,p<0.01),健康取組行動(β=0.22,0.13,0.12,p<0.01),非妊娠時の心身症状の自覚得点(β=-0.07,p<0.10,β=0.18,p<0.01,β=-0.22,p<0.01)からの影響を受けていた.
    結論:妊婦のセルフケア自己効力感を高めるためには,非妊娠時からの健康意識や健康取組行動,自覚症状に着目し,非妊娠時から健康取組行動を指導し,自覚している心身症状を軽減できるように援助する必要があることが示された.
  • 田中 美里, 武見 ゆかり
    2015 年 23 巻 3 号 p. 182-194
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:青年期独身男性を対象に,学童期の食習慣を把握する質問紙を作成し,現在の朝食摂取頻度と学童期の食習慣の関連を検討した.
    方法:5社の男性新入社員229人に対し,横断研究により回想法による自記式質問紙調査を行った.質問紙の作成は,学童期の食習慣43項目について,探索的因子分析,各因子の信頼性の検討を行った.次に,現在の朝食摂取頻度との関連について,従属変数を現在の朝食摂取頻度とし,階層的重回帰分析を行った.Step 1 では独立変数を基本的属性及び健康状態,Step 2 ではさらに生活習慣を加え,Step 3 ではさらに学童期の食習慣を投入した.
    結果:有効回答者は215人,平均年齢22.8(SD 1.5)歳であった.探索的因子分析の結果,「豊かな食事」,「食事作りへの参加」,「しつけ・マナー」,「家族との食事」,「親の関わりが少ない食事」,「規則正しい食事」の6因子30項目を抽出した.累積寄与率は56.4%であった.これらについては,信頼性が確認された.階層的重回帰分析の結果,現在の朝食摂取頻度と学童期の「規則正しい食事」に有意な正の関連(β=0.355,Step 3)がみられ,現在の世帯構成や身体活動習慣よりも強い関連が確認された.
    結論:青年期独身男性において,学童期に「規則正しい食事」をとっていた者は,現在の朝食摂取頻度もまた高い傾向にあることが示された.このことから,学童期の「規則正しい食事」は,長期にわたって健康的な食習慣に影響を及ぼし得ることが示唆された.
  • 辰田 和佳子, 稲山 貴代, 秦 希久子, 中村 彩希
    2015 年 23 巻 3 号 p. 195-204
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:第1に食事に気をつける行動の違いにより,食物摂取状況の良好さを示す食物摂取頻度得点に差があるかを確認すること,第2に食事に気をつける行動と10品目の食物摂取頻度との関係から,気をつける行動がどのような食物の望ましい摂取行動と関連するかを検討することを目的とした.
    方法:東京都の障がい者スポーツセンターの利用者を対象に,無記名質問紙を用いた横断調査を実施した.調査票739部を配布し,最終的に成人肢体不自由者381人を解析対象とした.食物摂取頻度得点の差にはMann-Whitneyの検定を用いた.10品目の食物摂取行動を従属変数,気をつける行動を独立変数として,二項ロジスティック回帰分析にて両者の関係を検討した.
    結果:食事に「とても気をつけている」者は,それ以外の者と比較し,食物摂取頻度得点が有意に高かった(20点 vs 18点).とても気をつける行動は,緑黄色野菜(オッズ比:2.57,95%信頼区間:1.65-4.00),その他の野菜(オッズ比:2.23,95%信頼区間:1.43-3.45),果物(オッズ比:2.29,95%信頼区間:1.47-3.57)の望ましい摂取行動と関連していた.
    結論:自立/自律している肢体不自由者を対象とした栄養教育や支援プログラムでは,食事に気をつける行動と野菜や果物の摂取行動との関連をふまえて計画することが望まれる.
実践報告
  • 鎗田 珠実, 衛藤 久美, 中西 明美, 川嶋 愛, 武見 ゆかり
    2015 年 23 巻 3 号 p. 205-215
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:小学校家庭科の指導内容との系統性を意識し,同時に学習意欲を引き出し,生徒が主体的に学習できるよう「楽しく学習する」ことを重視した中学校技術・家庭科(家庭分野)用食育プログラムを開発,実施し,プログラムの実施状況並びに学習前後の生徒の変化を評価することを目的とした.
    方法:食育プログラムの開発は,学習指導要領との照合を行った上で,先行研究をふまえた課題抽出と目標設定を行い,プログラム内容を検討した.平成23年10~11月,埼玉県S市立W中学校1年生136名を対象に全3回の食育プログラムを実施した.プログラム内容のプロセス評価は生徒が記入した自己評価カード及び授業者の記録,またプログラム前後の変化についてはプログラム学習前後に生徒対象に実施した自記式質問紙調査を用いて検討した.
    結果:男子(n=59)の70%以上,女子(n=74)の80%以上が,各プログラムが「楽しかった」と回答した.生徒の自由記述や授業者の自己評価より,本プログラムは「楽しく」学習できる内容であることが示された.生徒の学習前後の変化では,栄養や食品の学習が好きか,献立を考える学習が大切だと思うか等,食(栄養)の学習に対する意識全5項目において男女共に有意な望ましい変化が見られた.
    結論:本プログラムは食(栄養)について生徒が意欲的に学習し,日常生活で実践しようとする意欲を高めることが示唆された.
特別報告
  • 春山 康夫, 赤松 利恵
    2015 年 23 巻 3 号 p. 216-217
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
  • 神馬 征峰
    2015 年 23 巻 3 号 p. 218-223
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:アドボカシーの実践的な定義を示すとともに,グローバルレベルでのアドボカシー実践例としてエイズアドボカシーをとりあげ,その特徴を示すことを目的とした.
    内容:アドボカシーとは公共政策の形成及び変容を促すことを目的とする活動であり,活動形態としては,権利擁護,政策提言,ロビイング活動,アドボカシー・マーケティングがある.グローバルな活動としてはエイズアドボカシーが有名であり,途上国へのエイズ対策資金の大幅な増加(2000年の数十万ドルから,2013年の約150億ドル)やそれに伴う新規感染の減少(2000年から2010年の10年間で38%減)に貢献した.アドボカシーを包括的に評価する枠組みとしては6つの評価ポイントがある.その中で,アドボカシー後にみられる「社会規範のシフト」と「影響力の変化」を文献レビューによって分析し,両者において効果が得られていることを示した.しかしながら,一つの疾患に注目が行き過ぎることによって,他疾患対策に遅れが生じうるという問題点もある.特にこのエイズアドボカシーが,非感染性疾患等の対策に間接的に悪影響を及ぼしうるという点には留意すべきである.
    結論:アドボカシーは強力である.しかし万能薬ではない.全体のバランスを眺めて調整すべきであるのに.グローバルなレベルではそれが十分なされていない.アドボカシーのプラス面とマイナス面をわきまえたうえで,アドボカシーに積極的にとりくんでいくべきである.
  • 中村 正和
    2015 年 23 巻 3 号 p. 224-230
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    抄録:喫煙の健康影響を明らかにしたことは,疫学研究における20世紀最大の知見といえる.その研究成果を効果的なたばこ対策につなげるためには,行動科学の理論に基づいた喫煙習慣への介入方法の開発が必要である.その開発の手順としては,アメリカの国立がん研究所のGreenwaldとCullenが提唱したがん制圧のための5段階モデルが参考となる.すなわち,①仮説の設定,②方法の開発,③個人を対象にした比較介入研究,④特定集団での比較介入研究,⑤実地検証である.
    しかし,有効な介入プログラムがあっても,それだけでは現場での実践に広くつながらない.研究成果を実践につなげるためには政策化が必要不可欠であり,そのためには,政策提言に必要なエビデンスの構築と効果的なアドボカシーの方法の開発について研究を行う政策研究(Policy Research)の推進が必要である.
    日本のたばこ対策は国際的にみて取り組みが遅れており,喫煙は日本人の死亡原因としての寄与が今なお最も大きい.たばこ対策を推進し,喫煙の深刻な健康被害を防止するために,政策研究の一層の充実が求められる.
  • 村山 伸子
    2015 年 23 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:本稿では,社会における課題を改善するために,研究者が研究活動をとおして自治体の政策に影響を及ぼすこと,すなわち,研究者による自治体レベルのアドボカシーについて論じた.
    内容:自治体レベルの政策立案とその自治体にある大学の研究者の距離は近く,研究者は自治体の政策立案のプロセスに関わることが多い.報告者は過去15年間の自治体の栄養政策への関わりをふまえ,2013年から新潟県の減塩政策を効果的なものにするため,県および市町村の行政栄養士等との体制を構築し,実態把握と分析,対策の立案と評価計画の作成をおこなってきた.具体的には,新潟県民の高塩分摂取となる食事の特徴を明らかにし,県と市町村の役割を明確にして,住民に対する教育アプローチと環境アプローチを企画してきている.長期的には,販売される食品が全て適塩になり,子どもの頃から旨味や素材の味がわかる味覚が形成され,食事全体の適切な料理の組み合わせを守りながら,減塩のストレス無く,おいしく「適塩」の食事ができるような方向性をめざしている.
    結論:このアドボカシー活動は,ターゲットを絞った減塩対策につながった.それと同時に,行政栄養士と研究者の政策形成能力の向上とエンパワメントにもつながった.1つのアドボカシー活動が,次の政策立案にも影響し,継続的に発展できることが利点である.さらに健康的な公共政策づくり,民間事業者を含めた新たな主体づくりへ展開することが期待される.
  • 福田 洋
    2015 年 23 巻 3 号 p. 237-245
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:企業(組織)レベルのアドボカシーについて,企業における産業保健活動の展開を例に,国際学会からの刺激や,国の施策である特定健診・保健指導からの学びを,どう産業保健活動を通じたヘルシーカンパニー・健康経営へのアドボカシーに活かしているかを実践家の立場で記述した.
    内容:一見現場の活動とは無関係に思えるIUHPE等への参加や,特定健診・保健指導やストレスチェックなど政策主導型の産業保健施策への協力にも,“Think globally, act locally”の観点から多くの学びや現場への関わりがある.これらをうまく結びつけ活かすには,自らの職域でできる最良の産業保健活動はなんであろうかと考え続け,その職場にとってのゴールを設定することが重要である.本稿では,ニーズアセスメントに基づく職域ヘルスプロモーション(WHP)及び,経営・労組を巻き込んだヘルシーカンパニーの事例を示し,企業レベルのアドボカシーについて検討した.
    結論:2つの事例の検討から企業(組織)の変容では,経営層を含むキーパーソンの説得など時間と労力が必要であり,そのためには「誠実に,ブレずに,極力エビデンスに基づいて,相手の立場に立ち,一緒にWHPを推進するキーパーソンを探し,仲間を作ること」が必要と考えられた.アドボカシーは,日々の産業保健活動と別物ではなく,その延長線上にある.
  • 新保 みさ, 角谷 雄哉, 江口 泰正, 中山 直子
    2015 年 23 巻 3 号 p. 246-250
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:学会セミナー「研究・実践からアドボカシー(政策提言)へ」は,アドボカシーについて学び,学会としてのアドボカシーのあり方を議論するためになされた.本報告では,講演後になされた,「研究・実践からアドボカシー(政策提言)へ」に関する総合討論の概要をまとめた.
    内容:総合討論では,第1部の講演の内容やアドボカシーに関して,総合司会を中心に,講演者と参加者が相互に質問や意見交換を行った.主な話題としてアドボカシーへの原動力,アドボカシーの担い手,学会としてのアドボカシーのあり方に関して議論があった.講演者はこれまで関わってきたグローバル,国,自治体,企業のそれぞれのレベルにおける視点で発言をしていた.討論を通じて,日本でアドボカシーを進めるための課題として,行政機関における人材育成のあり方や大学の役割があげられた.政策を作る側からも学会としてアドボカシーを行う必要性が述べられ,今後の方向性が確認された.
    結論:講演者と参加者の議論によって,アドボカシーはそれぞれのレベルで推進されているものの,課題があることが分かった.今後,日本健康教育学会としてのアドボカシーを推進するためには,意見を1つにまとめ,議論を重ねていく必要がある.
  • 角谷 雄哉, 新保 みさ
    2015 年 23 巻 3 号 p. 251-253
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/08
    ジャーナル フリー
    目的:2015年1月25日に日本健康教育学会主催セミナー「研究・実践からアドボカシー(政策提言)へ」が開催された.本稿では,若手の会に所属する著者らが本セミナーを通して考察したことを報告する.
    内容:社会へと貢献できる研究者を目指すのであれば,若手のうちからアドボケートするための能力をみがき,アドボカシーの担い手となる心構えを持つ必要がある.しかし,本セミナーだけでは,アドボカシーの具体的な手順をイメージすることは難しかった.今後アドボカシーを実行するためには,政策に関する基本的な知識を身に付けることや,政策を作る行政側がなにを求めてどのような研究が必要とされているかを把握することが必要である.
    結論:本セミナーからの学びは大きかった.本セミナーの続編として,政策に関する基本的な知識を身に付ける機会や,政策を作る側からの意見を共有してもらう機会が得られることを期待する.
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