目的:がん相談支援センターはがんに関して誰でも無料で相談できる窓口であり,より一層の周知が必要であると指摘されている.エンターテイメント・エデュケーションの手法は,情報過多の社会における有効な啓発手段であるとされているが,日本では十分に活用されていない.本研究では,ラジオドラマおよび冊子を用いたがん相談支援センターの情報提供が,周知の手法としてどのような特徴があるのかを探索的に検討することを目的とした.
方法:図書館利用者に対して,ラジオドラマ2種および冊子資料を用いてがん相談支援センターに関する情報提供を行い,介入後のがん相談支援センターの利用意向,知識量,介入前後のがん相談支援センターの利用に関する懸念の変化を非無作為化比較試験により検討した.情報量は文字数に換算して,ラジオドラマがいずれも約900字,冊子が約10,000字であった.
結果:介入後のがん相談支援センターの利用意向に3群間の差はなく,いずれも9割の人が利用したいと回答した.がん相談支援センターに関する知識のうち,ラジオドラマ内で触れた内容については記憶している人の割合は冊子介入群と該当するラジオドラマ介入群でほぼ同じであった.
考察:情報量が10分の1に限られるラジオドラマにおいても,がん相談支援センターの利用意向をもつ人の割合はほぼ同じであった.この手法は受動的な媒体を通じた,情報が伝わりにくい人への周知手段として活用できることが示唆された.
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