日本健康教育学会誌
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24 巻, 4 号
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巻頭言
システマティックレビュー
  • 小澤 啓子, 鈴木 亜紀子, 髙泉 佳苗, 岩部 万衣子, 松木 宏美, 赤松 利恵, 岸田 恵津
    2016 年 24 巻 4 号 p. 205-216
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:夜遅い食事と肥満との関連を把握すること.
    方法:PubMedおよびCINAHLデータベースを用いて,検索式には「食事」,「夜・時間」,「食行動」,「肥満・MetS」を示すキーワードを組み合わせ,2005年以降10年間に英語で報告された論文を検索した.596件の表題と抄録を精査し,本研究の採択基準(①原著,資料や短報など,②健常な幼児以上のヒト,③「夜遅い食事」か「夜食」を含む,④「肥満」か「MetS」を含む,⑤基礎研究でない)を満たさない535件を除外した.さらに本文を精読し,最終的に11件の論文を採択した.
    結果:採択論文は,縦断研究が2件,横断研究が7件,介入研究が2件であった.研究対象者は,成人のみ対象が10件,成人と子ども対象が1件であった.5件で夜遅い食事(夜食含む)を摂取する者は,肥満(body mass index: BMI 30 kg/m2以上)の割合が高い,BMI値が高い,もしくは体重増加量が有意に多い結果であった.その一方,残り6件のうち5件は,夜遅い食事(夜食含む)と肥満(体脂肪率などの体組成を含む)との関連はなく,他の1件は,夜遅い食事を摂取する者は,摂取しない者よりもMetSのリスクが有意に低かった.
    結論:夜遅い食事と肥満との間に正の関連,負の関連を示すもの,関連を示さないものが混在しており,一貫した結果がみられなかった.その理由として,交絡因子としてエネルギー摂取量調整の有無が関わっている可能性がある.
実践報告
  • 佐久間 浩美, 朝倉 隆司
    2016 年 24 巻 4 号 p. 217-230
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:高校生が主体的に実践した「いじめ防止プロジェクト」のプロセスとアウトカムを評価することである.
    方法:本研究は,ヘルスプロモーション・アプローチをいじめ防止に適用しプリシード・プロシードモデルを活用した実践研究である.いじめ防止プロジェクトの参加者はA高等学校の生徒723名であり,プロセス評価ではプロジェクトチームが行ったいじめ要因分析や計画立案の過程,いじめ防止集会,文化祭発表,ピアカウンセリングの活動を検討した.アウトカム評価では,プロジェクト開始前と開始1年後のいじめ役割行動といじめ意識の比較,さらにプロジェクト終了後のチームメンバーの感想記述を分析した.
    結果:プロセス評価では,プリシード・プロシードモデルの活用は,対象校の実態に沿う計画立案に役立ち,活動は肯定的に受け入れられたことが示された.しかしピアカウンセリングの利用件数は少なかった.アウトカム評価に用いた被害者,加害者,傍観者,相談者のいじめ役割行動の得点は,事前より事後の方が低かった.いじめ意識では,いじめは教員が対処すべきとの記述が減り,いじめを注意し解決に導くとの記述が増えていた.またプロジェクト終了後のチームメンバーのいじめ意識は変化していた.
    結論:プロセス評価とアウトカム評価から,高校生主体のいじめ防止プロジェクトは,参加者に肯定的に受け入れられ,事前と事後でいじめ役割行動やいじめ意識に差がみられた.
  • 持田 久実, 冬賀 史織, 赤松 利恵, 市 育代, 藤原 葉子
    2016 年 24 巻 4 号 p. 231-238
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:食事バランスガイドは栄養教育で広く用いられているが,行動科学と組み合わせたプログラムの実践報告はない.本報告では,大学男子柔道部員を対象とした,食事バランスガイドと行動科学を用いた栄養教育プログラムの内容とその実践について報告する.
    事業/活動内容:2015年7月から10月,全男子柔道部員24名を対象に,食生活改善のための栄養教育プログラムを実施した.栄養教室では,知識提供の教材として食事バランスガイドと,行動科学の1つである動機づけ面接法を用い,食生活改善に対する準備性を高め,実践を促すことに焦点をあてた.また,第2回栄養教室後には,各自で設定した目標の達成度についてセルフモニタリングをさせた.食生活に改善がみられたかを調べるため,事前事後に食事調査を実施した.プログラムの全項目に参加した19名(83%)を対象に,プロセス評価を行った.
    事業/活動評価:栄養教室を実施した結果,食生活改善に対する準備性と食事知識が向上した.対象者の約9割が目標のセルフモニタリングを実施し,さらに,行動目標とした「1日の食事で副菜を2回以上かつ,牛乳・乳製品または果物を1回以上」とっている者の割合が増加した.
    今後の課題:本プログラムを実施した結果,今後の課題として,継続的な個別指導を組み入れ,連続複数日の食事調査や準備性の調査を行う必要性があげられた.
特別報告
  • 高倉 実
    2016 年 24 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:平成28年6月11日~12日に沖縄科学技術大学院大学で開催された第25回日本健康教育学会学術大会における学会長講演の内容を報告する.
    内容:はじめに沖縄の健康状況の現状と推移について触れ,平均寿命の延びが鈍化していることや生産年齢層の死亡率が高いことを示した.そして,その背景要因について,ライフスタイルが直接的な決定要因であること,その根本的原因と考えられる社会的決定要因の状況がきわめて悪いことを紹介した.次いで,健康の社会的決定要因の観点から,沖縄の「ゆいまーる」に代表される特徴的な社会的文脈と健康との関係について焦点を当て,沖縄の社会関係が健康悪化をバッファするかもしれないことについて考察した.これに関して,これまでの沖縄における高齢者および青少年の社会関係と健康に関するいくつかの知見を紹介した.
    結論:これらの知見を勘案して,人々の社会関係を活かした健康教育・ヘルスプロモーションがきわめて重要であることを強調した.
  • 崎間 敦, 白井 こころ, 奥村 耕一郎, 田名 毅
    2016 年 24 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:沖縄では健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目指して,大学,行政,教育委員会および地域が連携した健康づくりが展開されてきた.その取り組みに至った背景および現状についてまとめた.
    内容:沖縄の健康課題は,特に青壮年期における循環器疾患の危険因子である糖尿病などの生活習慣病,メタボリックシンドロームおよびその予備群の急増,肝疾患や高血圧性疾患の年齢調整死亡率が全国よりも高くなっていることである.沖縄の健康寿命延伸のためには,疾病を予防する環境づくりが大切である.その方策として,学校での食育のさらなる強化,地域でのソーシャル・キャピタルを活かした健康づくりの実践などがあげられる.これまで沖縄で展開されてきた健康づくりに加え,沖縄県保健医療部と沖縄県教育庁の横断的事業として次世代健康づくり副読本事業が開始されている.また,琉球大学ゆい健康プロジェクトでは食育とソーシャル・キャピタルを活用した健康づくり支援事業を展開している.参加者を好ましい食行動へ誘導し,肥満者の体重を減少させる成績を得ている.
    結論:次世代健康づくり副読本事業と琉球大学ゆい健康プロジェクトを紹介した.学校や地域を介した健康づくりは県民の生活習慣病予防とヘルスリテラシーの向上に寄与し,健康長寿の延伸と早世予防の足掛かりと成り得る.
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