日本健康教育学会誌
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25 巻, 3 号
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巻頭言
システマティックレビュー
  • ―国内データベースを用いたシステマティックレビュー―
    岩部 万衣子, 小澤 啓子, 松木 宏美, 髙泉 佳苗, 鈴木 亜紀子, 赤松 利恵, 岸田 恵津
    原稿種別: システマティックレビュー
    2017 年 25 巻 3 号 p. 151-167
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    目的:夜遅い食事及び夜食と肥満との関連を成人と子どもに分けて把握すること.

    方法:医学中央雑誌及びCiNiiを用いて,2005年以降の10年間に報告された論文を検索した.検索式には「夜遅い食事・夜食」と「肥満・MetS」を示す検索語を用いた.本研究の除外基準に基づき314件の表題と抄録を精査し234件を除外し,次に採択基準に基づき本文を精査して21件の論文を採択した.

    結果:21件中,縦断研究1件,横断研究18件,両方を含めたもの1件,介入研究1件であった.研究対象者は成人が15件,子どもが6件であった.成人では夜遅い食事を12件が調査し,7件で夜遅い食事の摂取者に肥満が多い等の正の関連があり,2件で性別等により肥満との関連の有無が異なり,3件で関連がなかった.夜食は10件で調査され,4件で夜食の摂取者に肥満が多く,3件で性別等により肥満との関連の有無が異なり,3件で関連がなかった.一方,子どもでは夜遅い食事の調査は1件と限られ,肥満との関連はなかった.夜食は6件で調査され,3件で関連なし,2件でBMIの高い者で夜食の割合が低く,1件で夜食の摂取者に肥満が多かった.

    結論:成人では夜遅い食事が肥満と正の関連を示し,子どもでは夜食が肥満と関連しないか負の関連を示した報告が多かった.しかし,多くは横断研究であり,交絡因子を調整した報告も少なかった.

原著
  • ―関東地方三大学における横断・縦断データより―
    大部 令絵, 川俣 実, 柴﨑 智美, 萱場 一則, 細谷 治
    原稿種別: 原著
    2017 年 25 巻 3 号 p. 168-179
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    目的:大学生における地域基盤型専門職連携教育(IPE)自己評価尺度の開発を目的とした.

    方法:研究1では関東地方のA,B大学の地域基盤型IPE参加者に実習前後にオンライン調査を実施した.有効回答597名(看護189,理学療法50,作業療法60,社会福祉86,健康行動54,検査技術59,口腔保健44,医学55)の実習前のデータを用い,探索的因子分析,Cronbachのα,ω係数算出,実習前後の縦断データから専門(8種)×実習段階(前・後)の二元配置分散分析を行った.研究2では研究1と異なる地域基盤型IPEに参加した関東地方のA,B,C大学生にオンライン調査を実施した.有効回答121名(理学療法18,医学78,薬学17,医療栄養9)のデータから確証的因子分析を行った.

    結果:研究1から,因子1:チーム形成のための能力6項目,因子2:利用者中心性5項目,因子3:メンバーの相互理解3項目,因子4:メンバーの尊重2項目を得た.α,ω係数は0.80以上であった(α=0.80~0.92,ω=0.81~0.91).全因子で実習後の因子得点が有意に高く,因子1と2に交互作用があり,一部学生の専門間で実習後の得点に有意差がみられた.研究2の適合度指標は許容範囲であった(χ2=0.07,df=123,CFI=0.99,TLI=0.99,RMSEA=0.03[90%CI 0.00~0.06]).

    結論:尺度の妥当性・信頼性が確認され,尺度が開発された.

  • 中村 正和, 増居 志津子, 萩本 明子, 西尾 素子, 阪本 康子, 大島 明
    原稿種別: 原著
    2017 年 25 巻 3 号 p. 180-194
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    目的:eラーニングを活用した,実践的な知識とスキルの習得を目指した禁煙支援・治療のための指導者トレーニングの有用性を評価し,今後の指導者トレーニングの方向性を検討するための基礎資料を得ることを目的とした.

    方法:トレーニングプログラムは,禁煙治療版,禁煙治療導入版,禁煙支援版の3種類である.解析対象は2010~13年に学習を修了した1,526名である.プロセス評価のため,学習後,プログラムに対する興味,学習の難易度等について質問した.前後比較デザインを用いて,禁煙支援・治療に関する知識,態度,自信,行動の学習前後の変化を調べた.トレーニングによって修了者間の成績差が縮小するか,格差指標を用いて検討した.

    結果:プロセス評価において,修了者の評価は概ね良好であった.3プログラムとも知識,態度,自信のほか,行動の一部が有意に改善した.トレーニング前のスコアで3群に分類し変化をみたところ,知識,態度,自信,行動のいずれにおいても,低群での改善が他の群に比べて大きかった.修了者のトレーニング前の各評価指標の格差はトレーニング後,すべての指標において縮小した.

    結論:実践的な内容を取り入れたeラーニングを活用した指導者トレーニングプログラムを評価した結果,修了者の知識,態度,自信のほか,行動の一部が改善するだけでなく,修了者間の成績差が縮小し,指導者トレーニングとして有用であることが示唆された.

短報
  • 嘉瀬 貴祥, 上野 雄己, 大石 和男
    原稿種別: 短報
    2017 年 25 巻 3 号 p. 195-203
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    目的:心身の健康と関連するパーソナリティの類型について,質問紙で測定されたBig Fiveの得点を用いたクラスタ分析により,パーソナリティ・プロトタイプと呼ばれる3つの類型(レジリエント型,統制過剰型,統制不全型)が国外の研究で抽出されている.本研究では,大学生(大学,専門学校,短期大学,大学院に在籍する学生)を対象とした調査のデータにおいても,パーソナリティ・プロトタイプが認められるか否か検討することを目的とした.加えて,それぞれの類型に該当する者の精神的健康の状態が,先行研究の報告を支持するか否か確認した.

    方法:株式会社クロス・マーケティングの調査モニターである大学生の400名を対象として,2016年5月に横断的なweb調査を実施した.調査内容はBig Fiveに基づくパーソナリティと精神的健康についてであった.この調査より得られたデータを,Ward法による階層的クラスタ分析,標準得点の算出,一要因分散分析を用いて分析した.次に,算出された標準得点を先行研究の結果と比較した.

    結果:階層的クラスタ分析の結果,レジリエント型,統制過剰型,統制不全型,識別不能型という4つのクラスタが得られた.さらに一要因分散分析の結果,レジリエント型と識別不能型は統制過剰型より精神的健康が高いという傾向が認められた.

    結論:本研究の結果から,諸外国の先行研究で見出されていたパーソナリティ・プロトタイプに相当するクラスタが,大学生においても存在することが示唆された.また,それぞれの類型に該当する者の精神的健康の状態は,先行研究の報告を支持するものであった.

特別報告
  • 荒尾 孝
    原稿種別: 特別報告
    2017 年 25 巻 3 号 p. 204-209
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    今後日本においては,「豊かで活力ある長寿社会」を実現するために,安心で安全な国民の生活を保障する「社会保障の健全運営」を可能とすることが求められる.そのためにはヘルスプロモーションに基づく健康づくりの成果を蓄積することが重要となる.特に,新たな健康課題である「健康格差」を解消するためには,従来のハイリスク型の健康づくりではなく,全ての人々を対象とした集団戦略型の健康づくりを実践すべきである.そのような健康づくりでは,全住民や疾病リスクを持つ可能性が高いと思われる「社会的特徴」を持つ集団を対象とし,マスメディアを用いた情報提供,個人や集団を対象とした健康教育,および住民や住民組織のエンパワーメントを通じた地域力向上による環境整備など,多領域にわたる包括的な介入アプローチがなされる.こうした健康づくりの集団アプローチにおける戦略構築と戦略実践に関するモデルはすでに提唱されている.健康づくりの社会的成果をあげるためには,健康づくりに関する研究成果の「蓄積」,「伝える」,「使う」といった情報の活用プロセスにおける問題点の解決と,学際的で多領域的な研究を可能とする研究環境の整備が必要である.特に,後者については,ヘルスプロモーションに関連する多くの学術団体が連携・協力して新たな学術組織として「日本ヘルスプロモーション学術連合(仮称)」を設立することが望まれる.

  • Don NUTBEAM
    原稿種別: 特別報告
    2017 年 25 巻 3 号 p. 210-222
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    Objective: To provide an overview of the key concepts, and issues of definition and measurement in health literacy, before considering approaches to improving health literacy in populations, and the implications for policy and practice.

    Contents: Health literacy describes the possession of literacy skills that are required to make health-related decisions in a variety of different environments (home, community, health clinic). These skills vary from individual to individual, and poor health literacy has been consistently associated with adverse health outcomes. Health literacy can be improved through effective communication and education, and is moderated by the environment in which communication occurs. In clinical settings, research has consistently shown that low health literacy can be successfully identified, and can be improved through effective patient education to deliver better health outcomes. In the wider community, improving health literacy requires more than the transmission of new information, it also involves the development of empowering personal skills that enable participation in a range of actions that can protect and improve health. New communication technologies provide both challenges and opportunities for health education.

    Conclusion: More personalised forms of communication, and active educational outreach will best support the goal of promoting greater independence in health decision-making. This requires more sophisticated understanding of the potential of education to strengthen both personal and community action to improve health. The use of relevant theories and models can provide important guidance on content, sequencing and delivery of health and patient education programs.

  • 第26回日本健康教育学会学術大会における公開座談会の報告
    坂本 達昭, 中西 明美, 會退 友美, 稲山 貴代, 衛藤 久美, 神戸 美恵子
    原稿種別: 特別報告
    2017 年 25 巻 3 号 p. 223-227
    発行日: 2017/08/31
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    背景:日本健康教育学会栄養教育研究会では,平成25年度から「学校における食育の評価」についての研究活動を進めている.本稿では,今年度の活動として開催した公開座談会 学校における食育で健康教育・ヘルスプロモーションの評価の考え方を取り入れるには?の概要を報告する.

    内容:横嶋剛氏は,文部科学省が公開した資料「栄養教諭を中核としたこれからの学校の食育」について解説すると共に,各学校において学校評価の中に食育を位置付けることの重要性を指摘した.太田正久氏は,学校における食育を評価するには,抽象的ではなく具体的な目標を設定すること,評価は目的の達成状況および計画の実践状況に分けて行うことの重要性を強調した.赤松利恵氏は,学校における食育の評価のポイントとして,学校における食育の目的は子どもたちの望ましい食習慣の形成であること,PDCAサイクルに基づいて行うこと,理論を活用することの3点を提言した.座談会終了後のアンケートの結果は,非常に満足した:30名,まあ満足した:29名であった(有効回答者62名).

    結論:本座談会では異なる立場のパネリストと参加者との討論から,学校という実践の場で,研究会が考える食育の評価を進めることの重要性が再認識され,理論と実践をつなぐ道筋ができた.今後は,学校評価に食育を位置づけるという課題に向き合うと共に,本研究会が考える食育の評価を広く普及していく.

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