圧縮センシング法を含めたスパースモデリング技術による間引き収集データからのMRI画像再構成研究を科研費新学術領域の枠組みで遂行した.圧縮センシング法は,従来の高速撮像技術であるパラレルイメージング法と異なるアルゴリズムにより,MRI高速撮像を可能にする技術である.頭部血管MRA,腹部肝臓MRCP,乳腺ダイナミック造影MRIなどへの圧縮センシング臨床MRI応用を検討した.圧縮センシング法はすでに臨床使用可能なMRIシーケンスにも実装され,日常臨床で高速MRI撮像法の一つとして用いられている.
生体軟組織など軽元素からなる測定対象では吸収コントラストは低く,鮮明な画像が得られないことがある.これに対して,X線の波としての性質を利用する位相イメージングでは,はるかに高いコントラストを得ることができる.近年,位相CT画像再構成において統計的画像再構成法が提案された.この手法では,吸収,散乱,位相に対する3つのコントラスト画像を得ることができ,ノイズ低減や測定回数削減などのさまざまなポテンシャルが期待されている.しかし,反復回数が多く,3つの画像を同時に再構成するため計算量が多い課題がある.これを解決するため,本研究では,近年提案されたFBP組み込み型高速化手法を統計的画像再構成法に応用する.この手法は,解析的手法であるFBP法を反復法に組み込むことにより劇的な反復回数の削減を可能とする.FBP組み込み型高速化法は,重み付き2乗誤差を最小化する画像再構成関数に対して提案されたが,本研究では位相CTの尤度最大化問題に適用する.数値ファントムとタルボ干渉計により撮影されたマウス耳小骨サンプルに対し再構成を行い,本手法により反復回数が削減できることを示す.
PET(positron emission tomography)やSPECT(single photon emission computed tomography)といった核医学的画像診断手法は,放射性同位元素によって標識されたトレーサー薬剤から放出されるガンマ線を検出する装置とCT(computed tomography)技術を融合することによって,生体内のさまざまな分子機能をイメージングすることができる.そのため,動物実験から臨床まで,現在の医療には必要不可欠なイメージング技術である.本講座では,PETより感度の点で劣るものの,安価で手軽に検査が実施できるため広く普及しているSPECTの基礎について3回にわたって連載する.第1回目の今回はSPECTの概要について述べる.