日本人小学生の英語音声を4年生から6年生まで収録した．47名の児童について，9種類の英語単母音のフォルマント周波数と母音区間の時間長を計測した．分析の結果，各単母音のスペクトルの分散が成長とともに低減されることがわかった．3種類の母音群/ᴧ/-/æ/-/ᵅ/, /ᶦ/-/ᵢ/, /ᶷ/-/ᵘ/に焦点を当てて分析を行った．児童らは/ᴧ/-/ᵅ/, /ᶦ/-/ᵢ/, /ᶷ/-/ᵘ/の弛緩母音と緊張母音の発音を音響的に区別することは難しかったが，/æ/と/ᵅ/ならびに/ᴧ/の第1フォルマント周波数に有意差が確認された．また，/ᶦ/-/ᵢ/と/ᶷ/-/ᵘ/においては継続時間長を区別して発声していた．

This study examines cross-cultural differences for the perception by Japanese, French and American judges of audio-visual recordings of a short Japanese utterance produced with nine different social affective expressions. The listeners’ task was to create an audio-visual expression that fit a given expressive label, by matching one of the nine video with one of the nine audio stimuli. L1 judges showed a higher rate of correct matching than non-L1 judges; confusions were within semantic categories. Non-L1 judges showed matching patterns similar to L1 ones, with modality-specific differences especially for culturally-related expressions like Japanese politeness and the occidental expression of seduction.

本稿は東京方言におけるアクセントの平板化現象についての音韻論的考察である。本稿の主な目的は，和語と漢語の名詞の場合，どの起伏式アクセント（頭高型，中高型，尾高型）が，より平板化傾向にあるかを検証することである。NHK発音アクセント新辞典（2016）刊行にあたり，NHK放送文化研究所にて行われた和語と漢語のアクセント調査結果をもとに，分析検証を行った。主要な結果として，和語では語末から数えて-2の位置にある起伏式アクセントが，漢語では尾高型が他のアクセント型に比べてより平板化率が高いこと，そして語末から数えて-3の位置にある起伏式アクセントが一番強く平板化現象に抵抗していることが分かった。

The current paper shows three case studies of sound symbolism in fictional names featured in popular Japanese computer games: Digital Monster, Monster Hunter, and Final Fantasy. First, we show positive correlations between evolutionary stages and the number of voiced obstruents and the number of morae in Digital Monster. This replicates the results of the sound-symbolic analysis of Pokémon names conducted by Kawahara et al. (2018a). Second, we show that only the effect of the morae is positively associated with the size (height) of the monsters in Monster Hunter. Third, we reveal a positive correlation between the spell levels in Final Fantasy and the number of voiced obstruents, but not between the spell levels and the number of morae.

本稿は英語教員を志望する大学生に必要とされる音声学授業（教職音声学）の試案を示すことを目的としている。発音モデルには一般米語を用い，聞き取りモデルとして多様なアクセントに触れる機会を設けることとする。授業には，「宣言的知識（音声学的知識）」「手続き的知識（音声指導に関する知識）」「発音および聞き取り力の訓練」の三つの要素を含める。また，英語発音のすべての項目を網羅的に扱うのではなく，明瞭度の高い発音につながる音声項目を選定し，優先的に指導すべきである。この授業を通じて，教員志望者は音声指導に必要な知識や手法と，生徒の手本となる明瞭度の高い発音を身につけることを目標とする。

本稿では，日本語教員によるアクセント指導上の困難点を詳細に捉え，そこから今後の音声学教育の改善案を提案する。日本語学習者のアクセントはコミュニケーション上重要であり，社会背景の変化によりさらにニーズが高まっている。今回実施したアンケート調査から，日本語教員向け音声学教育では，自分の声の高さを自分で判断する能力の強化や，モデル発音と実際の発音の違いについての理解などに重点をおくべきことが示された。