日本顎口腔機能学会雑誌
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17 巻, 2 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
特集記事
  • 寺田 信幸, 秋元 俊成
    2010 年 17 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/15
    ジャーナル フリー
    我々は,高齢者にやさしい生活環境の構築を目指している.そのために,健康管理システムとしての機能を果たす共生ロボットを開発した.共生ロボットが生活空間である住宅とのインターフェースとしても機能するよう音声による住宅操作を実現した.共生ロボットは住宅を操作する音声から感情を抽出し,計測した情報を基に自分の色を変える.音声合成技術を利用してインタラクティブに話すこともできる.さらに,この共生ロボットに高齢者の健康を管理するための生体情報モニターシステムを搭載した.システムは低周波センサーを使用して呼吸数と心拍数を無侵襲に拘束の少ない状態で計測する.これらの情報は共生ロボットに送られ管理される.計測された心拍数と呼吸数は従来法による計測と良好な相関を示し,生理機能指標として十分使用できることを確認した.さらに,低周波の圧力センサーに接続されている耳栓を着用して得られる外耳道の圧力変化は,非常に特徴ある変化を示した.この外耳道内圧変動は頸静脈圧の変動または右心血行動態を反映している可能性が見出された.これらのデータは,心臓疾患の重要な生理的エビデンスを提供する.このモニターシステムは,非侵襲で右心機能を診断する装置として実用化できると考えている.
原著論文
  • 大石 めぐみ, 足立 忠文, 安富 和子, 中塚 久美子, 山田 一尋, 増田 裕次
    2010 年 17 巻 2 号 p. 104-112
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/15
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,新たに開発された多方位口唇閉鎖力測定装置を用いて,永久前歯被蓋完成初期における口唇閉鎖機能と口唇形態・前歯部被蓋との関連を検討することである.【対象および方法】長野県下3小学校の小学4年生児童242名を対象とし,野外調査にて,口唇閉鎖力,前歯部被蓋関係[オーバージェット(OJ),オーバーバイト(OB)],安静時側貌写真を記録した.口唇閉鎖力は,最大努力での口すぼめ運動時の多方位口唇閉鎖力を測定した.側貌写真より,フランクフルト平面に対して垂直な面における全口唇高を計測し,全口唇高に対する相対比として,上唇比,赤唇比,下唇比をそれぞれ求めた.また安静時,軽く口を閉じた状態でのオトガイ部緊張の有無を評価した.これらと口唇閉鎖力との関連について統計学的解析を行った.【結果】女児においてOJと[上](上からの方向別口唇閉鎖力/総合力)ならびに[上+下]との間に低い正の相関が認められた.男女ともに,下唇比と総合力との間に低い相関が認められた.男児においては,オトガイ部に緊張があった群では,そうでない群に比べて,総合力と下からの方向別口唇閉鎖力は有意に小さかった.【結論】永久前歯被蓋完成初期において,口唇形態あるいは前歯部被蓋は口唇閉鎖機能に影響を与えるひとつの要因であることが示唆された.
  • 鈴木 善貴, 大倉 一夫, 重本 修伺
    2010 年 17 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/15
    ジャーナル フリー
    睡眠時ブラキシズムの治療には,一般的にオクルーザルスプリントが用いられているが,その作用機序はもちろん,付与すべき咬合挙上量の明確な指標すら未だ不明である.この理由のひとつとして,夜間睡眠中の顎運動を観察,測定することが非常に困難であることが挙げられる.本研究では著者の所属分野で開発した睡眠時6自由度顎運動測定システム(口腔内センサ方式6自由度顎運動測定器-携帯型ポリソムノグラフ-AVモニタ)を用いて,睡眠中の顎運動測定を行い,仰臥位での睡眠中の咀嚼筋安静(低緊張)状態の切歯点における垂直的顎位について解析するとともに,睡眠時ブラキシズムの発現頻度との関係についても検討を行った.被験者は睡眠障害がなく,顎口腔系に異常のない個性正常咬合を有する成人12名(男性7名,女性5名,平均年齢25.5±5.7歳)を対象とし,二夜連続測定を行って,第二夜目のデータを解析対象とした.全被験者とも良好な睡眠状態であり,本測定システムによる睡眠への影響は最小限であった.平均垂直的顎位は2.9~ 6.0 mmであった.垂直的顎位は,睡眠段階の違いによる差はなかったが,Stage 1では2.5~5.0 mmのEpochが有意に多く(P<0.05),Stage REM,2,3&4では2.5~5.0 mm,5.0 mm以上のEpochが1.0 mm未満,1.0~2.5 mmのEpochよりも有意に多く認められた(P<0.05).垂直的顎位が2.5 mm以上を示すEpochは84.2±16.3%であった.また睡眠時ブラキシズムと平均垂直的顎位の間には負の相関が認められた(R2=0.705,P<0.05).本研究結果よりヒトは終夜垂直的に開口状態にあり,垂直的顎位は,オクルーザルスプリントに付与すべき咬合挙上量の指標になることが示された.
  • 山口 正人, 足立 忠文, 大石 めぐみ, 中塚 久美子, 横井 磯子, 吉成 伸夫, 黒岩 昭弘, 増田 裕次
    2010 年 17 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/15
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,多方位口唇閉鎖力測定装置を用いて,健常高齢者における口唇閉鎖力の特性ならびにその体格・握力・残存歯の状態との関連を検討することである.【対象および方法】長野県在住60歳以上の健常高齢者139名(男性62名,女性77名,平均年齢69.6±5.2歳)を対象とし,口唇閉鎖力,身長,体重,握力,歯の状態ならびに義歯装着の有無をそれぞれ記録した.口唇閉鎖力は,最大努力での口すぼめ運動時の多方位口唇閉鎖力を測定した.口唇閉鎖力の性差の有無,対称的方向別口唇閉鎖力間の関連さらに,全8方向における口唇閉鎖力の総和(総合力)と年齢,体格,握力ならびに残存歯数,前歯保全の有無,アイヒナー分類による臼歯咬合支持域,義歯装着との関連について統計学的解析を行った.【結果】男性の総合力は女性に比し有意に大きかった.方向別口唇閉鎖力は,垂直方向,斜め方向,水平方向の順で大きかった.対称的方向別口唇閉鎖力間において,有意な相関が男性の3方向に認められず,また大きさの対称性が,女性の4方向に認められなかった.男性では,身長,体重と口唇閉鎖力との間に弱い相関が認められたのに対し,女性では,そのような傾向は見られなかった.また男女ともに総合力と残存歯数との間に関連は見られず,アイヒナー分類別総合力の大きさにも有意差を認めなかった.男性において,義歯装着者は未装着者に比し総合力は有意に大きかった.【結論】高齢者における口すぼめ時の口唇閉鎖力には,小児,若年成人とは異なる方向特異性が見られた.また高齢者の口唇閉鎖力は年齢,残存歯の状態との関連は見られなかった.
学術大会抄録
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