日本顎口腔機能学会雑誌
Online ISSN : 1883-986X
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22 巻, 2 号
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特別講演
  • 浅田 稔
    2016 年 22 巻 2 号 p. 95-103
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/02
    ジャーナル フリー
    本稿は,日本顎口腔機能学会第55回学術大会において,『親子間相互作用が結ぶ言の葉のはじめ』と題した特別講演の内容をとりまとめたものである.最初に講演者らが提唱し,推進してきた認知発達ロボティクス1,2)の概要を説明した.認知発達ロボティクスのキーアイデアは「身体性」と「社会性」であり,これらをシームレスで結びつける基盤が発達である.
    講演では,身体性,社会性,発達をキーにした認知発達の凝縮課題の一つが記号創発であると捉え,その研究分野の一例として,「音声の知覚と発声の発達」課題をとりあげた.乳幼児のランダムなクーイング期(およそ4ヶ月頃)やバブリング期(およそ5~6ヶ月頃)から母音発声に至る過程は,母親とのさまざまな相互作用を通じた記号創発過程と見なせる.最初に,認知発達ロボティクスの観点から,母子間相互作用による言語獲得過程に焦点をおいた音声の知覚と発声に関する基本課題を示した.次に,認知発達ロボティクスで行われてきた関連研究を紹介した.母親が持っているバイアスとして,知覚範疇化や構音機構の拘束にによるマグネット効果に加え,自身を模倣してくれるという期待から生じる解釈の偏り(自己鏡映バイアス)のモデルを紹介し,いかに身体性や社会性が密に関連しているかを示し,最後に,今後の課題を議論した.
シンポジウム
原著論文
  • 渡邉 明, 木村 英敏, 佐藤 雅介, 大塚 英稔, 斉藤 小夏, 菅原 絹枝, 橋戸 広大, 岩瀬 直樹, 猪野 照夫, 藤澤 政紀
    2016 年 22 巻 2 号 p. 109-119
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/02
    ジャーナル フリー
    これまで,日中のクレンチングが口腔領域に悪影響を及ぼすパラファンクションであると考えられているものの,治療法の確立には至っていない.それに対し,日中に行う咀嚼筋筋電図バイオフィードバック訓練(EMG-BF訓練)が日中クレンチングに対して抑制効果を与えるという報告がなされているものの,その持続性に関する検討は行われていない.今回,EMG-BF訓練による日中クレンチング抑制効果について,訓練終了1カ月後における持続性を検証することを目的として,本研究を行った.
     咬筋に軽度の筋痛を有する12名のクレンチング自覚者(男性7名,女性5名,平均年齢:31.5±6.3歳)をバイオフィードバック群(BF群)とコントロール群(CO群)にそれぞれ6名,無作為に割り振り実験を行った.側頭筋を対象とし,EMG-BF装置を使用し筋電図を測定した.日常生活環境下で連続する4日間とその1カ月後に,日中各5時間の測定を行った.1日目,4日目および1カ月後にEMG測定のみ行い,それぞれpre-test,post-testおよびfollow-upとした.BF群では,クレンチング時に電子音によるBF信号が発生し,クレンチングを認識させるEMG-BF訓練を2日目と3日目に2日間連続で行った.CO群ではいずれの測定日においてもBF信号を発生させず,EMG測定のみ行った.
     1日目のイベント数において,BF群(7.3±5.1回)とCO群(7.5±3.1回)の間に有意差は認められなかったが,BF群4日目(2.3±1.5回)と1カ月後(2.0±1.1回)で,1日目のイベント数(7.3±5.1回)に対して有意な減少を認めた(p < 0.05;Wilcoxon with Bonferroni's inequality test).
     実験の結果から,日中のクレンチングに対して行ったEMG-BF訓練が,クレンチング発現に対する抑制効果を発揮し,その効果は1カ月後でも持続することが示唆された.
第55回学術大会抄録
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