日本顎口腔機能学会雑誌
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2 巻, 2 号
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  • ―口唇表面麻酔による咀嚼時の下顎運動の変化―
    佐々木 啓真, 藤田 幸弘, 戸田 一雄, 相馬 邦道
    1996 年 2 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    ヒトの上下口唇間での触覚, 圧覚といった口唇感覚情報が咀嚼運動の制御に何らかの役割を持つか否かについて調べる目的で, 成人男子8名を被験者とし, 上下口唇赤唇部を表面麻酔し, 麻酔の前後で咀嚼運動に変化が見られるか否かを検討した.被験食品としては, チューインガムを用い以下に分ける各ステージにおいて左噛み, 右噛みの順番でそれぞれ30ストロークずつ咀嚼させ, その際の下顎運動をMKG (Model K-5) を用いて記録した.ステージの分類としては, ステージ1を上下口唇の麻酔前, ステージ2を麻酔直後, ステージ3を麻酔10分後, ステージ4, 5, 6を麻酔20, 30, 40分後とした.解析方法は, 各ストロークの最大開口距離, 最大側方移動距離, サイクルタイムを計測し, 各ステージにおけるそれぞれの平均値を求めた.そして, ステージの時間的推移に伴うこれらのパラメータの変化に関して比較, 検討した.その結果, ステージの時間的推移に伴う最大開口距離の変化に一定の傾向が認められた.すなわち, 8名の被験者で左右ガム咀嚼のいずれにおいても, 麻酔後ステージ2, あるいはステージ3において, その値が最小となるように減少し, 時間と共に増加し麻酔前の値に戻る傾向を示した.よって, ヒトにおいては, 上下口唇間での触・圧感覚というものが, 咀嚼運動における開口量の調節に関与していることが示唆された.
  • 三浦 周, 服部 佳功, 佐々木 啓一, 渡辺 誠, 塚原 保夫
    1996 年 2 巻 2 号 p. 91-100
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    顎関節MRI連続断層画像から下顎頭および下顎窩の皮質骨表面を自動的に抽出することを目的として, 画像処理の技法を応用した輪郭抽出手順の検討を行った.MRI撮影は, 受信コイルに9cm径デュアルサーフェスコイルを使用し, spoiled GRASS法 (TR=51ms, TE=12ms) によリ加算回数: 4回, スライス厚: 1mm, スライス間隔: ギャップレス, スライス数: 30, FOV: 13cm, マトリックス: 128×256という条件で矢状面の撮影を行った.撮影時間は13分3秒であった.顎関節皮質骨表面形態の抽出は, 皮質骨領域の抽出, 下顎頭と下顎窩の分離, 両者の輪郭の抽出という手順で行った.皮質骨領域の抽出は, 皮質骨とその他の組織とのMR値の差を利用し, 閾値処理による領域分割を用いて行った.閾値決定には, 平均隣接数2値化法を利用した.本法による閾値処理結果の2値画像は, 抽出対象の画像内での面積比率に依らず, 安定した皮質骨領域の形状を示した.しかしながら, 皮質骨領域の2値画像において下顎頭領域と下顎窩領域が連結した場合, 両者を濃度差によって分離することは不可能である.そこで顎関節部の解剖学的特徴に基づき, 両者の間に最低1画素の幅を持つ関節腔領域が存在するとの仮定を導入し, 関節腔領域の2値画像を求め, これを利用することで下顎頭と下顎窩の分離を行った.この処理によって, 両者の輪郭を別個に抽出することが可能となった.これらの画像処理により得た各断面における顎関節皮質骨の輪郭は, 原画像から手動でトレースを行った結果とほぼ一致した.また, 抽出された輪郭から再構築された3次元像は, 顎関節の解剖学的形態の特徴をよく再現していた.以上の結果から, 顎関節MRI連続断層画像における本輪郭抽出法の妥当性が示唆された.
  • 佐藤 智昭, 服部 佳功, 渡辺 誠
    1996 年 2 巻 2 号 p. 101-109
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    感圧フィルムを用いた咬合力測定法により, 歯列上咬合力の多点同時測定が可能となった.そこで, 歯列における咬合力分布を咬合診査の指標として応用することを検討するため, 正常者の中心咬合位における咬合力分布を明らかにし, さらに咬みしめ強さ, 咬合力分布, 咀嚼筋活動の関連を検索した.
    正常有歯顎者4名を用いて, 中心咬合位で種々の強さの咬みしめを行わせた.その際, 咬合力と咀嚼筋活動の同時記録を行った.咬合力は感圧フィルム「Dental Prescale 50H typeR」, ならびに専用の解析装置「Occluzer FPD-703」を用いて記録し, 下顎各歯牙の咬合力を測定した.咬合力分布は, 下顎各歯牙の咬合力が歯列全体の咬合力 (総咬合力) に占める割合 (咬合力比) として分析した.表面筋電図は両側咬筋, 両側側頭筋前, 後部より導出した.各被験筋の筋活動量は, 両側咬筋活動量の和が最大値を示した前後0.5秒間を分析区間とし, その積分値を求めた.
    その結果, 中等度以上の咬みしめ強さにおいて, 各歯牙の咬合力比は総咬合力の増加にかかわらずほぼ一定となることが明らかになった.各歯牙の咬合力比は前後的には後方歯ほど大きく, 第二大臼歯において最大値を示した.しかしながら, 同名歯牙の咬合力比は被験者間で異なった.また, 咬合力は左右側歯列でほぼ対称であることが明らかになった.一方, 総咬合力の増加に対する各筋の活動量の増加は筋種間, 被験者間できわめて相違し, 総咬合力と筋活動量の間には一定した関係が認められなかった.
    以上の結果, 正常者の歯列における咬合力分布は, 咬みしめ強さや咀嚼筋活動の相違にかかわらずほぼ一定であり, 被験者の咬合状態を反映していることが明らかになった.このことから, 咬合状態の評価における客観的指標のひとつとして咬合力分布が利用しうることが示唆された.
  • 服部 佳功, 佐藤 智昭, 渡辺 誠
    1996 年 2 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    歯列における咬合力分布の正常像を得る目的で, 顎口腔系に機能異常とその既往を有さない有歯顎者42名の被験者より, 咬みしめ時の咬合力を記録した.被験者には「できるだけ強く」咬みしめるよう指示した.咬合力記録には, 咬合力測定用感圧フィルムDental Prescale50H, type Rと専用の解析装置Dental Occlusion Pressuregraph, Occluzer, FPD-703 (ともに富士写真フイルム社製) を用いた.各歯の咬合力の総咬合力に対する比 (咬合力比) ならびに左右各側歯列における咬合力の差が総咬合力に占める比 (非対称性指数) を求め, 咬合力分布の分析に供した.
    片側歯列について各歯の咬合力比を比較したところ, 第2大臼歯で最大値を示し, おおむね後方歯から前方歯にかけて順に減少した.第3大臼歯に咬合接触を有する群では, その咬合力比は第2大臼歯より小さく第1大臼歯より大きかった.この咬合力の前後的分布は, 各歯の咬合力の負担能力, 咀嚼筋活動, 槓桿作用, 顎口腔系の変形などの統合の結果もたらされたものと推察された.
    一方, 咬合力の非対称性指数は平均9.3±6.7%で, 正常機能を営む顎口腔の力学的特徴である, 咬合力の左右的に均等な分布が認められた.また, 咬合接触を有する第3大臼歯数別に非対称性指数を比較したところ, その数が多い順に非対称性は小さく, 咬合接触を有する臼歯数の増大に伴う咬合力分布の左右的均等化が示唆された.
    本研究において明らかにされた咬合力分布の正常像は, 咬合力分布の測定を咬合診査に応用する際に, 基準としうるものであり, その臨床的有用性が推察された.
  • 加藤 均, 古木 譲, 長谷川 成男
    1996 年 2 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    硬い食品の咀嚼時に破砕を行う部位を確定するために, 試験食品としてストッピングを用い, これを舌上に乗せて任意の位置での噛みしめを行わせた.5回の噛みしめで, 噛みしめ部位は多くの被験者で一定していたので, これを主機能部位と名付けた.
    24側の被験例について主機能部位の観察を行い, 以下の結論を得た.
    1. 主機能部位は多くの被験例で対合する上顎第1大臼歯口蓋側咬頭と下顎第1大臼歯頬側咬頭内斜面の間に存在していた。
    2. 主機能部位は咬頭嵌合位において最も緊密な咬合関係を示す部位に一致していた.
    3. 主機能部位は, 咬頭嵌合位での咬合関係の変化に伴って, 隣在歯あるいは頬舌的に同一歯牙の他の部位に移動した.
  • 小川 隆広, 古谷 野潔, 住吉 圭太, 末次 恒夫, 伊藤 博夫
    1996 年 2 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    咬合平面の意義と咀嚼運動のバイオメカニクスを明らかにする第一段階として, 本研究では健常者の計測に基づき咬合平面の傾斜と咀嚼運動との関連性について検討することを目的とした.被験者はいわゆる正常者41名とし, 咀嚼運動を6自由度で記録し, 咬合平面の傾斜度を三次元座標測定器で計測した.咬合接触が直接関与しない範囲において, 咬合平面傾斜度と咀嚼閉口路角の間に, 有意な相関が認められた.すなわち, 咬合平面の傾斜の個人差にかかわらず, 矢状面上で咬合平面と咀嚼閉口路は互いにほぼ垂直的な関係を保っていることが明らかとなった.両者間の相関は, 咀嚼閉口運動中の平衡側顆頭前後的移動量が咬合平面傾斜度と有意な相関にあるという運動論的所見によって説明できた.本研究により, 咀嚼運動に影響を与える因子として咬合平面傾斜度が特定され, 得られた所見は咬合平面傾斜あるいは咬合平面の意義に, 運動論的, 機能的背景を与えるものと考える.
  • 高柳 英司, 加藤 敬, 田村 康夫, 吉田 定宏
    1996 年 2 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    本研究は小児における不正咬合と咀嚼筋機能との関係を検討することを目的に, その基礎的実験として成人を対象に左右側頭筋と咬筋における筋活動時の特徴を明確にするため, 咬合位およびクレンチング方向の変化や, 咬合に関係する要因が左右の側頭筋と咬筋筋活動のAsymmetry Index (A.I.) に及ぼす影響について検討を行った.被検者は顎口腔系に特に異常を認めない正常咬合を有する成人40名 (平均年齢25.4歳, 男性27名, 女性13名) を対象に, 咬合を水平的に変化させた場合と, 咬合を垂直的に変化させた場合の2通りの実験を行い, 咀嚼筋A.I.の変化について検討を行った.筋電図のほかに咬合接触点, 下顎を左右に側方偏位させたときの偏位量, 中心咬合位での下顎の正中の偏位量などとも併せて検討を行い, 以下の結論を得た.
    1) 側頭筋は全ての咬合位およびクレンチング方向において作業側が優位な活動を示していた.
    2) 側頭筋A.I.は中心咬合位において上顎正中に対する下顎の正中偏位量と高い相関が認められた.
    3) 側頭筋A.I.は下顎を左右へ偏位させたとき, 偏位量と高い相関が認められた.
    4) 咬筋は側頭筋のように一定の活動パターンは認められず, 実験1では3群に分かれ, 実験2では2群に分かれた.
    5) 咬筋A.I.は接触点数と正の相関が認められた.
    以上より, 咀嚼筋活動をAsymmetry Indexを用いて検討した結果, 側頭筋は咬合位およびクレンチング方向に強く影響され, 咬筋では左右咬合接触点に影響を受けていることが示唆された.
  • 蛭間 崇善, 菅沼 岳史, 船登 雅彦, 新谷 明幸, 古屋 良一, 川和 忠治
    1996 年 2 巻 2 号 p. 141-149
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究では, 顎関節X線CT再構築矢状断像から顆頭位の定量的評価を行うために適した撮影方法を検討し, 再構築矢状断像による顆頭位の測定精度について検討した.
    被写体として乾燥頭蓋骨3個 (6関節) を用い, 再構築矢状断像を得るのに適した撮影法を検討した.次に再構築矢状断像および矢状断断層撮影像における顆頭位の測定精度について比較検討を行った.顆頭位の基準として関節腔模型を付加型シリコーン印象材にて製作した.測定は万能投影機にて行い, 関節腔模型の値と再構築矢状断像および矢状断断層像との値の差を誤差として求めた.さらに顎機能障害患者20人40関節の再構築矢状断CT像の観察を行った.
    その結果,
    1) 90°, 80°および70°の冠状断データからは, 鮮明な顆頭と関節窩の矢状断像が描出され, 定量的測定が可能であった.
    2) 顆頭位の測定誤差は再構築矢状断CT像で平均0.1mm, 矢状断断層像では平均0.25mmであった.
    3) 6関節中の1関節において, 矢状断断層像では大きな誤差が認められ, 矢状断断層撮影法では関節形態によって大きな誤差の生じる場合のあることがわかった.
    4) 顎機能障害患者の28関節において, 乾燥頭蓋骨と同様に, 鮮明な顆頭と関節窩の像が描出された.
    これらの結果から, 冠状断からの再構築矢状断像ではすべての関節において, 顆頭位の正確な測定および臨床応用が可能であると考えられた.
  • 木戸 寿明, 渡部 厚史, 河野 正司, 五十嵐 直子, 金田 恒
    1996 年 2 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動は, 食物を上下顎の歯により粉砕し, 嚥下可能な食塊を形成することを目的として行われる.従って, 咬合面上において粉砕を受けた食物の流れを把握することは咀嚼機構を解明する上で重要な要件の一つである.そこで本研究では, 機能運動時の上下顎歯咬合面間の対合間隙の変化と, 食物動態の測定の2つの観点から, 咬合面上での食物の流れを追求することを目的とした.
    歯に修復物が存在せず, 臼歯部の近遠心的関係がAngle I級の4名の被験者について, 側方滑走運動中の上顎第1大臼歯と, 対合する下顎臼歯間の対合間隙の変化と, ピーナッツ咀嚼による食物動態の測定を行った.
    その結果, 対合関係の観察から, 側方滑走運動に伴い, 近心口蓋側方向に解放された「圧搾空間」が形成されること, さらに, 食物動態の測定から, 咬合面上において粉砕を受けた食物は舌側へ流れる傾向のあることが確認された.
    この結果を検証するために, 実験的に天然歯を模倣した咬合面と頬側咬頭を削除した咬合面で食物動態の比較検討を行った.その結果, 前者に比べ, 後者では頬側貯留率が増加するとともにその中に占める小さな粒子の割合が増加する傾向が認められた.頬側咬頭削除により正常咬合面の有する, 食物を舌側へと送る機能が低下したためであると考えられた.
  • 松山 剛士, 河野 正司, 荒井 良明, 池田 圭介, 平野 秀利
    1996 年 2 巻 2 号 p. 159-165
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動は咀嚼筋, 頭頸部筋, 舌筋, その他の口腔軟組織の協調活動により行われるリズミカルな運動である.また, 頭位の変化が顎口腔機能に及ぼす影響についての報告がある.これらより, 咀嚼時に下顎運動に伴って, 頭部もリズミカルに運動しているとの推測ができるが, その報告は極めて少ない.本研究の目的は, 下顎運動に伴って生じる頭部運動の特徴を明らかにし, 下顎運動との協調性を検討することである.我々は, 頭部運動と下顎運動とを同時に測定する実験システムを構築し, さらに顎運動と同時に左右咬筋, 胸鎖乳突筋の筋電図も同時測定した.測定に際しては, 被験者の頭部固定は行わず, 無拘束の状態とした.被験者には, 顎口腔系に異常を認めない, 成人男子3名を選択し, ガムの片側咀嚼を指示した.その結果,
    1. タッピング運動時には, 下顎運動に同期した上顎切歯点の上下的な周期運動が観察され, 側方成分は少なかった。
    2. 下顎運動に側方要素が加わる咀嚼運動では, 頭部運動にも左右的な運動要素による周期運動が認められ, その運動は下顎運動と協調していた.
    3. この頭部の協調運動は, 咀嚼運動の前期に特に高頻度に観察された.
    4. 咀嚼運動時に観察される頭部の側方運動周期は, 下顎の周期と約170~190msec遅れた位相偏位が認められた.
    この結果, タッピング運動に比較して, 下顎運動に側方要素が含まれる咀嚼運動には, 頭部も側方要素を含んだ周期運動を行っており, またその運動には, 下顎運動, 咀嚼筋, 頭頸部の筋の筋活動との協調性が認められることが明らかとなった.
  • 宗形 芳英, 辻 満
    1996 年 2 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    眼窩下神経幹を構成する複数の神経束の顔面受容野をネンブタール麻酔したネコで調べ, 神経幹における神経束の位置とその受容野の位置および大きさとの関係を解析した.鼻部や眼瞼下部領域では1本の神経束がしばしば複数の領域を同時に支配するのに対し, 上唇部や口角部では限られた領域だけを支配していた.しかし, 鼻部を支配する神経束が上唇部や口角部まで支配することはなく, その逆もなかった.眼窩下神経幹において, その内側部に位置する神経束群は鼻部全域と眼瞼下部の一部を支配し, 中央部から外側部に位置する神経束群はヒゲや上唇部, 口角部を支配していた.以上の結果から, 鼻部および眼瞼下部を支配する神経束のグループと, 上唇部および口角部を支配する神経束のグループが, 互いに独立してそれぞれの領域からの感覚情報を中枢に伝えていることが推察された.
  • 小川 真里, 小川 隆広, 古谷野 潔, 築山 美和, 築山 能大, 末次 恒夫
    1996 年 2 巻 2 号 p. 173-178
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼パターン別に, 前頭面において側方滑走運動経路と咀嚼運動経路との関連性を明らかにすることを目的として, 正常者33名のガム咀嚼運動と側方滑走運動を計測した.咬頭嵌合位の下方0.5mmの顎位における側方滑走運動路前頭面投影角を算出し, また, 各被験者の咀嚼運動10ストロークを4つのパターンに分類し, 被験者ごとに各パターン別に, 咬頭嵌合位の下方0.5mm (0.5mmレベル) と5.0mm (5.0mmレベル) の各顎位における咀嚼運動閉口路前頭面投影角 (閉口路角) の平均値を算出し, 各顎位においてパターン別に両者の相関関係を解析し, 以下の結論を得た.
    1. I型 (順回転型) (n=33) では0.5mmレベルにおいて, 側方滑走運動路前頭面投影角と閉口路角の間に有意な正の相関が認められた (r=0.46, p<0.01) が, 5.0mmレベルにおいては有意な相関は認められなかった.
    2. II型 (逆回転型) (n=11) では0.5mmレベルと5.0mmレベルにおいて, 有意な相関は認められなかった.
    3. III型 (交差型, 咬頭嵌合位付近の閉口路が開口路よりも咀嚼側に存在するもの) (n=11) では, 0.5mmレベルと5.0mmレベルにおいて, 有意な相関は認められなかった.
    4. IV型 (交差型, 咬頭嵌合位付近の閉口路が開口路よりも非咀嚼側に存在するもの) (n=6) では, 0.5mmレベルと5.0mmレベルにおいて, 有意な正の相関が認められた. (0.5mmレベルr=0.85, p<0.05, 5.0mmレベル, r=0.93, p<0.01)
    以上より, 咀嚼パターンの違いにより, 側方滑走運動と咀嚼運動の関連性が異なることが示唆された.
  • 尹 泳薫, 山本 隆昭, 今井 徹, 中村 進治
    1996 年 2 巻 2 号 p. 179-187
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/12/10
    ジャーナル フリー
    上顎骨や上顎歯列弓に様々な形態異常が認められる唇顎口蓋裂患者の咬合状態が, 咬筋筋活動量に与える影響を調べることを目的に研究を行った.被験者に小児および成人の正常咬合者と唇顎口蓋裂者の18名を用い, さらに唇顎口蓋裂者を上顎歯列弓に狭窄のある群 (狭窄群) とない群 (非狭窄群) に分けた.これら被験者に対し, 上下顎臼歯部の咬合接触状態を数値で表現するため新たに考案した咬合安定指数と, 9チャンネル筋電図分析システムによる咬筋筋活動量, およびそれらの非対称性指数を計測した.
    研究結果は以下のとおりであった.
    1. 小児被験者の咬合安定指数と咬筋筋活動量では, 正常群と非狭窄群に比べ狭窄群が著しく低い値を示し, それらの左右側の対称性も低かった.
    2. 咬合安定指数と咬筋筋活動量とには強い正相関 (r=0.96) が認められた.
    3. 小児唇顎口蓋裂者の狭窄群に咬合接触状態を安定させるためスプリントを10日間装着させた結果, 咬筋筋活動量は増加し, 左右咬筋の非対称性も著明に改善した.
    4. 小児被験者と成人被験者との咬合安定指数と咬筋筋活動量を比較した結果, いずれの群でも成人の方が高い値を示していた.特に, 狭窄群は他の2群に比べて著しい増加を示しており, 矯正治療による咬合の安定性の改善が認められた.
  • 牛膓 哲也, 木竜 徹, 山田 好秋, 齊藤 義明
    1996 年 2 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    近年生体の様々な生理的機能が解明され, 工学分野においても盛んに生体に関する研究が進められている.本研究では, 咀嚼運動中の筋活動と筋の伸張受容器から伝えられる情報との間に存在している関係を, 周波数領域で解析してみた.咀嚼運動時の三叉神経中脳路核の活動電位を開閉口筋の筋電図及び下顎運動と同時に計測し, 伸張受容器を支配する神経活動電位をスペクトル解析することによって, 筋活動様式と感覚神経の活動状態が周波数領域においてどのような関係を持っているのかを調べた.今回は, バイスペクトルによる解析を試みた.
  • 反橋 直也, 松本 吉生, 高原 成和, 篠原 真理, 東 和生, 高島 史男, 丸山 剛郎
    1996 年 2 巻 2 号 p. 195-200
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動における下顎ローテーションの正常像を明らかにし, 下顎切歯点座標との関連性を検討する目的で, 個性正常咬合者25名の咀嚼運動における下顎ローテーションと下顎切歯点座標をシロナソグラフアナライジングシステムで同時に測定し, 両者の相関関係を調べた.
    その結果, 咀嚼運動の1ストロークにおける下顎ローテーションの平均的な変化の様相が明らかとなり, また前後軸および上下軸回り回転量は側方座標と, ほぼ全ての垂直的開口量レベルにおいて有意な相関を認めた.しかしながら, 上下軸回り回転量は1~2mmレベルの閉口末期において側方座標と有意な相関を認めなかった.
    これらのことから, 咀嚼運動における下顎ローテーションは下顎切歯点座標により, ある程度推察することは可能であるが, 測定しなければ分らないものもあることが明らかとなり, 下顎ローテーションを下顎切歯点座標と同時に測定することの重要性が示唆された.
  • 第1報下顎限界運動の反復の短期的な影響について
    津賀 一弘, 山内 順, 田中 秀司, 出崎 雅和, 日浅 恭, 井上 智香子, 西中 寿夫, 赤川 安正
    1996 年 2 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 1996/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    顎運動の不調を訴える顎口腔機能異常患者の一部には, 運動負荷を伴った訓練によるリハビリテーションやストレッチを応用することが有用である可能性がある.本研究は, 習慣的開口路および限界運動路における下顎運動の短期的な反復動作が, 運動範囲に与える影響を明らかにすることを目的として, 天然歯列を有する男性歯科医師8名を対象に選び, 習慣的最大開口, 矢状面内限界運動, 左右側方限界運動を反復して行わせた際の下顎切歯点, 顆頭点の運動軌跡を6自由度下顎運動測定器MM-JI-Eを用いて観察した.
    その結果, 習慣的開口路での最大開口量は運動の反復に伴って増加する傾向にあり, 最大開口量の増加する被験者では, 習慣的開口路での顆頭点の最大変位量が, 最大開口量の増加に伴って片側あるいは両側でわずかに増加する傾向がみられた.さらに, 切歯点における後方蝶番運動経路は被験者8名中5名で拡大し, 矢状面内限界運動領域も拡大がみられた.側方運動で作業側顆頭の後方変位量の増加は明らかではなかった.
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