Ⅰ.目的
睡眠時ブラキシズムは非機能的な繰り返しの咀嚼筋筋活動であり,この非機能的な下顎運動が口腔顔面痛,咬合性外傷,失活歯の歯根破折,補綴装置の破壊といった歯科的問題を引き起こす因子の1つとされている.これまで,睡眠時ブラキシズムが無意識下にて生じる理由と発現機序は主に中枢性の因子によって引き起こされていると示唆されている1).しかしながら,睡眠時ブラキシズムが生じるメカニズムは未だに解明されていない.
一方,DSM-5分類における睡眠-覚醒障害群は不眠や過眠などの10の障害または障害グループを含んでおり,睡眠に問題がある状態の総称を睡眠障害としている2).睡眠障害が顎口腔領域へ及ぼす影響について検討が進められており,睡眠障害が舌の疼痛閾値3)や咬合接触の感覚閾値4)に影響を及ぼすことが示唆されている.一方,睡眠時ブラキシズムは深い睡眠から浅い睡眠レベルに移行し,微小覚醒が発生するタイミングにて睡眠時ブラキシズムを発現することから,睡眠状態を管理することによって睡眠時ブラキシズムの発現を抑制する可能性が考えられる.しかしながら,睡眠状態が睡眠時ブラキシズムの発現に及ぼす影響を検討した報告は認めない.睡眠の質の低下が睡眠時ブラキシズムの発現を惹起するならば,睡眠時ブラキシズムの抑制において睡眠状態を管理することは睡眠ブ時ラキシズムの対処療法として有用となる可能性が考えられる.
本研究では睡眠制限による睡眠状態の変化様相を把握し,その変化様相が睡眠時ブラキシズムに与える影響の解明を目的として検討を行った.
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