日本顎口腔機能学会雑誌
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23 巻, 2 号
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原著論文
  • 伊藤 佳彦, 遠藤 耕生, 田中 恭恵, 山口 哲史, 服部 佳功
    2017 年 23 巻 2 号 p. 85-95
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/03
    ジャーナル フリー
    高齢期に頻発する舌粘膜の萎縮や感染は,舌乳頭の変性を介し,味覚障害の局所的成因となることが知られている.しかし,舌乳頭の変性が口腔内の機械受容性感覚に及ぼす影響はいまだ明らかになっていない.過去の研究では糸状乳頭の基部に機械受容器が分布し,体性感覚に関して重要な役割を果たしている可能性が示唆されている.そこで我々は,糸状乳頭をはじめとする舌乳頭が口腔内のテクスチャー感覚に関与するとの仮説を立てた.本研究では舌乳頭の形態的特徴が舌-口蓋間のテクスチャー感覚に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.健常成人10名を被験者とし,各々の舌-口蓋間のテクスチャー感覚を,平均粒子径50μmの微結晶セルロース0~6.4 wt%水懸濁液のざらつき感覚閾値にて評価した.ざらつきを感じた試験液濃度によって全被験者を高感度群6人,低感度群4人に群分けした.舌乳頭の定量的,形態的な評価指標には,舌背前方1/2から採得したシリコーン印象体のマイクロX線CT像に基づき,その表面形状の画像解析によりJISの定める表面粗さを測定した.全被験者はざらつき感覚閾値が試験液濃度0.4~3.2 wt%の範囲に分布した.ざらつき感覚の高感度群と低感度群を比較したところ,二乗平均平方根粗さRq,算術平均粗さRaは高感度群において有意に大きかった.一方最大谷深さRvは低感度群において有意に大きかった.これにより,表面粗さとして評価される舌乳頭の形態的特徴が口腔内のテクスチャー感覚に重要な役割をもつ可能性が示唆された.
  • 勝美 奈央, 塙 総司, 野口 由里香, 佐々木 啓一
    2017 年 23 巻 2 号 p. 96-106
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/03
    ジャーナル フリー
     おいしさには,ヒトに関わる要素,食品に関わる要素,食事空間に関わる要素など様々な要素が影響を及ぼしている.食品に関わる要素は,味,匂い,色,温度,テクスチャーにより構成されており,特に食品テクスチャーはおいしさに関わる重要な要素の1つである.
     本研究では,任意に“ぼそぼそ感”を設定できるモデルゲルを用いて,咀嚼,嚥下時の咬筋,舌骨上筋群の筋活動を導出し,食品のテクスチャーの一つであるぼそぼそ感が顎・舌筋活動へ及ぼす影響の検討を目的とした.
     設定したぼそぼそ感の強さは,官能評価の結果から飲み込みにくさに関連していた.咀嚼回数,咀嚼時間,咀嚼周期には,一定の変化傾向は認められず,ぼそぼそ感の強度にかかわらずほぼ一定の値を示した.咀嚼時のすべての筋電図パラメータにおいて,ぼそぼそ感の強度変化に伴う有意な差は認められなかった.嚥下時では,ぼそぼそ感の強度にかかわらず,咬筋と舌骨上筋群の筋活動開始時に一定の変化は認められなかった.一方で,筋活動終了時はぼそぼそ感の増加に伴い遅延する傾向が認められた.咬筋および舌骨上筋群の筋活動量については,ぼそぼそ感の増加に伴う有意な変化は認められなかった.筋活動開始時から筋活動終了時までの筋活動時間は,ぼそぼそ感の強度に関わらず咬筋の筋活動時間に一定の変化は認められなかった.一方,舌骨上筋群の筋活動時間では,ぼそぼそ感の増加に伴い増加し,有意な差が認められた.
     本研究において,水産練り製品におけるぼそぼそ感の強さは,官能評価から飲み込みにくさに関連しており,さらに筋電図学的評価から嚥下時の舌骨上筋群の筋活動時間に影響を及ぼすことが明らかとなった.
  • 平井 健太郎, 井川 知子, 重田 優子, 小川 匠
    2017 年 23 巻 2 号 p. 107-116
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/03/03
    ジャーナル フリー
    本研究では咬耗の検査法の確立を目的に,2層性の易摩耗性診断用スプリントを開発した.診断用スプリントは,非生理機能である睡眠時ブラキシズムによるスプリント咬合面への影響を選択的に観察できるように,フルバランスドオクルージョンに調整されている.診断用スプリントと3Dスキャナーで構成される摩耗測定システムは,使用前後のスプリントの咬合面のスキャンデータを比較することで摩耗を定量的に解析可能である.ゲージブロックを用いて精度検証を行った結果,測定誤差の誤差率は2%以下で,ゲージブロック間で有意差が認められた.重ね合わせ(レジストレーション)誤差に関して,レジストレーションを行ったスキャンデータセットの組み合わせ間で有意差が認められた.本システムに採用した画像処理技術は,スプリントの咬合面部の0.05 mm以上の厚みの変化を検出可能であることが示された.ブラキシズムの自覚のある成人被験者2名(45歳女性,77歳男性)に診断用スプリントを装着し,装着2週間後の摩耗を評価した結果,診断用スプリント咬合面の変化が検出された.両被験者の摩耗の部位や範囲は異なっていた.本研究結果から,診断用スプリントを用いた摩耗測定システムを使用することで短期間に摩耗の部位,深さ,体積,方向などを定量的に評価できることが示された.
第57回学術大会抄録
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