下顎運動を想定し, 測定点から3次元的に明らかに離れた点の運動を定量的に記録するための最良の方法を検索する目的で, 咬合器の切歯部に3つのLEDを付着し, 咬合器の上顎部を矢状面上で回転させ, 切歯ピンが切歯路板上にある位置Aと垂直的に約100mm挙上されるまでの各位置B (B1~B10) の位置座標を3次元計測装置で記録後, 下顎頭球の中心付近の位置 (C, D点) の移動量について, 法線ベクトルを用いる方法 (方法I) , X, Y, Z軸の各回転角度を用いる方法 (方法II) , 剛体上の各点を結ぶ線分の長さを一定とする方法 (方法III) によって算出し, 各方法間で比較した.また, 方法Iと方法IIでは, 各位置Bの位置Aに対する回転角度, 方法IIIでは, 各位置Bにおける各LEDとC点 (D点) との間の距離を計測し, 以下の結論を得た.
1.各位置B (B1~B10) の位置Aに対するX軸とY軸の回転角は, X軸では, B1が最も小さく, B2からB10にかけて徐々に増加し, Y軸では, いずれの位置でも1°以下で小さかった.一方, Z軸の回転角は, 方法IIでは, 2°以下で小さかったが, 方法Iでは, 著明に大きかった.
2.各LEDとC点 (D点) との間の距離は, 各位置Bと位置Aでほぼ一致し, それらの差がわずかに0.02mm以下であった.
3.C点 (D点) の移動量は, 方法1が最も大きく, 方法II, 方法IIIの順に小さくなり, 各2方法間に有意差が認められた.
4.これらの結果から, 三角形を構成する3つのLEDから3次元的に明らかに離れた点の運動を定量的に記録するためには, 剛体上の各点を結ぶ線分の長さを一定とする方法が法線ベクトルを用いる方法やX, Y, Z軸の各回転角度を用いる方法よりも優れていることが判明した.
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