日本顎口腔機能学会雑誌
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4 巻, 1 号
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  • 小川 隆広, 古谷野 潔, 荻本 多津生, 末次 恒夫
    1997 年 4 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は側方偏心位での咬合接触様相を咬頭嵌合位付近と犬歯切端位付近とで比較することである.メタルストリップスを用いて, 52人の被験者の咬合接触を診査した.診査する下顎位は咬頭嵌合位から側方へ0.5, 1, 2, そして3mmの下顎位とした.0.5mm顎位は咬頭嵌合位付近の下顎位として設定し, 3mmは切端位付近の下顎位として設定した.0.5mm顎位における咬合接触は3mm顎位と異なる様相を示した.0.5mm顎位において, 作業側, 非作業側ともに臼歯部の接触頻度が高かった.わずかな診査顎位の違いも非作業側の接触様相に大きく影響した.切端位付近の接触様相と咬頭嵌合位付近の様相は, それぞれ非機能域での接触と機能域での接触と考えることができ, 両者は異なる性質のものとして位置づける必要がある.側方偏心位での咬合接触を評価あるいは確認する場合には, 診査する下顎位を規定すべきである.そうしなければ, 咬合要素の評価は適切に行われず, また咬合理論も明確化しないだろう.
  • 山口 泰彦, 佐藤 華織, 小松 孝雪, 木村 朋義, 内山 洋一, 箕輪 和行
    1997 年 4 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は31P-Magnetic Resonance Spectroscopy (MRS) を用いて顎関節症患者の咬筋のエネルギー代謝を分析し, 安静時でも咬筋筋組織内のエネルギー源が減少した状態になっているか否かを明らかにすることである.
    咬筋の疼痛や拘縮を主症状とする顎関節症患者7名, およびコントロールとした顎口腔系に異常の認められない正常有歯顎者7名の咬筋に対し31P-MRS検査を行ない, ATPの再合成のためのエネルギーの供給源として働くクレアチンリン酸 (PCr) とβ-ATPの比率 (PCr/β-ATP) , および無機リン (Pi) とβ-ATPの比率 (Pi/β-ATP) を分析した.また, 筋電図を用いて安静時の異常筋活動の有無を分析した.その結果, 以下の結論を得た.
    1. 安静時の正常者群のPCr/β-ATPの平均が3.6±0.3であったのに対し, 顎関節症患者群では1.8±0.6とPCrの比率が有意に低下しており (P<0.01) , 顎関節症患者の咬筋の易疲労性には筋組織内のエネルギー源の減少も関与する可能性が示された.
    2. 正常者では咬みしめなどの実験的疲労負荷時にPi/β-ATPは増加するのに対し, 顎関節症患者群の安静時のPi/β-ATPは正常者の安静時と差がなかった.そのため, 今回の患者のエネルギー状態は咬みしめ時のような急激にエネルギーを消費している状態やその直後の状態ではないものと思われた.
    3. 顎関節症患者の安静時筋電図において異常な筋放電は認められなかった.このことからも, 今回の患者の安静時のPCrの低下はMRS測定時に筋が異常収縮したことによる変化ではないものと考えられた.
  • ―コンタクトマイクロフォンによる測定時の変動要因―
    呉本 晃一, 前田 照太, 井上 宏
    1997 年 4 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    クリッキングやクレピタスなどの顎関節雑音はこれまで多くの研究によって報告されてきたが, その対照となる正常者の顎関節運動音に関する研究は数少ない.我々は正常者の顎関節運動音の性状を明らかにし, またコンタクトマイクロフォンにより測定する場合, どの様な要因に影響を受けるかを明らかにすることを目的として実験を行った.被検者は自覚的他覚的に顎関節に異常を認めず, 聴診および触診においても顎関節に雑音を認めない正常有歯顎者9名とし, 測定部位を4カ所に設定し, 開口速度も3段階に変化させた.顎関節運動音とマイクロフォンの揺れはコンタクトマイクロフォンとそれに外付けした加速度計を用いて観察した.
    その結果,
    1. 正常者の顎関節運動音は30Hz以下に限局した周波数分布を示し, 2~4Hz付近にピーク周波数をもつことが明らかとなった.
    2. コンタクトマイクロフォンによる正常者の顎関節運動音は関節内部の音とともに顆頭運動に伴う顎関節の動きをもとらえていることが推察された.
    3. 測定部位の違いにより顎関節運動音は周波数分布が変化し, 開口速度の違いにより運動音の大きさが変化することが明らかとなった.
    4. マイクロフォンの揺れ (加速度) からみて, 顎関節運動音は平均的顆頭点の前方20mmの位置で測定することが最適であると考えられた.
  • 早崎 治明, 中田 志保, 西嶋 憲博, 岡本 篤剛, 山崎 要一, 中田 稔
    1997 年 4 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    小児の咀嚼運動終末位の安定性および再現性, すなわち, 連続して行われる咀嚼サイクルの終末位が同じ場所にもどるか否かを評価するためガムを被験食品として, 各咀嚼サイクルの最上方の点の標準偏差を乳歯列期小児6名 (男児4名, 女児2名) および混合歯列前期小児 (男児4名, 女児3名) および成人女子9名で比較したところ, 標準偏差は乳歯列期小児, 混合歯列前期小児, 成人女子になるに従い減少していた.また3群とも切歯点では左右方向の標準偏差が大きかったが, 顆頭では前後方向に大きく, とくに平衡側において大きかった.混合歯列前期小児の切歯点は乳歯列期小児に近い傾向を示し, 顆頭は成人女子に近い傾向を示した.
  • 中田 志保, 早崎 治明, 中田 稔
    1997 年 4 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    小児の咬頭嵌合位と咀嚼運動終末位の一致性について歯年齢による変化を評価するため, ガムを被験食品として咬頭嵌合位と各咀嚼サイクルの最上方の点の間の距離を乳歯列期小児6名 (男児4名, 女児2名) および混合歯列前期小児7名 (男児4名, 女児3名) および成人女子9名で比較した.切歯点では, 咬頭嵌合位と咀嚼運動終末位の間の三次元的距離は乳歯列期小児, 混合歯列前期小児, 成人女子になるに従い, 徐々に減少していた.特に乳歯列期において前後方向の距離が大きかった.顆頭点では, 咬頭嵌合位と咀嚼運動終末位の間の三次元的距離は歯年齢が上がるに従い, 減少していた.特に混合歯列期前期は, 乳歯列期と比較すると距離は減少し, その三次元的方向は成人と類似した傾向を示した.
  • 今井 敦子, 藤野 明, 佐藤 正樹, 田中 誠也, 施 生根, 田中 昌博, 川添 堯彬
    1997 年 4 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼は, 多機能によって遂行される.できるだけ多くの生体信号の同時に記録, 計測, 観察することを目的とした.被験者は, 平均年齢25.3歳の顎口腔系に異常を認めない3名とした.被験者に90秒間自由にガムチューイングを行わせ, 舌運動, 下顎運動に追加し, 咀嚼筋筋電図との同時記録を試みた.舌運動は超音波診断装置を用いて正中矢状断において下顎第一大臼歯を結んだ線上の点を舌運動軌跡として, 下顎運動を下顎切歯点の運動としてMKGにて, さらに咀嚼筋筋電図を表面電極を用いて咬筋中央部および側頭筋前部からの筋活動の同時記録が可能となった.
    さらに正規化包絡線を作成し, 咀嚼周期の影響を受けない独立したパラメータを用いて各咀嚼ストロークでの下顎運動, 舌運動, 筋活動状態の変化を相対的にとらえることが可能となり, 以下の結果を得た.
    1. 下顎運動咬合相中に舌の最下点は位置し, 非常にリズミカルに舌と下顎運動は, 協調していた.
    2. 咬筋および側頭筋の筋活動は, 最大開口位から閉口し, 咬合相に移行する時点でピークが認められ, 開口に伴い減衰した.
    3. ガムチューイング60秒以降では, 舌運動, 下顎運動ならびに咀嚼筋筋活動とも非常に安定していた.
  • 今井 敦子, 辻 功, 木村 公一, 龍田 光弘, 田中 昌博, 川添 堯彬
    1997 年 4 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究は, 咀嚼進行に伴い変化する食品の物性に中枢的に, また末梢的にも咀嚼系が対応する過程を舌運動, 下顎運動の同時記録により観察することを目的とした.口腔内に食物が入ってから嚥下まで, つまり咀嚼口腔期を, 舌運動の観察から食品選別相 (SO相) , 移行相 (DE相) , 食塊形成相 (BF相) に分けた.被験食品には, 食品テクスチャーの異なるおかき, かまぼこ, たくあんを選択し, 咀嚼進行に伴う舌および下顎運動の変化ならびに舌と下顎運動の関連性の変化を観察した.また, 食品テクスチャーの相違による変化を観察したところ, 以下の結果を得た.
    1.咀嚼進行に伴って下顎運動での閉口相時間は短縮, 咬合相時間は延長, 開口相時間はほぼ一定の傾向がみられた.
    2.咀嚼進行に伴って各ストロークにおける舌最下点と閉口相開始点はほぼ一定, 咬合相開始点とはわずかに短縮, 開口相開始点とはほぼ一定の傾向がみられた.
    3.咀嚼進行に伴う機能的変化は, SO相では食品間の差が大きくなったが, BF相では食品間の差が小さくなる傾向を示した.
  • 住吉 圭太, 小川 隆広, 古谷野 潔, 築山 能大, 築山 美和, 山田 隆司, 市来 利香, 相沢 茂, 荻本 多津生, 梅本 丈二
    1997 年 4 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼運動に関する研究の多くは, 切歯の運動解析に限局することが多く, 実際に機能が営まれる大臼歯での運動解析を行った研究はほとんど見あたらない.従って, 我々は大臼歯における運動経路に注目し, 切歯と両側大臼歯における咀嚼運動経路のパターン分類を行い, 前頭面では切歯点と両側大臼歯は同じパターンを示すが, 矢状面では異なることを報告してきた.しかしこれらの研究は3解析点の経路の全体像を比較したに過ぎず, 実際に機能に関与する咬頭嵌合位付近に関する情報は未だ明らかではない.そこで本研究では, 咬頭嵌合位付近での両側大臼歯の運動を計測・解析し, 切歯の運動経路との関連性を明らかにすることをその目的とした.
    被験者はいわゆる正常有歯顎者50名 (男性22名, 女性28名, 年齢19~35歳, 平均年齢22.3歳) とし, 右側でのガム咀嚼運動を当教室独自の下顎運動計測システムを用いて計測した.解析点は下顎の左側中切歯の近心切縁隅角と両側第一大臼歯の遠心頬側咬頭頂とした.計測した咀嚼運動20ストローク中の5~14ストロークの10ストローク, 被験者全員で合計500ストロークを解析対象とし, 以下に示すような順序で解析を行った.まず切歯点, 両側大臼歯点それぞれの点での咀嚼運動経路の開口量0.1mm~3.Ommにおける0.1mmごとの前後・左右的座標値を, 1ストロークごとに算出した.次にこの座標値を, 各被験者内の10ストローク間で各開口量ごとに平均した.そして各開口量での平均値の, 解析点間での差の検定を, 分散分析を用いたのち多重比較検定としてFisher's PLSD法を用いて有意差検定を行った.なお, 危険率5%以下のものを統計学的に有意とした.
    結果を以下に示す.
    1.前頭面における開閉口路は, 3解析点ともほぼ同じ経路を描いていた
    2.矢状面における開口路は, 前頭面同様, 3解析点ともほぼ同じ経路を描いていた.一方, 閉口路は解析点間の差が認められ, 切歯点を基準とすると作業側大臼歯点の閉口路は後方寄り, 非作業側大臼歯点の閉口路は前方寄りの経路を描いていた.
    以上の結果より, 咀嚼運動時の咬頭嵌合位付近の大臼歯点の運動経路は, 閉口相において切歯点の運動経路と異なることが示唆された.
  • 山田 一尋, 福井 忠雄, 森田 修一, 花田 晃治, 河野 正司, 山田 好秋
    1997 年 4 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    顎関節症患者の側面顎顔面形態と咬合力の相関関係を調べるために咬合力感圧シート (Dental Prescale 50HR type) を用いて, 矯正女性患者42名 (顎機能正常者23名, 顎関節症患者19名) の咬合力, 側面顎顔面形態を調べ, 以下の結論を得た.
    1.側面頭部X線規格写真の計測では, 側面顎顔面形態は顎機能正常者と顎関節症患者の間に有意差は見られなかった.
    2.歯列全体の咬合力は顎機能正常者では768.8±525.8N, 顎関節症患者では438.1±380.1N, 咬合接触面積は顎機能正常者では12.9±11.9mm2, 顎関節症患者では6.4±2.8mm2, 平均咬合圧は顎機能正常者59.8±13.4kg/mm2, 顎関節症患者68.9±9.Okg/mm2で両群間に有意差を示した.
    3.各歯の咬合力, 咬合接触面積, 平均咬合圧は後方歯にいくにしたがい増加した.臼歯部では咬合力, 咬合接触面積, 平均咬合圧に顎機能正常者と顎関節症患者で有意差を示した.
    4.側面顎顔面形態と咬合力は歯列全体ではMandibular plane angle, Gonial angleと負の相関, L1 tomandibular plane angleと正の相関を示し, 臼歯部ではMandibular plane angle, Gonial angle, Occlusal planetoFHと負の相関, LI to mandibular plane angle, U1-SNと正の相関を示し, 小臼歯部ではMandibular planeangle, Gonialangleと負の相関を示した.
    5.顎関節症患者では咬合力と側面顎顔面形態は相関を示さなかった.
    以上から, 顎機能正常者では咬合力と側面顎顔面形態が関連し, 顎機能異常者では咬合力と側面顎顔面形態が関連しないことが示された.
  • ―測定点から離れた任意点の運動の解析―
    志賀 博, 小林 義典, 田中 彰, 秋山 仁志, 松尾 卓
    1997 年 4 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    下顎運動を想定し, 測定点から3次元的に明らかに離れた点の運動を定量的に記録するための最良の方法を検索する目的で, 咬合器の切歯部に3つのLEDを付着し, 咬合器の上顎部を矢状面上で回転させ, 切歯ピンが切歯路板上にある位置Aと垂直的に約100mm挙上されるまでの各位置B (B1~B10) の位置座標を3次元計測装置で記録後, 下顎頭球の中心付近の位置 (C, D点) の移動量について, 法線ベクトルを用いる方法 (方法I) , X, Y, Z軸の各回転角度を用いる方法 (方法II) , 剛体上の各点を結ぶ線分の長さを一定とする方法 (方法III) によって算出し, 各方法間で比較した.また, 方法Iと方法IIでは, 各位置Bの位置Aに対する回転角度, 方法IIIでは, 各位置Bにおける各LEDとC点 (D点) との間の距離を計測し, 以下の結論を得た.
    1.各位置B (B1~B10) の位置Aに対するX軸とY軸の回転角は, X軸では, B1が最も小さく, B2からB10にかけて徐々に増加し, Y軸では, いずれの位置でも1°以下で小さかった.一方, Z軸の回転角は, 方法IIでは, 2°以下で小さかったが, 方法Iでは, 著明に大きかった.
    2.各LEDとC点 (D点) との間の距離は, 各位置Bと位置Aでほぼ一致し, それらの差がわずかに0.02mm以下であった.
    3.C点 (D点) の移動量は, 方法1が最も大きく, 方法II, 方法IIIの順に小さくなり, 各2方法間に有意差が認められた.
    4.これらの結果から, 三角形を構成する3つのLEDから3次元的に明らかに離れた点の運動を定量的に記録するためには, 剛体上の各点を結ぶ線分の長さを一定とする方法が法線ベクトルを用いる方法やX, Y, Z軸の各回転角度を用いる方法よりも優れていることが判明した.
  • 山内 英嗣, 中野 雅徳, 坂東 永一, 松浦 広興, 佐藤 裕, 安陪 晋, 鈴木 温, 池田 隆志
    1997 年 4 巻 1 号 p. 77-84
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究は大臼歯咬合面に与える作業側咬合小面と, 非作業側咬合小面形態のあり方を, 顎運動との調和という観点から検討することを目的とした.
    2名の被験: 者において実測した6自由度顎運動データを基に, 基準となる咬合参照面を設定し, この面に一致する「顎運動に調和した」咬合小面と, 傾斜を変化させた「顎運動に調和しない」咬合小面をそれぞれ設定し, 咀嚼運動を含む各種偏心位における咬合接触状態をコンピュータシミュレーションの手法を用いて検討した.結果は以下の通りである.
    1.後方滑走運動路と, 作業側側方滑走運動路から作製した作業側咬合参照面に一致する咬合小面を与えた場合, 咀嚼運動の第4相においても干渉のない緊密な咬合接触が得られた.
    2.前方滑走運動路と, 非作業側側方滑走運動路から作製した非作業側咬合参照面に一致する咬合小面を与えた場合, 咀嚼運動の第5相においても緊密な咬合接触が得られた.
    3.咬合参照面よりも傾斜の急な咬合小面を与えた場合, 偏心位で干渉となり, 傾斜の緩い咬合小面を与えた場合には, 偏心位でクリアランスが生じ, 特に前者は顎運動との調和を欠く咬合小面となった.
  • 反橋 直也, 松本 吉生, 高原 成和, 東 和生, 高島 史男, 丸山 剛郎
    1997 年 4 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 咀嚼運動における下顎ローテーションと下顎切歯点座標との関連性に咬合異常が及ぼす影響を検討することである.個性正常咬合者25名, 非作業側咬合干渉を有する者10名および臼歯部交叉咬合を有する者10名の咀嚼運動における前後軸および上下軸回りの下顎ローテーションと下顎切歯点座標をシロナソグラフアナライジングシステムで測定し, 両者の相関関係を調べた.
    その結果, 閉口時において, 非作業側咬合干渉では正常咬合と異なり, 前後軸回り回転量は側方座標と相関を認めなかった.また閉口中期に上下軸回り回転量は側方座標と相関を認めたが (p<0.05) , 正常咬合に比較して回帰係数は小さい傾向を示した.臼歯部交叉咬合では, 両回転量は側方座標と有意な相関を認めたが (p<0.05) , 正常咬合に比較して回帰係数は大きい傾向を示した.
    これらのことから, 下顎ローテーションと下顎切歯点座標との関連性は咬合異常に特徴的な変化を示すことが明らかとなり, 顎口腔系の診査, 診断および咬合異常が顎口腔系に及ぼす為害作用を解明する上で, 下顎ローテーションを下顎切歯点座標と同時に測定することの重要性が示唆された.
  • 金田 恒, 木戸 寿明, 河野 正司, 河野 世佳, 豊岡 英一, メディナ ラウル
    1997 年 4 巻 1 号 p. 91-98
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咀嚼は上下顎の歯により食物を切断, 粉砕する運動であるが, 嚥下可能な食塊を形成する行為でもある.この点から, 咀嚼を評価する際には, 食物の粉砕度のみに着目するのではなく, 食物を粉砕し, 固有口腔内へ送り, 嚥下に至るという一連の過程がスムーズに行なわれているかどうかを評価することも必要である.我々は咀嚼運動時に口腔内で生じている食物の粉砕粒子の移動に着目した評価を行なった.また咀嚼する方法には, 片側歯列のみで咀嚼する片側咀嚼と左右歯列を自由に乗り換えて咀嚼する自由咀嚼とが考えられる.しかし, 両者の機能的差異については明らかにされていない.
    そこで本研究では片側咀嚼と自由咀嚼による咀嚼能力の相違について, 嚥下に要する咀嚼回数と, 口腔内における食物の粉砕粒子の移動の様相, つまり食物動態の観点から比較し, 咀嚼方法が咀嚼機能に与える影響を明らかにすることを目的とした.その結果, 嚥下に要する咀嚼回数は自由咀嚼時よりも片側咀嚼時が多く, 舌側への粉砕粒子の移動は片側咀嚼時よりも自由咀嚼時が速やかに行なわれていることが明らかとなった.
  • 池田 圭介, 真貝 富夫, 高橋 義弘, 山田 好秋, 河野 正司
    1997 年 4 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    歯根膜および閉口筋筋紡錘からの感覚情報が副腎髄質機能に及ぼす影響を調べる目的で, 麻酔ラットを用いて副腎交感神経活動, 下顎運動および咬筋筋電図を同時記録し解析を行った.大脳皮質の連続電気刺激によりリズミカルな下顎運動を誘発した.誘発されたリズミカルな下顎運動中, 副腎交感神経活動に明らかな変化は認められなかった.リズミカルな下顎運動中に, 上下切歯間に木片 (厚さ2mm) を挿入し咬合させると, 咬筋活動および副腎交感神経活動は増加した.木片を撤去すると, 副腎交感神経活動は木片の咬合前のレベルまで戻った.あらかじめ上顎神経および下歯槽神経を両側性に切断した動物では, リズミカルな下顎運動中の木片咬合による咬筋活動の促通効果は減少し, 副腎交感神経の活動には明らかな増加は認められなかった.リズミカルな下顎運動中に下顎を牽引することで筋紡錘感覚情報を増加させると, 咬筋活動は増加したが, 副腎交感神経活動には明らかな変化は認められなかった.また, 上顎切歯に手動で圧刺激を行った際には副腎交感神経活動の増加がみられ, この効果は持続圧刺激よりも反復圧刺激の方が大きかった.
    以上の結果から, 歯根膜感覚情報が副腎交感神経活動を増加させることが明らかになった.
  • 1997 年 4 巻 1 号 p. 114
    発行日: 1997年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
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