オーラルフレイルの主要症状の一つとして低舌圧があり,その診断に舌圧検査が用いられる.これまでの研究成果から,低舌圧の診断基準は最大舌圧30kPa未満と設定された.その根拠は,各年代の最大舌圧の標準値,摂食・嚥下障害患者,要介護高齢者と健常者の最大舌圧の相違,食事形態別の舌圧,フレイルやサルコペニアと舌圧に関する先行研究の結果にある.しかし今後の研究結果によっては,舌圧の診断基準は見直されるべきものである.舌圧検査は簡便なので,これまで多くの研究に用いられてきた.今後は介護予防の分野で,オーラルフレイルの早期発見,早期治療に一層活用すること,その礎となる研究を日本顎口腔機能学会会員から発信することを期待する.
本稿では,現在報告されているオーラルフレイルの評価基準の紹介とともに,オーラルフレイルにおける咀嚼能力評価の現状について解説した.しかし,咀嚼能力のみならず口腔機能の評価自体が日常臨床の中で実践されているとは言い難い.我われ歯科医療従事者は,咀嚼能力を含めた口腔機能評価の重要性についての再認識とともに,日常臨床における口腔機能評価の実践が求められている.
口腔機能の低下が低栄養を介して高齢者の健康や生活機能,生活の質に負の影響を及ぼすことが知られるに伴い,口腔機能低下は歯科が対応すべき新たな病態とみなされるようになり,診断に係る検査項目や評価基準も整備されてきた.従前,咀嚼能力の代替指標として用いられてきた咬合力は,今や口腔機能低下の診断項目のひとつに数えられているが,その評価基準の根拠は必ずしも明確ではない.本稿では,高齢者の口腔機能評価における咬合力検査の活用のあり方を考えたい.
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