日本顎口腔機能学会雑誌
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7 巻, 1 号
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  • 脇本 康夫, 高村 昭生, 常盤 肇, 鶴田 正彦, 福井 只美, 村田 邦弘, 桑原 洋助
    2001 年7 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    顎口腔機能を正確に把握するため種々の検査機器が開発されているが, 顎運動時の咬合状態を生体から直接観察することは難しい.そこで, 下顎運動を忠実に再現できる機構を開発し, 生体から得られた6自由度顎運動データによって, 下顎歯列模型を実運動として再現させるロボットを試作した.
    本システムは, 下顎模型設置部, 駆動装置およびこれらの連結部からなり, 回転入力型パラレル機構によって6自由度の動作が可能である.6自由度顎運動測定器 (ナソヘキサグラフ, JM-1000T, 小野測器) によって採得した頭部に対する下顎運動の3次元座標データを制御用パ._ソナルコンピュータでロボット座標データに変換させ, これをロボットに転送した.歯列模型の設置位置は, 計測時に用いたフェースボウを介して, 3次元座標指示器によって機械的に決定した.3次元測定器 (UMC850S, Zeiss) を用いた動作試験をX, Y, Z軸方向へ±14mmの範囲で行った.さらにロボットで再現させた運動をJM.1000Tによって再測定し, 比較検討した.ロボットによる再現速度は, 生体の約1/1.6であった.動作試験の結果, 移動方向と移動量によって誤差の発生が異なり, 最大誤差は約1mm認められた.JM-1000Tにより記録されたヒト顎運動軌跡とロボットによる再現運動軌跡は近似した形状を示したが, 移動距離においてはロボットの方がやや短かった.顎運動を詳細に観察するためには, 機構部および模型設置方法の精度向上を計る必要性が認められた.今回試作した比較的簡易な構造のロボット (6DOF/RO) において, 6自由度で下顎運動を概ね再現でき, 視覚的認識の一助となることを示した.
  • 常盤 肇
    2001 年7 巻1 号 p. 13-25
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    我々の開発した光学式三次元6自由度顎運動測定装置の測定精度に関する検討を行った.測定精度の評価には, 新たに考案した評価方法として, (1) 最小二乗法による座標変換を用いた三次元座標測定精度の検定, (2) 自動振子運動装置による蝶番運動を用いた動的測定精度検定, (3) 測定環境の照度ならびに標識点Light Emitting Diode (LED) 保持器具の動揺度による測定精度への影響の検討を行い, 以下のような結果を得た.
    1.三次元座標測定精度は±0.12mmであった.
    2.動的測定精度は, 中心座標の誤差距離で0.27mm, 半径で0.02mmであり, 繰返し性も高かった.
    3.校正時照度より測定環境の照度が明るくなる場合に精度に影響が生じた.
    4.静止点座標のばらつきの範囲はいずれも0.1mm以下であり, 頭部動揺補正機能の影響もほとんど認められなかった.
    5.被験運動時のヘッドフレームの動揺はほとんど認められなかった.
    6.LED発光面の傾斜角が30°になると三次元距離で0.55mmの誤差が生じた.
    以上より, 本測定装置は臨床上十分な測定精度を有していることが判明した.
  • 大竹 貫洋, 真柳 昭紘, 長谷川 成男, 鶴田 潤, 野澤 賢之, 三浦 宏之
    2001 年7 巻1 号 p. 27-36
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    歯のガイドと顆頭運動の関係は, 咬合の再構築や咬合面形態要素が顎機能へ及ぼす影響などの観点から, 重要な問題である.著者らは咬頭嵌合位を変化させない条件下で, 歯のガイドを変化させ, 側方滑走運動時の作業側および平衡側顆頭の運動について解析した.切歯路角が急傾斜になると, 平衡側顆頭 (顆頭中心点) の運動距離は有意に減少したが, 作業側顆頭 (顆頭中心点) の運動距離に大きな変化を認めなかった.作業側顆頭の運動方向は様々な方向へと観察されたが, 平衡側顆頭の運動方向に大きな変化を認めなかった.顆頭中心点周囲6測定点の解析の結果, 作業側顆頭は歯のガイドが変化すると受動的に変化する可能性が, また平衡側顆頭は側方滑走運動の主導的役割を担って運動している可能性が示唆された.
  • 井上 誠, 山田 好秋
    2001 年7 巻1 号 p. 37-45
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    本研究は, 自由行動下のウサギを用いて, 硬さの大きく異なる飼料 (ペレット, パン, バナナ) を咀嚼・嚥下する際の顎運動, 顎筋, 舌骨筋, 舌筋活動を同時記録し, これらの中枢制御機構に関わる感覚情報の役割を検討することを目的とした.各飼料摂取時の咀嚼, 嚥下の全周期時間, 各相時間, 顎開口量, 顎側方移動量を求めた.さらに筋電図の解析に関しては, 最大開口から各筋筋活動開始, 停止およびピークまでの時間, ピーク値を求めて各飼料間で比較した.
    1.咀嚼運動
    いずれの飼料咀嚼時においても, 開口相時間と全周期時間の間には高い相関が認められ, 開口相が全周期時間の決定に携わっていることが示された.しかしその顎運動は各飼料間で大きく異なり, ペレット, パン咀嚼は閉口2相, 開口1相を含む3相を呈していたのに対して, 最も軟らかい食品であるバナナ咀嚼では開口相, 閉口相の2相のみが認められた.筋電図に関しては, 閉口筋である咬筋, 開口筋である顎二腹筋, 主に閉口時に活動する舌牽引筋 (茎突舌筋) と開口時に活動する顎舌骨筋, 舌突出筋 (オトガイ舌筋) の基本的な活動パターンは各飼料咀嚼とも同じであった.さらにバナナ咀嚼時には顎舌骨筋や茎突舌筋の働きにより飼料粉砕のために舌と口蓋との間の押しつぶしが大きく働いている事実を示唆する結果が得られた.
    2.嚥下運動
    いずれの飼料の嚥下運動全周期時間とも開口相に一過性の顎運動停止期が挿入されたために咀嚼全周期時間に比べて延長した.ペレット, パンでは開口相にO1, O2, O3の3相が存在する5相の顎運動が認められ, 咀嚼に対してO2相の入り込みを示唆する結果が得られたのに対して, バナナ嚥下では閉口相, O1, O2の3相を呈するのみであった.嚥下時の筋活動の特徴は, 閉口相の中期で著明な活動を示すオトガイ舌筋および嚥下のleading complexと呼ばれる筋群 (顎舌骨筋, 茎突舌筋) の活動であった.ことにペレットの顎舌骨筋活動に関しては, 開口相の終盤に2つ目のピークをもつ2峰性の活動が見られ, 咽頭腔の拡大, 喉頭の挙上に関する働きが考えられた.この様な2峰性の活動がパンやバナナには見られなかった.またいずれの飼料においても顎二腹筋が閉口相で小さい活動を開始しているのが観察され, 嚥下の口腔咽頭相において顎をバランスのとれた状態に保つために活動していることが推察された.
    今回の結果から, 咀嚼時のみならず嚥下時にも顎舌協調運動は維持されており, バナナのような軟らかい飼料咀嚼時には中枢でのパターン形成機構が異なり, 舌による飼料の押しつぶしと送り込みがより強く働き, 顎運動も変調を受けることが示された.
  • 北川 純一, 真貝 富夫, 高橋 義弘, 山田 好秋
    2001 年7 巻1 号 p. 47-52
    発行日: 2001/01/31
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    咽頭・喉頭領域の機械刺激および喉頭領域を神経支配している上喉頭神経の電気刺激は, 嚥下誘発に有効である.しかしながら咽頭領域を神経支配している舌咽神経の電気刺激は, 上喉頭神経に比べ嚥下誘発が困難であるといわれている.このことは嚥下に関するパラドックスと呼ばれており, 未だに解決していない.今回の研究の目的は, このパラドックスを解明することである.
    咽頭・喉頭領域の嚥下誘発部位および神経支配を調べたところ, 機械刺激による嚥下誘発の高感受性部位は, 口蓋咽頭弓, 軟口蓋の後縁, 喉頭蓋の咽頭側外縁, 披裂喉頭蓋ヒダなどであり, これらの部位のうち, 口蓋咽頭弓, 軟口蓋の後縁は, 舌咽神経咽頭枝の切断の後, 嚥下誘発がなくなることから, 舌咽神経咽頭枝支配であることが判った.電気生理学的実験の結果は, 舌咽神経咽頭枝の電気刺激は, 上喉頭神経の電気刺激と同程度の嚥下誘発効果であったが, 舌咽神経舌枝の電気刺激は嚥下誘発に効果がなかった.また, 舌咽神経咽頭枝と上喉頭神経の同時刺激は嚥下誘発の促通を生じ, 舌咽神経舌枝と上喉頭神経の同時電気刺激は嚥下誘発を抑制した.これらの結果より, 舌咽神経のうち咽頭枝が嚥下誘発に重要な役割を果たしており, 舌枝は嚥下誘発に重要でないことが判った.パラドックスが生じた理由として, 過去の研究では舌咽神経舌枝のみ, あるいは舌咽神経舌枝と咽頭枝を同時に刺激していたのではないかと考えられる.
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