日本顎口腔機能学会雑誌
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28 巻, 2 号
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臨床報告
  • Yoshiharu Nakamura, Yuko Shigeta, Eriko Ando, Takuya Kihara, Tomoko Ik ...
    2022 年 28 巻 2 号 p. 67-72
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    A 53-year-old female complained the slight pain and swelling of the marginal gingiva in the mandibular right first molar. Her mandibular right first molar was diagnosis as hopeless with clinical and radiographic examination and was extracted. The several treatment options for her missing tooth including an implant-supported crown, a removable partial denture, a tooth supported fixed bridge were proposed. The advantages and disadvantages of each treatment were comprehensively explained to her. She strongly hoped no to sacrifice her natural teeth, and rejected all of the above treatments. We then proposed to her a novel devised minimally invasive prosthodontic treatment modality that was a tooth-supported removable bridge without tooth preparation named “non-preparation removable bridge (NPRB)”. She thus decided to choose the NPRB treatment. The NPRBs were made of the following two CAD/CAM polymeric materials by using CAD/CAM technology; polymethyl methacrylate (PMMA) and polyetheretherketone (PEEK), the latter one has been widespread in the dental field, such as denture framework, dental crown, bridge, and dental implant, because of its favorable physical, mechanical and chemical properties. After wearing the NPRBs, usability tests were conducted. As a result of subjective and objective results of usability testing of the NPRBs, the PEEK-NPRB received higer evaluation than the PMMA-NPRB. Finally, the patient decided to use the PEEK-NPRB. One-year successful clinical follow-up was done. The patient was very satisfied with the good wear feeling and the function of the NPRB. The NPRB treatment is less time consuming than other treatment approaches, and the suitable treatment option for the patient who rejected more invasive treatment options.

学術大会抄録
  • 内ヶ崎 一徹, 田中 恭恵, 水上 雅史, 栗原 和枝, 服部 佳功
    2022 年 28 巻 2 号 p. 74-75
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    嚥下後に口腔に残留する唾液と定義される残留唾液は,部位により厚さの異なる薄膜として口腔粘膜を被覆する.膜の最薄部は硬口蓋前部で,健常者の平均膜厚は10μmを下回り,安静時唾液分泌速度が計測限界以下の重度ドライマウス患者では平均3.4±2.4μmと報じられている1)

    残留唾液は,口腔粘膜の保湿や保護作用に加え,口あたりなどの食感の形成や,食塊移送時の食塊−粘膜間の潤滑に関与し,これらの作用にムチンなどの成分タンパク質がもたらす粘性が関与することから,唾液の粘性は唾液機能を検討するうえで重要な評価項目である.

    一方,口腔には両側3対の大唾液腺に加え,各部の小唾液腺が開口し,それぞれが成分や粘度の異なる唾液を分泌することから,残留唾液の粘度は口腔粘膜上の部位間で異なると推察されるが,この点を明らかにした検討は渉猟した範囲で未だ行われていない.

    著者らは,口腔粘膜各部の残留唾液の粘度を測定し,唾液粘度の口腔内分布とその機能的意義を検討することを企図した.また,非ニュートン流体に適したコーンプレート型粘度計では測定に要する量の唾液試料採取が困難であることから,東北大学未来科学技術共同研究センターにて新規開発された超微量粘度計を用いることとした.

    本検討の目的は,残留唾液試料の採取から粘度測定に至る一連の測定方法の確立である.

  • 山田 蘭子, 杉本 皓, 田中 祐貴, 北川 佳祐, 古寺 寛志, 足立 れいみ, 才本 大稀, 小室 奈央, 谷地 開, 桑原 実穂, 萬 ...
    2022 年 28 巻 2 号 p. 76-77
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    味覚刺激により唾液分泌量が増加することは国内外で多数報告されており1, 2),口腔乾燥症に対して想定し得る臨床的対応の一つとして味覚刺激の利用が考えられる.しかし,味物質が長時間口腔内に存在することによって,唾液分泌がどのような影響を受けるかは明らかとなっていない.そこで本研究は,長時間の味覚刺激が唾液分泌量に与える影響を評価することを目的とした.

  • 後藤 理恵, 落合 勇人, Sirima Kulvanich , 辻村 恭憲, 真柄 仁, 竹井 亮, 髙橋 肇, 井上 誠
    2022 年 28 巻 2 号 p. 78-79
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    咀嚼時には,閉口筋による食物粉砕に加えて,顎口腔顔面領域の多くの感覚運動機能の発揮により食塊形成が行われる.我々は以前,食塊の水分値や吸水性が口腔内の湿潤性を変えることで咀嚼運動に影響を与える可能性があることを報告した1).すなわち,吸水性が高い食品は口腔内の唾液を奪うことで湿潤性を低下させ,食塊形成時の運動負荷を上げるというものであった.本研究では,健常成人男性を対象として,疑似的にもたらされた口腔乾燥状態が咀嚼時の食塊形成にどのような影響を与えるかについて調べた.

  • 伊藤 崇弘, 重本 修伺, 佐野 吏香, 木原 琢也, 井川 知子, 平林 里大, 重田 優子, 平井 真也, 小川 匠
    2022 年 28 巻 2 号 p. 80-81
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    全運動軸(Kinematic Axis:KA)は,矢状面内のすべての運動に対する回転軸である.KAは歯のガイドの影響を受けず臨床的にも基準となる顆頭間軸であるが,顎機能異常者においては算出できない場合があることを第61回学術大会にて報告した1).本研究では,顎関節円板転位の有無とKA算出の可否について検討を行ったので報告する.

  • 三浦 寛貴, 村上 小夏, 浅見 和哉, 藤澤 政紀
    2022 年 28 巻 2 号 p. 82-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    嚥下障害にとって頸部屈曲筋力は重要な因子であり,Wakabayashi ら1)は頭部挙上力と誤嚥に関連があることを報告している.頸部屈曲筋力の計測は背臥位からの頭部挙上運動を行うが,これは舌骨上筋群の他に前斜角筋,胸鎖乳突筋,腹直筋などの活動が大きくなることから,筋力低下を起こしている筋の同定が難しく,嚥下機能に関連した頸部屈曲筋の計測が困難であるというデメリットを含有していると考えられる.そこで本研究では,前斜角筋,胸鎖乳突筋の活動を抑制させ頭頸部深層屈曲筋の評価が可能である頭頸部屈曲テスト(Craniocervical Flexion Test:CCFT)を用いて頸部筋力と嚥下機能の関連を探ることで,嚥下障害の評価に有用となる可能性を検討した.

  • 山上 祐美, 榎本 崇宏, 鈴木 善貴, 新開 瑞希, 松香 芳三
    2022 年 28 巻 2 号 p. 84-85
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    摂食嚥下障害を評価する方法として嚥下造影検査(VF:videofluoroscopic examination of swallowing)及び嚥下内視鏡検査(VE:videoendoscopic examina-tion of swallowing)がある1).しかし,これらは高価な計測装置や高度な専門技術が必要であり,患者への身体的負担もある2, 3)ことから,大多数をスクリーニングし,嚥下障害の早期発見を行うことは現実的ではなく,簡便・安価で患者に負担の少ない嚥下動態評価法の開発が必要である.

    簡便な摂食嚥下機能の評価法の一つに嚥下音に基づく頸部聴診法が挙げられるが,評価者の主観や経験に依るところが大きい4).近年,嚥下音の自動解析をもとに,摂食嚥下障害の評価を行う研究5)が報告されているが,スクリーニング法としては更なる検討が必要とされている.Hondaらは,嚥下音の持続時間と顎位との関係について,正面を向いた姿勢と顎引き姿勢で常温水5mLを嚥下した際,顎引き姿勢で第I音が有意に減少し,第II音が有意に延長したと報告しており6),嚥下音の解析を行う場合,顎位といった交絡因子の影響を考慮する必要がある.同様に,頭位を変化させた場合においても,咽頭形状に影響を与えることが報告されている7, 8)ことから,頭頸部の姿勢によって嚥下音の音響特性が変化すると仮説を立てることができる.そこで,本研究では,中間位,頭位屈曲,頭位伸展の3種類の頭位の嚥下音の音響特徴量への影響を調査することを目的とした.

  • 向井 明里, 清水 慶隆, 髙橋 珠世, 吉川 峰加, 大下 慎一郎, 佐伯 昇, 貞森 拓磨, 志馬 伸朗, 津賀 一弘
    2022 年 28 巻 2 号 p. 86-87
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    嚥下障害を有する患者のケアは,多職種が連携して行う必要があるため,生活環境で嚥下機能を簡便かつ正確に評価し,その情報を共有できれば,嚥下障害の早期介入を可能にし,誤嚥性肺炎による入院や死亡リスクの軽減に繋がる可能性がある.

    しかし,現状の嚥下スクリーニングテストである反復唾液嚥下テストや改訂水飲みテスト(MWST)は主観的要素が大きく,検査者間のばらつきが大きい.また,嚥下造影や嚥下内視鏡検査は侵襲的かつ専門性が高く,嚥下機能の日常的な観察ツールとはなりにくい.

    そこで,本研究では,電子聴診と人工知能(AI)を活用した音響解析技術により,MWSTの際に生じる水の流入音(以下流入音)を指数化するシステムを開発し,その有効性について検証した.

    なお,本研究は,広島大学倫理審査委員会の承認を得ている(承認番号 E-1599-1).

  • 山田 雅治, 片桐 綾乃, 増田 裕次, 豊田 博紀, 丹羽 均, 加藤 隆史
    2022 年 28 巻 2 号 p. 88-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    咀嚼は口腔内に摂取した食物を切断・破砕し,嚥下に適した大きさの食塊を形成するリズミカルな筋の協調運動である.ヒトにおいては,離乳期から乳歯列期にかけて咀嚼時の咀嚼筋活動が成人と同等まで成熟するという報告1)があり,離乳直後の期間は咀嚼運動を獲得・完成するための重要な期間であると考えられる.

    離乳後の咀嚼運動の経日的変化については,ウサギの日中咀嚼筋活動を経日的に解析した報告2)や,ラットの離乳前後に摂食時の咀嚼筋活動を横断的に解析した研究3)はあるものの,この期間の咀嚼運動の動態変化に関する研究は極めて少ない.また、咀嚼運動パターンの個体間差を考慮すると,幼齢動物における咀嚼運動の経日的な変化を縦断的に調べる必要があると考えられる4)

    そこで本研究では,ラットにおいて,行動学的および筋電図学的な方法を用いて,離乳以後の咀嚼運動の経日的変化を縦断的によって明らかにすることを目的とした.

  • 笹 杏奈, 羽尾 直仁, 真柄 仁, 辻村 恭憲, 井上 誠
    2022 年 28 巻 2 号 p. 90-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    固形食品摂取の際には,咀嚼による食品粉砕に加えて,顎口腔顔面領域の感覚と運動の統合機能を駆使した食塊形成過程が必須である.過去には,咀嚼による食品粉砕・食塊形成過程を筋活動様式の変化,食塊物性の変化,画像による動作解析・食塊移送の追跡を行うなどの手法で評価した研究があるものの,食品粉砕に引き続き行う食塊形成/移送を詳細に評価した研究は少ない.そこで本研究では,筋電図と顎運動記録を同時記録して,咀嚼時の食塊形成を定量評価できるか否かについて検討した.

  • 佐藤 理加子, 兒玉 匠平, 設樂 仁子, 大川 純平, 堀 一浩, 小野 高裕
    2022 年 28 巻 2 号 p. 92-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/11/22
    ジャーナル フリー

    I.目的

    舌は緻密でダイナミックな動きにより様々な機能を生み出し,咀嚼・嚥下・構音において重要な役割を担っているが,口腔内にあるため運動を直接観察することはできない.我々は舌運動モーションキャプチャシステム(電磁アーティキュログラフ,以下EMAとする)と舌圧測定の同時測定により,水嚥下時やとろみ水嚥下時の舌運動と舌圧発現様相の特徴および双方の関係性について研究を行い,報告してきた1, 2)

    一方で,咀嚼時の顎運動の解析や舌圧測定3)は現在まで様々な研究がされてきたものの,舌運動の詳細な解析はほとんど行われておらず,舌運動と顎運動との関係性についても不明な点が多い.そこで今回我々は,咀嚼時の舌運動の詳細を探索するため,EMAと舌圧の同時測定による実験系を構築し,測定結果の解析を試みたのでpreliminary reportとして報告する.

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