室内環境
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12 巻, 2 号
室内環境
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • 嵐谷 奎一, 秋山 幸雄, 欅田 尚樹
    2009 年 12 巻 2 号 p. 71-86
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    1970年代より今日までの室内環境中の化学物質の種類,濃度計測を中心とし発表された我が国の調査・研究についてまとめた。2000年以前の調査・研究については,NO2,CO,CO2,粉塵を室内汚染の中心としてなされ,2000年以降は,シックハウス症候群などの室内に起因する疾病の原因対策の視点で,揮発性有機化合物やアルデヒド類などの化学物質の調査,また化学物質過敏症調査や健康な住居環境構築のための調査・研究がなされてきている。
解説
  • 福冨 友馬, 安枝 浩, 中澤 卓也, 谷口 正実, 秋山 一男
    2009 年 12 巻 2 号 p. 87-96
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    本稿では,ハウスダスト中のダニと昆虫のアレルゲンとヒトのアレルギー疾患の関係を解説した。
    ハウスダストは多くの患者にとってアレルギー疾患の発症原因でありかつ増悪因子である。しかし,ハウスダストは極めて多種のアレルゲンの混合物であり,家屋により優位なアレルゲン種も異なり,個々の患者が影響を受けているアレルゲンは異なっている。ダニアレルゲンは,本邦においても国際的にも最も重要な気管支喘息,アレルギー性鼻炎の原因アレルゲンである。多くの研究が,室内環境中のダニアレルゲン量の増加が,喘息の発症と増悪の原因であることを示してきた。国際的にはゴキブリアレルゲンはダニと同等に重要な室内環境アレルゲンと考えられている。しかしながら本邦の室内環境では,ゴキブリアレルゲンはほとんど検出されず,ゴキブリ感作率も低い。むしろ,本邦の室内塵を調査するとチャタテムシ目や双翅目,鱗翅目などのほうが頻繁に検出され,本邦ではこれらの昆虫の方が重要性が高いと考えられている。
原著論文
  • 青柳 玲児, 松延 邦明, 松村 年郎
    2009 年 12 巻 2 号 p. 97-102
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    スチレン蒸気の測定には固体捕集/溶媒抽出/ガスクロマトグラフ法が多用されている。しかし室内環境の低濃度蒸気の分析では,溶媒抽出時の回収率が低いため測定値は過小評価されている。従って回収率を含めた分析精度を見直す必要があり,そのためには校正蒸気の供給が不可欠となる。低濃度蒸気の調製には連続調製法が有効であり,パーミエーションチューブ(P-tube)法はこれに適している。そこで本研究では,P-tube法による室内水準スチレン校正蒸気の連続供給を目的とした。径一定のポリテトラフルオロエチレンチューブに,スチレンモノマー及び重合防止剤を充填しP-tubeを作製した。これを一定温度に保持し乾燥清浄空気を連続的に通気して蒸気を発生させ,任意間隔毎にP-tube重量を測定した。またガスクロマトグラフにより蒸気の定性分析を行った。この結果,重合防止剤の添加により,P-tube重量は1年以上一定の割合で減少した。測定間隔当たりのP-tube減少重量から浸透速度を算出し,これと希釈用ガス流量から発生濃度を算出した結果,室内水準蒸気の発生が可能であることが示された。蒸気定性分析の結果,スチレンモノマーの発生が確認され,これに対しスチレン二量体及び重合防止剤蒸気の発生は確認されなかった。これより,作製P-tubeにより不純物のない室内水準のスチレン蒸気を長期間,安定して連続供給できることが示された。
  • 高木 麻衣, 吉永 淳
    2009 年 12 巻 2 号 p. 103-114
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    小児の化学物質曝露が懸念されている中,主要な化学物質曝露源の一つとしてハウスダストが注目されつつある。本研究では,我が国において今後さらに詳細な調査が必要と考えられる化学物質のスクリーニングを行う目的で,国内のハウスダスト中化学物質濃度(金属類,ポリブロモジフェニルエーテル類,多環芳香族炭化水素類(PAHs),フタル酸エステル類,ダイオキシン類,DDT,クロルピリホス,パーフルオロオクタンスルホン酸,ビスフェノールA,ノニルフェノール)に関する既往の報告値を主に用いて,小児のハウスダストを介した化学物質曝露量を推定し,リスク評価を行った。
    鉛とフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)の曝露量95%値におけるハザード比(HQ)はそれぞれ,0.2,1.7であり,本研究で許容リスクと設定した0.1を超過した。PAHs,無機ヒ素,ダイオキシン類の曝露量95%値における過剰発がんリスクは,それぞれ3×10-5,1×10-3,8×10-5となり,許容リスクと設定した10-5を超過した。さらに,これらの化学物質のうち,鉛,DEHP,PAHsは,ハウスダスト経由の曝露量の全曝露量に対する寄与が大きいと推定された。よって,国内のハウスダストについては,鉛,DEHP,PAHsに関し優先的に実態調査を進め,ハウスダストを曝露媒体として含めた小児の健康リスク評価をする必要があると考えられる。
  • 篠原 直秀, 二俣 みな子, 蒲生 昌志
    2009 年 12 巻 2 号 p. 115-124
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    2006年の冬に,インターネットを通じて家具や家電製品等の各室内における保有量の調査を行った(回答数1035世帯)。将来的に放散量データと合わせて曝露評価を行うことを念頭に,世帯単位の保有数ではなく,用途(行為)別の部屋ごとの滞在時間や家具/家電製品の保有数を回答してもらった。保有数は,ある行為(“食べる”,“くつろぐ”,“寝る”,“趣味/勉強をする”)を行う部屋における保有率/保有数の整理を行った。“寝る”行為は,寝る時のみに使用する部屋で行われることが多かったが(65%),“くつろぐ”行為は,その他の行為も同じ部屋で行われることが多く(77%),特に“食べる”行為と同じ部屋で行われることが多かった(66%)。“食べる”時のみに使用する部屋で保有率が高いものは,テーブル(91%),いす・座いす(89%),食器棚(89%),換気扇(53%),冷蔵庫(78%),調理機器(47%~77%)があり,“くつろぐ”時のみに使用する部屋で高いものには,ソファー(58%),テレビ(89%),エアコン(80%),じゅうたん・ラグ・カーペット(68%)が挙げられる。また,“寝る”時のみに使用する部屋ではベッド(49%),洋服ダンス(68%),衣装ケース(61%)が高く,“趣味/勉強をする”時のみに使用する部屋では机(74%)といす・座いす(78%),本棚(76%),パソコン(65%)の保有率が高い。また,いくつかの家具/家電製品では,保有率に有意な地域差もみられた。これらの情報は,家具等からの放散量データと組み合わせることにより,ある家具/家電製品による化学物質への曝露濃度を推計することができ,化学物質の代替や使用量の低減効果が推定可能となる。
  • 小川 晴久, 中村 誠, 福田 弥生, 柴原 数雄, 西垣 康広, 伊藤 国億, 成瀬 哲哉, 藤巻 吾朗, 松井 永子, 折居 建治, 近 ...
    2009 年 12 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    室内湿度変動抑制効果を持つ調湿建材を内装に使用した場合の室内環境及び人体への影響を検討した。実験は岐阜大学病院の個室で行い,被験者は内装を調湿建材で改修した部屋と既存の石膏ボードの部屋の両方に24時間滞在し,滞在中は室内環境,アンケート調査(状態・特性不安検査(STAI))による心理的な測定や体温,心拍数等の生理的な測定を実施した。内装に調湿建材を使用すると,調湿作用によって室内の湿度変動幅が小さくなることが確認された。また,時間帯によっては体温,心拍数が低くなる傾向が見られた。調湿建材の直接的な物理的影響とは断定出来ないが,何らかの影響を与えている可能性はあると考えられた。
  • 池田 四郎, 及川 雅史, 関根 嘉香
    2009 年 12 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    バイオアッセイは生物応答を利用した有害性評価法であるが,室内環境汚染物質の一般毒性に着目した適用例は少ない。そこで,海洋性バクテリアVibrio fischeriV. fischeri)の生物発光性を利用した室内環境の簡易毒性評価法の開発を目的に,V. fischeriの生物発光量に及ぼす浮遊粒子状物質およびハウスダストの影響を検討した。神奈川県内の一般住宅においてローボリュームエアサンプラーを用い,7日間連続で室内外の総浮遊粒子状物質を石英繊維製フィルター上に捕集した。また,首都圏の4軒の家庭から掃除機ごみを提供してもらいハウスダストを収集し,ふるいを用いて粒径分画した。試料を滅菌蒸留水で振とう抽出し,抽出液を孔径0.45μmのフィルターでろ過し,ろ液をV. fischeriに作用させ,ルミノメーターで生物発光強度を測定した。その結果,V. fischeriの生物発光は室内および室外の浮遊粒子状物質の水抽出物に阻害され,発光阻害度はTSP(Total Suspended Particles)濃度の増加に伴い増加した。また,室内では換気回数が多くなるほど単位質量あたりの発光阻害度が増大し,エアロゾル中の毒性成分の割合が高くなる現象が認められた。一方,ハウスダストの水抽出物も生物発光量を減少させ,微小な粒子ほど高い毒性をもつことがわかった。またハウスダストの発光阻害度は,抽出液中の硝酸イオンおよび硫酸イオンの濃度と相関が認められた。
技術資料
  • 山下 信彦, 松本 由紀子, 阿部 恵子
    2009 年 12 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 2009年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    除湿機能付き熱交換型換気扇は,除湿機能を備えたセントラルタイプの換気扇である。本換気扇の運転によるカビの繁殖抑制効果を検証するため,本換気扇および通常のセントラルタイプの全熱交換型換気扇(対照換気扇)を設置した2室を用意し,カビセンサー(供試カビを封入した試験片)を用いてカビ発育環境を調査し,同時に温湿度を計測した。本換気扇設置室では,全ての調査期間において全ての供試菌に全く発育が認められず,カビが発育する環境にならなかったが,対照換気扇設置室では,複数の調査期間において複数の供試菌(好乾性AspergillusEurotium)の発育が認められ,対照換気扇設置室は室内全体がカビの発育する環境になった。温湿度計測結果から,本換気扇設置の部屋は通常の全熱交換型換気扇設置の部屋に比べ絶対湿度,相対湿度ともに明確に低く維持された。以上の結果より,本換気扇の設置により室内の湿度を低く保ちカビの繁殖を抑制することが可能であり,本換気扇を設置した建物ではカビが繁殖せず通常の全熱交換型換気扇を設置した建物ではカビが繁殖する場合があることが明らかとなった。外気の絶対湿度が高い夏期は,換気することによって外気中の水分が屋内に取り込まれ,建物内部がカビの発育する環境に変わってしまう可能性がある。このような季節には,本換気システムのような除湿を取り入れた換気方法が有効である。
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