SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
7 巻, 2 号
SPring-8 Document D2019-011
選択された号の論文の59件中1~50を表示しています
Section A
Section B
  • 奥田 浩司, 落合 庄治郎, 永野 伸治, 藤井 紀志, 小金澤 智之
    2019 年 7 巻 2 号 p. 219-222
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    Sm 系コーテッド超伝導複合線材の引張応力負荷下での Sm123 超伝導層の結晶格子歪の変化を調べるため、Sm LIII 吸収端近傍の異常分散効果を利用した In-situ 面内回折測定をおこなった。今回の測定では配分ビームタイム内で測定がほぼ完了できることを念頭に、試料としては吸収による減衰が大きな影響を与えないように、安定化の Cu めっき層を溶解除去した試料のみを用い、また、測定は申請分のうちビームタイムが認められた面内回折のみをおこなった。外部負荷応力の増加に伴い Sm123 層の引張歪は増加した。一方、前回課題で検討した Dy 系の材料[1]と比較すると高荷重領域での多重破断に伴う歪の停留が明確でないまま破壊剥離に至り、ピークシフトからは多重破断領域を認められなかった。このように Sm123 材料の場合には前回の Dy 系の結果から期待された系統的歪評価については十分な精度のデータが得られておらず、現在その原因を検討中である。一方、超伝導層の破壊進展の最終段階である剥離挙動について、Sm123 材料でこれまでの応力歪曲線の解析から期待されていた剥離進展と異なる挙動を示している事が今回の In-situ 測定中に見出された。超伝導層の破壊-剥離機構への Cu 除去の影響については今後の検討課題である。
  • 前川 康成, 吉村 公男, トラン タップ, 長谷川 伸, 澤田 真一, 大沼 正人, 大場 洋次郎, 猪谷 秀幸, 田中 裕久
    2019 年 7 巻 2 号 p. 223-225
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    イオン伝導性やアルカリ耐性の異なる、フッ素系高分子を基材とするグラフト型アニオン伝導電解質膜の超小角X線散乱測定を行い、階層構造解析を行った。イオン交換基が異なる電解質膜すべてにおいて、相関長約 200 nm の凝集体に由来する構造が初めて確認出来た。この構造は、同じ高分子基材からなるプロトン型電解質膜の 300 nm 以上の相関長よりも遥かに短いことから、アニオン型電解質膜の耐久性向上のための設計指針が得られる可能性が示唆された。
  • 佐藤 眞直, 土井 教史, 大塚 伸夫, 日高 康善, 東田 泰斗
    2019 年 7 巻 2 号 p. 226-229
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    鉄鋼生産工程の熱処理過程において鋼材表面に生成する酸化スケールの剥離性に影響すると考えられるスケール/地鉄界面に発生する応力の熱処理過程における変化を観察するための in-situ XRD 歪み測定技術開発を目的として、測定能率を向上するために1次元検出器を用いた XRD 応力測定技術の検討を行った。テストサンプルとしてショットピーニング処理を表面に施した低炭素鋼試料を用い、試料に対するX線入射角及び回折X線検出角を制御してX線侵入深さを制御しながら sin2Ψ 法による歪測定を行うX線侵入深さ一定法について技術検討実験を行った結果、従来の0次元検出器の回折角走査による方法とほぼ同等のデータを測定時間を 1/5 に短縮して測定することに成功した。しかしながら、この1次元検出器を用いた方法では回折角の分解能を確保するためにビームサイズを絞る必要があるため、結晶粒からの回折信号の平均化が難しく、不均一な多結晶組織を持つ実際の鉄鋼試料では応用が難しいことも分かった。
  • 髙橋 永次, 東 遥介, 末広 省吾
    2019 年 7 巻 2 号 p. 230-233
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    有機薄膜(ペンタセン)の蒸着膜形成過程における、成長初期(基板界面)と後期(有機膜表面)での周期構造や分子配向を解析するため、放射光による高輝度X線を用いた回折測定を行い、ペンタセン薄膜の散乱回折パターンを得た。解析の結果、ペンタセン分子はガラス基板上で垂直配向するが、75 nm以上の薄膜では、表層付近にバルク相に帰属される回折ピークが新たに検出された。
  • 鈴木 秀俊, 佐々木 拓生, 高橋 正光, 大下 祥雄
    2019 年 7 巻 2 号 p. 234-237
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    分子線エピタキシー法を用いた GaAs(001) 基板上への InGaAs 薄膜成長中のIn偏析過程の解明を目指し、放射光を用いたX線回折法を用いてリアルタイム測定を行った。回折強度計算と実験結果との比較から、成長中の膜中の In 分布の変化を算出し、各時点での偏析係数を見積もった。成長速度が早い場合は (0.20, 0.27 ML/s)、一つの偏析係数で計算結果と実験結果が一致したが、成長速度が遅い場合 (0.10 ML/s) では一つの偏析係数で説明することが不可能であった。この結果は、特に成長速度が遅い場合において、これまでの偏析モデルを修正する必要を示唆している。
  • 岡本 薫, 阿部 芳巳
    2019 年 7 巻 2 号 p. 238-241
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    有機薄膜太陽電池の金属/有機層界面を調べるため、駆動状態での硬X線光電子分光法(hard X-ray photoelectron spectroscopy, HAXPES)による分析を行った。電圧印加状態での各層の電位を比較した結果、電極/バッファー層の間の界面層は電極に近い電位にあり、界面層とバッファー層の間に電気抵抗が生じていることが分かった。さらに発電中の太陽電池のHAXPES測定にも成功した。
  • 簗瀬 香織, 八田 一郎
    2019 年 7 巻 2 号 p. 242-244
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    皮膚を清潔で健やかに保つために、ボディソープなどの皮膚洗浄料が毎日使用されている。アニオン性界面活性剤は皮膚洗浄料の主要な成分であり、汚れを効果的に落とす一方で、角層構造に影響を及ぼす。そこで小角広角X線散乱を測定し角層構造の回復を検討した。その結果、界面活性剤を精製水に置換した時の構造回復は、今回用いた角層では確認できなかった。
  • 山本 勝宏, 椋木 一詞
    2019 年 7 巻 2 号 p. 245-249
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    樹脂材料物性(ここでは透明性、耐衝撃性、耐熱性)向上の目指すうえでは、二種類以上の高分子からなる材料中の相分離ドメインの界面破壊を抑え、ドメインサイズを微分散させることが求められる。そこで樹脂の性能を高分子のアロイ化に伴う相分離構造の大きさや樹脂の透明性を制御する技術の確立を目指すため、樹脂の硬化過程のその場観察により構造形成機構を理解する。本論文ではメタクリル酸メチル/ポリメタクリル酸メチル/架橋剤混合系の硬化過程を観察したところ重合初期において、大きなスケールの濃度揺らぎが発生した。その後モノマーの硬化が進むにつれ不均一性は解消される方向に進むことが分かった。密度揺らぎは用いた架橋剤の種類にも影響することや、光重合と比較すると熱重合では揺らぎが大きいことが分かった。その詳細なメカニズムについては今後の課題である。
  • 大久保 総一郎, 飯原 順次, 上村 重明, 日方 威, 谷岡 大輔, 中井 龍資
    2019 年 7 巻 2 号 p. 250-253
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    鉄箔を大気酸化した後に、高温のアセチレンガス雰囲気中で処理すると、熱亀裂の内部にサブミクロンの幅を持つ炭素繊維(チューブやシート)が亀裂の両側をブリッジするように成長する現象を発見した。この現象を利用すれば、直線的なナノカーボンが成長でき、新規デバイス作成手法に応用できる。炭素が引き出されるメカニズムを解明するため、加熱・ガス浸炭工程中に透過X線回折像をその場観察することを試みた。
  • 佐藤 信浩, 裏出 令子, 杉山 正明
    2019 年 7 巻 2 号 p. 254-256
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    純水中に抽出された小麦タンパク質グリアジンの水和凝集体について超小角X線散乱解析を行いナノ–サブマイクロスケールにおける集合構造の変化について調べた。グリアジン濃度増加に伴い、散乱ベクトル q = 0.13 nm-1 に観測される凝集体内部の疎密構造に由来する干渉ピークが減衰すると同時に、q 〈 0.1 nm-1 の立ち上がりが増大しており、水の減少とともに不均一な集合構造が凝縮する一方で全体として大きな凝集体が成長することが明らかとなった。
  • 松枝 悟司, 松久 悠司, 平尾 哲大
    2019 年 7 巻 2 号 p. 257-260
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
     自動車用排ガス浄化触媒の課題として、貴金属凝集抑制による性能向上及び貴金属使用量低減が要求されている。現在研究中の新規 Rh 担持法触媒(以下、新規法)は、従来 Rh 担持法触媒(以下、従来法)に対し、Rh 凝集の抑制とより低温からの活性向上効果を見出した。
     今回、この要因を探るため、EXAFSによる Rh 状態解析を行った結果、新規法では還元雰囲気下において低温から速やかに Rh-O が Rh-Rh に変化する事が確認された。一方、劣化抑制では、酸化雰囲気中に生成する「Rh-O-Nd」の影響が大きい事が推定された。また、XANESの結果では、従来法の Rh 吸収端に対して高エネルギー側にシフトしていることから、新規担持方法を適応する事で Nd2O3 の再配分が促進され、Rh に対して Nd2O3 の接触頻度が適度に高まり劣化抑制と低温活性が高いレベルで両立したものと推察した。
  • 林 重成, 米田 鈴枝, 佐伯 功, 上田 光敏, 河内 礼文
    2019 年 7 巻 2 号 p. 261-264
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    アルミナスケール形成オーステナイト系耐熱ステンレス鋼のアルミナスケール形成能におよぼす Cu 濃度の影響を調査するため、Cu 濃度の異なる Fe-Ni-Cr-Al、Ni-Cr-Al、Ni-Al 合金を用いて、初期酸化スケールの形成とその後のアルミナスケールの形成・遷移に及ぼす Cu の影響を in-situ 高温X線回折を用いた構造解析により検討した。Cu 添加合金では、酸化初期に内部アルミナからアルミナスケール形成への遷移挙動が観察された。しかしながら、今回の実験では Fe や Ni、Cr を主体とする遷移酸化物が長時間残存し、連続的な保護性アルミナスケールの形成に至らなかったため、Cu のアルミナスケール形成促進効果について明確な知見を得ることはできなかった。
  • 足立 大樹, 岡田 将秀, 中西 英貴, 田丸 昇
    2019 年 7 巻 2 号 p. 265-268
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    純アルミニウム系合金の変形中の転位密度変化に及ぼす Fe、Si、Mg 微量添加の影響と、その焼鈍による影響を in-situ XRD 測定により調べた。Mg、Si 添加材は従来材と同様に、圧延材の焼鈍によって焼鈍軟化、延性の向上が見られたのに対し、Fe 添加材では焼鈍硬化し、A1200 合金と同様に延性が低下した。Mg、Si 添加材では塑性変形中の転位密度は焼鈍によって大きく減少したが、Fe 添加材では焼鈍によって初期転位密度が大幅に低下したにも関わらず、塑性変形中の転位密度は圧延まま材と比較してほとんど変化しなかった。
  • 野崎 洋, 河野 欣, 原田 雅史, 山口 聡, 加藤 晃彦, 堂前 和彦
    2019 年 7 巻 2 号 p. 269-271
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    X線磁気円二色性測定により、Pt/Y3Fe5O12(YIG) 薄膜の磁性を解析した。その結果、試料へのX線入射角が深くなるにつれて、Fe の XMCD 信号強度が増大した。これは、Pt/YIG 界面付近において、YIG 中の Fe の磁気モーメントが小さくなっていることを示唆する。
  • 笹川 直樹, 櫻井 伸一
    2019 年 7 巻 2 号 p. 272-276
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    本実験では、新規な異方性材料の開発に向けたブロックコポリマーの構造解析を行った。ブロックコポリマー中ではミクロ相分離と呼ばれるナノスケールの規則構造から、グレインと呼ばれる配向の方位が揃った領域が無数に形成される。しかし、学術的にもグレインサイズの定量評価法が未確立のため、産業応用が進んでいないのが現状である。そこで、極小角X線散乱(USAXS)および小角X線散乱(SAXS)測定による定量評価法の確立と、それを用いたグレインサイズの追跡によるグレイン成長のメカニズム解明を目指した。得られた USAXS パターンには、薄膜試料からの全反射によるストリークが生じた。このストリーク強度の散乱ベクトルの大きさ q 依存性を調べたところ、q = 6.41 μm-1 に明確なピークが観察され、そのピーク位置から球状領域の半径を求めたところ 0.90 μm となり、USAXS 測定によってグレインが捉えられたものと結論された。
  • 山田 武, 羽深 朱里, 稲岡 知和, 宮本 佳郎, 八田 一郎
    2019 年 7 巻 2 号 p. 277-282
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    保湿剤として汎用される多価アルコールのヒト角層に対する保湿機構を解明するため、多価アルコールにグリセリンと1,3-ブチレングリコール (以下BG) を用い、角層構造に及ぼす影響を評価した。水あるいは 10 wt% 多価アルコール水溶液を1時間作用した角層の乾燥時における角層構造の経時的な変化を小角・広角X線回折測定し、細胞間脂質より形成される短周期ラメラ構造とソフトケラチン構造に由来するピーク位置の経時的な変化の速さや変化率が異なることを観測した。
  • 久米 卓志, 小野尾 信, 田村 俊紘, 八木 直人, 八田 一郎
    2019 年 7 巻 2 号 p. 283-286
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    以前のX線散乱法を用いた皮膚角層の構造解析では、最外層である角層のみのシートを用いて、角層の集合体からの平均情報を取り扱っていた。我々は in situ に近い条件での角層の深さ方向の構造解析法として、角層以下の表皮、真皮等も含むヒト皮膚シートを用いてマイクロビームX線をスキャンしていく方法で皮膚上の角層からの小角・広角散乱像を得ることに成功した。これにより角層内部の深さ方向の構造変化を解析することで、皮膚への剤の作用、浸透効果等の詳細な知見が得られることが期待される。
  • 高橋 浩, 渡邊 亮太, 西村 謙一, 森脇 太郎
    2019 年 7 巻 2 号 p. 287-291
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    ポリイソブチレン(PIB)とスチレンーイソプレン共重合体(SIS)を主体とするゴムにセラミド、また、セラミドと添加剤としてモノグリセリドを混合したものを加えて、粘着性ゴムシートを作製した。このシート内におけるセラミド分子の分布をシンクロトロン顕微赤外分光法で調べた。融解混合圧延法で作製したサンプルを温度 60°C で1日間保持しても、保持なしのサンプルと比較すると、セラミドのみを含む場合、シート内のセラミドの分布の均一さはあまり向上しなかった。添加剤としてモノグリセリドが存在する場合、温度 60°C にて1日間の保持は、セラミドの分布を均一にする方向に働いたが、保持なしの場合の分布がセラミド単独系より不均一であり、モノグリセリドの均一化の効果は低いものであった。
  • 根上 将大, 日比野 真也, 水間 秀一, 黒松 博之, 尾角 英毅
    2019 年 7 巻 2 号 p. 292-296
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    ガスタービンエンジンに用いられる遮熱コーティングの剥離挙動の解明のため、高エネルギー放射光X線を用いたボンドコート内部応力測定を実施した。高温in-situ応力測定により、ボンドコートは室温では高い引張応力を示すが、高温環境では引張応力が減少することが分かった。また、運用中の劣化を模擬した種々の熱処理をおこなった試験片に対しても応力測定を実施し、ボンドコートの酸化劣化が内部応力に与える影響について検討した。
  • 久米 卓志, 鈴木 博詞, 田村 俊紘, 八田 一郎
    2019 年 7 巻 2 号 p. 297-300
    発行日: 2019/08/29
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    皮膚上に塗布して使用する化粧品や外皮用医薬品において、機能に関わる重要な要素である皮膚上の製剤の塗膜構造を解明することは、より優れた製品の設計指針提案に繋がる重要な研究課題である。我々が検討を進めてきたマイクロビームX線散乱法による皮膚角層構造の深さ方向解析法の発展・応用により、従来は観察が困難であった、前処理無しで自然の状態での皮膚上のミクロスケールの塗膜構造観測に成功した。
feedback
Top