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Sono Sasaki, Akiyoshi Yasuda, Hiroyasu Masunaga, Noboru Ohta, Shinichi ...
2019 年 7 巻 2 号 p.
104-109
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
Isothermal crystallization behaviors from the melt have been investigated for poly (3-hydroxybutyrate) (P3HB) thin films by time-resolved measurements of grazing-incidence X-ray scattering using synchrotron radiation. P3HB films with thicknesses of ca. 25 nm ~ 3.2 μm prepared on silicon substrates were cooled rapidly from the melt to a crystallization temperature, Tc, of 373 K by using a temperature-jump (T-jump) apparatus. Isothermal crystallization behaviors of P3HB in thin films were traced by simultaneous measurements of grazing-incidence wide-angle X-ray scattering (GIWAXS) and small-angle X-ray scattering (GISAXS). It was experimentally found for the first time that the induction time of crystallization became longer with reducing the film thickness. This indicated that the chain mobility necessary for nucleation at 373 K was reduced in thin films. It was also indicated that lamellar crystals having the edge-on type orientation to the substrate surface were preferentially formed at the beginning of crystallization. Those lamellae in the thin films might be stacked one another with amorphous chains in a disordered manner.
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梶原 行夫, 乾 雅祝, 尾原 幸治
2019 年 7 巻 2 号 p.
110-113
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
液体 Se-Te 混合系は温度や組成の変化により、連続的な構造転移を示すことが古くから知られている。転移に伴い密度がメゾスコピックに不均質になることが1980年代には提唱されていたが、永らくその実験的な証拠は得られていなかった。この問題に対して我々は、SPring-8/BL04B2を利用した小角X線散乱測定により、その微小な密度ゆらぎの変化を検知することに初めて成功し、2012年の論文で発表した。ただこの実験には不備な点が一つあった。BL04B2は分光結晶が一枚ふりであるため入射光への高調波の混入を避けらないが、検出器にエネルギー分解能のないイメージングプレートを使用したため、完全な単色X線の散乱スペクトル測定ではなかった。そこで今回、Ge半導体検出器とシングルチャンネルアナライザーから成る測定システムを用いることで、散乱光をエネルギー選別した測定を行い、前回の実験結果の妥当性の検証を行った。
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中塚 理, 浅野 孝典, 財満 鎭明
2019 年 7 巻 2 号 p.
114-116
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
Ge(110) 基板上に形成した GeSn 混晶エピタキシャル層における局所ひずみ構造をマイクロ回折法によって分析した。[001]方向からマイクロビームを入射してサブミクロンスケールの走査を行った ω ロッキングカーブにおいては特徴的な揺らぎが観測されたのに対し、[
110]方向からの観察に対してはこのような揺らぎは現れなかった。これは GeSn/Ge(110) 界面の異方的な転位伝播やひずみ緩和構造に関連すると推測される。
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片山 芳則, ヤガファロフ オスカー, 齋藤 寛之
2019 年 7 巻 2 号 p.
117-119
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
水の構造の温度変化を調べるため、高温高圧下での水のX線回折実験を行った。温度 1273 K で、常温常圧の水とほぼ同じとなる条件での測定に成功した。温度 1273 K での水の構造は、常温常圧とは大きく異なるが、673 K での構造からの変化は小さいことが明らかになった。
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山口 眞紀, 木村 雅子, 大野 哲生, 秋山 暢丈, 中原 直哉, 竹森 重, 八木 直人
2019 年 7 巻 2 号 p.
120-124
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
トロポニンT処理法は、除膜筋線維(スキンドファイバー)内の内因性トロポニンTIC複合体を外来性トロポニンTと交換することにより筋線維がカルシウム非依存的に収縮反応を起こすことを可能にする。ラット左心室壁より調製したスキンドファイバーにこの処理を施すと、処理していない場合に比べてATP添加によりトロポニン 38/nm 子午反射が顕著に減少することがわかった。トロポニンT処理後の心筋線維はATPにより収縮状態となっていると考えられることから、心筋トロポニンTは硬直状態から収縮状態への変化に伴い構造変化を起こすことが示唆された。
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Nachiappan Mutharasappan, Jeyakanthan Jeyaraman
2019 年 7 巻 2 号 p.
125-129
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
The enzyme orotate phosphoribosyl transferase (OPRTase) is involved in the de novo pyrimidine nucleotide biosynthesis; it is a good target for antimicrobial agents. Also, some of the cancerous cells are known to depend on de novo pathway, this enzyme could be a potential drug target for cancer therapy. Orotate phosphoribosyl transferase is an important enzyme, which converts orotate to orotate monophosphate in the fifth step of pyrimidine biosynthesis. As the enzyme is from a hyperthermophile it is known to be stable at high temperatures and can be used as a model organism. Based on the importance of the enzyme, OPRTase from the extreme thermophile,
Thermus thermophilus HB8 has been cloned, purified by ion exchange and size exclusion chromatography (SEC). Very tiny crystals appeared in the condition 0.2 M calcium acetate hydrate, 0.1 M sodium cacodylate trihydrate pH 6.5 and 18% w/v polyethylene glycol 8,000.
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W.-R. Chen, C.-W. Do, Y. Shinohara, T. Egami
2019 年 7 巻 2 号 p.
130-131
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
The rheology of suspensions of colloidal particles plays a critical role in many technological applications where it is essential to control the flow properties by tuning the shear viscosity. Theoretical calculations showed that introducing porosity into colloids gives an additional degree of freedom to tune their hydrodynamic properties. The goal of this project is to carry out an x-ray photon correlation spectroscopy (XPCS) study on such nano-particles to verify these theories, using nanoparticles of precisely controlled size and porosity which became available recently. To distinguish between prevailing theories we need to reach the high q plateau of the hydrodynamic function, where q denotes the momentum transfer in scattering.
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植田 直見, 山田 卓司, 川本 耕三
2019 年 7 巻 2 号 p.
132-136
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
これまで赤外分光分析では難しかった劣化により一部分子構造が変化した琥珀の産地推定について、加熱しながら放射光顕微赤外分析を実施することで産地推定が可能となることがわかった。方法は室温から 400℃ まで加熱した時の出土琥珀のスペクトルの変化を、主産地として知られている久慈市やいわき市、銚子市から産出する地質学的標準試料のそれと比較することで判別する試みを行った。さらにこれまで分析に使用できる試料がわずかしか無く分析が実施できなかった出土琥珀の産地を推定する方法として利用できる可能性も見出した。
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池本 夕佳, 中野 秀之
2019 年 7 巻 2 号 p.
137-140
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
シリコンナノシートの作成は、液晶ディスプレイや薄膜太陽電池など様々なデバイスへの応用が期待されており、多くの精力的な研究が報告されている。本研究では、紫外線照射により電導性が発現するフェニル基で修飾したシリコンナノシートを測定対象とした。この試料に電解質中で電圧を印加し、紫外線照射下で電流が流れる状態で、赤外スペクトル測定を行うことができるセルの開発を行った。また、電導機構の解明を目指して、赤外スペクトル測定を行った。
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岩本 裕之, 古田 健也, 大岩 和弘
2019 年 7 巻 2 号 p.
141-144
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
X線回折散乱を利用し、生体分子の高空間分解能実空間イメージングを行う手段として、DNA 折り紙を利用する技術の開発を行なってきた。これは DNA 折り紙の特定部位に金ナノ粒子を結合させ、生体分子との干渉を記録することでイメージングを行う試みである。これは本来フーリエ変換ホログラフィー法(FTH)でイメージングを行うプロジェクトであったが、差し当たり CDI 法(Coherent Diffractive Imaging)でサンプルの実空間イメージングに成功したので報告する
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綿貫 徹, 町田 晃彦
2019 年 7 巻 2 号 p.
145-147
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
高圧下X線吸収分光実験の低エネルギー領域への拡張に向けた環境整備を行った。従来の Yb-L
3吸収端(8.94 keV)近傍のエネルギーの入射X線を用いた Yb 系の計測に加えて、Eu-L
3 吸収端(6.97 keV)近傍のエネルギーでの Eu 系の計測が可能となった。フィジビリティテストとして、ナノ多結晶ダイアモンドを用いたダイアモンドアンビルセル(DAC)に封入した Au–Sn–Eu 合金近似結晶試料を用いて計測を行った結果、通常条件下と遜色のない高品質のスペクトルを得ることができた。これにより、今後、価数揺らぎを持つ Eu 系の準結晶・近似結晶合金などについて圧力下で Eu 価数の評価の実施が可能となった。
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八田 振一郎, 矢治 光一郎, 有賀 哲也
2019 年 7 巻 2 号 p.
148-151
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
Pt/Ge(001) 表面において形成される一次元原子鎖構造、p(4×2) 超構造の原子構造を明らかにするためBL13XUの (2+2) 型超高真空X線回折計を用いて微小角入射回折実験を行った。本装置内で Ge 基板結晶の清浄化およびPtの蒸着を行い、10.5 keV のX線を用いて面内回折点および逆格子ロッドを得た。低速電子回折による試料表面の評価から p(4×2) 構造以外の超構造の共存の可能性が判明したため、1/4次の超格子回折点を抽出し、構造モデルの検証を行った。現在までに本測定の結果を再現する構造モデルは見つかっていない。
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W.-R. Chen, C.-W. Do, Y. Shinohara, T. Egami
2019 年 7 巻 2 号 p.
152-153
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
Rheology of colloidal suspensions is of considerable interest for scientific as well as technological reasons. The nature of interparticle interactions determines the colloidal structure and hence the flow behavior of suspensions. There has been much interest in controlling the colloidal rheology through altering the interparticle forces. By introducing smaller particles into a suspension of large colloidal particles, the pressure of the small particles produces an additional attractive force between the colloids. This is referred to as the depletion force. [1] Existing experimental studies have demonstrated the profound influence of depletion forces on the deformation behavior of colloidal suspensions. [2] The goal of this project is to carry out an x-ray photon correlation spectroscopy (XPCS) study to understand the dynamical perspective of this phenomenon.
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八木 一三, 加藤 優, 野津 英男, 田村 和久
2019 年 7 巻 2 号 p.
154-157
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
固体高分子形燃料電池(PEFC)の触媒層内には触媒粒子のバインダであるとともに、プロトン伝導パスとしてもはたらくアイオノマーと呼ばれる高分子が混練されている。その側鎖末端にはスルホ基が存在し、プロトン伝導を担っているが、同時に Pt 合金系電極触媒の表面を被毒していると考えられている。本研究では、炭素鎖長の異なるペルフルオロカーボン鎖の末端にスルホン酸があるアイオノマーモデル電解質の吸脱着が金属表面に及ぼす影響を、表面X線散乱(SXS)法により計測することを試みた。
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綿貫 徹, 町田 晃彦
2019 年 7 巻 2 号 p.
158-160
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
高圧力を利用して Eu 系合金近似結晶における中間価数状態の形成を試みた。これまで我々は Yb 系準結晶を加圧することにより Yb 系の中間価数準結晶・近似結晶の創出を行ってきたが、本研究では新たに Eu 系への展開を目指した。Au–Sn–Eu 合金近似結晶を加圧しながら、X線吸収分光実験で Eu 価数を評価したところ、常圧では整数価数の2価であったが、最高圧力 11.3 GPa では 2.1 価と価数増加が観測された。本実験の圧力範囲においては、中間価数状態の形成は実現されたものの、Eu 系に期待されたような顕著な圧力効果は見られなかった。
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福山 祥光, 安田 伸広, 木村 滋
2019 年 7 巻 2 号 p.
161-163
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
強度変調型シングルビーム光トラップを利用した非接触式試料保持機構を開発し、X線マイクロビームと組合せることにより、非接触に保持したナノ粒子1粒のX線回折像の測定技術を確立した。開発した装置を用い、粒径 380 nm の酸化セリウム1粒のX線回折測定において、測定時間の短縮と S/N の向上を同時に達成した。また、レーザー照射の有無が電子励起や結晶構造に影響を与えないことを確認した。
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堀内 悠, 松岡 雅也
2019 年 7 巻 2 号 p.
164-167
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
還元型酸化グラフェン(rGO)に固定化したマンガン置換スピネルフェライトナノ粒子((Mn,Fe)
3O
4/rGO)を調製し、電極触媒として酸素還元反応へと応用した。本電極は未置換の Fe
3O
4/rGO 電極と比較して優れたオンセット電位と高い電流値を示した。XAFSおよびXRD測定の結果、合成した(Mn,Fe)
3O
4/rGO 電極では、Fe
3O
4 をベースに酸素の吸着過程に対して優れた特性を持つ Mn
2+ がドープされた複合状態を形成したことが電極の高い活性に寄与していることが示唆された。
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本多 定男, 橋本 敬, 森脇 太郎, 池本 夕佳, 木下 豊彦
2019 年 7 巻 2 号 p.
168-171
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
文書類から記載に用いられた筆記具のメーカー名、製品名を推定する試みについては、一部を切り取ってインク等を抽出し、薄層クロマトグラフィー(TLC)、液体クロマトグラフ質量分析(LCMS)、顕微フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)、ラマン分光等で分析する手法が研究されてきたが、2000年以降は破壊を伴わない分光的分析手法が主流となってきている[1]。 今回は、通常のグローバー光源を用いる顕微FTIR分析に比較して輝度が二桁程度高い赤外放射光を用い、アパーチャにより 2 μm に絞っての透過法による顕微FTIR分析を試みた。
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野尻 正樹
2019 年 7 巻 2 号 p.
172-176
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
酸化還元酵素の中でもその活性中心に金属を持つものは、その配位幾何構造ならびに触媒反応場を最適なものへと形作っていると考えられている。本実験では、その概念を実験的に証明するべく異種金属原子で置換を試み、その配位幾何構造がどのように変わるかをX線結晶構造解析から確認し、その剛直性ならびに多様性について機能的側面から考察した。
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柳楽 知也, 安田 秀幸, 中塚 憲章, 竹内 晃久
2019 年 7 巻 2 号 p.
177-180
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
Al-Cu合金を対象にX線イメージングを利用して超音波振動下での凝固その観察技術を開発した。超音波印加と同時に固液界面前方や一次アーム間でのマクロスケールの対流と数 10 Hz のデンドライトの縦振動が発生した。その結果、デンドライトの一次、二次アームの顕著な溶断が起きた。液相の濃度分布の評価から、溶断が顕著な固液共存領域の下部では、高濃度の液相が流入していた。音響流によって濃度分布が変化し、凝固組織は著しく影響を受けることが明らかとなった。
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深田 直樹, 池本 夕佳, 森脇 太郎
2019 年 7 巻 2 号 p.
181-183
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
化学気相堆積(CVD)法により成長した Ge/Si コアシェルナノワイヤおよびレーザーアブレーション法で成長した Si ナノワイヤ中の不純物の顕微赤外分光を行った。コアシェルナノワイヤに関しては、Si シェル層に p 型不純物のボロン(B)がドーピングされており、Ge コア領域には不純物がドーピングされていない。B ドープ Si ナノワイヤの場合においては、B の局在振動ピークおよび B の 1s-2p および 1s-3p の電子遷移による吸収を観測できた。通常の赤外分光では観測困難であったが、SPring-8赤外放射光の高輝度性を生かすことで実現できた成果といえる。一方、コアシェルナノワイヤにおいては、ラマン分光により Ge 層へのホールガスの蓄積を観測できていたが、SPring-8の赤外放射光を利用しても観測できなかった。Si シェル層内の B の濃度とコアシェルナノワイヤの密度調整が必要であるといえる。
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本多 定男, 橋本 敬, 西脇 芳典, 早川 慎二郎, 森脇 太郎, 池本 夕佳, 木下 豊彦
2019 年 7 巻 2 号 p.
184-187
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
銃から弾丸を発射する際、主として雷管の成分が熱を受けて飛散し、銃を発射した人の手や袖等に多数付着する。これが銃発射残渣(GSR)である。容疑者の手等から付着物を採取し、Pb、Sb、Ba のすべてを含む 1μm 程度の球形微粒子を多数検出することにより銃発射の客観的な証拠としている。しかし、1990年代から重金属フリーの雷管を使用した弾丸カートリッジが登場し[1]、その場合には上記成分は検出されない。そこで、赤外放射光分光分析により有機化合物を検出することにより、銃発射の証明を目指すものである。
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石上 貴大, 木村 薫
2019 年 7 巻 2 号 p.
188-191
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
その構造に、起源が不明瞭である極端に少ない個数の Al 原子によって記述されたクラスターを有し、実際の試料と比較して密度等に矛盾点を示す AlCuRu 系 1/1 結晶の構造モデルが、Sugiyama 等によって提案されていた [1]。粉末X線回折スペクトルを利用した Rietveld 解析の手法を用いることにより、この構造モデルの改良を試みた。実験室系データの解析によって、内殻クラスターあたり 8~9 個の原子によって構成される自然に理解される構造単位を有し、実際の試料の密度を再現する実態に近い構造モデルが得られた。その構造の細部には未だ検証すべき部分が残されているが、構築した構造モデルを基として更に洗練することが可能である。更なる構造モデルの洗練、および4元系の AlCuRuMn 系 1/1 立方晶近似結晶の Mn 置換位置を明らかにするために軌道放射光 (SPring-8) での実験を行い、解析を試みたが、意味のある解析はできていない。
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石井 賢司, 池内 和彦, 脇本 秀一, 藤田 全基, 高山 知弘, 高木 英典
2019 年 7 巻 2 号 p.
192-196
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
強相関遷移金属化合物に現れる電荷秩序に関連した電荷励起を探索するため、La
1.875Ba
0.125CuO
4、および、CuIr
2S
4 の共鳴非弾性X線散乱実験を行った。La
1.875Ba
0.125CuO
4 では電荷秩序の伝搬ベクトルに対応した運動量で励起が観測されたが、秩序のない La
1.70Sr
0.30CuO
4 でも同様に観測されたため、電荷秩序に直接関わる励起ではないと結論した。CuIr
2S
4 では金属絶縁体転移に対応する強度変化が 0.5 eV 以下の領域で観測されたものの、それと同時に起こる電荷秩序に関わると考えられる励起は観測されなかった。得られた実験結果からこれらの物質での電荷秩序・相転移を引き起こす相互作用のエネルギースケールについて議論を行う。
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米田 涼平, 堀部 和也, 野尻 正樹
2019 年 7 巻 2 号 p.
197-200
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
窒素は地球上の生命にとって必須元素であり、その自然界での循環を分子レベルで理解することは意義深い。最近の全ゲノム解析により、新たな高度好熱菌のゲノム上に新奇な銅含有亜硝酸酸還元酵素が見つかった。本実験では、その構造遺伝子に着目し、そのタンパク質について結晶構造解析と簡単な生化学的解析を行い、その機能について考察した。
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山本 惠三
2019 年 7 巻 2 号 p.
201-205
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
CTX-M型β-ラクタマーゼ(cefotaxime分解酵素)で高度に保存されている Ala219 の 役割を解明するために、野生型CTX-M-2、及び変異型酵素 A219V の構造解析を行った。野生型に対して A219V の主鎖の root mean square deviations (RMSD)は 0.135 Å であり、構造にほとんど差がなかった。また、酵素学的パラメータも差が見られなかった。従って、このアミノ酸置換によりセフォタキシムに対する活性が大きく低下する現象は、CTX-M-1 に特異的であることが示唆された。
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田口 幸広, 柏木 謙吾, 川又 修一, 宮脇 淳, 原田 慈久, 三村 功次郎
2019 年 7 巻 2 号 p.
206-208
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
温度上昇とともに非磁性から常磁性状態へと連続的に変化し、100 K 付近で帯磁率の極大を示す LaCoO
3 の Co 3
d 電子状態を調べるため、40 K と 300 K において Co 2
p3/2 吸収領域でX線非弾性散乱を偏光保存および偏光非保存配置で観測した。Co 3
d 状態の変化にともない、
dd 遷移による電子ラマンスペクトルと Co 3
d→2
p 蛍光成分に温度変化が観測された。
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宮嶋 孝夫, 清木 良麻, 小森 大資, 伊奈 稔哲, 池山 和希, 竹内 哲也
2019 年 7 巻 2 号 p.
209-211
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
窒化物系面発光レーザの導電性分布ブラック反射鏡材料として期待されている窒化物系混晶半導体 Al
0.82In
0.18N 中の In 原子近傍の局所構造を、X線吸収微細構造法により解析した。その結果、Al
0.82In
0.18N を構成する In-N と Al-N のボンド長が 14% も異なることで相分離を起こし易いにもかかわらず、In 原子は理想的な窒化物半導体における III 族 Ga 原子を置換していることが分かった。
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山本 貴史, 戸田 康介, 寺崎 一郎
2019 年 7 巻 2 号 p.
212-215
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
不純物誘起強磁性を示す CaRu
1-xFe
xO
3 (
x = 0.10, 0.20)における Fe イオン周りの結晶構造・磁気構造を調べるために、Fe
K-吸収端でのX線吸収微細構造(XAFS)測定およびX線磁気円二色性(XMCD)測定を行った。XAFS スペクトルの形状および温度・磁場依存性から、強磁性相関の発現に関連した RuO
6 八面体の持つ結晶場の対称性の変化はないと示唆される。強磁性状態にある 2 K において XMCD スペクトルが観測されたが、信号強度が非常に弱く、磁気構造解析に耐えうる実験データを得るには至らなかった。
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田鶴 寿弥子, メルツ メヒテル, 伊東 隆夫, 杉山 淳司
2019 年 7 巻 2 号 p.
216-218
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
東アジア地域における木彫像の樹種情報の獲得は、我々日本のみならず東アジア地域の宗教上の繋がりや文化の伝播などを知る上で貴重な情報であり特に注目されてきている。本研究では、フィラデルフィア美術館に所蔵される日本の神像から採取された非常に小さな試料に、SPring-8の BL20XU でのシンクロトロン放射光X線トモグラフィーを適用し樹種識別調査を行った結果、
Magnolia sp. が使用されていることを明らかにした。
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奥田 浩司, 落合 庄治郎, 永野 伸治, 藤井 紀志, 小金澤 智之
2019 年 7 巻 2 号 p.
219-222
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
Sm 系コーテッド超伝導複合線材の引張応力負荷下での Sm123 超伝導層の結晶格子歪の変化を調べるため、Sm L
III 吸収端近傍の異常分散効果を利用した In-situ 面内回折測定をおこなった。今回の測定では配分ビームタイム内で測定がほぼ完了できることを念頭に、試料としては吸収による減衰が大きな影響を与えないように、安定化の Cu めっき層を溶解除去した試料のみを用い、また、測定は申請分のうちビームタイムが認められた面内回折のみをおこなった。外部負荷応力の増加に伴い Sm123 層の引張歪は増加した。一方、前回課題で検討した Dy 系の材料[1]と比較すると高荷重領域での多重破断に伴う歪の停留が明確でないまま破壊剥離に至り、ピークシフトからは多重破断領域を認められなかった。このように Sm123 材料の場合には前回の Dy 系の結果から期待された系統的歪評価については十分な精度のデータが得られておらず、現在その原因を検討中である。一方、超伝導層の破壊進展の最終段階である剥離挙動について、Sm123 材料でこれまでの応力歪曲線の解析から期待されていた剥離進展と異なる挙動を示している事が今回の In-situ 測定中に見出された。超伝導層の破壊-剥離機構への Cu 除去の影響については今後の検討課題である。
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前川 康成, 吉村 公男, トラン タップ, 長谷川 伸, 澤田 真一, 大沼 正人, 大場 洋次郎, 猪谷 秀幸, 田中 裕久
2019 年 7 巻 2 号 p.
223-225
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
イオン伝導性やアルカリ耐性の異なる、フッ素系高分子を基材とするグラフト型アニオン伝導電解質膜の超小角X線散乱測定を行い、階層構造解析を行った。イオン交換基が異なる電解質膜すべてにおいて、相関長約 200 nm の凝集体に由来する構造が初めて確認出来た。この構造は、同じ高分子基材からなるプロトン型電解質膜の 300 nm 以上の相関長よりも遥かに短いことから、アニオン型電解質膜の耐久性向上のための設計指針が得られる可能性が示唆された。
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佐藤 眞直, 土井 教史, 大塚 伸夫, 日高 康善, 東田 泰斗
2019 年 7 巻 2 号 p.
226-229
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
鉄鋼生産工程の熱処理過程において鋼材表面に生成する酸化スケールの剥離性に影響すると考えられるスケール/地鉄界面に発生する応力の熱処理過程における変化を観察するための in-situ XRD 歪み測定技術開発を目的として、測定能率を向上するために1次元検出器を用いた XRD 応力測定技術の検討を行った。テストサンプルとしてショットピーニング処理を表面に施した低炭素鋼試料を用い、試料に対するX線入射角及び回折X線検出角を制御してX線侵入深さを制御しながら sin
2Ψ 法による歪測定を行うX線侵入深さ一定法について技術検討実験を行った結果、従来の0次元検出器の回折角走査による方法とほぼ同等のデータを測定時間を 1/5 に短縮して測定することに成功した。しかしながら、この1次元検出器を用いた方法では回折角の分解能を確保するためにビームサイズを絞る必要があるため、結晶粒からの回折信号の平均化が難しく、不均一な多結晶組織を持つ実際の鉄鋼試料では応用が難しいことも分かった。
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髙橋 永次, 東 遥介, 末広 省吾
2019 年 7 巻 2 号 p.
230-233
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
有機薄膜(ペンタセン)の蒸着膜形成過程における、成長初期(基板界面)と後期(有機膜表面)での周期構造や分子配向を解析するため、放射光による高輝度X線を用いた回折測定を行い、ペンタセン薄膜の散乱回折パターンを得た。解析の結果、ペンタセン分子はガラス基板上で垂直配向するが、75 nm以上の薄膜では、表層付近にバルク相に帰属される回折ピークが新たに検出された。
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鈴木 秀俊, 佐々木 拓生, 高橋 正光, 大下 祥雄
2019 年 7 巻 2 号 p.
234-237
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
分子線エピタキシー法を用いた GaAs(001) 基板上への InGaAs 薄膜成長中のIn偏析過程の解明を目指し、放射光を用いたX線回折法を用いてリアルタイム測定を行った。回折強度計算と実験結果との比較から、成長中の膜中の In 分布の変化を算出し、各時点での偏析係数を見積もった。成長速度が早い場合は (0.20, 0.27 ML/s)、一つの偏析係数で計算結果と実験結果が一致したが、成長速度が遅い場合 (0.10 ML/s) では一つの偏析係数で説明することが不可能であった。この結果は、特に成長速度が遅い場合において、これまでの偏析モデルを修正する必要を示唆している。
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岡本 薫, 阿部 芳巳
2019 年 7 巻 2 号 p.
238-241
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
有機薄膜太陽電池の金属/有機層界面を調べるため、駆動状態での硬X線光電子分光法(hard X-ray photoelectron spectroscopy, HAXPES)による分析を行った。電圧印加状態での各層の電位を比較した結果、電極/バッファー層の間の界面層は電極に近い電位にあり、界面層とバッファー層の間に電気抵抗が生じていることが分かった。さらに発電中の太陽電池のHAXPES測定にも成功した。
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簗瀬 香織, 八田 一郎
2019 年 7 巻 2 号 p.
242-244
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
皮膚を清潔で健やかに保つために、ボディソープなどの皮膚洗浄料が毎日使用されている。アニオン性界面活性剤は皮膚洗浄料の主要な成分であり、汚れを効果的に落とす一方で、角層構造に影響を及ぼす。そこで小角広角X線散乱を測定し角層構造の回復を検討した。その結果、界面活性剤を精製水に置換した時の構造回復は、今回用いた角層では確認できなかった。
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山本 勝宏, 椋木 一詞
2019 年 7 巻 2 号 p.
245-249
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
樹脂材料物性(ここでは透明性、耐衝撃性、耐熱性)向上の目指すうえでは、二種類以上の高分子からなる材料中の相分離ドメインの界面破壊を抑え、ドメインサイズを微分散させることが求められる。そこで樹脂の性能を高分子のアロイ化に伴う相分離構造の大きさや樹脂の透明性を制御する技術の確立を目指すため、樹脂の硬化過程のその場観察により構造形成機構を理解する。本論文ではメタクリル酸メチル/ポリメタクリル酸メチル/架橋剤混合系の硬化過程を観察したところ重合初期において、大きなスケールの濃度揺らぎが発生した。その後モノマーの硬化が進むにつれ不均一性は解消される方向に進むことが分かった。密度揺らぎは用いた架橋剤の種類にも影響することや、光重合と比較すると熱重合では揺らぎが大きいことが分かった。その詳細なメカニズムについては今後の課題である。
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大久保 総一郎, 飯原 順次, 上村 重明, 日方 威, 谷岡 大輔, 中井 龍資
2019 年 7 巻 2 号 p.
250-253
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
鉄箔を大気酸化した後に、高温のアセチレンガス雰囲気中で処理すると、熱亀裂の内部にサブミクロンの幅を持つ炭素繊維(チューブやシート)が亀裂の両側をブリッジするように成長する現象を発見した。この現象を利用すれば、直線的なナノカーボンが成長でき、新規デバイス作成手法に応用できる。炭素が引き出されるメカニズムを解明するため、加熱・ガス浸炭工程中に透過X線回折像をその場観察することを試みた。
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佐藤 信浩, 裏出 令子, 杉山 正明
2019 年 7 巻 2 号 p.
254-256
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
純水中に抽出された小麦タンパク質グリアジンの水和凝集体について超小角X線散乱解析を行いナノ–サブマイクロスケールにおける集合構造の変化について調べた。グリアジン濃度増加に伴い、散乱ベクトル
q = 0.13 nm
-1 に観測される凝集体内部の疎密構造に由来する干渉ピークが減衰すると同時に、
q 〈 0.1 nm
-1 の立ち上がりが増大しており、水の減少とともに不均一な集合構造が凝縮する一方で全体として大きな凝集体が成長することが明らかとなった。
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松枝 悟司, 松久 悠司, 平尾 哲大
2019 年 7 巻 2 号 p.
257-260
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
自動車用排ガス浄化触媒の課題として、貴金属凝集抑制による性能向上及び貴金属使用量低減が要求されている。現在研究中の新規 Rh 担持法触媒(以下、新規法)は、従来 Rh 担持法触媒(以下、従来法)に対し、Rh 凝集の抑制とより低温からの活性向上効果を見出した。
今回、この要因を探るため、EXAFSによる Rh 状態解析を行った結果、新規法では還元雰囲気下において低温から速やかに Rh-O が Rh-Rh に変化する事が確認された。一方、劣化抑制では、酸化雰囲気中に生成する「Rh-O-Nd」の影響が大きい事が推定された。また、XANESの結果では、従来法の Rh 吸収端に対して高エネルギー側にシフトしていることから、新規担持方法を適応する事で Nd
2O
3 の再配分が促進され、Rh に対して Nd
2O
3 の接触頻度が適度に高まり劣化抑制と低温活性が高いレベルで両立したものと推察した。
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林 重成, 米田 鈴枝, 佐伯 功, 上田 光敏, 河内 礼文
2019 年 7 巻 2 号 p.
261-264
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
アルミナスケール形成オーステナイト系耐熱ステンレス鋼のアルミナスケール形成能におよぼす Cu 濃度の影響を調査するため、Cu 濃度の異なる Fe-Ni-Cr-Al、Ni-Cr-Al、Ni-Al 合金を用いて、初期酸化スケールの形成とその後のアルミナスケールの形成・遷移に及ぼす Cu の影響を in-situ 高温X線回折を用いた構造解析により検討した。Cu 添加合金では、酸化初期に内部アルミナからアルミナスケール形成への遷移挙動が観察された。しかしながら、今回の実験では Fe や Ni、Cr を主体とする遷移酸化物が長時間残存し、連続的な保護性アルミナスケールの形成に至らなかったため、Cu のアルミナスケール形成促進効果について明確な知見を得ることはできなかった。
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足立 大樹, 岡田 将秀, 中西 英貴, 田丸 昇
2019 年 7 巻 2 号 p.
265-268
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
純アルミニウム系合金の変形中の転位密度変化に及ぼす Fe、Si、Mg 微量添加の影響と、その焼鈍による影響を in-situ XRD 測定により調べた。Mg、Si 添加材は従来材と同様に、圧延材の焼鈍によって焼鈍軟化、延性の向上が見られたのに対し、Fe 添加材では焼鈍硬化し、A1200 合金と同様に延性が低下した。Mg、Si 添加材では塑性変形中の転位密度は焼鈍によって大きく減少したが、Fe 添加材では焼鈍によって初期転位密度が大幅に低下したにも関わらず、塑性変形中の転位密度は圧延まま材と比較してほとんど変化しなかった。
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野崎 洋, 河野 欣, 原田 雅史, 山口 聡, 加藤 晃彦, 堂前 和彦
2019 年 7 巻 2 号 p.
269-271
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
X線磁気円二色性測定により、Pt/Y
3Fe
5O
12(YIG) 薄膜の磁性を解析した。その結果、試料へのX線入射角が深くなるにつれて、Fe の XMCD 信号強度が増大した。これは、Pt/YIG 界面付近において、YIG 中の Fe の磁気モーメントが小さくなっていることを示唆する。
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笹川 直樹, 櫻井 伸一
2019 年 7 巻 2 号 p.
272-276
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
本実験では、新規な異方性材料の開発に向けたブロックコポリマーの構造解析を行った。ブロックコポリマー中ではミクロ相分離と呼ばれるナノスケールの規則構造から、グレインと呼ばれる配向の方位が揃った領域が無数に形成される。しかし、学術的にもグレインサイズの定量評価法が未確立のため、産業応用が進んでいないのが現状である。そこで、極小角X線散乱(USAXS)および小角X線散乱(SAXS)測定による定量評価法の確立と、それを用いたグレインサイズの追跡によるグレイン成長のメカニズム解明を目指した。得られた USAXS パターンには、薄膜試料からの全反射によるストリークが生じた。このストリーク強度の散乱ベクトルの大きさ
q 依存性を調べたところ、
q = 6.41 μm
-1 に明確なピークが観察され、そのピーク位置から球状領域の半径を求めたところ 0.90 μm となり、USAXS 測定によってグレインが捉えられたものと結論された。
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山田 武, 羽深 朱里, 稲岡 知和, 宮本 佳郎, 八田 一郎
2019 年 7 巻 2 号 p.
277-282
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
保湿剤として汎用される多価アルコールのヒト角層に対する保湿機構を解明するため、多価アルコールにグリセリンと1,3-ブチレングリコール (以下BG) を用い、角層構造に及ぼす影響を評価した。水あるいは 10 wt% 多価アルコール水溶液を1時間作用した角層の乾燥時における角層構造の経時的な変化を小角・広角X線回折測定し、細胞間脂質より形成される短周期ラメラ構造とソフトケラチン構造に由来するピーク位置の経時的な変化の速さや変化率が異なることを観測した。
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久米 卓志, 小野尾 信, 田村 俊紘, 八木 直人, 八田 一郎
2019 年 7 巻 2 号 p.
283-286
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
以前のX線散乱法を用いた皮膚角層の構造解析では、最外層である角層のみのシートを用いて、角層の集合体からの平均情報を取り扱っていた。我々は
in situ に近い条件での角層の深さ方向の構造解析法として、角層以下の表皮、真皮等も含むヒト皮膚シートを用いてマイクロビームX線をスキャンしていく方法で皮膚上の角層からの小角・広角散乱像を得ることに成功した。これにより角層内部の深さ方向の構造変化を解析することで、皮膚への剤の作用、浸透効果等の詳細な知見が得られることが期待される。
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高橋 浩, 渡邊 亮太, 西村 謙一, 森脇 太郎
2019 年 7 巻 2 号 p.
287-291
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
ポリイソブチレン(PIB)とスチレンーイソプレン共重合体(SIS)を主体とするゴムにセラミド、また、セラミドと添加剤としてモノグリセリドを混合したものを加えて、粘着性ゴムシートを作製した。このシート内におけるセラミド分子の分布をシンクロトロン顕微赤外分光法で調べた。融解混合圧延法で作製したサンプルを温度 60°C で1日間保持しても、保持なしのサンプルと比較すると、セラミドのみを含む場合、シート内のセラミドの分布の均一さはあまり向上しなかった。添加剤としてモノグリセリドが存在する場合、温度 60°C にて1日間の保持は、セラミドの分布を均一にする方向に働いたが、保持なしの場合の分布がセラミド単独系より不均一であり、モノグリセリドの均一化の効果は低いものであった。
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根上 将大, 日比野 真也, 水間 秀一, 黒松 博之, 尾角 英毅
2019 年 7 巻 2 号 p.
292-296
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
ガスタービンエンジンに用いられる遮熱コーティングの剥離挙動の解明のため、高エネルギー放射光X線を用いたボンドコート内部応力測定を実施した。高温in-situ応力測定により、ボンドコートは室温では高い引張応力を示すが、高温環境では引張応力が減少することが分かった。また、運用中の劣化を模擬した種々の熱処理をおこなった試験片に対しても応力測定を実施し、ボンドコートの酸化劣化が内部応力に与える影響について検討した。
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久米 卓志, 鈴木 博詞, 田村 俊紘, 八田 一郎
2019 年 7 巻 2 号 p.
297-300
発行日: 2019/08/29
公開日: 2021/01/15
ジャーナル
オープンアクセス
皮膚上に塗布して使用する化粧品や外皮用医薬品において、機能に関わる重要な要素である皮膚上の製剤の塗膜構造を解明することは、より優れた製品の設計指針提案に繋がる重要な研究課題である。我々が検討を進めてきたマイクロビームX線散乱法による皮膚角層構造の深さ方向解析法の発展・応用により、従来は観察が困難であった、前処理無しで自然の状態での皮膚上のミクロスケールの塗膜構造観測に成功した。
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