SPring-8 BL19B2の多軸X線回折装置を用いて、X線の入射角度を10 keV(波長λ = 1.2398 A)のX線を試料表面にα
i = 0.12° の低角度で入射して、ソーダ石灰組成の板ガラス(フロートガラス:組成は重量%で、SiO
2 = 71.2, Al
2O
3 = 1.5, CaO = 9.0, MgO = 3.8, Na
2O = 13.9)の溶融スズと接した面(ボトム面)と反対側の最表面(トップ面)で「すれすれ入射X線回折」を行った結果、恒温恒湿試験(60°C 湿度90%、15時間もしくは24時間浸漬)後に最表面に回折線に近い周期構造が検出されることを見い出した。この周期構造は、波数
q (= 4πsin
θ/λ、2
θ:散乱角) = 1.5 Å
-1 付近に確認され、Hydrocalcite(CaCO
3・6H
2)が大気中の CO
2 とガラス中の Ca 成分および雰囲気中の H
2O と反応して、ガラス表面で新たに結晶化したものと考えられる。これらの結晶量は、ガラス組成に関係しており、Al
2O
3 濃度が低いガラスで析出量が多かった。
以上の結果から、ソーダ石灰組成のガラスでは大気雰囲気との反応によって最表面部分での風化の進行過程を知ることができた。また、ガラスの Al
2O
3 濃度を高くすることで大気雰囲気による風化の促進を抑制できることもわかった。これらの結果は、ガラスの製造技術の改善に対しては非常に大きな知見となる。
抄録全体を表示