SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
1 巻, 2 号
SPring-8 Document D2013-009
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
Section B
  • 原田 浩希, 山本 常平, 高岡 昌輝
    2013 年 1 巻 2 号 p. 31-33
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    都市ごみ処理飛灰のメカノケミカル処理によるPbの不溶化処理をねらいとした基礎検討を行った。結果、溶出液がアルカリ性の飛灰ではPbの溶出量が低減するが、その機構はPbの化学形態の変化ではなく、比表面積の変化が影響していると考えられた。また溶出液が弱酸性となる飛灰では、MC処理による形態の変化に対してpHの影響が卓越し、Pbの溶出量が低減しなかった。以上のMC処理の特徴は、現行のキレート処理による不溶化機構とは異なることが示唆された。
  • 谷川 博信, 大嶋 則和, 小山 知弘, 吉村 瑤子, 千葉 大地, 小野 輝男, 小嗣 真人, 大河内 拓雄
    2013 年 1 巻 2 号 p. 34-36
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    磁壁電流駆動ダイナミクスの解明および磁壁移動メモリの基本動作解析の一環として、SPELEEMを用いたCo/Ni垂直磁化細線中に形成した磁壁の電流駆動現象観察を行っている。2011A期から同一素子における磁壁移動速度とばらつきについて議論するために、磁壁導入および磁壁移動のための電流印加が、SPELEEM装置内にて行えるような測定環境の構築を試みている[1]。2011B期においては、Si基板の露出面積をなるべく小さくし、なおかつCo/Ni細線近傍の端子をコプレナー構造にした新しい素子で検討を進めた。その結果、数10 nsの時短パルスが印加可能であり、なおかつ放電による試料破壊を回避できる素子構造の手がかりを掴んだ。
  • 中川 泰治, 中沢 寛光, 加藤 知
    2013 年 1 巻 2 号 p. 37-39
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    化粧品基剤として期待される大豆由来水添リン脂質(フォスファチジルコリンがおおよそ70%含まれる:PC70)と高級アルコール(ヘキサデカノール:HD)混合物について、その構造特性を解明すべく、BL40B2にて小角広角同時X線構造解析実験を実施した。これまでに当混合物を特定の配合比(PC70:HD ≒ 1:2)で作製すると、高粘度のゲル状構造物が形成されることを報告してきたが[1-3]、今回、単成分脂質を用いた検討により、ゲル状構造物の形成にはフォスファチジルグリセロール(PG)などのリン脂質副成分が寄与していることが示唆された。また、製剤塗布後の構造変化を観察する目的で、当混合物を支持基板上に薄く塗布し、その構造の時間変化を解析したところ、シングル(単層膜)もしくはオリゴラメラから徐々にマルチラメラへと変化する過程が観察された。
  • 清水 克典, 鹿久保 隆志, 網野 直也
    2013 年 1 巻 2 号 p. 40-42
    発行日: 2013/06/23
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    タイヤ中のスチールコードとゴムを接着させることで耐久性が維持される。金属接着用ゴムには有機酸コバルト(Co)塩が含まれるが、ゴム中のコバルト(以下、Co)の化学的情報はこれまであまり知られていない。そこで、有機酸Co塩を配合したゴムを加硫(加熱)処理して、加硫時間ごとにゴム中のCoの化学状態をXAFS 測定にて解析した。加硫時間を変えることにより170 °Cでは3 minまでにCoの酸化反応が進行し、それ以降は化学状態がほとんど変化しないことがわかった。今回の測定により、金属接着ゴム中のCo塩の状態を把握することができた。
  • 米村 卓巳, 飯原 順次, 斎藤 吉広
    2013 年 1 巻 2 号 p. 43-45
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    窒化ガリウム中のマグネシウムのXAFS測定技術を開発した。本系においては、ガリウム成分とマグネシウム成分の分離が困難であり、これまでXAFS法を用いた窒化ガリウム中のマグネシウムの化学状態解析は行われてこなかった。今回、我々はSPring-8のBL27SUにてSilicon Drift Detectorを用いた蛍光XAFS法を使ってガリウム成分とマグネシウム成分の分離技術を開発した。その結果、マグネシウム濃度が1E19 /cm3のEXAFS測定が可能となり、窒化ガリウム中のマグネシウムの化学状態がアニール処理方法によって変化することを初めて見出した。
  • 竹原 孝二, 井上 敬文, 藤森 健, 河合 朋充, 上杉 健太朗, 竹内 晃久, 鈴木 芳生
    2013 年 1 巻 2 号 p. 46-48
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    走査/結像ハイブリッド型高感度高分解能微分位相X線顕微鏡により、ヘアアイロンによる加熱処理毛髪の内部微細構造を三次元で測定することができた。加熱処理毛髪と未処理毛髪の比較から、毛髪キューティクル部位で加熱処理により凹凸や空隙と思われる微細構造が生じることが確認された。今後、加熱処理によるダメージをより詳細に観察できるものと期待される。
  • 簗瀬 香織, 太田 昇
    2013 年 1 巻 2 号 p. 49-51
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    ボディソープや洗顔フォームなどの皮膚洗浄料に汎用されている代表的な界面活性剤を、ヒト皮膚角層に適用し、X線回折測定により構造変化を経時的に追跡した。広角領域に現れる細胞間脂質の充填構造に着目し解析したところ、斜方晶由来のピークでは、一般的に洗浄力が高いことが知られる界面活性剤にピーク位置と半値幅の変化が現れた。このことから、本研究で得た結果は、日常の皮膚洗浄による肌バリア機能へ及ぼす影響の指標に繋がると期待できる。
  • 小幡 誉子, 太田 昇, 八木 直人, 八田 一郎, 髙山 幸三
    2013 年 1 巻 2 号 p. 52-54
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒト角層を用いてジメチルスルホキシドの細胞間脂質のラメラ構造への影響を検討したところ、細胞間脂質の充填構造を液晶化すると同時に角層細胞にも大きな影響を与える様子が観察された。したがって、外用剤に溶剤として繁用されるジメチルスルホキシドは、細胞間脂質および角層細胞の双方に働きかけて薬物の皮膚透過経路を拡大している可能性が示唆された。また、この挙動はすでに明らかになっているエタノールと類似していた。
  • 酒井 千尋, 湊 淳一
    2013 年 1 巻 2 号 p. 55-58
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
     SPring-8 BL19B2の多軸X線回折装置を用いて、X線の入射角度を10 keV(波長λ = 1.2398 A)のX線を試料表面にαi = 0.12° の低角度で入射して、ソーダ石灰組成の板ガラス(フロートガラス:組成は重量%で、SiO2 = 71.2, Al2O3 = 1.5, CaO = 9.0, MgO = 3.8, Na2O = 13.9)の溶融スズと接した面(ボトム面)と反対側の最表面(トップ面)で「すれすれ入射X線回折」を行った結果、恒温恒湿試験(60°C 湿度90%、15時間もしくは24時間浸漬)後に最表面に回折線に近い周期構造が検出されることを見い出した。この周期構造は、波数q (= 4πsinθ/λ、2θ:散乱角) = 1.5 Å-1 付近に確認され、Hydrocalcite(CaCO3・6H2)が大気中の CO2 とガラス中の Ca 成分および雰囲気中の H2O と反応して、ガラス表面で新たに結晶化したものと考えられる。これらの結晶量は、ガラス組成に関係しており、Al2O3 濃度が低いガラスで析出量が多かった。
     以上の結果から、ソーダ石灰組成のガラスでは大気雰囲気との反応によって最表面部分での風化の進行過程を知ることができた。また、ガラスの Al2O3 濃度を高くすることで大気雰囲気による風化の促進を抑制できることもわかった。これらの結果は、ガラスの製造技術の改善に対しては非常に大きな知見となる。
  • 高松 成亮, 山本 勝宏
    2013 年 1 巻 2 号 p. 59-62
    発行日: 2013/06/07
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    ゴム中の粘弾性特性に及ぼすフィラー分散状態の影響について調査した。フィラーの分散状態の変化は、ゴムとフィラーの混練時間を変更することで実施した。混練時間が長くなると静的弾性定数は変化せず動的弾性率が低下することで動倍率が低下した。この動倍率の低下は、混練時にゴムとフィラー間において化学的ないし物理的吸着が起こり、フィラー界面でのすべりによる粘性が原因の動的弾性率が低減されたことによると推察される。これを確認するためゴムに伸張を与え(ゴムに4.5%歪みをかけ)超小角散乱測定を実施した。その結果、混練時間を長くした試料からは散乱パターンに異方性が認められた。このことは、ゴムとフィラーであるカーボンブラック界面での化学的ないし物理的吸着ができ構造に異方性が発現したものと考察される。以上のことから混練時間を最適化し、フィラー界面での化学的、物理的吸着を強固にすることがゴムの低動倍率化に効果があることが確認された。今回実施した微小歪みを与え極小角散乱測定を行うことは、ゴムとフィラー間の結合の有無を判定する手法として利用できると考えられる。
  • 笹川 哲也, 原田 康宏, 浜尾 尚樹, 鹿島 徹也, 北村 尚斗, 井手本 康
    2013 年 1 巻 2 号 p. 63-66
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    次世代高エネルギー密度リチウムイオン電池正極材料として期待されるLi過剰層状マンガン系酸化物Li1.2Ni0.2Mn0.6O2及びLi1.2Ni0.13Mn0.54Co0.13O2について、初回充放電過程における粉末X線回折を測定した。初充電過程において、六方晶(003)ピーク及び(018)ピークの半値幅が増大し、また半値幅の増大は充電レートを高めることで抑制されることを見出した。これらの結果は、初回充放電時に生じる層間距離の乱れが、充電レートを高めることで軽減されることを示している。
  • 藤原 康文, 李 東建, 若松 龍太, 松野 孝則, 瀬野 裕三, 大渕 博宣, 本間 徹生
    2013 年 1 巻 2 号 p. 67-70
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    有機金属気相エピタキシャル法により作製したEu, Mg共添加GaNおよびEu, Mg, Si共添加GaNについてX線吸収微細構造(XAFS)測定を行った。Eu, Mg共添加の場合、フォトルミネッセンス測定ではMg共添加により新しいEu発光中心が形成され、Eu発光強度の増大が観測された。XAFS測定ではEuは基本的にGaサイトに置換するが、Eu周辺局所構造の揺らぎが増大することが明らかになった。一方、Eu, Mg, Si共添加の場合、フォトルミネッセンス測定ではSiを共添加することにより新たな発光が観測されるが、Eu-Mg特有の発光中心は減少、消滅する。対応するXAFS測定では、Mgのみ共添加した場合に比べて、より揺らぎの少ないEu周辺局所構造が得られることが明らかになった。
  • 駒場 慎一, 藪内 直明, 青木 良憲, 吉川 武徳, 孫 珍永, 陰地 宏
    2013 年 1 巻 2 号 p. 71-73
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    電気自動車用途を志向した次世代大型リチウムイオン二次電池正極材料の候補として挙げられているLi2MnO3系材料について、高輝度放射光X線を用いたHAXPES(Hard X-ray Photoemission Spectroscopy)測定を行い、当該材料の充放電反応機構の解明を試みた。標準試料の測定からマンガンが4価以上の高酸化状態となる場合には明確にMn 1s、Mn 2p光電子スペクトルがともに高エネルギー側へとシフトすることが観測された。しかし、Li[Li0.2Co0.13Ni0.13Mn0.54]O2の充電時においては、明確なスペクトル形状の変化は観察されず、今回の結果からマンガンが4価を超えて高酸化状態になることは無いという結論が得られた。
  • 前川 康成, 長谷川 伸, 澤田 真一, 吉村 公男, トラン タップ, 大沼 正人, 大場 洋次郎
    2013 年 1 巻 2 号 p. 74-76
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    放射線グラフト法を駆使して燃料電池用電解質膜を開発するためには、電解質膜の構造に関する基礎的知見が不可欠である。そこで本研究では、SPring-8の所有する超小角X線散乱測定装置を用いて、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)またはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を基材とするグラフト電解質膜の構造を調べた。その結果、ETFE電解質膜では、膜内に導入される親水性グラフト領域は、349-369 nmという長距離の相関長を有することがわかった。
  • 石垣 雅, 亀井 真之介, 上松 和義, 戸田 健司, 佐藤 峰夫
    2013 年 1 巻 2 号 p. 77-79
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    放射光を用いたXAFS分析にて、室温で原料を接触させて静置するだけで反応させたRbVO3:EuおよびCsVO3:Eu蛍光体の発光中心の価数評価を行った。Eu(ユウロピウム)を賦活したXANES領域の測定では、通常の固相反応法で合成された蛍光体と同等でいずれの試料もEuがすべて3価で存在する結果が得られ、固相反応法に変わるものと期待できることが確認された。
  • 石垣 雅, 亀井 真之介, 上松 和義, 戸田 健司, 佐藤 峰夫
    2013 年 1 巻 2 号 p. 80-82
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    放射光を用いた粉末X線回折で、室温で原料を接触させて静置するだけで反応させたRbVO3蛍光体の結晶構造解析を行った。リートベルト法による分析で、合成された蛍光体は不純物が非常に少ない単相であることが確認された。
  • 森田 幸弘, 辻田 卓司, 寺内 正治, 西谷 幹彦
    2013 年 1 巻 2 号 p. 83-85
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    プラズマディスプレイ(PDP)の高性能化のためのキー材料である保護膜の局所構造解析をXAFS測定によって行った。石英基板上にスパッタ製膜で形成したMgO:Sn薄膜(1 μm)を大気アニールし、Sn-K端の吸収スペクトルを測定した。その結果、500°Cの大気アニールでは、局所構造の変化はほとんど無いが、800°Cでアニールすると、第二近接の強度が顕著に小さくなることが分かった。
  • 森田 幸弘, 辻田 卓司, 寺内 正治, 西谷 幹彦
    2013 年 1 巻 2 号 p. 86-88
    発行日: 2013/06/28
    公開日: 2021/01/15
    ジャーナル オープンアクセス
    アモルファスシリコンに比べて10倍以上の移動度を持つことで注目を集めているアモルファス酸化物半導体(InGaZnO(IGZO))の局所構造解析をXAFS測定によって行った。スパッタ製膜時の基板温度とプロセスガスを変えた時の局所構造の変化を調べた結果、基板温度が高く、プロセスガスをAr + O2とした場合に、第二近接の強度が大きくなることが分かった。このことから、アモルファス構造においても、プロセス条件によって局所構造を制御できる可能性があることが分かった。
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