CD200は幅広い種類の細胞上で発現しており、骨髄細胞上の阻害型受容体CD200R(マウスではCD200R1)との結合を介して骨髄細胞を抑制的に制御する。この抑制機構の構造生物学的解明を目的として、マウスのCD200-CD200R1複合体の結晶構造解析を 2.7 Å 分解能で行った。解析の結果、正に荷電したCD200のドメイン1と負に荷電したCD200R1のドメイン1が静電相互作用により複合体を形成することが明らかになった。
The influence of magnetic dopants on the electronic structures of topological insulators (TIs) is a key factor for magnetic TIs-based spintronic application. Here we measured core level and valence band hard x-ray photoemission (HAXPES) spectra for (BiMn)2Te3 single crystals as a function of Mn doping to investigate the modification of the bulk band structures of Bi2Te3 by the dopants.
一酸化窒素(NO)は、反応性に富んだラジカル分子であり高い細胞毒性を示す。細菌が持つ膜結合型一酸化窒素還元酵素(NOR)は、ヘム鉄と非ヘム鉄からなる複核活性中心をにおいて、細胞毒である NO を電子とプロトンを利用して、亜酸化窒素(N2O)へと還元・無毒化する。本研究では、NOR による NO 還元反応の分子機構解明のために、鉄を含む活性部位の構造解析に有効な核共鳴非弾性散乱(NRVS)に着目した。活性部位に基質の類似体である一酸化炭素(CO)を結合させた試料の測定を行った。共鳴ラマン分光測定の結果と比較し、得られた NRVS スペクトルについて考察した。
Recent developments point to a common, broken chiral symmetry nature of the charge orders in high-Tc cuprate superconductors. We have performed a temperature- and angle-dependent x-ray circular dichroism study on the charge-ordered prototype system La1.875Ba0.125CuO4 near the Cu K-edge. We found preliminary evidence for a broken chiral symmetry of the charge order in this system.
レーザーアブレーション法により成長した Si ナノワイヤ中の不純物の顕微赤外分光を行った。B ドープ Si ナノワイヤの場合において、約 624 cm-1の位置に B の局在振動ピークを検出することに成功した。更に、約 468、806、1085、1200 cm-1 の位置には、Si ナノワイヤの表面酸化膜中の酸素に関する振動を観測できた。通常の赤外分光ではナノ構造体中の不純物分光は困難であるが、SPring-8赤外放射光の高輝度性を生かすことで実現できた成果といえる。
Liイオン二次電池に用いられる3元系正極材 LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2 の結晶構造解析を行うため、異常分散X線回折法を検討した。電池劣化の一因とされるカチオンミキシングと遷移金属元素種の関係を調べるため、NiとCoの挙動に着目し、CoとNiの K 吸収端近傍の異常分散を利用した。充放電サイクル試験前後においてNiの異常分散X線回折強度に違いがみられ、CoよりもNiの方がカチオンミキシングに影響することが示唆された。
Pd/CeZrO2 に代表される環境浄化触媒は、XAFSによる in situ 分析が近年盛んに行われており、価数や局所構造による評価事例が多数報告されている。近年当社は、ラボでガス流通・加熱試験が可能な in situ XRD を導入し、ビームタイムを待つことなく in situ 実験が提供できる環境を整備した。本課題ではSPring-8 BL08B2における in situ XAFS とラボで実施可能な in situ XRD を併用・比較して Pd/CeZrO2 の劣化解析を行うことで、触媒の挙動および in situ XRD の有用性を考察した。
リチウムイオン電池の充放電に対する作動環境温度の影響を解析するため、温調機能を有する in situ 測定系を構築し、高温(80°C)・低温(-10°C)における in situ XRD測定を実施した。各条件で室温(25°C)とは異なった活物質の構造変化が観測され、本分析法により新しい知見が得られることが示唆された。
Ag+ 交換した種々のゼオライトの、蛍光を示す調製条件と示さないものの Ag K 吸収端EXAFSを測定した。それらのうち、水中でも蛍光を発する Ag+ 交換したX型ゼオライトについて、水中での Ag の局所構造を解析した。Ag の含有量や交換後の処理温度を変化させると蛍光スペクトルの高さは変化したが、ピークの形や位置はほとんど変化しなかった。一方、EXAFSの解析によるフーリエ変換について、強度はいくらか変化するが形はほぼ変わらず、カーブフィッティング解析した局所構造も処理温度の違いによる変化がまったくなかった。