近年、我々の研究チームでは欧米の美術館などに保管されている東アジア地域における貴重な木彫像の樹種調査を進めている。本研究では、アメリカ合衆国クリーブランド美術館に保管されている中国唐代の作と考えられている時代的にも希少な木彫像、十一面観音立像についての樹種調査結果について報告する。像の複数個所から採取された非常に小さな試料の一部に、SPring-8 の BL20XU でのシンクロトロン放射光X線トモグラフィーを適用して樹種識別調査を行った。その結果、解剖学的特徴からイトスギ属(
Cupressus. sp)あるいはヒノキ属(
Chamaecyparis sp.) に同定される樹種が使用されていることが判明した。植生からイトスギ属の可能性が高まっているが、本研究は中国唐代における仏像に使用される檀像の代用材:栢木(はくぼく)の観念を知る上で重要な知見の一つになると期待される。
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