SPring-8/SACLA利用研究成果集
Online ISSN : 2187-6886
最新号
SPring-8 Document D 2024-002
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
Section A
Section B
  • 大野 直子, 磯部 繁人, 金野 杏彩, 柴田 博紀, 鵜飼 重治, 本間 徹生
    2024 年 12 巻 1 号 p. 24-27
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     高速炉・軽水炉の燃料被覆管として開発が進められている酸化物分散強化 (ODS) 鋼では、合金に添加される活性元素によって析出する酸化物粒子の種類が変化し、それが酸化物粒子のサイズや分散状態に反映され、高温強度特性を支配する。本研究では、開発材に添加される元素である Al、Ti、Zr を対象に、それぞれの元素について酸化物粒子析出初期の過程を模擬した試料を作製して、BL14B2 のX線吸収分光 (XAFS) によって化学状態と結晶構造の変化を調査した。 X線吸収端近傍構造 (XANES) スペクトルより、メカニカルアロイング後熱処理前から Y、Zr が酸化物として存在することが明らかとなったが、X線吸収微細構造 (EXAFS) の動径構造関数からは、総じて ODS 試料のピークは酸化物標準試料のピークと比べて弱く、結晶構造が乱れていると考えられる。
  • 村田 徹行, 木内 久雄, 平野 辰巳, 森田 将史, 松原 英一郎
    2024 年 12 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     リチウムイオン電池(LIB)の不安全状態における熱暴走反応に伴う正極活物質を始めとする各部材の構造変化を観測するため、専用に設計した電池釘刺し装置により強制的に熱暴走させた LIB ラミネートセルに放射光を透過入射させるその場放射光 XRD 測定系を構築した。幅広の開口部を持つ CdTe 検出器を用いることにより、ゴニオメーターで検出器を動かすことなくミリ秒オーダーでの高時間分解連続露光を行うことができ、正極活物質の構造変化や集電箔の昇温挙動、反応機序をミリ秒オーダーで観測することが可能となった。
  • 鈴田 和之, 小林 翔, 山中 良介, 古田 桃子, 渡邉 紘介, 前田 貴章, 伊藤 廉
    2024 年 12 巻 1 号 p. 33-36
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     我々は、これまで BL24XU にて毛髪内部のX線 CT 測定を行い、毛髪コルテックスにおける空隙形成に対するダメージや年齢などの影響を明らかにしてきた。本研究では、日本人女性毛髪を用いて、BL47XU の微分位相X線マイクロ CT を用いた毛髪コルテックスにおける空隙の高精度な可視化を検討した。その結果、BL24XU での結果と同様に毛髪内空隙数が毛先ほど増加する傾向や加齢に伴って増加する傾向を捉えた。しかし本課題において、毛髪コルテックスの微細構造に基づく空隙の存在部位を可視化するには至らなかった。
  • 藤原 孝将
    2024 年 12 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     ナノ加工された Ge 基板上の SiGe 薄膜にはフォノンの異方性があることが推測されており、これを用いた熱電発電技術が近年注目されている。このフォノンの異方性を直接的に観測するために、X線回折吸収分光法 (DAFS) の EXAFS と同様の原子間距離に由来する振動を精密に解析し、フォノン振動と関係性のあるデバイワーラー因子を推定することを考えた。今回は BL19B2 において均一な SixGe1-x/Ge 薄膜の 400 反射面の DAFS 信号からデバイワーラー因子を導出することを目的として実験を行った。その結果、振動している 400 反射の積分強度の変化を観測することができた。さらにこの振動パターンをフーリエ変換することで最近接の Ge-Ge(Si) 結合と一致する 2.2 Å 付近のピークを確認することができたが、動径分布関数は窓関数に大きく依存するものであり、デバイワーラー因子の算出には十分な S/N が得られなかった。
  • 藤原 孝将
    2024 年 12 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     ナノ加工が施された Ge 基板上の SiGe 薄膜にはフォノンの異方性があることが推測されており、これを用いた熱電発電技術が近年注目されている。このフォノンの異方性を観測するために、X線回折吸収分光法 (DAFS) の EXAFS 振動を精密に解析し、フォノン振動と関係性のあるデバイワーラー因子の推定を試みている。2019A 期に行った NaI シンチレーションカウンターを用いた実験では、その結果 DAFS の振動信号を得ることができたが、デバイワーラー因子の算出には十分な S/N 比が得られなかった。そこでダイナミックレンジの大きな PILATUS 100K 検出器を使い測定を行った。S/N 比は向上したもののデバイワーラー因子の分析にはさらなる S/N 比の向上と入射X線強度の変動(グリッジ)に耐えうる測定が求められる。
  • 菅野 聡, 米村 光治, 山口 樹, 豊川 秀訓, 齋藤 寛之
    2024 年 12 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     鉄鋼材料の圧縮過程のその場観測技術の確立を目的として、高エネルギーX線を用いて 70 mass%Ni-Fe 合金の熱間圧縮・等温保持過程の転位密度変化のその場観測に成功した。700 ℃ ~ 850 ℃ の熱処理温度で 50 ℃ ピッチで温度を変化させ、熱間圧縮では 800 ℃ 以上で動的回復・再結晶の挙動を示し、続く等温保持過程では、静的回復・再結晶による転位減少の相違を確認できた。本技術により、実機製造プロセスにおける実材料の特性向上メカニズムの解明や効率的な材料開発への貢献が期待できる。
  • 徳田 一弥
    2024 年 12 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     高分子材料を用いた製品において、強度特性等に重要な役割を果たす配向の評価技術は非常に重要である。板もしくはフィルム状の試料に対しては XRD と二次元検出器を用いた測定法が有用である一方で、X線が透過する厚み方向の情報が分離できない欠点があった。そこで本課題では、二次元検出器用スリットの一種であるスパイラルスリットを用いることで、厚み方向での情報分離の可能性を検証した。結果として、今回使用したスパイラルスリットの、標準的な調整後の使用では、方位角毎に焦点位置に最大 3 mm 程度のズレがあるため、厚み方向の空間分解能は 3 mm 前後に限定されることが明らかになった。今後調整法改善の可能性を検討する。
  • 有本 太郎, 三浦 真毅, 竹元 史敏
    2024 年 12 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     真空紫外光(Vacuum Ultra Violet, VUV)処理は基板と配線界面の平滑性を維持したまま回路形成が可能であるため、従来のアンカー効果を狙った粗化処理に変わる次世代プリント基板製造プロセスとしての期待が高まっている。めっき前処理として VUV 処理を導入することで、化学的な結合が形成され、めっき被膜の密着強度が向上することが確認されている。しかしながらそのメカニズムは未だ明らかにされていない。密着に寄与する要因解析の一つとして、無電解 Cu めっきの触媒として作用するPd粒子の界面での挙動を捉える事が重要であると考えている。今回、Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy(HAXPES)により、めっき密着界面の深さ分解測定を行った。結果、Pd 粒子は、基板樹脂とは結合せずに VUV 処理で形成された改質層内部に食い込む形で存在していることが分かった。
Section C
Section SACLA
  • 米田 仁紀, 道根 百合奈, 犬伏 雄一
    2024 年 12 巻 1 号 p. 64-66
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     SACLA では、2色発振を利用して多くの特徴的な研究が行われている。この2色発振は、時間的、空間的に重なり度合いが明らかな必要がある。特に、高強度の XFEL 実験では 100 nm 程度の集光位置においての、その重なり合いが保証されている必要がある。ここでは、誘導放出過程を使って、その重なり度合いをチェックした。
  • 米田 仁紀, 道根 百合奈, 犬伏 雄一
    2024 年 12 巻 1 号 p. 67-69
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     X線自由電子レーザー (XFEL) 励起内殻電子ハードX線レーザーのスペクトル制御を行い、その得られた特徴あるパルスレーザー構造を利用してポンププローブ計測を行った。一般にこういった計測では周波数間隔と全体のスペクトル幅の比が重要になる。Kα 線の場合は利得スペクトル幅で決まる有効なスペクトル幅が制限されてしまうことが起きていたが、XFEL の強励起を行うことで得られる赤方シフト領域にも、この周波数フリンジを外挿できることが分かった。また、これを利用したポンププローブ実験として Co の透過に対するフリンジ変化の観測も行った。
  • In-Sik Kim, Joshua Heineman, Cindy Pham, Hugo Lebrette, Vivek Srinivas ...
    2024 年 12 巻 1 号 p. 70-73
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     Metalloenzymes use the environment around the metal site to manage substrate interactions with the metal in order to effect efficient and specific catalysis under ambient conditions. Use of fs X-ray pulses from an XFEL allows to follow such reactions at room temperature (RT) without inherent radiation damage to the active site during the X-ray measurement [1-3]. We developed an approach employing simultaneous X-ray crystallography (XRD) and X-ray Emission (XES) techniques using fs XFEL-pulses [4,5] that provides complementary information: detailed information about changes in the electronic structure of the catalytic metal (XES), and the geometric changes of the metal site and the entire protein (XRD). In this experiment we used fs XFELs-pulses for RT studies of redox active metalloenzymes to capture reaction intermediates and expand time resolved studies of proteins at XFELs beyond photo-activated systems to chemically triggered systems. The main objective of this beam time was to test a novel sample delivery setup that was designed to allow drop on demand sample delivery combined with oxygen gas incubation of the individual sample drops prior to X-ray probing. We intended to test a new geometry, drop-on-wheel, which differs from our previously established drop-on-tape setup [6] and promises easier installation and operation. We included several important metalloenzymes, (ribonucleotide reductase, hydrogenase and methane monooxygenase) in this experiment to test this approach. Initial results from these tests are reported here.
  • 米田 仁紀, 道根 百合奈
    2024 年 12 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     X線自由電子レーザー (XFEL) 励起内殻電子ハードX線レーザーでは、固体状態のターゲットを使って原子準位を制御しながらレーザー発振が可能になる。このことは、レーザー媒質として Bragg 共鳴を持つ固体結晶を利用でき、その共鳴を使ってレーザー発振の波長選択を行うことが考えらえる。ここでは、その特性を用いて発振線の1本を禁制させることを目指した実験研究の報告である。
  • 吾郷 日出夫, 小林 周, 上野 剛, 平田 邦生, 中迫 雅由, 山本 雅貴
    2024 年 12 巻 1 号 p. 78-82
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/02/29
    ジャーナル オープンアクセス
     動的結晶構造解析では、結晶全体の同期した構造変化が必須である。より良い同期の実現には、より小さな微結晶の利用が望ましい。本実験では回折能が一層小さな微結晶のX線回折強度測定の妨げとなるバックグラウンド散乱の抑制を目指した真空回折計の開発に向けた課題の検討を、SACLA でのコヒーレントX線回折イメージング(CXDI)用真空回折計 TAKASAGO-6 を用いて実施した。その結果X線結晶構造解析用真空カメラの開発に、TAKASAGO-6 で開発された技術が応用できることを確認した。一方、CXDI で観測しない高分解能域に、溶媒由来と思われるX線散乱が観察され、試料調製方法の改良が必要であることも判明した。
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