大気汚染学会誌
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23 巻, 1 号
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  • 横山 栄二
    1988 年 23 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    大気汚染下で運動した場合, 当然換気量は増えており, 大気汚染の健康影響が強まらないであろうか, という疑問を誰でもが抱くであろう。 本総説はこの実際上の疑問に学問的に応えようとするものである。健康人は安静下では通常鼻を通じて呼吸しているが, 分時換気量が35~40l/mを超えると口呼吸が始まるという報告があり, 一方汚染ガス, 例えばオゾンの上気道による摂取率は口経路の方が鼻経路より遙かに低いという報告がある。 すなわち, 運動時呼吸の特徴の一つは, 吸入空気量の増加に加えて口経路を通ずる換気の割合が増加する事にあり, したがって運動時には鼻呼吸より予測されるよりも相当に多い量の汚染ガスが, より深部の気道や肺に侵入する可能性が高い。 一方, 健康人志願者のオゾン暴露実験において, 運動を加えると肺機能に対するオゾンの影響が増強されており, 未だ数は少ないが, 動物実験でも同様な成績が報告されている。
  • 森 仁, 高原 康光, 形見 武男, 西川 治光, 早川 友邦
    1988 年 23 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    環境大気中の微量ふっ素の定量法として, ふっ素をトリメチルクロロシラン (TMCS) でシリル化し, 生成するトリメチルフロロシラン (TMFS) をヘッドスペース・ガスクロマトグラフ法で定量する方法を検討した。
    大気中のふっ素を孔径0.8μmのメソブランフィルター(粒子状ふっ素化合物用) と1%炭酸ナトリウム含浸戸紙 (ガス状ふっ素化合物用) を直列に配置し, 吸引速度20l/minで1~2時間通気捕集する。 捕集した炉紙に水20mlを加え, 沸騰水浴上で20分間加熱抽出した後, 炉過して25mlとし, 試料液とする。
    試料液 (ふっ素イオン0.3μg以下) を50ml用のバイアル瓶にとり, 塩酸20mlと水を加えて全量を50mlとした後, TMCS飽和塩酸溶液1mlを加え, 直ちにゴム栓をし, キャップで密封する。 次に, 30℃の恒温水槽に入れ, 30分間振とうした後, 気相をガスタイトシリンジにて分取し, FID付ガスクロマトグラフに注入する。 TMFSのピーク高を測定し, 検量線からふっ素イオンを定量する。
    本法は, 0~0.3μgの範囲で良好な直線性を示し, 0.1μg添加した場合の繰り返し実験による相対標準偏差は2.4%(n=10) であり, 共存イオンの影響も少なく, 高感度に迅速かつ簡易にふっ素イオンを定量することができた。
    また, 実試料への適用として環境大気中のふっ素イオンの測定を行ったところ, 良好な結果が得られ, 定量下限は2m3通気捕集したとき, 0.01μg/m3であった。
  • 岡本 真一, 小林 恵三, 片谷 教孝, 吉田 忠雄
    1988 年 23 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    光化学大気汚染の防止対策等に資することを目的として, 光化学大気汚染モデルの開発を行った。 拡散モデルは2層のボックスモデルとし, 移流については実測風速より変分法による内外挿モデルを用いて求めた風速分布を用いた。 光化学反応モデルは筆者らによる炭化水素を反応性により3成分に分けて扱うRS32モデル (反応数12) を用いた。 モデルの検証は, 播磨地域の約46km×37kmの範囲を対象とし, 1980年度夏季における気象データ, 環境濃度データおよび発生源データを用いて行った。 その結果, 2日間にまたがるシミュレーション計算においても比較的良好な整合性が得られ, 03濃度ピーク出現時刻の計算値もほぼ実測値に一致する傾向が見られた。
  • 高木 敬彦, 後藤 純雄, 村田 元秀, 松下 秀鶴, Joellen LEWTAS
    1988 年 23 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    多量採取が困難な室内空気の変異原性の測定に, サルモネラ菌TM677株を用いるmicro-forward mutation法の適用が可能かどうかを検討した。
    まず, この方法の感度および再現性を大気浮遊粉じん溶媒抽出物を用いて調べたのち, 本法を室内空気浮遊粒子および粒径別に捕集された室内空気浮遊粒子の溶媒抽出物に適用した。
    その結果, 本法はAmes法 (プレインキュベーション法) より, 実質的に10倍以上高感度であり, その再現性も比較的良好であることから, 微量環境試料の変異原検索に有効であることを認めた。また室内空気浮遊粒子の変異原性は, 非分級捕集の場合は約30m3, 分級捕集の場合は約90m3を吸引して得た浮遊粒子試料で十分測定可能となることを認めた。
  • 河端 美則, 宇田川 忠, 樋口 一枝, 山田 博之, 橋本 尚子, 岩井 和郎
    1988 年 23 巻 1 号 p. 32-40
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ディーゼル排ガス中の粒子成分の肺障害性, 発癌性を知る目的でFischer 344系SPF雌ラット肺にディーゼル粒子を10mg経気管支性に注入した。注入終了後18~30ヵ月生存例を病理学的に検索した。ディーゼル粒子注入群では粒子は終末細気管支周囲肺に存在し, この部を中心に多数の上皮過形成巣の出現をみた。肺腫瘍は42匹中31匹に37コみられ, 内訳として腺腫は11コ, 癌は26コであった。一方活性炭群でも程度は軽いが上皮過形成巣がみられ, また肺腫瘍は23匹中11匹に11コみられた。溶媒群では23匹中1匹に1コの肺腫瘍をみた。腫瘍数の頻度は上記3群間で有意差が存在した。無処置群44匹には肺腫瘍をみなかった。肺外腫瘍ではディーゼル粒子群にのみ, 無処置群に比し有意に高値の脾腫, 白血病の増加をみた。これらの結果からディーゼル粒子は肺障害性・発癌性を有していることが示された。また活性炭による肺癌の発現は, 除去しきれなかったタール成分の関与も考えられた。
  • 木村 富士男, 椎橋 正幸
    1988 年 23 巻 1 号 p. 41-51
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    道路周辺や都市域でのNOからNO2への反応拡散モデルはいくつか提案されている。このなかで木村 (1978) による定常近似法は, どのような拡散式にも応用でき, しかも経験的に決定しなければならないパラメータを含まない, 理論的なモデルである。しかしながら, 短時間平均濃度を対象とすること, バックグランドのO3, NO2濃度を与えなければならないなど, 実用上には使いにくい面があった。この報告では, 理論モデルとしての長所を持ったまま, これらの欠点を改善する。
    モデルに必要なバックグランド濃度を, 少数の常時観測点の実測濃度から, 期別時間帯別に推定する方法を示す。しかもその値に空間的代表性があることも示す。次に期別時間帯別の長期平均濃度に対する変換公式を導く。その際, 新しいパラメータとして, 短時間平均濃度の変動係数が導入される。この公式はごく簡単な代数計算により, 実測されたNOXの長期平均濃度を高い精度でNO2の長期平均濃度に変換することができる。
    年平均値に対しても, 変換率は近似的に一本の曲線で表される。両対数グラフに書くと極めて緩やかな曲線となり, 統計モデルと良く一致する。結果的には, このモデルは統計モデルの理論的裏づけを与えることにもなる。さらに統計モデルにおける常時観測局と自動車排ガス局とのパラメータの違いをも説明する。
  • 吉川 障, 山口 克人, 加賀 昭和, 井上 義雄, 李 和云
    1988 年 23 巻 1 号 p. 52-63
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    一般風が小さくよく晴れて海陸風が発達したときには, 高濃度の大気汚染が問題となるが, 本報ではその複雑な流れ場での大気汚染物質濃度の予測を試みた。流れ場は大阪の8月を対象として海陸風の数学モデルで予測し, その流れ場における汚染物質の移流拡散過程, 沈着による除去過程, 光化学反応による変質過程を扱った。光化学反応モデルは池田の簡略化モデルIIを用い, 沈着現象はdry depositionだけを扱った。
    計算によって求めたSO2, NO, NO2, O3などの主要大気汚染物質濃度の空間的および時間的変化は, 移流・拡散と反応により生じる各物質に特有の変化をよく表していた。また, 実測結果との比較においても, 計算結果の各物質の最高濃度が現れる時刻, 最高濃度の値などの一致がみられた。
  • 松本 光弘
    1988 年 23 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 1988/02/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    雨水中のカルボン酸の測定に, 排除イオソクロマトグラフィー (以下, ICE法と略) の適用を検討した。その結果, 5種のカルボン酸 (ギ酸, 酢酸, プロピオン酸, コハク酸, グルタール酸) を迅速にかつ同時に定量することができた。しかし, シュウ酸とマロン酸についてはICE法では分離が悪いため, 通常のイオソクロマトグラフィーで定量した。
    雨水中のカルボン酸は, 室温では数日で完全に分解するが, クロロホルムあるいは塩化水銀を添加することにより室温でも3ヵ月間以上安定であった。
    雨水中のカルボン酸濃度の年平均値は, ギ酸0.181μg/ml, 酢酸0.112μg/ml, その他のカルボン酸は0.Ol8μg/ml以下であった。
    雨水中の水素イオン濃度に及ぼすカルボン酸の寄与率の年平均値は, ギ酸3.89%, 酢酸0.59%であり, カルボン酸全体で4.94%と見積ることができた。
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