日本認知心理学会発表論文集
日本認知心理学会第13回大会
選択された号の論文の156件中1~50を表示しています
口頭発表1-1 日本語セッション1 (社会的認知/発達・教育・学習)
  • ―模擬的運転ゲームを用いた検討
    大塚 翔, 安藤 達志, 星野 航, 原田 悦子
    セッションID: O-1-1-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    近年,自動車の高度運転支援システムが注目を集めている。本研究は,その利用学習の過程を探索的に検討するため,模擬的な運転ゲームを用い,手動操作習熟後に支援システムが導入・変更される状況を再現した。実験では,参加者はまず,ゲームでの路線追従を手動操作で学習,次に,性能60%/80%(100%で完全追従)いずれかの自動モードを導入し,その利用を学習した(学習1)。その後,両群共70%の自動モードで追従ゲームを行った(学習2)。その結果,学習1で60%の低性能自動モードを経験した群は,学習2での自動モード利用率が80%高性能自動モード利用群よりも高かった。この結果を説明するために,学習1での自動モード利用行動を分析したところ,60%条件では自動モードと手動追従との相互補完関係を明確に学習し,“役割分担”的な利用方略が学習されていた可能性が示唆された。自動機能による支援システムの利用学習における役割認知の重要性が示唆された。
  • ―加齢による検討
    大門 貴之, 原田 悦子, 須藤 智
    セッションID: O-1-1-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    高齢者が示すICT機器利用困難の原因を追究するため,機器利用学習におけるガイド情報の利用過程に注目した.実験ではGroton Maze Learning Task(GMLT)を用い,複雑なガイドをGMLTに埋め込んだ際,ガイド利用が学習をどのように変化させるか,そこに加齢による違いがみられるかを検討した.ガイドの意味が理解容易な順向デザインとそうではない逆向デザインを設定し,若年成人・高齢者各36名を統制群/順向群/逆向群にランダムに割当てた.順向群ではガイド情報により両年齢群とも経路探索時間,ルールに則ったエラー数を減少させた.しかし逆向群では,若年成人はルールに則ったエラーの減少を示したが,高齢者ではエラー減少は見られなかった.高齢者は順向ガイドでは意味を抽出し,経路探索に利用できるのに対し,逆向ガイドは利用が困難であったことから,今後さらに高齢者の学習困難さの要因を検討していく.
  • 光藤 優花, 小川 洋和
    セッションID: O-1-1-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    顔静止画像から声を予測できるか否かを検証する方法として顔と声のマッチング課題があるが、この課題を用いた先行研究の知見は一貫していない(Kamachi et al., 2003; Mavica & Barenholtz, 2013)。しかし、この正答率には刺激モデルによる個人差があり(Mavica & Barenholtz, 2013)、課題遂行時の手がかりを当てはめやすいか否かが原因の一つであると考えられる。本研究では顔と声から得られる性格特性の印象の類似度がマッチング課題の手がかりとして利用されているという仮説について検討することを目的とした。顔静止画刺激と音声刺激のマッチング課題を行った結果、チャンスレベルを上回る正答率が得られた。さらに、各モデルの顔と声から受ける性格特性の評定値の類似度と正答率の相関関係が示された。これは、マッチングの手がかりとして性格特性の印象が重要な役割を担っていることを示唆する。
  • 楠見 孝, 伊川 美保
    セッションID: O-1-1-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    本研究の目的は,リスクコミュニケーションにおける数値情報の理解に影響を及ぼすニュメラシー(numeracy)の影響について検討することである。そこで,リスクリテラシーを測定する客観テストと主観評定尺度の日本版を作成し,1300名の被災地及び首都圏住民にネット調査をおこない,リスク情報理解に及ぼす影響を検討した。その結果,放射線に関するメッセージにおける数値の理解容易性は,客観的ニュメラシーとは.25の相関,主観的ニュメラシーとは.66の高い相関があった。また,放射線知識(.40),科学リテラシー(.25),批判的思考態度(.23),メディアリテラシー.(17)とも相関があった。これは,リスクメッセージの理解を,批判的思考を土台として,科学,メディアのリテラシーとニュメラシーが支えていることを示す。
  • ―年齢群間比較
    長谷川 莉子, 原田 悦子, 栢野 航, 大澤 博隆
    セッションID: O-1-1-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    情報システムで利用される擬人化エージェントは,利用者との間に対人インタラクションを模したコミュニケーションをもたらし,高次の機器利用へつなぐ狙いがある。こうした相互作用においてエージェントに対する生物らしさ知覚が基盤になると考え,擬人化エージェントの生物らしさ知覚の有無と,そこでの身体性の効果を検討した。オーブンレンジを対象とし,目・腕のロボットパーツを取り付けた身体条件,音声だけの音声条件,エージェント化しない統制条件の3条件を比較した。65歳以上の高齢者と若年成人各36人がユーザビリティテスト形式の実験に参加し,主観的な生物らしさ知覚を評価した。その結果,生物らしさ知覚には“生体感”と“知性”の2側面があり,高齢者は身体性付与により両者が高まるが,若年者は特に“知性”に関し身体性の付与による評価の低下を示した。年齢群間での相違を基に,エージェントの生物らしさ知覚の機序について検討した。
口頭発表1-2 日本語セッション2 (知覚・感性1)
  • 金澤 綾香, 小鷹 研理
    セッションID: O-1-2-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    近年、視覚外にある現実の手の動きと視界内のrubber hand(手の人形やロボットハンド)の動きを同期させることで(運動・固有感覚-視覚間同期)、rubber handに対する身体所有感を付与する試みが増えている。影は同様の感覚間同期を自然かつ容易に生成できるが、影が身体所有感に直接的に及ぼす関係については未だ不明である。本研究では、ドリフト量を身体所有感の指標として採用することで、影によるRHIの効果を検証した。実験では、影の外観の異なる複数の環境(手・手と連動する長方形・手と連動しない長方形)において、被験者の手が運動あるいは静止する条件で、ドリフト量の計測とアンケートを実施した。実験の結果、影が身体と一致した形状を有することが、強い身体所有感を付与する上で重要な条件であることが示された。一方で、運動による効果はドリフト量のみに観測され、アンケートのレベルでは違いは得られなかった。
  • 今泉 修, 浅井 智久
    セッションID: O-1-2-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
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    手の運動に空間的に整合する視覚フィードバックは,その持続時間が長く知覚される。運動と結果の時間・空間的整合は自らが行為をもたらしている感覚(自己主体感)に必要であり,自己主体感は時間知覚を変調する。本研究は,運動の視覚フィードバックへの自己主体感が主観的時間を伸長すると仮説を立てた。実験参加者の左手の動作が撮影され,その撮影像の遅延 (50-1500 ms) や方向 (正立,倒立) が操作されて一定の時間モニタに呈示された。参加者は,過去の全試行と比べてその映像を長くまたは短く感じたかを回答した。また,自らが映像の手の動きを操っていると感じたかどうかについて回答した。その結果,運動の遅延視覚フィードバックは,物理的に同じ持続時間であっても主観的に短い時間を知覚させ,自己主体感を減衰させた。運動の視覚フィードバックが主観的時間を伸縮させる効果に,自己主体感が寄与することが示唆された。
  • 福井 隆雄, レヴォル パトリス, サルム ロメオ, ピゼラ ロール, ロセッティ イヴ
    セッションID: O-1-2-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    行為生成における視覚-運動変換過程を検討するために,頭頂葉損傷患者を対象に,到達把持運動とそのパントマイム動作の運動学的特性を検討した.視線条件として,中心視と周辺視(提示物体から10度)の2条件を設けた.パントマイム動作時は,最初の物体提示後,ゴーグルにより5秒間見えが遮断され,その間に物体が取り除かれ,再びゴーグルが開いた際,物体が提示されていた位置へのパントマイム動作が求められた.到達把持運動時は視覚遮断中に物体を取り除かなかった.背-背側経路(dorso-dorsal stream)に主に損傷された患者では,周辺視条件における到達把持運動の障害とパントマイムによるつかみ幅の改善が認められた.腹-背側経路(ventro-dorsal stream)も損傷された患者ではパントマイム時の改善は認められなかった.これらの結果は,行為生成における,それぞれの背側経路の役割の違いを示唆する.
  • 中島 亮一, 岩井 律子, 上田 彩子, 井関 龍太, 熊田 孝恒
    セッションID: O-1-2-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    運転等の自己移動に必要な知覚として、自己方向、自己位置の知覚がある。これらの知覚に対して、「道路が正立して見えていること」「遠くの情報を中心視で捉えること」という、典型的な道路の見えの要因が影響を与えるかどうかに焦点を当てて検討した。実験では、2枚の直線道路の画像を観察して、どちらが道路に対して正面を向いたものか(自己方向判断)、どちらが車線の中央から見たものか(自己位置判断)を答えさせた。実験1では正立画像と倒立画像の比較、実験2では正立画像と上下入替画像の比較を行った。その結果、自己方向判断は画像操作によって成績の低下が見られたが、自己位置判断は画像操作による成績の違いは見られなかった。よって、自己方向知覚には上述の2つの要因が重要である一方で、自己位置知覚はそれらの要因に対して頑健であることが明らかになった。つまり、自己方向・自己位置知覚は別々の認知処理だと考えられる。
  • 山田 千晴, 板口 典弘, 福澤 一吉
    セッションID: O-1-2-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,視覚フィードバックに回転座標変換を加えた新奇な環境において,連続的に動き回るターゲットを追いかけ続ける追従課題を用いて,練習量が即時的・持続的な成績の変化にどのように影響を及ぼすのか検討した。実験は2日間に分けて行われた。ターゲットの視覚的フィードバックに関し2条件(Rotation・Normal),1日目の練習量に2条件(多・少)を設け,全4条件において,試行中のターゲットとカーソルの距離の総和をエラーとして算出した。エラーの減衰やアフターエフェクトに関する結果から,①少ない練習量ではエラーがほぼプラトーになるが新奇な回転座標変換に応じた新たな内部モデルの獲得には至らないこと,②練習が多ければそれが獲得可能であること,③1日目にアフターエフェクトを生じる程度まで順応学習を達成していれば,2日目にはその達成には本来不十分な練習量でも,内部モデルは維持されることが示唆された。
口頭発表2-1 英語セッション1 (感情・記憶)
口頭発表2-2 日本語セッション3 (記憶)
  • 安枝 貴文, 小川 洋和
    セッションID: O-2-2-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    Shimamura, Ross, & Bennett (2006)は様々な表情をした顔刺激を呈示し性別判断課題を行った後に、偶発記憶課題を行い表情がどの程度記憶されているかを検討した。その結果、幸福表情が怒り、恐怖、驚き表情よりも記憶されていることを示した。本研究の目的は、顔記憶における表情の効果が、観察者の表情とどのように相互作用するかを明らかにすることであり、Shimamura et al. (2006)と同様の手続きを用いた。本研究では課題中に参加者に割り箸をくわえさせることによって、表情筋を笑顔の状態に近づけた。表情筋の操作が顔記憶の記銘処理・想起処理のそれぞれにどのように影響するかを検討した。その結果、表情筋の操作が恐怖表情記憶の想起に干渉したことを示した。表情を想起する際に自動的な表情模倣が生じており、割り箸による表情筋の操作によってそれが阻害されたため、結果として恐怖表情の再認生起が低下した可能性がある。
  • 三好 清文, 蘆田 宏
    セッションID: O-2-2-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    We investigated the effect of processing fluency induced by spatial cueing on recognition memory judgments. Participants memorized pictures of everyday objects, and their spatial attention was manipulated in a Remember/Know recognition memory test. Stimulus location was either predicted (valid condition) or unpredicted (invalid condition) using an arrow cue. The results revealed that familiarity-based false recognition increased in the invalid condition. In the invalid condition, participants may have attributed part of the perceived disfluency to the spatial cue and overestimated the fluency for the stimulus, leading to increased false recognition. In contrast, in the valid condition, participants may have attributed some parts of the perceived fluency to the spatial cue and underestimated the fluency for the stimulus, leading to decreased false recognition. In short, spatial cueing induces reasoning about the source of fluency and biases recognition memory.
  • 上田 祥行
    セッションID: O-2-2-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    繰り返し見たものを好ましく思うことは単純接触効果として知られている。我々の知覚は、外界から情報を取得する際に、複数の物体情報を要約して捉えている。単純接触効果が知覚的流暢性の向上によって生じることを考えると、アンサンブル処理によって得られた要約情報への 好みも上昇する可能性が考えられる。実験は2つのセッションから成っており、Exposureセッションでは、参加者に12個の円の平均を計算するように教示した。その後のPreferenceセッションでは、Exposureセッションで呈示された円の平均の大きさを持つ円と、そうでない円のどちらがより好ましいかを判断するように教示された。その結果、実際には見ていないにも関わらず、呈示された円の平均の大きさを持つ円がより好ましいと判断された。このことは、実際に目にした経験がなくとも、処理をした経験のみで、ある物体に対する選好が生じることを示唆している。
  • 武野 全恵, 上野 泰治, 北神 慎司
    セッションID: O-2-2-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    視覚物体が目の前から消えた後,つまり保持段階中にその項目の1つに注意を配分すると(逆向的注意の配分),注意配分の指定を行わない時(統制条件)と比べて注意を向けた項目の記憶成績は上昇することが知られている。一方,この視覚的作動記憶内の情報への逆向的注意には厳しい容量制限が知られ、2項目以上に注意を分散する時には成績上昇はしないことがわかっている(Makovski & Jiang, 2007)。そこで本研究では,アイコニックメモリの支えがあるような実験事態、つまり,記憶項目が画面から消失後した直後に注意2項目を指定した場合であれば,正解率が上昇する可能性があると予測し、実験を実施した。結果、そのような実験事態でも,2項目に注意を向けた際には注意による成績の上昇はなく,逆向的注意には厳しい容量制限があることが確かに実証された。
口頭発表2-3 日本語セッション4 (知覚・感性2)
  • 片山 正純, 宇野 修平, 鈴木 駿介
    セッションID: O-2-3-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    手で使用する道具の認知は,手の身体モデルを用いた把持運動の脳内シミュレーションによって評価された把持可能性に基づいていると考えており(脳内シミュレーション仮説),この仮説の妥当性を検証してきた.しかしながら,最近報告されたBBR効果でも説明できてしまうという新たな課題が生じた.そこで,右手だけでなく左手の新たな身体モデル(変形した手形状に対応したモデル)を学習し,利き手で使用する道具と非利き手で使用する道具に関する道具のサイズに関する認知的判断「道具と見なすサイズ」を計測した.さらに,BBR効果を調べるために「見かけのサイズ」も計測した.この結果,見かけのサイズは手形状の変形の影響を受けていなかったため,本実験においてBBR効果は生じていなかった.道具と見なすサイズの計測結果は我々の仮説からの予測結果と一致する傾向を示した.これらの結果は,我々の仮説の妥当性を示している.
  • 板口 典弘, 山田 千晴, 福澤 一吉
    セッションID: O-2-3-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    従来,道具と身体の運動制御においては,それぞれ異なる内部表象が仮定されることが多かった。本研究は,身体と道具使用時の運動制御の違いには,戦略的な要因が大きく寄与することを仮説とし,習熟度の低い新奇道具を使用した際にも,戦略的要因を除外できれば,手使用時のような運動制御が可能となることを予測とした。そのため,実験では,戦略的要因の入りにくい速い速度での把持運動をおこなった。この時,もしターゲットを落としても問題はないことを被験者に繰り返し確認させた。実験の結果,新奇の道具を使用した場合でも,運動速度を速くすると,手を使用した際の把持に近い運動プロファイルが得られた。本結果は身体でも道具でも,共通の計算原理に基づいて運動計画が行われ,効果器の習熟度に応じた戦略を用いることによって運動制御の稚拙さが補われていることを示唆した。
  • 森 光洋, 石原 由貴, 小鷹 研理
    セッションID: O-2-3-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    物理的に離れた左右の手に同期的な振動刺激「触覚—触覚間同期」を与える事で双方の手が接触する感覚を与える自己接触錯覚(self touch illusion:STI)において、お互いの手が引き合うような形で位置感覚の変化(proprioceptive drift)が生じる事が知られている。本研究ではSTIを誘発した状態で物理的な手の位置を動的に制御し、さらにHMD上で位置感覚の変化に合わせた指の伸縮イメージを含むCGイメージを呈示することで、指の伸縮感覚を誘発する装置を開発した。この装置を用いて、特定の感覚提示のみをキャンセルする事によって身体伸縮感覚の誘発における各モダリティーの効果を検証したところ、振動同期の効果はSTI、伸縮感覚両者に強力に作用している一方で、視覚の効果は限定的だった。すなわち、STIで形成される自己接触イメージが伸縮感覚の基底をなしていることが示された。
  • 伊藤 博晃, 岡田 顕宏, 阿部 純一
    セッションID: O-2-3-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    快表情は右視野,不快表情は左視野優位に認知処理されるという感情価特異性効果が報告されている。この効果を報告する研究では,表情と中性表情の合成画像と中性表情を左右に並べて呈示し,上部に書かれた感情ラベルと一致する方を判断する,という課題が用いられている。この課題では呈示される表情刺激と一致する感情ラベルが常に呈示されるため,感情価特異性効果が,表情刺激の呈示位置により生起するのか,感情ラベルにより生起するのか,あるいは相互作用により生起するのかは定かではない。本研究ではこの問題を検討するため,感情ラベルは呈示せず表出強度の強い顔刺激を検出する課題,感情ラベルの種類を従属変数として,全く同じ刺激を対呈示し,感情ラベルと一致する方を判断する課題を実施した。その結果,感情価特異性効果は,感情ラベルの呈示によって生起するものであり,感情価と一致する視方向への反応バイアスであることが示唆された。
  • 松田 憲, 熊本 祐大, 一川 誠, 河原 純一郎
    セッションID: O-2-3-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では目標物検出の反応時間に聴覚刺激のテンポが及ぼす影響について検討した。聴覚刺激のテンポと視覚刺激の偏心度を操作し,3つの実験を行った。聴覚刺激として,実験1ではテンポが12.5Hzと25Hz,50Hzの単音,実験2では心拍数を基準とした80bpmと60%速いテンポ,60%遅いテンポの単音(実験2-1)ないしBGM(実験2-2)をそれぞれ提示した。視覚刺激の偏心度は, 4度,8度,12度,16度,20度であった。参加者は聴覚刺激を聴取後にモニター上のプレイスホルダーのいずれかにドットの提示が確認できたら即座にキーを押すことが求められた。実験2-2では各テンポのBGMを実験中常に与え続けた。実験の結果,テンポの速い聴覚刺激が視覚刺激への反応を速めることが示された。しかし,聴覚刺激のテンポが速いほど反応が速められるわけではなく,耳障りといった嫌悪感を喚起させる音は,反応を速めなかった。
口頭発表3-1 日本語セッション5 (思考・言語)
  • ―表記の違いによる異なるカテゴリーの導出
    本田 秀仁, 松香 敏彦, 植田 一博
    セッションID: O-3-1-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    日本語には、漢字・カタカナという異なる表記法が存在しており、見た目・使用法、それぞれ大きく異なる。本研究では、表記が思考に与える影響について検討を行った。具体的には、3都市名を漢字(例:岡山・広島・長崎)またはカタカナ(例:オカヤマ・ヒロシマ・ナガサキ)で呈示して、同じグループであると思う2都市の選択、ならびに選択理由の回答が求められる都市カテゴライズ課題を実施し、表記の違いがカテゴリー化に与える影響ついて検討を行った。結果として、漢字で都市名を呈示した場合は地理的近接性に基づいたカテゴリー化(岡山・広島を“中国地方だから”という理由で選択する)が行われやすく、一方でカタカナ呈示時は文脈的類似性(ヒロシマ・ナガサキを“原爆が投下されたから”という理由で選択する)に基づいたカテゴリー化が行われやすかった。以上、表記の違いによって異なる思考プロセスが生み出されることが明らかになった。
  • ―カプラ実験による検討
    原田 悦子, 運天 裕人
    セッションID: O-3-1-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    高齢者は人工物の創発的な利用が困難であるとされ(赤津・原田,2008),それが高齢者のICT機器利用の学習を阻害していると考えられる.そこで,本研究では高齢者の創発的な利用を促進する可能性として,若年成人との相互作用をとりあげ,高齢者同士,若年成人同士のペアと比較した際に,高齢者-若年成人ペアにおいてどのような創発的活動が見られるのか,検討を行った.各8組のペアにカプラ(単純な積み木)を渡し,自由に遊ぶという課題を行ったところ,高齢者-若年成人ペアでは,早い時期からさまざまな置き方を試みる,抽象化された作品を作る,などの創発的な行動が見られたのみならず,自分達の作品や活動に対する肯定的な評価や満足感が示された.高齢者-若年成人ペアのこうした特長は若年成人同士のペアよりもさらに高く,特に初対面の若年成人よりも初対面の「異世代」との活動は,コミュニケーションや活動を促進する可能性が示された.
  • 都築 誉史, 千葉 元気
    セッションID: O-3-1-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    2属性3肢選択意思決定課題において,文脈効果の一種である類似性効果とは,デコイがターゲットと類似しており,1属性でやや劣り,別の属性でやや優れ,総合的な期待効用が等しければ,デコイの追加によって,ターゲットの選択率が低下し,コンペティターの選択率が上昇する現象をさす。本研究では,3選択肢の属性値をすべて端数に設定した場合,従来,類似性効果が生じるとされる実験条件においても,ターゲットの選択率は低下せず,コンペティターの選択率が低下する類似性相乗効果が生じることを示し,選択肢への選好を反映する停留時間を時系列的に分析することを目的とした。実験参加者は,大学生37名であった。実験の結果,有意な類似性相乗効果が示された。都築他(2014)による,妥協効果条件,魅力効果条件の分析結果と比較すると,本条件における3肢に対する停留の時系列的推移の様相が,かなり異なる点が興味深い。
  • 三ヶ尻 陽一
    セッションID: O-3-1-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    反応時間は心理学研究において最も重要な指標の一つであるが、適切な解釈や分析方法は未だ確立していない.そこで、脳の構成と、記憶の想起に関する神経現象を再現できる単純な物理モデルに基づいた判断時間のモデルを構築した.このモデルは反応時間の分布をよく再現できるだけではなく,判断における二種類の誤りを予言する.一つ目の誤りは,モデルが仮定する二つの記憶想起の主体が処理を終える順番に起因するもので、二つ目の誤りは,物理モデルの性質から導かれるものである.ストループ課題を用いた実験を行ったところ,判断時間(反応時間ではない)が長いほど誤りが発生しやすくなること確認した.これは物理モデルが予言した内容と一致したため,提案モデルは判断に関する現象の本質を捉えたモデルであることを示唆する.
  • ―遠隔連想における負の閾下プライミング効果
    服部 雅史, 織田 涼, 西田 勇樹
    セッションID: O-3-1-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    問題解決過程において,無意識的な情報が解決に影響することが明らかにされているが,その効果は必ずしも安定しない。特に,意識的コントロールが強い場合には,閾下プライミングが負の効果を持つ可能性が示唆されている。そのしくみを明らかにするため,本研究では,手がかりの閾下提示が刺激に対する抑制を発生させるかどうかを調べた。遠隔連想課題において,正解を逆向マスキング提示したとき,正解の同定判断に遅れが生じることがあるかどうかを実験的に検討した。その結果,試行の初期段階においては,正解の閾下提示によって判断の反応時間が長くなる傾向が示唆された。この結果から推測されることは,試行の初期は緊張感があるため,意識的コントロールが強くはたらき,閾下プライミングがむしろ負の効果を持つのではないかということである。そのしくみは明らかではないが,外生手がかりの抑制が内生的促進も抑制するという仮説が有力視される。
口頭発表3-2 日本語セッション6 (注意)
  • ―流暢性が変化検出に及ぼす影響
    北神 慎司, 石原 尚, 池田 賢司, 高橋 知世
    セッションID: O-3-2-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    流暢性 (fluency) とは,刺激に対する情報処理の速さや容易さなどの主観的感覚を意味する.また,変化の見落とし (change blindness) とは,各種の変化検出課題において,明らか物理的変化になかなか気付くことができない現象であり,変化の見落としの見落とし(change blindness blindness) とは,自身の変化検出能力を過大視する現象である.本研究では,フリッカーパラダイムを用いて,画像のコントラストによって操作された流暢性が,変化の見落とし,および,変化の見落としの見落としに及ぼす影響を検討した.その結果,流暢性が高いことによって,変化の見落としの見落としが助長される一方で,流暢性が低いことによって,変化の見落としが低減することが示された.これらの結果は,仮説通り,二重過程理論によって説明された.
  • 白井 理沙子, 小川 洋和
    セッションID: O-3-2-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    不快感を喚起させる対象は数多く存在するが、同じ様な不快感を喚起したとしても、その原因は様々である。例えば、蓮の実の様な集合体により生じるトライポフォビアという恐怖症がある。Cole & Wilkins (2013) はトライポフォビアの原因は画像のもつ特徴的な画像特性であるとした。そこで本研究は、特徴的な画像特性を持つトライポフォビア喚起画像とそれを持たない不快画像・中性画像の注意処理の違いを実験的に検討した。参加者の課題は、画面上にある標的刺激の方向へサッカードすることであった。周辺視野には妨害刺激として自然画像が呈示され、この時の眼球運動を画像の種類により比較した。その結果、トライポフォビア喚起画像呈示時は不快画像・中性画像呈示時より画像方向への軌跡の終点逸脱が大きい事が明らかとなった。画像の種類間で主観的評価値に違いがないことから、画像の物理的特性がサッカード軌跡に異なる影響を与えた可能性が示唆された。
  • ―fMRI研究
    笹岡 貴史, 岡本 宜久, 岩瀬 耕二, 吉田 敏宏, 道田 奈々江, 岸 篤秀, 千葉 正基, 農沢 隆秀, 町澤 まろ, 金山 範明, ...
    セッションID: O-3-2-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    運転映像中に提示される視標の検出課題中の脳活動をfMRIによって測定した.実験では,水平線上の5カ所のうち1カ所に視標が提示され,実験協力者はできるだけ早くボタン押しを行った.実験条件は車速(60, 160km/h)×ピラー(垂直,傾斜)の4条件であった.反応時間の分散分析の結果,ピラー傾斜条件で右端(ピラーの外側)の視標検出が有意に遅いことがわかった.視標提示後2秒間の脳活動の分散分析の結果,ピラーと視標提示位置の交互作用が左楔前部に見られ,その活動は右端の視標提示時にピラー傾斜条件で活動が大きかった.先行研究でADHDや自閉症の青年に楔前部の過活動が報告されており,楔前部の活動はピラーの角度によって生じる運転と非関連な情報に注意が捕捉され,より注意のリソースが視標検出に必要になったことを反映していると考えられる.この結果は,脳活動測定を安全な自動車の設計へ利用できる可能性を示している.
  • 熊谷 俊宏, 水原 啓暁
    セッションID: O-3-2-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    腹話術を見ているときには腹話術者が喋っているにも関わらず, 人形を話者であると知覚してしまう. この現象を腹話術効果と呼ぶが, 神経基盤については未だよくわかっていない. 本研究では視空間注意による脳波位相シフトが聴覚皮質に伝播することにより,腹話術効果が誘発されると考え脳波計測を実施した. 音源定位課題において視覚的外発性注意を事前に与えることによって, 音源を視覚的注意空間へ選好して定位する結果となった. また脳波位相解析の結果では, 視覚的注意空間の対側である視覚領野, 及び, 頭頂, 側頭領野のシータ帯域の位相固定指標が高くなる結果であった. 本研究の結果から視覚野で生じた位相シフトは同側の聴覚領野へ伝播することが示唆され, 腹話術効果は視覚的注意空間が聴覚的空間にも作用することによって生じることが示唆される.
  • 峯 知里, 齋木 潤
    セッションID: O-3-2-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    報酬と連合した視覚的特徴(例:色)は注意を捕捉する。しかし,注意を捕捉する刺激特徴と報酬の連合(価値の学習)メカニズムについては不明な点が多い。すべての先行研究では,報酬と連合する特徴が課題遂行中に提示されていた。このことから,注意を捕捉する価値の学習には,報酬と連合する特徴を課題画面で提示する必要があると示唆される。そこで本研究では,学習時に報酬と連合する特徴を課題画面の直前(注視点時),あるいは後(フィードバック時)に提示し,価値による注意の捕捉が生じるか否かを検討した。その結果,学習時に報酬が課題の画面で提示された場合は(実験1),価値の学習による注意捕捉が生じたが,一方,学習時に報酬が課題の画面以外(課題前後)で提示された場合は(実験2・3),注意捕捉がみられなかった。このことから,注意を捕捉する価値の学習は,報酬と連合する特徴を課題の画面に提示した場合に生じることが示唆された。
口頭発表3-3 英語セッション2 (注意)
  • Kwangoh Yi, Sungbong Bae, Jaeseong Lee
    セッションID: O-3-3-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    The length effect in word recognition refers to the phenomenon that the shorter a word is, the faster it is recognized than longer words. Korean studies reported some evidence for the opposite effect of word length: Shorter words, mono-syllabic words in particular, had a disadvantage in the lexical decision tasks (Kim, 2010; Park, 1993). One explanation for the disadvantage of very short words is that there is ideal word length—the most frequent length-- for each language. To test the ideal length, we conducted an experiment exploited the fact that there is no monosyllabic Korean verb because a verb must have an ending that marks its identity as a verb. Inconsistent with the ideal word length, the results showed the bi-syllabic word disadvantage. To develop an alternative to the ideal length hypothesis, we pay attention to the role of morphological transparency in modulating the length effect. The implications of the results to commonality and specificity of languages and writing systems were discussed.
  • Jang Ho Park, Kichun Nam
    セッションID: O-3-3-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    The purpose of this experiment is to investigate the difference between language control and cognitive control mechanism. Also, we investigate changes in cognitive control ability caused by studying foreign language. Two kinds of tasks have been used in the experiment, language switch task and response conflicted task. English was chosen as a foreign language to learn for four weeks. English listening comprehension condition was separated into two groups: one group is a pause group and the other group is a non-pause group. Language switch task used numeral stimuli and had two kinds of color conditions: one color condition was Korean reading and the other color condition was English reading. Response conflict task used two kind of conditions, congruent condition and incongruent condition. The result of this study is that participants’ reaction time was faster than before they studying English but there was no difference between the two conditions. However, item analysis shows significant differences between the conditions.
  • Yoonhye Na, Jinwon Kang, Kichun Nam
    セッションID: O-3-3-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    Three experiments were performed to examine whether the ambiguity advantage effect is determined by the number of meanings of Korean dictionary or of meanings consciously retrieved and to see if that effect is task-specific. In experiment 1 and 2, the lexical decision task was used, and in experiment 3, the word naming task was employed. The results of the experiment 1 and 2 showed the ambiguity advantage effect is mostly modulated by the number of meanings reported consciously by subjects not by the count of dictionary meanings. And also this effect was found in the word naming task, implicating that this effect is caused by the lexical stages common to two different tasks of lexical decision and naming.
  • Jinwon Kang, Sooleen Nam, Kichun Nam
    セッションID: O-3-3-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    Present study used event-related potential (ERPs) during visual priming task to examine the time course of the Korean prefix morpheme, semantic and orthographic component using a masked priming paradigm. The time windows of 300~500ms shows difference between orthography and semantic component. Within the time window 550~750ms, morphological component represent difference among orthographic and semantic component. The findings support that morphology has an effect on word recognition independently. Also, it concluded tentatively that morphological index dissociate from orthographic and semantic component is 550~750ms time windows.
  • : A Near-Infrared Spectroscopy (NIRS) study
    Hirofumi Saito, Victor Palacios, Misato Oi, Chenhui LIn, Ryouma Yamada ...
    セッションID: O-3-3-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    TThis research was originally designed to contribute to the growing literature of deception-detection by examining the behavioral/neural differences between (1) lies of what people say (Speech-Lies) and of what people do (Action-Lies) and (2) a single liar in Exp. 1 versus a paired liar with detector in Exp. 2 & 3. Three experiments were conducted to examine the neural correlates for lies of Action (enactment of a presented sentence) and Speech (reading aloud of a presented sentence) in Exp. 1-3, and also for its detection in Exp. 2-3. Here, specifically, we focused on the behavioral and neural aspects of lie Detector in a face-to-face communication condition. The NIRS data of Detector in the left IPL and the right IFG for Lie showed higher neural activity than Truth, nevertheless the detection rates of a Detector did not show differences between Truth and Lie of the paired Liar.
  • Kazunori Otsuka, Makoto Miyatani
    セッションID: O-3-3-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    We examined the effect of the working memory capacity (WMC) of older adult participants on tasks using touch interfaces, by using an extreme-groups design. Older participants (N = 100) completed a single tapping task and WMC tasks. To test if the response time in the single tapping task differed as a result of the WMC, We performed a 2 x 2 Analyses of Variance with WMC (high, n = 25 /low, n = 25) as the between-subjects factors and the tapping interface (a touch pen, a finger, or a computer mouse) as within-subject factors. The results suggested that the response time of participants with high WMC was shorter than the response time of participants with a low WMC, when using a touch pen and a computer mouse interface. The need for developing touch interfaces that are appropriate for individual differences in the WMC of aged people is discussed.
ポスターセッション1
  • 松井 萌
    セッションID: P-1-1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では, 記銘項目及びその関連項目を偶発的・意図的に学習した場合, 関連項目の違い(カテゴリ名・形容詞)が, 記銘項目を再生・再認する際にどのような影響を及ぼすのかについて検討した。また, 記銘意図にかかわらず, (a)カテゴリ名呈示条件では, 記銘項目の近接概念の出現可能性が増加するため, 非呈示項目の誤再生・再認率が増加する, (b)形容詞呈示条件では, 記銘項目の概念を限定するため, 非呈示項目の誤再生・再認率が減少する, という仮説を立てた。その結果, 偶発的学習条件下では, 再認においてのみ, 仮説を支持する傾向が認められた。一方, 意図的学習条件下においては, 統計的には有意ではないものの, 再生・再認において仮説を支持する傾向が認められた。
  • 田中 光, 中條 和光
    セッションID: P-1-2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    アドホックカテゴリーとは,予め意味記憶に成立しておらず,特定の目的のために文脈に応じて即興で生成されるカテゴリーとされるが,その表象の構造について十分に検討されていない。田中・中條(2014)は,リスト学習によって生じる虚再認を指標にしてネットワーク構造を検討し,事例どうしの結びつきが弱く,DRMリストの表象構想と同様にカテゴリーラベルを介して事例が結ばれた構造を提案した。しかし,アドホックカテゴリーはカテゴリーラベルに依拠して自発的に生成されることから(Barsalou,1983),カテゴリーラベルを上位概念とし,事例が体制化された階層構造であると考えられる。そこで,DRMリストの学習で生じる虚再認と比較したところ,カテゴリーラベルに対する虚再認が生起しにくく,事例とカテゴリーラベルが容易に区別されていることが示され,階層性を有する表象構造であることが示唆された。
  • 渡辺 晃, 高野 陽太郎
    セッションID: P-1-3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    学習直後の脆弱な記憶痕跡が脳内に定着する際の記憶処理を記憶の固定化と呼ぶ。記憶の固定化は忘却の抑制の他に記憶表象を再体制化する機能も有し,系列的身体動作の学習(系列学習)の後に記憶が固定化されると運動成績が向上する。本研究では,この記憶表象の再体制化が,学習後に外的情報を一時的に遮断することで生じる記憶の固定化においても成立するのか検証した。また同時に,抑制性の学習における記憶の固定化についても検討した。抑制性の学習とは,負のプライミングに代表される,特定の情報に抑制性の処理を連合させる学習である。実験は,各参加者について通常・抑制性の2種類の系列学習を実施し,各学習について,10分間の外的情報を最小化した休憩の前後で運動成績を比較した。結果,通常の学習では休憩を通じて運動成績が向上し,記憶表象が再体制化されたことが示唆された。一方で抑制性の学習は成立せず,この点は今後の検討課題となった。
  • 西山 めぐみ, 川口 潤
    セッションID: P-1-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    境界拡張とは,写真の記憶を想起する際に,記銘したオリジナルの写真の境界線を越えた領域までも想起してしまう現象として知られている。既存の理論では,写真の観察時に境界線を越えた心的表象が形成されると考えられており,写真の想起段階における記憶表象の変容と境界拡張の関係性については議論されていない。そこで本研究では,写真の想起が境界拡張に及ぼす影響について検討を行った。学習フェイズでは呈示された写真を記憶することが求められた。想起フェイズでは,学習フェイズに出現した半数の写真を想起することが求められた。テストフェイズでは,学習フェイズと全く同一の写真を呈示し,写真の撮影距離について異同判断を求めた。実験の結果,想起あり条件の方が想起なし条件に比べ有意に境界拡張が大きく生じることが示された。この結果は,写真の記憶を想起するプロセスそのものが境界拡張に寄与している可能性を示している。
  • ―保持期間を操作しての再検討
    長 大介
    セッションID: P-1-5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では記銘項目の学習後に実施するテスト形式を操作し,同じテスト形式を繰り返す,もしくは異なるテスト形式の組み合わせのテスト効果の生起に対する影響を検討した。実験参加者は項目の学習後に項目の再学習を2回,自由再生もしくは再認のいずれかのテストを2回,自由再生と再認を組み合わせてそれぞれのテストを1回ずつ取り組むことを求められた。記銘項目の再学習もしくはテストから1週間後に最終自由再生テストを実施した。その結果,記銘項目の学習を繰り返した場合,最終自由再生テストにおいて最も高い記憶成績が得られた。この結果から学習および再学習中に用いる記憶方略(e.g., 体制化,イメージ化)によってはテストを受けるよりも保持を促進する可能性が示唆された。一方でテスト効果の生起に対してテスト形式の組み合わせの効果は見られなかったが,用いるテスト形式によって保持に対する影響が異なることが明らかになった。
  • 中島 早紀, 漁田 俊子, 漁田 武雄
    セッションID: P-1-6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    再認におけるビデオ文脈依存効果を再検討するため,手がかり負荷1,6,15の3条件で実験を行った。実験参加者である大学生63名を,各条件にランダムに振り分けた。手がかり負荷1条件では学習時に旧項目36個を36種類のビデオで提示し,テスト時には新項目36個と新文脈36個を加え,新旧項目72個を72種類のビデオで提示した。負荷6条件では,学習時に旧項目36個を6種類のビデオで提示し,テスト時には新旧項目72個を12種類のビデオで提示した。負荷18条件では,学習時に36個を2種類のビデオに提示し,テスト時には新旧項目72個を4種類のビデオで提示した。また負荷6条件,18条件において,同じビデオは連続して提示(ブロック提示)した。その結果,負荷1条件はICE理論で,負荷6条件はエピソード想起説で説明できる結果となった。負荷18条件はアウトシャインにより,文脈依存効果が生じなかった結果と類似している。
  • 久保田 貴之, 張 羽, 漁田 俊子, 漁田 武雄
    セッションID: P-1-7
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    聴覚情報に関するこれまでの環境的文脈依存効果研究において,日常場面で発生する環境音文脈は,その対象として扱われていなかった。そこで,本研究は,環境音文脈依存効果の特性を明らかにすることを目的とし,手がかり負荷(負荷1,負荷12)を操作し,文脈依存効果の生起を調べた。実験では,まず,24項目の単語を1つずつ5秒間の環境音とともに提示し,偶発学習させた。その後,学習時に用いた環境音の半数を用いて再生テストを行った。環境音は,負荷1条件においてランダム提示,負荷12条件においてブロック提示とした。実験の結果,負荷12条件のみ,文脈依存効果が生じた。この結果は,手がかり負荷が大きい場合に環境音が文脈手がかりとなり,小さい場合に手がかりとならないことを意味する。このような結果が生じた理由としては,(a)環境音文脈の手がかりとしての弱さ,(b)グローバル文脈としての機能の喪失の2つの可能性がある。
  • 寺西 祐二, 川端 康弘
    セッションID: P-1-8
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    先に提示した情報によって関連する情報の検索が促進されることが知られている。意味ネットワークモデル(Collins & Loftus, 1975)では関係する表象をリンクで結び、活性化が伝わることによりその現象を説明している。その後の研究により、文脈を与えることで関連する情報の記憶が促進されることが示された。ここから、意味ネットワーク上での記憶配置は文脈に関連した構造になっていると推測される。本研究では自由放出法を用いて特定の単語を異なる文脈で提示し、回答される項目に文脈による違いが生じるかを検討した。本研究で用いた文脈は、対象もつ機能を遂行する(F)・遂行できない(D)・機能に言及しない物(U)を用いた。結果として、文脈Fにおいてのみ単語の違いが示されなかった。また、「リンゴ」では文脈Fは文脈D,Uよりも有意に少ない項目しか回答されなかった。このことは、検索システムにおいて対象の機能が重要な手がかりになっていることを示唆していると思われる。
  • ―歌詞のない原曲を用いた検討
    清河 幸子, 三澤 美翔, 鈴木 宏昭
    セッションID: P-1-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,学習時に,刺激を視覚呈示することに加えて,親近性の高いメロディに合わせて聴覚呈示することが記憶に及ぼす影響を検討した。同様の検討を行った清河・三澤・鈴木 (2014) では,刺激の視覚呈示に加えて童謡「ふるさと」に合わせて聴覚呈示を行った条件(替え歌条件)において,読み上げ音声の聴覚呈示を追加した条件(読み上げ条件)や視覚呈示のみを行った統制条件に比較して自由再生課題の成績が高いことが示された。この結果は,メロディにより記憶が促進されたものと解釈されたものの,原曲の歌詞が手がかりとなった可能性が考えられた。そこで,本研究では歌詞のない原曲を使用することで歌詞と刺激の類似性が手がかりとして作用する可能性を排除した。その結果,歌詞のない原曲を用いてもメロディに合わせて聴覚呈示を加えることの促進効果が確認された。この結果は,メロディ自体が記憶を促進することを示唆している。
  • 井上 華那, 小林 耕太, 力丸 裕
    セッションID: P-1-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    私たちは今回劣化雑音音声(NVSS)という未知の知覚刺激を使用して学習においての睡眠の効果を確認した。NVSSとは,複数の周波数帯域に分割された音声信号から、それぞれの帯域での振幅包絡を抽出し、対応する帯域の白色雑音と掛け合わせて生成される合成音声である。本研究では、NVSSによって睡眠の知覚刺激による学習の促進効果を検討した。この実験には日本語を母国語とする被験者が参加した。1つのセッションは50個の日本語NVSS(4モーラ)から構成される。被験者は2つのグループに分かれ、各グループは事前テスト、トレーニング、事後テスト1、事後テスト2を行った。1つ目のグループは9時から実験後、12時間起き続け、その後21時から事後テスト2を開始した。2つ目のグループは21時に実験を開始し、事後テスト2は睡眠含む12時間後に翌日9時から行った。結果として、睡眠による結果の改善は完全には見られなかった。
  • 関口 貴裕
    セッションID: P-1-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究ではマインドワンダリング(何らかの活動中に注意が外界からそれ,課題と無関係な思考へと向かう現象)における課題無関連思考(TUT)がどのような心的機構で意識に広がるかについて,関口(2014)をもとに,音韻的短期記憶と視覚的短期記憶の関与の違いという観点から検討した。実験では,36名の参加者が音韻的短期記憶課題,視覚的短期記憶課題,統制条件課題の3つを行い,その最中に生じるTUTを思考プローブ(課題中ランダムに6回呈示)により自己報告した。その上で,TUTの報告数を課題間で比較したところ,音韻的短期記憶条件において,視覚的短期記憶条件および統制条件に比べたTUT報告数の減少が見られた。一方,視覚的短期記憶条件ではTUT報告数の減少は見られなかった。この結果は,TUTが視覚的短期記憶よりも音韻的短期記憶の働きに依存して生じること,およびTUTに視覚的短期記憶が関与しないことを示唆している。
  • 斎川 由佳理, 仁平 義明
    セッションID: P-1-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
      記憶を補助する外部手段として「手に直にメモを書く行動」について,なぜ ある人はこの手段を用いて,ある人は用いないか,大学生を対象とした質問紙調査によって,その要因をパーソナリティ要因も含めて総合的な視点から分析を行った。その結果,「手にメモをする行動」をとる群の人ほど,他のいくつかの「し忘れ防止手段」も併用していることが明らかになった.また,ビッグ・ファイブ・パーソナリティの要因については,メモ経験群は,ものごとに現実的に対応する傾向である,「経験への開放性」のスコアが有意に高い傾向があった.すべての結果を総合すると,手にメモをするのは,その人が失敗回避傾向がある気の弱い人だからというよりは,「確実に予定を果たそうとする現実的な行動をとる人」だからというべきだと考えられた.
  • 山田 涼馬, 厳島 行雄
    セッションID: P-1-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    人間の記憶は,体験した出来事の単なる記録ではなく,その出来事に関する知識であるスキーマの影響を受けている。例えば特定の場所において行われなさそうな行為を見た場合には違和感を抱き,その違和感を後々まではっきりと覚えている。これは「その場所で行われそうな行為か否か」というスキーマが行為の記憶に影響を及ぼした例であるが,発表者は,「置いてある物品を使用しそうか否か」というスキーマも行為の記憶に影響を及ぼすと考えた。その上で,前者の場所スキーマの方が,後者の物品スキーマよりも強く影響すると予想し,場所に一致するか否かと物品に一致するか否かの参加者内2要因実験デザインで,行為を映像提示してから記憶課題を行った。結果,物品を使用しそうにない行為よりも,その場所で行われそうにない行為の方が,それを見た時の感情が想起されていた。予想通り,物品スキーマよりも場所スキーマの方が行為の記憶に強く影響した。
  • 柏原 志保, 宮谷 真人, 中尾 敬
    セッションID: P-1-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の目的は,observation inflation (OI),すなわちある行為を実際に行わずとも,他者がその行為を遂行する様子を観察すると“自分で行った”と判断するという現象に及ぼす観察の意図性の効果を検討することであった。54名の大学生が実験に参加した。実験は,行為文を実演/音読する記銘段階,他者の行為を視聴する観察段階,2週間後に記銘段階の項目についてのソーステストを実施する再認段階の3段階で構成した。観察段階において,他者の行為を観察する際,“画面中央の人物が何をしているか”に注目する意図的観察条件と,“背景映像に出てくる物体”に注目する非意図的観察条件とを設定し,参加者の観察の意図性を操作した。実験の結果,意図的観察条件でのみOIが再現されたことから,行為の虚記憶の生起には参加者が対象の行為を“見よう”という意図を持って見ることが重要であると考えられる。
  • 丹藤 克也, 北原 稔也
    セッションID: P-1-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    会議録・要旨集 フリー
    デジャビュの生起機序の一つとして,親近感の誤帰属説が提案されている。本研究では,親近感の誤帰属が自己コントロールによって低減されるのかについて明らかにすることを目的とした。実験では,まず自我枯渇理論にもとづいて,自我枯渇の有無をフランカー課題の難易度によって操作した。続けて,シンボル図形に対する親近感の評定課題を実施した。その結果,親近感の低いシンボル図形を単独で呈示するよりも,親近感の高いシンボル図形とペアで同時に呈示することで親近感の評定が向上し,親近感の誤帰属が生じること,またこの誤帰属の程度は,自我枯渇の有無によって違いはみられないことが示された。これらの結果から,親近感の誤帰属には自動的過程が関与し,意図的コントロールは影響しないことが示唆された。
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