ロ腔領域疾患204例に細胞診を施行し, 症例分析を試みた。対象症例の平均年令は51.9才, 性別では男94例, 女110例で男女比は1:1.2だった。
臨床診断分類では, 悪性腫瘍新鮮例が39例(19.1%), 再発を疑った症例は27例(13.2%), 両者で66例 (32.3%)と最も多く, 全例とも組織診で悪性腫瘍と診断された。次いで潰瘍・びらん43例(21.1%), 良性腫瘍23例(11.3%), 炎症20例(9.8%)などであった。採取部位では, 上顎が最も多く67例(32.9%), 次いで, 下顎54例(26.6%), 舌44例(21.7%), などであった。採取方法は擦過177例(86.8%), 穿刺27例(13.2 %)であった。判定は位相差顕鏡法と染色法にて総合判定を行ない分類はPapanicolaouの分類に従った。
正診率は84.4%, 誤診率は9.2%, 偽陽性率は0.6%, 偽陰性率は8.6%という結果を得た。偽陰性率が8.6%と高い値を示したが, これには悪性腫瘍の再発例が13例を占め, 偽膜の形成, 炎症の合併, 治療の影響などによるものであり1つの問題点であろうと思われた。
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