岩手医科大学歯学雑誌
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47 巻, 2 号
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原著(研究)
  • 齊藤 裕美子, 田邉 憲昌, 小山田 勇太郎, 佐藤 宏明, 近藤 尚知, 深澤 翔太
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 47 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    ブリッジは歯の欠損を有する患者への治療オプションの1つであり,失われた口腔諸機能と審美性の回復を図ることが可能である.今回,岩手医科大学附属歯科医療センター義歯外来における過去の3 ユニットブリッジを対象として,ブリッジ治療における累積成功率,累積生存率を同一の欠損歯数で比較調査し,補綴治療を行う上での長期予後獲得の要因を検索した.

    対象は患者情報取得可能な2011 年4 月1 日から2014 年12 月31 日までの間に現在の岩手医科大学附属歯科医療センター義歯外来を受診し3 ユニットブリッジ治療を受けた患者332 名.2021 年12 月 31 日を追跡最終日として,補綴装置の種類,ブリッジ欠損部(上顎,下顎,欠損部),累積成功率と累積生存率,併発症の内訳について調査した.

    ブリッジ全体の累積成功率は88.1%,累積生存率は92.3%であった.接着ブリッジの累積成功率は 71.4%,累積生存率は78.6%で従来型ブリッジや延長ブリッジと比較して低かった.併発症のうち歯根破折の支台歯はすべて失活歯でメタルコアの割合が4 症例中3 症例を占めていた.

    得られた結果より支台歯にメタルコアを使用すると歯根破折を誘発する可能性が高まることが示された.ポストを用いる場合はメタルフリー治療を選択した方が歯根破折のリスクは低くなる可能性があると推察された.

症例報告
  • 高橋 美香子, 小川 淳, 小泉 浩二, 鈴木 舟, 山谷 元気, 古城 慎太郎, 阿部 亮輔, 武田 泰典, 山田 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 47 巻 2 号 p. 91-99
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    原発性マクログロブリン血症に併発した多発性口腔内腫瘤を伴った全身性AL アミロイドーシスの1 例を経験したので報告する. 患者は65 歳の男性で, 口腔内の多発性腫瘤の精査のため当科を紹介され受診した. 既往歴では2002 年に原発性マクログロブリン血症を発症し, 化学療法を受けていた. 2012 年に皮膚の結節をアミロイドーシスと診断されていた. 口腔内診察では, 下顎前歯部口腔前庭に25 × 20 × 15 mm 大の腫瘤を認め, 両側小臼歯部まで大豆大の腫瘤を数個触知した. 舌背中央と舌下面にもそれぞれ20 × 15 × 5 mm, 30 × 15 × 10 mm 大の腫瘤を認めた. 境界明瞭な腫瘤はいずれも黄色を帯びて弾性硬を呈し, 表面粘膜は平滑であった. おのおのの腫瘤からの生検ではアミロイドーシスの診断であった. アミロイドーシスは病型診断でALκ型と診断され, Waldenström macroglobulinemia に伴う全身性AL アミロイドーシスと最終的に診断された. 口腔内の腫瘤は, 患者の希望により外科的切除は行わず, 経過観察とした. その後2 年間, 血液内科では化学療法が継続されたが, 消化管アミロイドーシスが進行したことによる栄養吸収不良により全身状態が悪化し, 2016 年5 月に永眠した.

  • 小泉 浩二, 川井 忠, 小川 淳, 小松 祐子, 泉澤 充, 山田 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 47 巻 2 号 p. 100-105
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    抜歯時の偶発症の1つとして,歯根迷入がある.今回われわれは下顎智歯が口底に迷入し,後日全身麻酔下に内視鏡を用いて摘出した症例を経験したので報告する.患者は32 歳の男性,両側下顎智歯抜去依頼で当科を紹介受診した.術前の歯科用コーンビームCT で左側下顎智歯舌側の皮質骨欠損を認めていた.左側下顎智歯抜去時に歯を分割し,注意深く抜歯操作を進めたが,歯根の一部が口底に迷入した.歯科用コーンビームCT では,迷入歯根は下顎骨舌側に位置していた.迷入歯を直視することは困難であると予想されたため,後日全身麻酔下に口腔内より内視鏡を用いて摘出した.術後は手術による舌神経損傷などの有害事象なく良好に経過した.

  • 菊池 和子, 小瀬川 遼, 磯部 可奈子, 熊谷 美保, 久慈 昭慶, 森川 和政
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 47 巻 2 号 p. 106-112
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    Down 症候群は,ヒトで生存する最も頻度の高い染色体異常である.21 番染色体のすべて,あるいは必須領域(Down syndrome critical region)の過剰な複製で生じる.

    本症例はDown 症候群と重度の知的能力障害および統合失調症を有し,トレーニングを行っても歯科治療は困難なため,薬理学的方法にて歯科治療を行うこととした.

    薬理学的行動調整に関しては,3 年前から肺陰影が認められていたが最近も変化がないとの術前照会の回答と気道の診査および人的・設備的条件が整っていたことから深鎮静を選択した.

    導入時,興奮期に奇異呼吸と軽度のSpO2 低下が認められたが補助換気にて改善した.深鎮静での誤飲・誤嚥は注水や唾液などの吸引あるいは切削片の吸引によって起こると考えられる.術中は誤嚥防止策を講じ,通常の歯科用バキュームのほか,咽頭部の水分を吸引しやすいサクションカテーテルを使用し適宜吸引した.また歯科治療時の注水量が多くならないように調節し,レジン修復時にもラバーダムを装着して咽頭・喉頭への切削片の吸引や水分の流入を防止したことによりむせを防止できた.術中のバイタルや聴診所見では問題はなかった.術直後にも胸部エックス線撮影と聴診にて確認し,全身状態が変化することなく深鎮静にて歯科治療を終えることが出来た.帰宅後においても発熱および咳嗽などの上気道感染症状はみられなかった.

  • 菊池 和子, 小瀬川 遼, 磯部 可奈子, 熊谷 美保, 久慈 昭慶, 森川 和政
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 47 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    ファンコニ貧血(Fanconi Anemia: 以下FA)は,汎血球減少をきたす先天性骨髄不全症候群の一つである.歯科処置に際しては出血量の予測にもとづいて輸血の検討が必要となることがある.また,白血病や固形腫瘍の発症頻度が高く,ことに口腔内でこの傾向が強い.よって口腔内腫瘍の有無を定期的に精査することが重要である.加えて放射線への感受性が高いため,エックス線撮影を可能な限り避けることが必要である.さらに白血球減少によって免疫能の低下も考えられる.

    今回我々は,FA 男児の乳歯抜去を経験した.年齢は7 歳,血小板数は64,000/μL であった.当該歯は後継永久歯の萌出にともなって,歯根が生理的に吸収していたため,抜去後の出血は少ないと考えられ,輸血の必要性は低いことを地域中核病院小児科医師と確認した.実際に出血は少なく, 5 分間のガーゼ圧迫で止血が得られた.また担当医師の指示のもと処置前後に抗菌薬を内服させることにより感染を予防することができた.

  • 笹村 祐杜, 小川 淳, 武田 泰典, 矢菅 絵里香, 山田 浩之
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 47 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/04/01
    ジャーナル フリー

    疣贅型黄色腫は被覆重層扁平上皮の乳頭状増殖と結合組織乳頭部に限局した泡沫細胞の集簇する良性の粘膜疾患であり,真の腫瘍ではなく反応性の変化と考えられている.一般的に生殖器や皮膚などにみられることが多いが,口腔内に認められることもある.われわれは,口腔内所見がそれぞれ:左側下顎小臼歯部舌側歯肉の帯状の表面粗造な白斑,右側下顎小臼歯部舌側歯肉の類円形で表面顆粒状の黄白色丘疹,左側上顎小臼歯部の頬側歯肉の表面顆粒状な帯黄色腫瘤を呈する疣贅型黄色腫の3 例を報告する.3 症例ともに切除を行い,経過良好である.

岩手医科大学歯学会第48回総会プログラム
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研究助成成果報告(令和元年度採択課題)
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