当科では,従来から機能温存,形態温存を目的に抗癌剤の動脈内投与と放射線療法の同時併用療法を行い,その有用性を報告してきた。しかし,そのなかで治療後の治療効果判定の困難さが問題点として残された。そこで1993年から2-deoxy-2-fluoro[
18F]-D-glucoseを用いたpositron emission tomography(
18FDG-PET)による治療効果判定を加え検討を行っている。今回は,下顎歯肉癌に対して本療法後,
18FDG-PETによる治療効果判定および治療後の再発,転移の診断に用い,一次治療時に外科療法を回避し,機能温存,形態温存が可能となり治療後のQOLの向上が得られた経過良好な1例を経験したので報告する。患者は50歳女性で,下顎歯肉扁平上皮癌(T4NOMO)と診断され,治療目的に当科を紹介来院した。初診時の
18FDG-PETの所見では,腫瘍放射能比(standardized uptake value,SUV)は50分値12.35±0.10,60分値13.89±0.49と上昇を認めた。入院後,浅側頭動脈カニュレーションを行い,bleomycin(総量60mg),methotrexate(総量200mg)およびcisplatin(総量100mg)の3剤併用化学療法と放射線療法(Linac総量40,25Gy)を行った。治療後臨床的に腫瘍は縮小,消失し,
18FDG-PETによる所見でもSUVは50分値3.30±0.15,60分値3.58±0.14と明らかな上昇は認めずCRと判定し,この結果,外科療法を行わず,維持療法を行った。治療後2年6か月後に行った
18FDG-PETによる所見でもSUVは50分値1.91±0.16,60分値1.90±0.02と低値を示し,現在まで,再発,転移の徴候はなく,経過良好である。
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