岩手医科大学歯学雑誌
Online ISSN : 2424-1822
Print ISSN : 0385-1311
ISSN-L : 0385-1311
42 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
教授退任特別寄稿
総説
症例報告
  • 阿部 晶子, 千葉 舞美, 熊谷 佑子, 赤松 順子, 岸 光男
    2018 年 42 巻 3 号 p. 109-119
    発行日: 2018/02/09
    公開日: 2018/03/11
    ジャーナル フリー

    背景

    岩手医科大学血液腫瘍内科では,造血幹細胞移植中における口腔粘膜障害の発症予防を目的に,造血幹細胞移植チームに歯科医師・歯科衛生士が加わり移植患者の口腔管理を行っている. 今回,移植後に白血病が再発し,再移植を行なった患者について,初回と再移植時の口腔管理を行う機会が得られたので,比較して報告する. 症例と臨床経過 症例は初回移植時41 歳の女性で,2013 年8 月に急性骨髄性白血病のため末梢血幹細胞移植を施行した. その後再発を認め,2014 年6 月に再移植で骨髄移植を施行した. 再移植後,生着が確認されたが,同年9 月,全身状態の悪化により死亡した. 口腔粘膜炎と介入 口腔管理の介入は,移植前処置の施行前から開始し,初回移植および再移植時には,口腔内の状態に応じて,保湿剤,含嗽剤おび軟膏の処方,P-AG 液の服用指導,セルフケアの支援を行った. 再移植では口腔粘膜障害のリスクが高いことを予測し,予防的管理を行ったが,粘膜障害は重症化し,生着し白血球数増加後も口腔粘膜障害が長期間残存した. 口腔粘膜障害が重症化した要因としては,第一に 前処置に全身放射線照射が加わったこと,第二に骨髄抑制時期が長期化したこと,第三に初回の移植による移植片対宿主病が残存していたことなどが考えられた. 結論 再移植では開口障害,粘膜炎による疼痛,全身状態の悪化などにより患者本人のみならず,我々医療スタッフの口腔管理への技術的・精神的負担も大きなものであった. 口腔管理が困難であった今回の症例において、介入を継続するうえで、初回移植時から構築した患者や多職種との信頼関係が大きな力となった。本症例より、患者を含むチーム医療の重要性を再認識することができた。

  • 東海林 理, 泉澤 充, 佐藤 仁, 星野 正行, 高橋 徳明, 六本木 基, 松本 直子, 武田 泰典, 小豆嶋 正典
    2018 年 42 巻 3 号 p. 120-126
    発行日: 2018/02/09
    公開日: 2018/03/11
    ジャーナル フリー

    左顎下部に発生した極めてまれな顆粒細胞腫について報告する.患者は38 歳の女性で左の顎下部の腫脹を主訴に来院した.病変は弾性硬で初診時に直径が約30 mm であった.圧痛は示さなかった.超音波検査,CT,MRI から顎下腺に形成された多形腺腫か悪性腫瘍を疑った.全身麻酔下で病変の切除が施行された.病理学的には好酸性顆粒を持つ細胞の充実性な増殖が認められた.免疫組織科学的に腫瘍細胞の細胞質内顆粒はS-100 蛋白質と神経特異エノラーゼ(NSE)が陽性であった.Ki-67 の陽性率が2%以下であった.内部に顎下腺の組織が見られなかったことから,顎下部に発生した顆粒細胞腫との病理組織学的診断を得た.術後2年5か月が経過したが,再発の所見は認められていない.

  • 高橋 一彰, 阿部 亮輔, 古城 慎太郎, 山谷 元気, 泉澤 充, 樋野 雅文, 八木 正篤, 山田 浩之
    2018 年 42 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 2018/02/09
    公開日: 2018/03/11
    ジャーナル フリー

    デノスマブに起因すると考えられた顎骨壊死の症例に対し,高気圧酸素療法(hyperbaric oxygen therapy;以下 HBO)を併用した腐骨除去術を施行し,良好な結果を得たので報告する.患者は60 歳の男性で,左側下顎の骨露出の精査を目的に当科を受診した.既往歴に前立腺がんがあり,多発骨転移による骨関連事象に対して2年8か月間デノスマブを120 mg /月で皮下注射していた.口腔内所見では,左側下顎の歯槽部の舌側に骨露出が認められ,発赤を伴う周囲歯肉から排膿が認められた.局所洗浄による保存的治療を開始したが,骨露出部は徐々に拡大した.やがて,分離した腐骨に動揺が認められたため,局所麻酔下に腐骨除去術を施行したが,その後も骨露出は進行した.さらに,左側頬部蜂窩織炎を併発したため,HBO を開始した.HBO を10 回行ったところで左側頬部の腫脹は改善し,開口量も25 から30 mm に増加した.パノラマX線写真にて左側下顎に腐骨分離が確認されたため,HBO を8回追加した後に全身麻酔下で腐骨除去術を施行したところ手術創は約2か月で上皮化した.術後2年6か月が経過した現在,炎症の再燃は認められない.また,抗男性ホルモン薬の内服により前立腺がんの骨転移の増悪は制御されている.

岩手医科大学歯学会第83 回例会抄録
特別講演
優秀論文賞受賞講演
一般演題
大学院歯学研究科第3学年研究発表会
著者名索引
第42巻 総目次
feedback
Top