岩手医科大学歯学雑誌
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4 巻, 2 号
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総説
原著
  • 竹下 信義, 鈴木 鍾美
    1979 年 4 巻 2 号 p. 70-78
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    著者らは wister 系ラットの下顎切歯歯髄に実験的外傷を加え, 歯髄の自然治癒過程を病理形態学的に観察した。

    実験的外傷後 1~4日目では創傷下に大型多角形歯髄細胞 (LPPC) が著明に出現し, LPPC 層を形成した。外傷後7日目では, LPPC 間にち密な線維基質がみられ, この中に LPPC を埋入した。14日目以後ではこの線維基質は不規則に石灰化し, LPPC 層は形態的に骨様象牙質となった。一方, LPPC は石灰化の進行とともに変性壊死に陥った。また LPPC は電顕的に 20~30μ の大きさを有し, 胞体内には発達した粗面小胞体とゴルジ装置が存在し, 蛋白性分泌物の形成にあずかる機能を有するものであることを示唆していた。このように LPPC は骨様象牙質形成細胞と考えられるとともに, 形態的には骨芽細胞に類似していた。以上, LPPC は歯髄固有細胞に由来するものであり,また歯髄の自然治癒過程に重要な役割を演ずるものと考えられた。

  • 畠山 節子, 野田 三重子, 佐藤 方信, 鈴木 鍾美
    1979 年 4 巻 2 号 p. 79-87
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    23歳男性の左側下顎臼歯部に発生した Benign cementoblastoma の電子顕微鏡的観察を行い, 腫瘍細胞の微細形態について検討した。

    腫瘍はシート状あるいは網目状に増殖するセメント質様硬組織と比較的少量の結合組織からなっていた。 光顕的には, 硬組織に接する面に多角形細胞 (硬組織形成細胞と考えられる) および多核巨細胞, 硬組織内封入細胞,硬組織から離れた結合組織内に小型紡錘形細胞などが認められた。硬組織形成細胞は, 電顕的に, 暗調でミトコンドリアの豊富な多角形細胞から, ミトコンドリアの少ない胞体のやや明調な楕円形細胞までの多様な形態を示した。前者は不整形核と発達の良い粗面小胞体, ゴルジ装置および指状の細胞突起を持ち骨芽細胞の特徴を有していた。特に層状に配列する粗面小胞体間にミトコンドリアが混在する所見は Benign osteoblastoma の腫瘍細胞の特徴に酷似していた。しかし後者は, Benign osteoblastoma ではこれまで認められていない細胞形態でセメント芽細胞に類似しており, この細胞形態の存在の有無を両腫瘍の鑑別点の1つと考えた。

  • 一第2報 特に口腔清掃状態と歯肉の所見を中心として一
    池田 元久, 飯島 静子
    1979 年 4 巻 2 号 p. 88-97
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    岩手県立肢体不自由児施設に入園している園児 109名についての障害の程度と, ロ腔清掃状態および歯肉の状態との関係を年齢別, 病型別, 刷掃介補の有無別に分類し, 比較検討した。口腔清掃状態を oral hygiene index (以後 OHI とする)で, 歯肉の炎症を Dunning&Leach による gingival score を用いて評価した。(1)年齢別分類では, OHI は増齢とともに増大したが, gingival score は低年齢 (3~4歳) と高年齢 (15~16歳) とが高値をしめした。(2)病型別分類では, 脳神経系の疾患児の OHI, gingival score がともに高値をしめした。(3)刷掃動作の困難性の有無別では, 刷掃動作の困難な群が, OHI gingival score ともに高く, とくに OHI では有意 (P<0.05) に高かった。また刷掃動作の困難な群の中でも OHI は刷掃介補のある群より刷掃介補のない群で高かった。gingival score では,刷掃介補のある群で高い傾向にあった。(4)部位別の歯垢歯石付着状態では一定の傾向がみられたのが特徴的であり, とくに頬側,右側, 下顎にその付着量が多かった。

  • 宮澤 正人, 久米田 哲, 奈良 吉剛, 田沢 光正, 飯島 洋一, 高江洲 義矩, 松田 和弘, 久米田 俊英, 鈴木 鍾美
    1979 年 4 巻 2 号 p. 98-112
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    青森県北津軽地方 (北緯40°45’, 年平均気温19.6°C, 年平均最高気温14.1°C) の広域天然フッ素含有飲料水地区 (0.3~3.2ppm) における歯牙フッ素症発現並びにウ蝕罹患状況について, 1974年より疫学的追跡調査を継続してきた。調査対象者は北津軽郡板柳町立沿川第一小学校, 鶴田町立梅沢小学校の児童350名で, うち永久歯未萌出者3名と出生地,居住歴, 家族歴, 飲水歴, 既往歴についてのアンケート調査によって29名が除かれ, その結果, 318名が集計の対象となった。対照としては, 岩手県松尾村 (飲料水中フッ素濃度 0.1ppm 以下) の児童 503名についての調査資料を用いた。

    DMFT index によるウ蝕罹患状況は, 北津軽地区では1年生時の 0.42 から6年生時の 1.44 まで緩徐な増加を示しているのに対して, 対照の松尾地区では, 1975年度厚生省歯科疾患実態調査に近似したウ蝕の増量を示していて, 1年生時の 0.31 から6年生時の 4.44 に至るまで急激な増加傾向を示している。

    北津軽 (フッ素地区) の 23水源は, Ⅰ 群 (0.31~0.38PPm), Ⅱ群 (0.52~0.63PPm), Ⅲ群 (0.82~ 0.85PPm), Ⅳ群 (0.90~1.06PPm), Ⅴ群(1.54~1.96PPm), Ⅵ群 (2.90~3.18PPm) の 6群に区分された。11歳児についての DMFT index によれば,Ⅲ群 -2.0, Ⅳ群-1.4, Ⅴ群-1.0とフッ素濃度の増加に伴いウ蝕の減少傾向が明らかに認められ, 岩手県松尾村の11歳児に比較して, ウ蝕減少率として表わすと, Ⅲ群-54.5%, IV群-68.2%, Ⅴ群-77.2%であった。

    エナメル質白斑(非フッ素性)有所見者率は, Ⅰ群 -14.7% からⅥ群 -3.8% と飲料水中のフッ素濃度の増加に伴って減少する傾向が認められ,北津軽地区全体では 9.4% であった。歯牙フッ素症発現については, 特異的な水源 (0.63PPm) を含むU群を除くと, 1群からV群まで重度型(S)は認められず, M群の2.90~3.18PPm において重度型の発現が認められた。 CFI は,Ⅱ群を除いて, W群の 0.90~1.06PPm では 0.16 で negative zone, V群の 154~1.96ppm では 058 とborderline zone に達し, Vl群の 2.90~3.18ppm では 1.81 と borderline zone をはるかに越えた値を示していた。

    本調査成績は現在の飲料水中フッ素濃度測定値にもとついて, 過去に石灰化した小学生集団の永久歯崩出歯群についての知見である。1974年に飲料水中フッ素濃度確認後に石灰化開始した永久歯の崩出歯群についての知見が得られるのは, 1980年以降である。本報告はそれに至るまでの中間報告的内容であるが疫学的推測並びに仮定の妥当性を確認する手がかりとなりうるかについての実験的報告である。

  • 酒井 百重, 田中 誠, 三條 勲, 亀谷 哲也, 石川 富士郎
    1979 年 4 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    1947年に Kjellgren によって連続抜去法の概念とその手法が歯科矯正学の領域で展開されて以来,今日では混合歯咬合期における歯の交代の誘導法として広く用いられている。しかしながら,この連続抜去法を適用するにあたっては,歯及び顎顔面の成長発育について十分かつ正確な予測が必要であり,実際の臨床ではしばしば経験的な判断も要求される。それゆえに優れた手法でありながら,臨床上なお多くの問題点を含んでいる。本稿では,連続抜去法の持つ臨床上のいくつかの問題点に対する考察と,咬合の育成という視点から見た連続抜去法の生物学的な意義について論述した。

症例報告
  • 沼田 与志晴, 佐々木 正道, 佐藤 憲太郎, 越前 和俊, 関 重道, 関山 三郎, 鈴木 鍾美
    1979 年 4 巻 2 号 p. 125-136
    発行日: 1979/07/25
    公開日: 2018/12/29
    ジャーナル フリー

    今回, われわれは臨床上 complex cdontoma と思われた所見を示し病理組織学的検索の結果, odontoma を合併し, 多量の石灰化物を形成した石灰化歯原性嚢胞と診断された症例を経験したのでその概要を報告する。症例は39歳女性で 根尖相当部歯槽粘膜の腫脹を主訴として来院した。口腔内所見は 32|根尖相当部歯槽粘膜に 10×15mm の限局性の腫脹がみられ, 表面は平滑であり, 硬度は骨様硬で一部羊皮紙様感があり, 圧痛はなかった。32|の歯軸は傾斜し, 骨植はともに動揺が大きく, 打診に対してやや濁音を呈した。X線所見では32|間歯根部に境界明瞭な類円形の透過像がみられ, その中に多数の不整形斑状の不透過像がみられた。処置は局麻下で唇側より腫瘤を一塊として摘出し縫合閉鎖創とした。摘出物は軟組織に被包され一部歯牙様硬組織が突出していた。経過は術後4ヵ月の現在も良好である。病理組織所見では線維性嚢胞壁の内面にエナメル器に類似した構造を有する上皮組織によって被覆され, この上皮組織内にはGho.tcells および大小いろいろな石灰化物が多数存在していた。 Gho.t cells は角質変性した上皮細胞で石灰化物と強い関係をもっていた。また,嚢胞腔内に存在する硬組織塊は dysplastic dentin, 類エナメル質, enamel, dentin, 及び形態構造不明な硬組織などいろいろな性状を示していた。以上の所見より, odontcma を合併し, 多量の石灰化物を形成した石灰化歯原性嚢胞と診断された。

例会記事
岩手医科大学歯学会第7回例会抄録
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