経済地理学年報
Online ISSN : 2424-1636
Print ISSN : 0004-5683
ISSN-L : 0004-5683
68 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
表紙
研究ノート
  • ―福岡県糸島市を事例として―
    岡 祐輔
    2022 年 68 巻 2 号 p. 129-148
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー

        本稿では,福岡市に隣接する糸島市の大都市近郊型観光地としての形成過程を概観しながら,観光業の発展に影響を及ぼしてきたイノベーティブな人材が,なぜ糸島市に移住し,事業を起こしたのかを検討した.彼らの移住や起業の要因は,移住・起業者側の内的動機と移住・起業先が有する外的環境に分けられる.
        調査対象者は,移住時には仕事の確保,子育て環境などを,起業時には独立・挑戦志向,働き方の見直しなどを,定住後は能力の発揮,人や地域への貢献を内的動機としていた.
        一方で,外的環境としては,2000年以前は移住・起業時に大都市との近接性,自然環境が重視されたものの,2000年以降,それらに加え,人脈や観光需要,さらに定住・事業拡大と進むにつれて,多様性や寛容性,人脈,地方の優位性が意思決定の要因になっていた.
        市町合併により糸島市が誕生し,観光客が急増した2010年以降は,移住・起業時に人脈や観光需要,地域ブランドなどの外的環境をより積極的に活用する傾向がみられ,さらに移住から定住・事業拡大と長く居住するにつれ,人脈に加え,地域の寛容性と多様性の高さが,人材をつなぎとめる重要な要因となっていることが確認できた. 特に人脈や寛容性,多様性に関して,地域の受け入れ側は地域活性化に強い想いを持って,移住・起業者が事業を継続・拡大できるよう支援していた.

  • ―フランス・アルプス条件不利地域の事例研究
    石原 照敏
    2022 年 68 巻 2 号 p. 149-161
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー

        本稿は一定の条件(調整 ・支援システム)のもとで,観光業と農業が共生を通じて持続しているかどうかというこれまで十分に解明されていない問題について,エギュブランシュ盆地コミューン連合区(以下, 「連合区」と略称)を事例として検討したものである.
         「連合区」では土地整備会社との間で住民や環境との関係を調整した地域開発契約(調整システム)が締結されたうえ,国家・州・県・EUなどによる支援システムが構築された.
        このシステム下で観光開発が実施された「連合区」のアヴァシェール・ヴァルモレルだけでなく,その観光開発に連動して農業・観光施設への設備投資や,牧人・土地組合の設立による農家への土地の賃貸などがなされたラ・レシェールでも,観光業と農業の共存・共生が進んだ.
        共生には,観光業が冬期にスキー場として利用したアルプ放牧地を夏期に農業が放牧地として利用する土地共用の形と,農家の家族労働力がリフト業,宿泊業などに雇用され,農業にも観光業にも役立つ労働力共用の形がある.休暇用住宅経営と農業との共生も労働力共用の形に類別される.
        このような共生は農業にも観光業にも有益だったので双方の持続を可能にした.これらの持続は環境を傷つけない範囲で粗放的な酪農経営・牧羊経営を営んでいる農家の増加や,環境を傷つけない小規模な観光業の発展によって確認された.

書評
学会記事
feedback
Top