経済地理学年報
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68 巻, 3 号
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表紙
論説
  • ―佐賀県在住者のアンケート調査の回答に基づく考察―
    内山 真由美, 亀山 嘉大
    2022 年 68 巻 3 号 p. 175-194
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

        地方公共団体には,法律上,地域公共交通計画を策定する努力義務があることから,地域の移動手段を確保することが期待される.運転免許証の自主返納の観点では,地方公共団体は,公共交通運賃の割引をはじめとして返納後の移動手段を確保する事業を実施している.本研究では,佐賀県在住者を対象に,公共交通のサービス水準の向上および運転免許証自主返納支援事業の項目を含むアンケート調査を実施した.本調査において住民の公共交通に対する満足度や運転免許証返納に係る制度の認知度を把握した結果,運転免許証自主返納支援事業の内容や周知方法に課題があることがわかった.地方公共団体は,運転免許証自主返納支援事業のPRを含めて,支援事業の妥当性・持続性,さらには,政策策定プロセスを見直して,改善に努める必要がある.

研究ノート
  • ―横浜市を事例として―
    佐藤 洋
    2022 年 68 巻 3 号 p. 195-215
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

        将来,急速に人口減少・高齢化が進行する大都市圏郊外では,個人市民税の減少と社会保障関係費用の増大に伴い自治体の財政運営が厳しくなり,公共サービスやアメニティの低下が生じ,住民の生活や居住地移動に影響が出る可能性がある.その程度や地域差を明らかにすることで,自治体がより効果的な施策を展開できる.
        本稿では横浜市を事例に,大都市圏郊外自治体の財政運営で重要な個人市民税の将来推計を行い,人口構成の小地域スケールでの空間分析と,職業構成,通勤先,人口移動の区スケールでの計量分析を組み合わせ,それらの関係を検討した.本稿の主な知見は次の3 点である.①横浜市では2025年~2030年に多くの区で人口と税収の減少が始まり,2030年~2035年に本格的な減少局面となる.この時期には人口増減率よりも税収増減率が低く,財政運営が厳しくなる.特に中区,青葉区,都筑区を中心として人口増減率と税収増減率の乖離が大きくなり,市全体へ拡大する.②税収増減率には所得水準が高い団塊ジュニア世代(1970年代前半コーホート)男性,1960年代前半・後半コーホート男性の割合が大きく影響する.③当該3コーホート男性の割合が高い区では当該男性の減少率が高く,職業構成と通勤先,転出者割合と転出先の特徴には差異がある.若年層の定住施策と並行して,当該世代男性とその世帯がいかなる理由で転出の意思をもつのかを明らかにした上で,地域性に即した施策を行う必要がある.

フォーラム
  • ―山崎亮一『労働市場の地域特性と農業構造』をめぐって―
    新井 祥穂, 山崎 亮一, 山本 昌弘, 中澤 高志
    2022 年 68 巻 3 号 p. 216-227
    発行日: 2022/09/30
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

        地域労働市場論は農業経済学・経済地理学が共に研究を蓄積した領域である.前者では地域労働市場を資本から農業への作用場面とみて,これと農業構造の連関を捉える.この方法論を確立させた山崎『労働市場の地域特性と農業構造』の,2020年再刊行を機に,2022年7月関東支部例会では同書の合評会を実施した.本稿はその記録である.会では,著者自身による同書成立の背景と内容紹介に続けて,農業経済学から山本が同書の研究潮流上の位置付けと問題提起を行い,中澤は経済地理学における地域労働市場論の展開を農業経済学と比較させつつ示した.さらに同書刊行後の日本経済の蓄積構造とその中での地域労働市場研究の意義が議論された.

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