荷電膜の応用は広く研究されているけれども, イオン交換膜そのものの主要な用途の一つは電位勾配の存在下でイオンを膜透過させることである。そのときイオン交換膜本来の特性である異符号イオン間選択透過性を更に改良する必要があるとき, 或いは本来の特性の他に新しい特性が求められる場合, 膜の改質が行われてきた。前者は初期のイオン交換膜食塩電解に用いられた膜の場合であり, 後者の一つが膜への同符号イオン間選択透過性の賦与である。特に後者の場合, 種々の研究が行れており, 例えば, 陽イオン交換膜では陽イオン交換基とは反対電荷の薄層の形成, ホスホン酸基の膜, キレート形成能のある試薬の存在下での電気透析などがあり, 陰イオン交換膜でも同様にイオン交換基とは反対電荷の薄層の形成及び膜の親水性度と透過する陰イオンの水和エネルギーとのバランスの制御による選択透過性のコントロールなどがある。本稿ではこれらの研究について概略述べた。
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