日本イオン交換学会誌
Online ISSN : 1884-3360
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28 巻, 3 号
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功績賞受賞記念論文
  • 井川 学
    2017 年 28 巻 3 号 p. 45-50
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー

    イオン交換学会は1985年の創立以来, 多くの先人の努力により発展し, 現在は数年おきに国際会議も開かれている。本学会の特徴は学問的に高いレベルを維持していることと, 産官学の協力体制が高いことにあり, 今後のさらなる発展が期待される。

    著者は膜分離の研究を進めているが, 近年はアミノ酸のイオン交換膜による分離に取り組んでいる。アミノ酸は両性電解質なので陽イオン交換膜も陰イオン交換膜も透過する。そこでH型の陽イオン交換膜とOH型の陰イオン交換膜を隣り合わせに一緒に用いて, 塩基性あるいは酸性のアミノ酸と中性のアミノ酸を完全に透析分離した。また, 中性アミノ酸同士もその分子量と親−疎水性の違いを利用した分離が可能である。

    一方, 福島の原子力発電所の爆発を原因とする放射性セシウムの広域汚染に対して除染が進められているが, この除染廃棄物の減容は大きな課題である。そのためには電気透析(ED)の溶液室に土壌懸濁溶液を入れたものとみなし得るエレクトロカイネティックリメディエーション(EK)法が有効である。当学会ではEDに造詣の深い方が多いので, EKの開発改善にも関わっていただくことを願いたい。

    膜分離法は省エネルギー省スペースの技術であり, 今後の持続可能な社会の建設に必要不可欠な技術である。膜分離法の発展のための当学会の今後の貢献を期待したい。

技術賞受賞論文
  • 松倉 実, 黒崎 文雄
    2017 年 28 巻 3 号 p. 51-57
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー

    福島第一原子力発電所では2011年の東日本大震災による津波の直撃を受けたため, 敷地内に塩分を含む大量の汚染水が発生した。海水中に含まれていた妨害不純物の存在により, 従来型の吸着剤ではSr等, 一部の放射性核種を十分に除去することができず, 選択的除去機能を強化した高性能吸着剤の開発が喫緊の課題となった。著者らは各関係先と協力し, このような厳しい条件下で機能する, Sr吸着剤, Cs・Sr同時吸着剤, ヨウ素吸着剤を開発し, これらは, 現地に実践投入されている。また, 使用済みフェロシアン化物中のCs安定固化や港湾除染での再生吸着剤の開発, 今後の燃料デブリ取り出し時に問題となるアクチノイド核種の吸着剤の検討も行っており, これらについても解説する。

一般論文
  • 星 重行, 加藤 俊正, 中馬 高明, 森田 博志
    2017 年 28 巻 3 号 p. 58-64
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー

    半導体製造における各工程の洗浄には超純水が用いられる。近年, 半導体の回路線幅の微細化, 高集積化に伴い, 洗浄用超純水中の不純物が及ぼす悪影響は益々大きくなり, 超純水水質はさらなる高純度化が求められている。我々はポリスチレンスルホン酸(以下PSA)と金属イオンの吸着作用に着目し, これを利用したシリコンウェーハ上への金属付着抑制を検討した。金属を含む超純水にPSAを微量注入して超純水を洗浄槽にオーバーフローさせ, ウェーハを浸漬, 乾燥後, ウェーハ上の金属および硫黄濃度を測定した。その結果, 超純水中の金属イオンはPSAとイオン結合しウェーハ上へ吸着しにくくなり, 二価以上のイオンとなる金属で95%以上の金属付着抑制率が得られた。さらにPSA自体のウェーハへの付着は無視できる範囲であることが分かった。本技術は, 半導体製造における各洗浄工程の金属汚染抑制方法として適用できる可能性がある。

  • 高橋 博, 牧田 健吾, 樫内 悦子
    2017 年 28 巻 3 号 p. 65-70
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/12
    ジャーナル フリー

    バイポーラー膜およびイオン交換膜を用い, アルカリ側のpHステップを有する電気透析の開発を行った。電気透析は6室からなり, 陽イオン交換膜, バイポーラー膜, および3枚の陰イオン交換膜で仕切られている。電気透析槽に電圧を加えると, バイポーラー膜の陰イオン交換層側から水酸化物イオンが生成し, 陽極側に設置した陰イオン交換膜間を移動した。水酸化物イオンの濃度は各室に存在する陽イオンの濃度と一致し, 電気透析槽内にアルカリ側のpHステップが形成された。さらに, この手法をL-グルタミン酸とL-メチオニンの分離に応用した結果, pHステップを8~13の範囲に設定すると, L-グルタミン酸が陽極室に蓄積するとともにメチオニンが他室に残存し, pHステップを用いることでL-グルタミン酸とメチオニンの分離が達成された。

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