長年にわたりイオンの特性を利用した物質の分離法・分析法および資源の再生利用法の開発に携わってきた。有害あるいは有用なイオンの分離・濃縮は基本的な課題であり,未だ解決が困難な廃棄物からの有害成分の溶出抑制あるいは除去は,リサイクルの面で社会的課題となっている。また,イオンが関与する反応系は化学反応の根幹であり,酸塩基反応・錯形成反応・酸化還元反応の組み合わせはとても奥が深い。
筆者がこれらのテーマで取り組んできたことを振り返ってみたいと思う。
多くの清涼飲料水に甘味料として含まれている澱粉糖液の精製方法としては,イオン交換樹脂を使用した各種の方法が知られている。イオン交換樹脂による精製工程においては,イオン交換樹脂の実用的な耐熱性および澱粉糖の異性化やその他副反応抑制のため,一般的に30~40°Cで供給されるが,これは微生物の増殖としては好適な温度であり,精製設備内での微生物汚染の懸念がある。本澱粉糖精製システムは,澱粉糖液を供給する通液塔全体をアルカリ殺菌することで,従来のイオン交換精製プロセスに菌対策を付加機能として備えた精製システムである。