各医療施設において頻繁に症例検討がなされているが,これらの多くは学会誌等にも発表されず書類という形態で施設ごとに保管されている.このことから,自然言語で記述された臨床症例文書のデータベース化の促進は,過去の症例を参照し,新たな症例の病態を検討・類推するための検索性を向上する意味で非常に重要である.本研究では,WWWによる臨床症例データベース管理システムの構築を目的とし,プロトタイプシステムの実装を以前から行なってきた.本稿では,特に,症例検索時における自然言語処理および自己組織化マップ(Self-Organizing Map:SOM)を用いた疾患系分類手法の提案とその応用例について述べた.また,重要なシステム要件のうち,簡便性,操作性に着目し,データベース検索部における自然言語インタフェースおよび直観的な視覚的インタフェースについて検討した.仮想症例を含む88症例文書を用いた評価実験から,症例文書属性数30の入力ベクトルによるマップを用いた疾患系分類正解率平均が73.9%であり,本手法が疾患系分類に有効であることを確認した.
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