てんかん研究
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41 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 生田 陽二, 青山 有希
    2023 年 41 巻 1 号 p. 4-10
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    てんかん患者はウィークネスのみならずストレングスも抱え子育てに取り組んでいるという仮説のもと、子育て経験のある成人てんかん患者を対象に質問紙調査を行った。有効回答者数は全10名で、うち男性が4名(40%)、年齢は33~64歳(中央値43.5歳)であった。回答者の30%に育児協力者が不在であり、育児協力者のほとんどは配偶者であった。配偶者のない回答者は育児協力者も不在であった。子の数は全例3人以下で、60%は子の数が1人であった。自由記述回答の分析では、予期せぬ発作を抱えての子育てや子どもの安全確保に対する不安等のウィークネスを抱えていることがわかり、支援者は見通しを示しながら支援することが求められている一方で、当事者としててんかんへの知識を有するがゆえのストレングスがあることもわかった。また、男性からの回答では自動車運転に関する回答が得られ、移動手段への支援が重要であると考えられた。

  • 古知 龍三郎, 大沢 伸一郎, 成田 徳雄, 柴田 憲一, 森田 隆弘, 村上 謙介, 柿坂 庸介, 中里 信和, 冨永 悌二
    2023 年 41 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    迷走神経刺激(VNS)は薬剤抵抗性てんかんに有効な治療であり症例数は増加傾向にあるが、刺激調節は認定医による診察を要するため、専門施設から遠方の地方在住症例は適応困難となりやすい。この課題に対し、我々はWeb会議システムを用いた遠隔診療による刺激調整に取り組んできた。その運用実際と安全性、効果の評価、今後の課題の抽出を目的として後方視的検討を行ったので報告する。刺激調整はWeb上のてんかん専門医の指導下に現地医師が行った。刺激調整の完遂、システムトラブルの有無、副作用聴取と対応、臨時連絡の有無をカルテから抽出し、さらに現地医師に問題点のアンケートを行った。12回(3症例)の遠隔診療が行われ、刺激調整は全例で完遂し、システムトラブル、副作用聴取対応への問題、臨時連絡は認めなかった。VNS調整は認定医の直接診察下でなくとも安全に遂行でき、認定医の少なさや地理的障壁を解決しうる手段と考えられる。

症例報告
  • 濵本 麻希, 高橋 幸利, 大松 泰生, 重松 秀夫
    2023 年 41 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    生後4カ月から焦点起始発作が出現し、生後6カ月で焦点起始両側強直間代発作が群発し、その後、発熱や入浴による誘発痙攣発作、模様誘発ミオクロニー発作などの発作と失調が出現した男児を経験した。Dravet症候群を疑いSCN1A遺伝子とSCN2A遺伝子の遺伝子配列解析、SCN1A遺伝子領域のMLPA解析を行ったが、病的なバリアント・SCN1A遺伝子の欠失は認めず、染色体検査で、46,XY, der(2)(2pter→2q13::5q22→5q31.1::?::2q31→2qter),der(5)(5pter→5q22::?::5q31.1→5qter)と判明した。この症例の2番染色体の異常領域にはSCN1Aがあり、Dravet症候群様の臨床特徴の表出に関与している可能性が示唆された。

  • 竹内 博一, 松浦 隆樹, 菊池 健二郎, 竹田 里可子, 平田 佑子, 小一原 玲子, 大場 大樹, 大橋 博文, 加藤 光広, 浜野 晋 ...
    2023 年 41 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2023/06/30
    公開日: 2023/07/04
    ジャーナル 認証あり

    KCNQ2 variantを認めた発達性てんかん性脳症のてんかんにラコサミド(Lacosamide;LCM)が有効であった2例を報告する。症例1:5歳9カ月男児。出生直後に焦点起始の低換気と強直発作を認め、発作間欠期脳波はsuppression burstを認めた。3歳10カ月時に起始不明の強直から脱力に発展する発作が出現し、発作に対してLCMが有効だった。症例2:5歳1カ月男児。出生直後に易刺激性と焦点起始強直発作を呈した。3歳2カ月時に焦点起始の右偏向から両側強直間代に発展する発作が出現し、発作に対してLCMが有効だった。2例とも経過中に重度知的障害と痙性四肢麻痺を合併し、発達性てんかん性脳症の臨床経過をたどった。また2例とも遺伝子検査でKCNQ2 variantが同定された。KCNQ2 variantを有する患者のてんかんにはナトリウムチャネル阻害剤が有効とされており、LCMも有効であることが示唆された。

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