てんかん研究
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37 巻, 1 号
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巻頭言
特別寄稿
  • 中川 栄二
    2019 年37 巻1 号 p. 3-5
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2023/03/16
    ジャーナル 認証あり
  • Ingrid E. Scheffer, Samuel Berkovic, Giuseppe Capovilla, Mary B. Conno ...
    2019 年37 巻1 号 p. 6-14
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2023/03/16
    ジャーナル 認証あり

    国際抗てんかん連盟(ILAE)は,1989年の前回分類以降の大きな科学的進歩によっててんかんやその発症機序に関する理解が深まったことをうけ,今回てんかん分類を改訂するに至った。てんかん分類は臨床医に不可欠なツールとして,考え方の変化に関連し変動するものでなければならないが,同時に確固たるものでかつ全世界で翻訳可能なものでなければならない。てんかん分類の第一の目的は患者の診断であるが,てんかんの研究,治療法の開発,世界中のコミュニケーションにおいても重要である。今回の新たな分類は,パブリック・コメントを募集するために2013年に提出した初案に端を発しており,数回にわたる協議を経ててんかんに関わる世界各国の人々からの幅広い意見を組み込んで改訂されたものである。この分類には3つのレベルがある。最初のレベルは「発作型」診断であり,2017年ILAE発作分類の定義に基づいて患者がてんかん発作を有していることを前提としている。発作型診断の次のステップは「てんかん病型」診断であり,焦点てんかん,全般てんかん,全般焦点合併てんかん,病型不明てんかんのいずれかに分類される。3つ目のレベルは「てんかん症候群」診断であり,特定の症候群への診断が可能である。新分類では各段階に「病因」診断を組み入れており,しばしば治療に重要な示唆をもたらすという理由から,診断の各ステップで病因を検討する必要性を強調している。病因は,治療に及ぼし得る影響に基づいて選択された6つのサブグループに分けられている。「発達性てんかん性脳症」などの新たな用語も導入されている。「良性」という用語は,「自然終息性」と「薬剤反応性」という用語に置き換え,状況に応じてどちらかを使用する。この新たな枠組みが21世紀のてんかん診療と研究の向上に役立つことを願っている。

  • Robert S. Fisher, J. Helen Cross, Jacqueline A. French, Norimichi Higu ...
    2019 年37 巻1 号 p. 15-23
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2023/03/16
    ジャーナル 認証あり

    国際抗てんかん連盟(ILAE)は,てんかん発作型に関する操作的分類の改訂版を発表する。この改訂の目的は,一部の発作型が焦点起始あるいは全般起始どちらにも起こりうることについて承認すること,起始が観察されなかった場合でも分類を可能とすること,これまで不足していた発作型を盛り込むこと,より明快な名称を採用することである。現在の知見は科学的根拠に基づいた分類を作成するには不十分であるため,2017年分類は操作的(実際的)な分類となっており,1981年分類を基に2010年案を経て作成されたものである。変更点は以下の通りである。(1)「部分(発作)」という用語を「焦点(発作)」に変更,(2)意識(awareness)を焦点発作の分類要素として採用,(3)「認知障害(発作)」,「単純部分(発作)」,「複雑部分(発作)」,「精神(発作)」,「二次性全般化(発作)」の用語を廃止,(4)焦点発作型として「自動症発作」,「動作停止発作」,「運動亢進発作」,「自律神経発作」,「認知発作」,「情動発作」,「感覚発作」を新設,(5)「脱力発作」,「間代発作」,「てんかん性スパズム」,「ミオクロニー発作」,「強直発作」を焦点起始と全般起始双方へ設定,(6)「二次性全般化発作」を「焦点起始両側強直間代発作」に変更,(7)全般発作型に「眼瞼ミオクロニーを伴う欠神発作」,「ミオクロニー欠神発作」,「ミオクロニー脱力発作」,「ミオクロニー強直間代発作」を新設,(8)「起始不明発作」でも分類しうる特徴を設定。新分類では基本構造の変更は行っていないが,発作型命名についてより柔軟でわかりやすいものとなっている。

  • Robert S. Fisher, J. Helen Cross, Carol D'Souza, Jacqueline A. French, ...
    2019 年37 巻1 号 p. 24-36
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2023/03/16
    ジャーナル 認証あり

    国際抗てんかん連盟(ILAE)2017年てんかん発作型分類の発表論文と同時発表の続編となる本稿では,当該分類を使用する際の指針を提示する。この分類について,表,関連用語集,新旧用語対応表,推奨される略語,具体的な症例を用いて解説する。本分類では,現場で求められる分類の詳細度に応じて基本版か拡張版かを選択できる。てんかん発作は,発作の主要な徴候および症状(発作症候)に基づいて焦点起始発作,全般起始発作,起始不明発作の各カテゴリーに分類される。焦点発作はいずれも任意で,意識(awareness)が保たれているか障害されているかによって、さらなる分類が可能である。発作経過中いずれかの時点で意識障害がみられる場合,その発作は焦点意識減損発作となる。焦点発作はさらに任意で起始時の運動徴候および症状によって,脱力発作,自動症発作,間代発作,てんかん性スパズム,運動亢進発作,ミオクロニー発作,強直発作に分類することができる。非運動起始発作では,自律神経発作,動作停止発作,認知発作,情動発作,感覚発作を呈する。発作型は最も早期に出現した顕著な症状によって規定されるが,その後は他の徴候および症状に進展してもよい。焦点発作は両側強直間代発作に進展することがある。全般発作では起始時から両側大脳半球ネットワークが巻き込まれる。全般運動発作には脱力発作,間代発作,てんかん性スパズム,ミオクロニー発作,ミオクロニー脱力発作,ミオクロニー強直間代発作,強直発作,強直間代発作がある。全般非運動発作(欠神発作)には定型欠神発作,非定型欠神発作,あるいは顕著なミオクロニー運動や眼瞼ミオクロニーを呈する発作がある。起始不明発作であっても臨床的特徴が明らかであれば、運動発作,非運動発作,強直間代発作,てんかん性スパズム,動作停止発作への分類が可能である。ILAE2017年てんかん発作型分類に関する本「使用指針」は,新たな分類体系の導入に役立つものと期待される。

総説
  • 山本 仁
    2019 年37 巻1 号 p. 37
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/07/18
    ジャーナル 認証あり
  • 中谷 光良, 井内 盛遠, 大封 昌子, 十川 純平, 村井 智彦, 橋本 聡華, 稲次 基希, 白水 洋史, 金澤 恭子, 渡辺 裕貴, ...
    2019 年37 巻1 号 p. 38-50
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/07/18
    ジャーナル 認証あり

    近年デジタル脳波計の進歩により、従来のいわゆるBerger帯域より広域の周波数帯域の脳波の記録が可能となった。1 Hz以下の低周波数帯域の活動、200 Hz以上の高周波数帯域の活動が記録できるようになり、従来の脳波に加え、DC電位(注:一部infraslowとしても記載されている)、高周波数律動(High frequency oscillations、HFO)といった新たな情報が得られるようになった1)。両指標は、ともにてんかん原性の中核領域を示唆することが予想され、焦点のバイオマーカー候補として注目されている。しかし、これら発作時DC電位・発作時HFOは定義、記録・解析方法などがコンセンサスの形成の途上であり、評価の方法も様々であるため、比較検討することが難しいことがある。現在我々は、頭蓋内電極記録を施行されたてんかん患者の発作時脳波を多施設合同で解析しており、その際生じた問題点を議論し、今後信頼性のある標準化されたデータを蓄積してゆくことを目的に、現時点における記録・解析の臨床実践の指標へ向けて共通の試案2)を2017年に作成し、その後関連学会で内容に関して検討修正された内容を追記修正して、「難治部分てんかん患者の焦点検索における、発作時DC電位・発作時HFOの記録および解析の手引きに向けて(多施設合同による解析手法)」とした。以下、広域周波数帯域解析ソフトを用いた、基本的な記録・解析方法につき概説する。

原著
  • 長谷川 直哉, 福多 真史
    2019 年37 巻1 号 p. 51-59
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/07/18
    ジャーナル 認証あり

    てんかん患者の交通事故に対する社会的関心の高まりや最近の法改正などにより運転適性の診断により一層の慎重さを求められている。今回我々は当院成人てんかん科外来に通院している患者のうち、自動車運転適性ありとの診断書を交付された患者126名についてその実際を調査した。診断書記載後に自動車運転に支障をきたしうる発作が再発した患者は25名であり、そのうち9名が怠薬などの治療コンプライアンスが不良であったことが判明した。コンプライアンス不良例を除く患者の運転支障発作抑制率は、発作抑制期間が2年以上5年未満の症例では記載後2年目で88.3%、5年目で75.6%、発作抑制期間5年以上の症例では記載後2年目、5年目ともに98.0%であった。コンプライアンス良好でも運転支障発作が再発した要因について検討したところ、治療開始後から運転支障発作が抑制される期間が長いことや治療開始年齢が高いこと、全般性の脳波異常などが挙げられた。

症例報告
  • 上田 哲也, 飯村 康司, 三橋 匠, 鈴木 皓晴, 菅野 秀宣, 新井 一
    2019 年37 巻1 号 p. 60-66
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/07/18
    ジャーナル 認証あり

    内側側頭葉てんかんに対する外科手術は有効性が確立した治療法であり、発作消失のみならず精神症状の改善も認める。一方で、術後に精神症状を生じてしまうこともある。また抗てんかん薬による副作用でも精神症状をきたすことがあるが、術後早期の抗てんかん薬の内服の減量や中止はてんかん発作再発のリスクがあると報告されており、抗てんかん薬の減量は慎重に検討することが望ましいとされる。本症例は、右内側側頭葉てんかんに対し焦点切除術後よりうつ、易怒性を認めた。術後脳波所見が正常であり、発作も認めなかったため術後2カ月で抗てんかん薬の減量を行い、選択的セロトニン再取り込み阻害薬を開始したところ精神症状が改善した一症例を経験した。本症例より術後精神症状に対する治療について文献的考察を踏まえて報告する。

特別企画シリーズ:続編:てんかんを分かり易く理解するための神経科学
  • 丸 栄一
    2019 年37 巻1 号 p. 67-72
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/07/18
    ジャーナル 認証あり
  • 杉浦 嘉泰
    2019 年37 巻1 号 p. 73-77
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/07/18
    ジャーナル 認証あり
  • 植田 勇人
    2019 年37 巻1 号 p. 78-83
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2019/07/18
    ジャーナル 認証あり

    神経・グリア・微小血管単位(neuron-glia-vascular unit;NGV unit)を構成する細胞群は脳機能維持やてんかんなどの神経疾患の成立に貢献する重要な構造ユニットである。いずれの細胞群もリン脂質二重層の細胞膜で他細胞と境界を作る。細胞膜二重リン脂質層には、膜タンパク質や糖鎖・糖脂質などがモザイク状に埋抱されて、1)細胞の形態維持、2)選択的透過フィルターによる静止膜電位の形成(通常はイオンを透過させない細胞膜脂質二重層は選択的にKイオンを透過させ静止膜電位を形成する)、3)受容体・輸送体蛋白の埋抱、4)エクソサイトーシス、5)エンドサイトーシス、6)タイトジャンクション・ギャップジャンクション・デスモゾームによる細胞間結合、7)糖鎖による細胞同士の識別、など多くの役割を担っているが故に、膜障害がもたらすてんかん性病態への影響は大きい。本稿では前稿で取り上げなかった、細胞膜の基本的な役割や膜障害がもつてんかん性病態の位置づけについて概説する。

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