てんかん研究
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30 巻, 1 号
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巻頭言
総説
原著
  • 足立 耕平, 小池 敦, 武田 克彦, 小野 智憲, 戸田 啓介, 馬場 啓至
    2012 年 30 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/28
    ジャーナル 認証あり
    てんかん外科治療を受けた40名(発作消失群21名、発作残存群19名)を対象として、外科治療後の心理社会的変化、絶望感、手術への満足度について質問紙調査を行った。その結果、発作消失群は発作残存群よりもポジティブな心理社会的変化が多くみられていた。一方、発作消失群・発作残存群ともに一部の患者においてはネガティブな心理社会的変化が生じていた。外科治療後の心理社会的側面の変化は絶望感や手術への満足度に影響しており、心理社会的側面についての変化がポジティブであるほど絶望感が減少し、手術への満足度が上昇する傾向がみられた。外科治療後の絶望感を低減させ、手術への満足度を高めるためには手術後の心理社会的側面に対する支援を行うことが重要であると考えられる。
  • 菊池 健二郎, 浜野 晋一郎, 松浦 隆樹, 鈴木 ことこ, 田中 学, 南谷 幹之, 井田 博幸
    2012 年 30 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/28
    ジャーナル 認証あり
    小児てんかん重積状態および発作群発状態に対してphenobarbital(PB)静注維持療法を施行した7症例(男:女=4例:3例、中央値年齢2.9歳)を後方視的に検討した。初回静注量は平均18.5mg/kg、静注維持量は平均4.8mg/kg/day、静注維持療法の実施期間は平均2.6日であった。有効例は5例で、全て局在関連性てんかんであり、うち1例でmidazolam持続静注を中止し、PB内服療法に移行できた。脳波所見は5例中2例で改善した。副作用は傾眠傾向を2例で認め、1例は無治療で改善し、残り1例は追加治療の影響で改善の有無が評価できなかった。その他の重篤な副作用は認めなかった。小児てんかん重積状態および発作群発状態に対して、PB静注維持療法は有効かつ安全であり、PB血中濃度を20~30μg/mlに維持するためには、静注維持量として3.5~5mg/kg/dayが適当と考えられた。
  • 小一原 玲子, 浜野 晋一郎, 山本 英明, 山口 明, 大石 勉
    2012 年 30 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/28
    ジャーナル 認証あり
    ウエスト症候群における免疫学的関与を検討した。当院に入院した51例の治療前の血漿、髄液中サイトカイン(IL-1β、4、5、6、8、10、12、15、18、IFN-γ、TNF-α)、血漿ACTHを測定した。(1)症候性と潜因性、(2)治療効果、(3)治療前の発作頻度、(4)長期発作予後において、それぞれを比較検討した。結果は全症例で血漿IL-18が高値を示した。比較検討では、発作頻発群で血漿INF-γが有意に高く、発作稀発群で髄液IL-15が有意に高かった。その他の比較では有意差はなかった。血漿ACTHの平均値は基準値よりも高値だった。IL-18は副腎、下垂体前葉に発現し、corticotropine-releasing hormone(CRH)が関与する視床下部-下垂体-副腎系により活性化されるとされている。ウエスト症候群の発症機序の一つとされているCRH過剰説を支持するものと思われた。
症例報告
  • 谷口 豪, 村田 佳子, 渡辺 雅子, 渡辺 裕貴, 白戸 あゆみ
    2012 年 30 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/28
    ジャーナル 認証あり
    高齢発症のてんかんの原因は脳血管障害、腫瘍、認知症などの変性疾患が多いが、扁桃体腫大との関連を示唆する報告も最近見られている。
    今回我々は高齢発症の扁桃体腫大を伴った部分てんかんの患者を経験したので報告する。
    症例は64歳時から夜間の睡眠中に「突然激しく動き回る発作」が見られるようになり、その頃から健忘症状および嗅覚の低下などの症状があった。他院で認知症あるいは睡眠時無呼吸症候群と診断・加療されたが症状は軽快せず、当院でビデオ脳波を含む精査の結果、高齢発症の部分てんかんという診断に至った。carbamazepine開始後、発作は消失し健忘症状や嗅覚障害の改善を認めている。本症例では右側扁桃体腫大を認めており、過去のキンドリングラットを用いた実験や症例報告をもとに考察した結果、扁桃体が何らかのキンドリング刺激を受けて興奮が前部帯状回に広がり激しい運動発作を示したと考察した。
  • 村田 佳子, 渡邊 修, 谷口 豪, 梁瀬 まや, 高木 俊輔, 中村 康子, 渡辺 裕貴, 渡辺 雅子
    2012 年 30 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/28
    ジャーナル 認証あり
    高齢発症側頭葉てんかんにおいて、健忘症、気分障害、睡眠障害、排尿障害、唾液分泌過多、低ナトリウム血症を認め、抗電位依存性カリウムチャンネル複合体(voltage-gated potassium channel:VGKC-complex(leucine-rich glioma inactivated1 protein:LGI-1))抗体陽性から、抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎(VGKC-LE)と診断した。本例は数秒間こみあげ息がつまる発作が1日100回と頻発し左上肢を強直させることがあった。Iraniらは、VGKC-LEの中で抗LGI-1抗体を有するものは、3~5秒間顔面をしかめ上腕を強直させるfaciobrachial dystonic seizures(FBDS)を報告しており、本発作は診断の一助となると考えられた。本例は、本邦において抗LGI-1抗体とFBDSの関連を指摘した最初の報告である。
  • 藤井 裕士, 小林 良行, 石川 暢恒, 小林 正夫
    2012 年 30 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/06/28
    ジャーナル 認証あり
    Epileptic spasms(ES)を呈した重症心身障害児の2症例を経験した。症例1は急性脳症後遺症により四肢麻痺、重度発達遅滞を遺したcarnitine palmitoyltransferase type 2(CPT2)欠損症の1歳男児。症例2は四肢麻痺、重度発達遅滞を呈しているLeigh脳症の2歳男児。いずれの症例も発作間歇期脳波ではヒプサリズミアは呈していなかったが、発作時脳波ではESに高振幅徐波が対応し、治療として症例2ではトピラマートが有効であった。当初保護者の観察に基づいた発作評価ではミオクロニー発作や強直発作と鑑別するのは困難であった。治療方針決定のためには発作の適切な評価が必要であり、重度心身障害児にみられる発作としてESも念頭に置き積極的に発作時評価を行うことが重要である。
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