てんかん研究
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40 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 野々山 葉月, 菊池 健二郎, 代田 惇朗, 平田 佑子, 松浦 隆樹, 小一原 玲子, 高橋 幸利, 浜野 晋一郎
    2022 年 40 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル 認証あり

    脳炎後てんかんは難治に経過するが、自己免疫介在性脳炎(AIME)後てんかんの治療に関する検討は少ない。AIME後てんかんに対する抗てんかん薬(ASMs)の有用性について後方視的に検討した。AIME後てんかんと診断された5例(男児3例)を対象とした。AIMEの発症年齢は中央値7歳10カ月で、4例でAIME発症4週以内の急性期にてんかん重積状態が認められた。3例は急性期から発作が持続し、全例で4カ月以内にてんかんを発症した。ASMsは、ラモトリギン、ラコサミド、ペランパネル(PER)で発作減少率50%以上の有効性を認めた。副作用は4剤で認められ、トピラマート、ニトラゼパムで眠気が強く出現した。

    AIME後てんかんでは、Naチャネル拮抗剤やPERが有効で、副作用の観点からγ-aminobutylic acid(GABA)作動性ASMsは選択を控えてもよいかもしれないと考えられた。

  • 生田 陽二, 野田 雅裕
    2022 年 40 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル 認証あり

    てんかんの診断により運転免許の取得や更新が制限されるため、運転免許所持可能年齢の患者にとっては生活への影響が大きい。てんかんと運転免許に関するインターネットを介した情報収集手段を検討することを目的に、当院ホームページ上のてんかんと運転免許に関する解説記事の公開から1年間の検索およびアクセスログを解析した。記事へのアクセスは男性51.5%、女性48.5%とやや男性に多く、年齢別では25歳~44歳で53.7%と半数以上を占め、地域別には大都市圏からのアクセスが上位であった。検索クエリの分析では、「隠して」、「申告しない」、「ばれる」、「虚偽申告」を含む検索の合計は表示回数13,193回(全表示回数の7.3%)、クリック率は7.7%と高値であった。本検討により、虚偽申告に関連したクエリによる検索が多いことが示された。虚偽申告による事故防止のためにも正しい情報を患者に提供する必要がある一方で、代替移動手段の提供が望まれる。

  • 原 稔枝, 西田 拓司, 高橋 幸利, 井上 有史
    2022 年 40 巻 1 号 p. 18-27
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル 認証あり

    てんかん医療における専門看護師の存在意義と役割について考察することを目的に、2施設の院内認定てんかん看護師30名とそれ以外の16てんかん診療拠点病院の看護師21名にインタビュー・アンケート調査を行った。前者ではてんかん医療経験年数が長く、症状の観察・対応にとどまらず心理社会面への支援や啓発・教育・研究、多職種との連携など幅広い活動が行われていた。後者では、発作の対応や脳波モニタリングでの懸念が多く、てんかん看護教育の必要性とともに認定看護師導入への肯定意見も多かった。海外、特に欧州ではてんかん専門看護師が公的に導入されているところがあり、患者の自己管理能力の醸成への重要な役割が期待され、その効果が実証されている。てんかん専門看護師はてんかん医療の充実および患者・家族の生活の質の向上に貢献が期待され、その養成の意義を組織全体で共有し、公的に支援することが重要と考えられる。

症例報告
  • 若林 光, 稲次 基希, 橋本 聡華, 前原 健寿
    2022 年 40 巻 1 号 p. 28-34
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/04
    ジャーナル 認証あり

    症例は15歳右利き女児。14歳時に全身性けいれんで発症し、左側頭葉外側に海綿状血管腫を指摘された。Levetiracetamの投与が開始されたが発作コントロール不良で、週単位での意識減損発作を認めた。頭皮脳波では両側前頭側頭部に独立した棘波を認めたが、頭部MRIで海馬の萎縮は認めず、神経心理検査も正常範囲内であった。このため機能温存を優先し、発作残存時は二期的な治療を行う方針で病巣切除術のみを施行した。術後2年の経過で発作は消失し、頭皮脳波で対側の棘波も消失している。両側性に脳波異常を認める海綿状血管腫に伴う側頭葉てんかんでも、罹患期間が短い場合には病巣切除術のみでの発作コントロールも治療選択肢として考慮しうると思われた。

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