てんかん研究
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15 巻, 3 号
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  • 時永 昇
    1997 年 15 巻 3 号 p. 165-171
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    抗てんかん薬 (antiepileptic drugs: AED) の催奇性の機序解明の一環として、胎児毒性との関連が指摘されているepoxide体の加水分解酵素epoxide hydrolase (EH) および抱合酵素glutathione S-transferase (GST) の両酵素活性に与えるcarbarnazepine (CBZ) 、phenobarbital (PB) 、phenytoin (PHT) 、valproic acid (VPA) 、zonisamide (ZNS) の影響を検討した。ラット肝マイクロゾームを用いて両酵素の活性を各AEDの影響下で対照群と比較検討したところ、VPAはEHおよびGST (2-2、4-4、7-7) 活性を治療濃度 (50~100μg/ml) より濃度依存性に抑制し、CBZ (10μg/ml) およびPB (40μg/ml) は治療濃度よりGST7-7活性を有意に抑制した。一方、PHTおよびZNSはEH、GSTの両酵素活性に対し治療濃度では影響を与えなかった。以上の結果から、VPA、CBZおよびPBを含む多剤併用時の奇形発現の増加の一因として、これらの薬剤によるepoxide解毒機構の低下が関与する可能性が示唆された。
  • 石井 光子, 杉田 克生, 中島 祥夫, 新美 仁男
    1997 年 15 巻 3 号 p. 172-177
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    三層モデル双極子追跡法を用いて光突発反応発現に関与する脳内電源を推定し、発生機序について検討した。対象は局在関連性てんかんの2例で、発作型は症例1では暗視を伴う複雑部分発作、症例2は動作停止・自動症を伴う複雑部分発作であった。光突発反応は症例1では先行する左後頭部の鋭波と全般性徐波、全般性棘波の3成分から、症例2では先行する左後側頭部の棘波と全般性棘波の2成分からなり、それぞれについて分析し、脳内電源の部位を解剖学的に検討した。症例1の先行鋭波は左後頭葉の外側部に、引き続く全般性徐波は側頭葉内側に位置し、症例2の先行棘波は左側頭葉の後内側部に位置していた。
  • 藤元 登四郎, 中村 克巳, 高野 哲也, 竹内 康三, 朝倉 哲彦, 秋元 波留夫
    1997 年 15 巻 3 号 p. 178-188
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    長期にわたって通院加療中で、脳波上側頭部に焦点性の一・側性放電を示す側頭葉てんかん患者10名の発作問欠期の1H磁気共鳴スペクトロスコピー (MRS) 検査を行った。ニューロンの器質的及び機能損傷を反映するNAA (N-acetylaspartate) /Cr (creatineとphosphocreatine) 比は、全員脳波上のてんかん焦点と同側の側頭葉内側部で低下した。焦点側のみならず反対側の側頭葉内側部でも、NAA/Cr比の低下、または低下傾向が10名中6名に認められた。NAAレベルの低下が左側のてんかん焦点および反対側側頭葉内側部の両側にある群は、その他の群に比べて発作の形態が複雑であり、抗てんかん薬でのコントロールが困難な傾向があり、種々の心理的障害のため社会的適応が困難で、予後が不良であった。NAAレベルの両側性の低下は側頭葉てんかんの臨床症状、経過、予後と関係がある。
  • キンドリングネコを用いた実験的研究
    折田 暁尚
    1997 年 15 巻 3 号 p. 189-199
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    ネコを用いて、扁桃核キンドリングにおける周嗅領皮質 (perirhinal cortex: PRC) の脳波活動を観察した。さらにPRCを一次刺激部位としたキンドリングを行い、その発展形式を観察した。扁桃核キンドリング早期よりPR℃に後発射が出現し、発作全般化に際して反対側半球ではPRCで後発射が最も優勢であった。キンドリング完成後の発作問激期放電 (IID) には4つの出現形式がみられたが、すべての出現形式でIIDが観察されたのはPRCのみであった。PRC一次キンドリングの発作症状と後発射の観察から、海馬、新皮質、扁桃核の順に発展する様式がみられ、新皮質キンドリングの発展に類似したが、完成キンドリングの安定性などは辺縁系キンドリングの性質に一致した。これらの結果より、PRCはその辺縁系と新皮質への密接な関係から、キンドリング発作全般化において、重要な役割を持つことが考えられた。
  • 木村 清次, 石井 みゆき
    1997 年 15 巻 3 号 p. 200-203
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    7カ月時に非痙攣性てんかん重積状態がみられ、以後は17歳まで全く痙攣や脳波異常をみなかった例を報告した。重積時脳波と発作の関係は、全般性の高振幅 (棘) 徐波律動 (無動、マバタキはあるが追視なし)→高振幅徐波律動の抑制 (追視や無目的~随意の四肢の動きあり) →後頭~頭頂部に6Hzより遅い波形が出現後に全般性高振幅 (棘) 徐波律動に移行 (追視や動きが減少) 、の周期を繰り返した。ジアゼパム静注で発作は頓挫し、その後バルプロ酸を4歳まで服薬した。非痙攣性てんかん重積状態は難治性てんかん患者にみられるのが主で、17歳までの経過中に、このエピソード以外に痙攣や脳波異常がみられない良好例は稀である。本症例の発作性状は複雑部分発作重積に類似し、経過から、複雑部分発作を示す良性乳児部分てんかんの重積症であった可能性がある。
  • 繁友 律子, 清水 弘之, 前原 健寿, 海渡 信義, 柳下 章, 小田 雅也, 新井 信隆, 小宮 和彦, 田中 宏, 早川 文雄
    1997 年 15 巻 3 号 p. 204-209
    発行日: 1997/10/31
    公開日: 2012/07/17
    ジャーナル フリー
    難治てんかんを伴う片側巨脳症の患者で、脳波上てんかん性異常波は健側に出現し、患側半球の機能的切除により発作抑制に成功した興味ある1例を経験したので報告する。臨床発作は患側半球起始を示唆する発作型であった。経時的に追跡した発作間欠期脳波の所見では、てんかん性異常波が患側から健側へ移行していく様子が観察された。本症例は、片側巨脳症の外科的治療においては、発作症候学・画像・継続的脳波所見を含めた総合的判断の重要性を示す貴重な症例と考えられた。また、てんかん性異常波の健側への移行に関して、鏡焦点の可能性を含めて考察を加えた。
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