てんかん研究
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29 巻, 3 号
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巻頭言
原著
  • 八木 和一, 亀山 茂樹, 兼子 直, 村崎 光邦, 山内 俊雄, 吉田 克己, 鈴木 淳
    2012 年 29 巻 3 号 p. 441-454
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/10
    ジャーナル 認証あり
    難治性部分てんかん患者に既存の抗てんかん薬とレベチラセタムを併用投与するN165試験を完了した被験者を対象とし、レベチラセタム長期投与時の有効性及び安全性を評価するため、非盲検継続投与試験を実施した。レベチラセタムは1日投与量3,000mg/日から開始し、その後1日投与量1,000~3,000mg/日の範囲で適宜増減した。151例を解析対象とした結果、投与期間が36カ月以上の被験者の週あたり部分発作回数減少率の中央値は34.4~48.9%で推移し、レベチラセタム長期投与時の有効性が示された。発作消失被験者のうち、3例(2.0%)の発作消失は1年以上であった。鼻咽頭炎、頭痛、傾眠、下痢、浮動性めまいなどの副作用が高頻度に発現したが、重症度はいずれも軽度又は中等度で、長期投与で問題となった副作用は少なかった。以上、難治性部分てんかん患者に対し、レベチラセタムの長期継続投与時の有効性及び安全性が確認された。
  • 奥田 志保, 上野 正夫, 苅田 典生, 高野 真
    2012 年 29 巻 3 号 p. 455-459
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/10
    ジャーナル 認証あり
    脳卒中後患者における抗てんかん薬の選択について検討した。脳卒中患者690例中、抗てんかん薬内服は63例(9.1%)であった。抗てんかん薬の第一選択薬で最も使用されていたのはバルプロ酸で39例(61.9%)、次にカルバマゼピンで10例(15.9%)であった。63例中39例(61.9%)はけいれん発作後に投与が開始されており、残り24例(38.1%)は予防的投与であった。バルプロ酸投与の35.9%(14例)、カルバマゼピン投与の50%(5例)でけいれん発作が起こっていた。てんかん治療ガイドラインでは、部分てんかんに対してカルバマゼピンの使用が推奨されているが、今回の研究では脳卒中後の抗てんかん薬としてバルプロ酸がより高い頻度で使用されている実態が明らかになった。
  • 栗原 まな, 宍戸 淳, 吉橋 学, 藤田 弘之, 小萩沢 利孝
    2012 年 29 巻 3 号 p. 460-469
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/10
    ジャーナル 認証あり
    16歳未満に脳外傷を受傷し後遺症に対する入院リハビリテーションを行い、受傷後2年以上が経過している142例を対象とした。症例ごとに診療録から後方視的に、受傷原因、急性期の状況、現在の状況、てんかんの発症時期・発作型・発作頻度・使用抗てんかん薬について調査し、てんかんを発症した37例(てんかん群)とてんかんを発症していない105例(非てんかん群)の比較、および外傷後てんかんの分析を行った。非てんかん群と比較したてんかん群の有意な特徴:発症率は交通事故で低く虐待で高い。脳損傷の型は急性硬膜下血腫で高く、びまん性軸索損傷で低い。急性期意識障害の程度は重度で持続が長い。移動能力がない例が多く、中等度~重度知的障害例が多い。外傷後てんかんの分析:発症時期は81.1%が受傷後2年未満で、発作型(重複カウントあり)は部分発作(単純部分発作9例、複雑部分発作23例、二次性全般化発作13例)が多く、全般発作は13例と少ない。抗てんかん薬は平均2.1剤(高発作頻度群2.9剤、低発作頻度群1.6剤)使用され、carbamazepine、valproateが多く、phenytoin、phenobarbital、clonazepamがそれに次ぐ。高発作頻度群では低発作頻度群に比べてvalproateの使用が多く、移動能力がない例が多い。
症例報告
  • 諏訪 清隆, 森田 啓介, 吉田 真
    2012 年 29 巻 3 号 p. 470-475
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/10
    ジャーナル 認証あり
    ラモトリギン(LTG)はLennox-Gastaut症候群(LGS)における全般発作への適応をもつ抗てんかん薬である。今回2例のLGS患者に対するLTG併用療法の効果について報告する。【症例1】24歳、男性。生後6カ月時に脳腫瘍摘出術を施行。脳波異常を認めたが発作はなく経過した。3歳8カ月から強直発作など複数の発作が出現しLGSと診断され、複数の抗てんかん薬が試みられたが難治であった。VPA、ZNS投与で全身性強直発作が月5回程度続いていたが、LTG併用後から2年間発作は抑制されている。【症例2】22歳、男性。1歳時に急性脳炎に罹患後から強直発作、脱力発作が出現した。脳波異常を認めLGSと診断され、VPA、CZP、PHT、ZNS投与でも連日の脱力発作と週3、4回の全身性強直発作が続いた。LTGを併用後、発作は著しく減少したが半年後より再び増加した。LGS患者におけるLTGの治療効果の相違は、基礎疾患に起因する可能性が推察された。
  • 澤井 康子, 岸本 美枝子, 野並 一馬, 星田 徹
    2012 年 29 巻 3 号 p. 476-481
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/10
    ジャーナル 認証あり
    けんかで負った軽微な頭部打撲をきっかけにてんかん発作が顕在化した15歳男児例を経験した。13歳より、まぶたが下がってくるような違和感が時々あり。けんかをして頭部を殴られた3日後より、まぶたが下がってくる違和感のあと、右上肢の強直発作・二次性全般化発作がみられるようになった。頭部MRIでは異常所見はみられなかった。
    当初、けんかの心的外傷による非てんかん性けいれん発作も疑われていたが、長時間ビデオ脳波モニタリングを行ったところ、発作に一致して脳波変化がみられたため、てんかん発作と診断した。画像的に異常をきたさないような軽症頭部打撲は特に注意を払われないことも多いが、本症例のように頭部打撲をきっかけにてんかん発作が顕在化する例もあることが示唆された。軽微な頭部外傷後、何らかの身体的不調の訴えがあった場合、頭部画像検査だけでなく、脳波検査も重要である。
  • 石山 昭彦, 中川 栄二, 鋤柄 小百合, 岡崎 哲也, 比屋根 真人, 福村 忍, 佐久間 啓, 斎藤 義朗, 小牧 宏文, 須貝 研司, ...
    2012 年 29 巻 3 号 p. 482-489
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/10
    ジャーナル 認証あり
    驚愕てんかんは不意の音刺激などで誘発される反射てんかんであるが、発作のてんかん原性焦点や刺激で発作が誘発される機序などは解明されていない。MRI画像上、右前頭葉に髄鞘化遅延の所見を呈するが、脳波、SPECTでは局在性をみとめない驚愕てんかん症例に、発作時の光トポグラフィー検査を施行し、発作に一致して右前頭葉の運動前野の血液流量上昇がみられ、てんかん発作の病態に前頭葉とくに運動前野の関与が示唆された。てんかん発作時の局在性の血液流量評価における光トポグラフィーの有用性が示された。また、驚愕てんかん発作における前頭葉運動前野の関与が示唆され、驚愕てんかんの病態解明の一助になりえると考えた。
  • 村上 達也
    2012 年 29 巻 3 号 p. 490-494
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/02/10
    ジャーナル 認証あり
    34歳女性、小児期発症の難治性側頭葉てんかん患者。週に1回以上の非けいれん性の複雑部分発作を認めるが、4年前より飼い犬が常に患者の顔を見つめ、発作が起きると素早く患者の周りを飛び跳ね、吠え、患者を気づかせようとするようになった。犬の行動で家族は発作に気づき駆けつけ、危険を回避できた。犬がヒトの相貌変化のうちの笑顔の認識が可能であることが報告されているが、患者の発作時の相貌変化も識別できる可能性があると思われる。欧米では、このような犬の特徴を生かしたてんかん患者を介助する犬が存在し、社会に受け入れられ、患者の社会参加を含めたQOLの改善に貢献している。我が国でもこの種の介助犬の導入が望まれるが、その際の問題点についても述べた。
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