てんかん研究
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26 巻, 3 号
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巻頭言
特別記事
  • 山内 俊雄
    2009 年 26 巻 3 号 p. 393-402
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/03
    ジャーナル 認証あり
    わが国のてんかん研究ならびにてんかん医療についての歴史を概観する中で、今後のわが国のてんかん学·医療のあるべき姿について考えた。
    20世紀の半ばまで、てんかんは精神科の三大精神病の一つとされ、精神医療の対象とされてきた。その背景には、てんかん発作に対する適切な治療法が無いままに、進行性に慢性の経過を辿りながら、精神症状が出現し、精神の荒廃に陥ることが多いという、てんかんの置かれた状況が関係していたものと思われる。20世紀半ばから、てんかん学の進歩により、てんかんの診断ならびに治療が進むにつれ、てんかん発作の抑制が可能になり、それにともない、精神の荒廃にいたらずにすむようになった。
    そのような状況とあいまって、精神科以外に、小児科、脳神経外科、神経内科などの診療科がてんかん学·医療に参画し、基礎医学なども加えて、学際的な研究組織が生まれ、日本てんかん学会へと発展し、今日に至っている。
    これらてんかん学·医療の発展を基盤として、今後は、診療科にこだわらない形で、「てんかん学科」「てんかん診療科」の名の下に、学際的·包括的な学問·医療を創設する必要がある。そのためには、現在の日本てんかん学会認定医(臨床専門医)制度を、てんかん学·医療の基本的な能力を有する「てんかん学会認定医」と、さらに専門性が高く、各診療科の専門的能力を発揮する「てんかん学会専門医」(現在の学会認定医に相当)の2層構造にすべきであることを主張した。また、当事者ならびに家族を中心とした組織である日本てんかん協会との連携の重要性を強調した。
原著
  • 原 広一郎, 足立 直人, 松浦 雅人, 原 常勝, 小穴 康功, 大久保 善朗, 村松 玲美, 加藤 昌明, 大沼 悌一
    2009 年 26 巻 3 号 p. 403-410
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/03
    ジャーナル 認証あり
    目的: てんかん患者の利き手と精神病症状との関係は永年論じられてきたが、未だ不明のことが多いため、この問題について多施設共同研究を行った。
    方法: 対象に、精神病症状のない部分てんかん32例、精神病症状を持つ部分てんかん32例、および統合失調症25例の3群を設定した。一般的特性、てんかん関連要因、精神病関連要因を評価した。さらにAnnette Hand Preference Questionnaireを用いた利き手判定と改訂版ウェクスラー成人知能検査を行い、各群での結果を比較した。
    結果: 利き手の分布は各群でほぼ同等であった。脳波異常側性と利き手に有意な連関はなく、MRIの左または両側異常例に左利き、両利きが多く認められた。てんかん精神病で有意に知能が低かったが、利き手への影響はなかった。
    結論: 部分てんかん患者において利き手と精神病の関連は低いものと考えられる。
  • 浜野 晋一郎, 折津 友隆, 吉成 聡, 田中 学, 南谷 幹之, 大場 温子, 菊池 健二郎
    2009 年 26 巻 3 号 p. 411-418
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/03
    ジャーナル 認証あり
    小児難治性てんかんにおけるガバペンチン(GBP)の有効性と安全性を検討した。2剤以上の抗てんかん薬で発作抑制できず、3カ月間平均で月1回以上の発作があった45例を対象とした。45例のGBP開始時年齢は8.9±4.4(0.9∼17.3)歳、GBP投与以前に試みられた抗てんかん薬数5.6±2.3(2∼11)剤で、GBP初期量16.1±6.9mg/kg、最大量25.1±10.3mg/kgだった。発作が50%以上減少した有効例は部分てんかん32例中13例、全般てんかん13例中2例、計15例33.3%で増悪例はいなかった。発作型別では有効例が単純部分発作20例中5例、複雑部分発作12例中8例で有意差を認めた(p<0.05)。副作用は眠気7例を含め計10例にみられたが、いずれも軽度で、2例は投与継続し自然軽快、他は中止し軽快した。GBPは小児部分てんかんに有効で安全性が高い薬剤と考えられた。
症例報告
  • 笹 征史
    2009 年 26 巻 3 号 p. 419-439
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/03
    ジャーナル 認証あり
    てんかんは頭部外傷などの外因性あるいは遺伝子異常での内因性の初期要因があり、これに引き続く何らかの誘因によっててんかん発作がくり返されることでてんかん原性が形成される。てんかん原性の存在下において、各種電位依存性イオンチャネルあるいは受容体共役型イオンチャネルの異常により神経細胞集団の過同期(hypersynchronization)群発発射が生じ発作が誘発されると考えられている。
    この過程においてグルタミン酸受容体のうち、AMPA/KA受容体チャネルに部分変異があるとNa+イオンのみならずCa2+イオンも細胞内に流入するためてんかん発作と神経細胞死を起こす。現在の抗てんかん薬はNa+あるいはTおよびL/PQ型Ca2+チャネル抑制薬、K+チャネル作用薬、GABAA受容体増強薬として作用する。近年新たな抗てんかん作用機序であるAMPA/KA受容体の抑制薬としてトピラマート、telampanelなどが登場した。このうちトピラマートは、従来の抗てんかん薬と異なり神経細胞死も抑制するという特徴を示す。
  • 二階堂 弘輝, 寺田 清人, 下村 次郎, 田中 正樹, 中村 文裕, 松田 一己, 井上 有史, 藤原 建樹
    2009 年 26 巻 3 号 p. 440-445
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/03
    ジャーナル 認証あり
    症例は9歳女児。4歳時から出現した難治性てんかんに対する外科的治療の適応の精査のため入院した。両腕伸展挙上時、左腕にNegative myoclonus(NM)を認めた。MRIで右前頭葉内側面に萎縮を認めた。NM時、頭皮上脳波では正中∼右中心、頭頂部に棘徐波を認めた。左上腕三頭筋での筋放電の消失の起始部をトリガーとしたJerk-locked back averaging法では、筋放電の消失に38ms先行する陰性棘波をCz最大で右半球優位に認めた。123I-Iomazenil投与3時間後のSPECTの視察判定で前頭葉底部及び内側面に左右差を認め、画像統計解析による判定で右側同部位、特に前補足運動野に有意な集積低下を認めた。以上の所見から本症例におけるNMに前補足運動野の機能障害が関連する可能性が示唆された。我々が検索した限り、NMに前補足運動野が関与するという報告はなく、興味ある1例と考えられた。
  • 中山 東城, 大槻 泰介, 仲間 秀幸, 開道 貴信, 金子 裕, 中川 栄二, 須貝 研司, 加我 牧子, 井上 祐紀, 佐々木 征行
    2009 年 26 巻 3 号 p. 446-452
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/03
    ジャーナル 認証あり
    小児てんかんは時に注意障害·多動などの行動異常を伴い、内科的治療による支持療法ではそのコントロールが困難である症例が存在する。3歳よりてんかんと重度の行動異常を発症し、器質的病変を確認できない前頭葉てんかんの7歳男児に対し、左前頭葉切除術を施行し、発作消失と同時に行動異常が改善した症例を経験した。SNAP(Swanson,Norlan and Pelham)症状評価スケールを用いて術前術後の不注意、および多動·衝動性の行動変化を観察したところ、多動·衝動性に関する項目の改善がより顕著に認められた。
    本症例では、てんかんの焦点切除術により、てんかんと強度の行動異常が共に改善しており、左前頭葉切除がてんかん発作を消失させたと同時に、行動異常が同部位の機能異常と関係していることを示唆している。
  • 吉成 聡, 浜野 晋一郎, 日暮 憲道, 田中 学, 南谷 幹之, 折津 友隆
    2009 年 26 巻 3 号 p. 453-460
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/26
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    成人における皮質形成異常の病変部位における脳血流SPECT所見は、低灌流であることが多いが、逆に高灌流を呈したという報告もある。小児の皮質形成異常における脳血流に関する報告は少ない。今回我々は小児4例の皮質形成異常における脳血流SPECT検査と脳波検査を行い検討した。乳児期早期は全例で病変部位に一致して高灌流を認めるも、二回目に施行した脳血流所見では3例は低灌流に、また1例は等灌流に転じ、その判読には月齢を考慮するなど注意を要することが示唆された。また、乳児期早期の脳血流の高灌流は同部位における皮質形成異常の存在を示す可能性があることも分かった。乳児期早期は髄鞘化が不十分で頭部MRIでは皮質形成異常の存在を確認できないこともあり、今回脳血流SPECT検査が早期診断の一助となりうることも示唆された。
訂正:特集
  • 坂内 優子, 小国 弘量, 平野 嘉子, 大澤 真木子
    2009 年 26 巻 3 号 p. E1
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/02/03
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    修正箇所:英文抄録の追加
    修正理由:英文抄録の記載漏れがあったため
    For two years we investigated the applicability of and problematic issues with the Diagnostic Scheme for Patients with Epliptic Seizures and Epilepsy proposed by the ILAE in 2001, by studying the diagnoses and classifications of patients with epilepsy who first visited our pediatric department. The subjects were 102 cases in 2005 and 136 in 2006 diagnosed based on the 5 axes. While seizure types (2 axes) could be classified using conventional methods, the diagnosis rate of disorder types (3 axes) was 52%, thus failing to reach a satisfactory diagnosis rate. Although the 5 axes are useful for understanding the details of individual cases, this scheme is an inadequate alternative to conventional methods of classification for disorder types and many issues remain to be resolved regarding its clinical use as a common language for diagnosing epilepsy cases.
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