てんかん研究
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7 巻, 1 号
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  • 秋元 波留夫
    1989 年 7 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    John Huhlings Jacksonのてんかん研究について, その現代てんかん学にもたらした寄与に視点をおいて考察を加えた。その主要な点は次のように要約される。
    Jacksonは19世紀神経学の常識であった「ほんとのてんかん」(いわゆる真正てんかん) と「てんかん様けいれん」(Bravais-Jacksonてんかん) とのいわれのない差別を打破した。真正てんかんは唯一のてんかんであるという特権を剥奪され, てんかん群の一つに格下げされ, 新しいてんかん概念が確立された。新しいてんかん概念はJacksonの「てんかんは機会的, 突然, 過度, 急激, そして局所的な灰白質の発射を意味する名称である」という定義に基づいている。その病理学的原因および臨床形態は多様であり, 1985年ILAEてんかん国際分類が提示するようにさまざまなてんかんおよびてんかん症候群が存在する。この意味においててんかんは複数である。しかし, それにもかかわらず, あらゆるてんかんは共通の神経系機能障害-Jacksonの定義した灰白質の過度発射-を有するという意味において単数のてんかんである。てんかん学存立の根拠はここに求められる。
  • 皆川 公夫, 田辺 千絵
    1989 年 7 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    未治療あるいは従来の抗てんかん薬では発作抑制が困難であったLennox症候群を中心とする難治性てんかん患児10例にTRH-tartrateを14日間連日筋注にて投与し, その短期効果を検討した。てんかん発作の抑制に関しては10例中8例に有効で, 5例には完全抑制が得られた。発作抑制効果は4~10日で発現した。脳波所見は10例中6例に改善がみられ, 4例ではてんかん放電が消失した。とくに, Lennox症候群では5例中3例に発作の完全抑制とてんかん放電の消失がみられ, 有効率が高かった。また, 全例に種々の程度の精神活動性の向上が認められたが, 重篤な副作用はみられず, 一部の乳児例に嘔吐, 発熱, irritabilityの増強が一過性に出現したのみであった。
  • 小西 徹, 村上 美也子, 山谷 美和, 紺田 応子, 岡田 敏夫
    1989 年 7 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児難治性部分てんかん患者に対してFlunarizineを追加投与し, 治療効果, 副作用について検討した。
    1) 15例中8例 (53%) で発作回数の有意な減少を認め部分てんかんに有効と考えられた。
    2) 有効例中2例では一過性の効果であり薬剤耐性の存在が示唆された。
    3) 副作用として眠気, 食欲亢進が認められたが重篤なものはなかった。
    4) 他抗けいれん薬血中濃度には殆ど影響を与えなかった。
    5) 1例のみであるが投与前後でIMP-SPECTを検索できた例で焦点部血流の改善を認め, 血流改善作用が抗けいれん作用発現に関与した可能性が推察された。
  • 根来 民子, 渡辺 一功, 野村 一史, 高橋 泉, 古根 淳, 前原 光夫
    1989 年 7 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    部分発作で初発し部分てんかんとして加療している経過中に発作波が両側に拡がりを示し, 特に睡眠脳波でほぼ持続性の偽律動性全般性鋭徐波複合を呈した小児25例を1群: 発作波の全般化のみが著明な11例, 2群: 非けいれん性全般性発作を伴う10例, 3群: 知的退行が著明な4例に分けて臨床脳波学的特徴と予後について検討した。2群では焦点性運動発作が多く, 発作波の局在化部位も中心部が多かった。3群では全例でnon-REM睡眠のspike-wave indexが85%以上であった。脳波正常化後も精神発達遅滞が認められたのは3例のみで, 予後はおおむね良好であった。3群間の臨床症状の差異には部分てんかんの局在部位と全般性棘徐波の持続性が関連していると思われた。
  • 久郷 敏明, 細川 清, 柏原 健一
    1989 年 7 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    KW6066Nは, 吸収速度を遅延させることにより, 生物学的利用速度を延長させることを意図したVPAの徐放製剤である。この製剤を用いれば, 理論的に定常状態下の血清濃度の日内変動が緩徐となることから, 1日の服用回数を減少できる可能性がある。著者らは, VPAの投与により安定した治療状況にある20例の外来患者 (機能性部分てんかん10例, 原発性全般てんかん10例) を対象に, この薬物の1日1回の夕食後投与を試み, 良好な治療効果を確認した。臨床経過とともに薬物血清濃度の動態を報告し, あわせて服薬回数の減少がもたらす臨床治療上の意義について言及した。
  • 小国 弘量, 早川 武敏, 福山 幸夫
    1989 年 7 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    新しい抗てんかん薬Zonisamide (AD-810) を, 平均年齢13歳2カ月の小児を中心とした難治性てんかん患者36例に投与し, その有用性について検討した。その結果, 著効3例, 有効5例の合計8例 (22%) に有効であった。発作型別にみると複雑部分発作3/15例 (20%), 二次性全般化を伴う複雑部分発作1/3例 (33%), 単純部分発作1/2例 (50%), 二次性全般化部分発作1/4例 (25%), 全般性強直間代発作2/3例 (67%) で効果が認められ, 強直発作, ミオクロニー発作, 脱力発作, 非定型欠神発作などの全般発作には効果が認められなかった。有効例の投与量, 血中濃度はそれぞれ7.8±4.6mg/kg, 24.8±9.2μg/mlであった。副作用は, 21例 (58%) に認められた。眠気, 食欲不振, 精神活動の低下が主であり, その他に精神症状が2例に認められたが, いずれも減量ないし服薬中止により消失した。
  • 大塚 頌子, 荻野 竜也, 天野 るみ, 榎 日出夫, 大田原 俊輔
    1989 年 7 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    West症候群 (W) からLennox-Gastaut症候群 (LGS) への変容を示した30例を対象に変容過程の詳細について臨床的脳波学的に検討した。
    1) シリーズ形成性tonic spasmsの消退および単発性tonic spasmsの出現は生後6ヵ月から1歳に最も多く認められた。
    2) Hypsarythmiaの消退は生後6カ月から1歳に, diffuse slow spike-and-waveはやや遅れて1歳から2歳に最も多く出現した。
    3) WからLGSへの変容の時期は1歳から3歳に集中しており, その変容過程は数ヵ月のうちに漸進的に進行した。
    4) Wから変容したLGSでは臨床発作および脳波像がそれ以外のLGSに比較し特徴があり, 予後は特に不良であった。
    以上の事実よりWからLGSへの変容を阻止することが臨床上重要であることが示唆された。
  • 第1編分類について
    小国 弘量, 福山 幸夫
    1989 年 7 巻 1 号 p. 67-76
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    幼児期発症のミオクロニーてんかん症例149例を検討した結果, 臨床脳波学的に次にあげる5群に分類可能であった。A群 (60例): 発症前発達は正常, 強直発作, 間欠期脳波上全般性両側同期性徐棘徐波複合バースト (GSSW) や多焦点性棘波 (MFS) の合併を認めず, 発作予後, 知的予後が比較的良好。B群 (18例): 発症前発達は正常, 強直発作, 間欠期脳波上GSSWの合併を認め, 発作予後, 知的予後が不良。C群 (13例): 発症前発達は正常, 強直発作, GSSWともに合併せず, MFSが存在し, 発作予後, 知的予後が不良。D群 (17例): 発症前に粗大脳障害合併を認め, 発作予後, 知的予後が不良。E群 (29例): 発症前に精神運動発達遅滞があり, West症候群の既往, 強直発作, GSSWが各々陽性であった。149例中12例は, 分類不能であった。
  • 第2編予後良好な特発例について
    小国 弘量, 福山 幸夫
    1989 年 7 巻 1 号 p. 77-88
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    幼児期発症の予後良好な特発性ミオクロニーてんかん60例について臨床脳波学的に検討し, 次の結果を得た。発症前発達は正常, けいれん性素因が36%と高率に認められた。ミオクロニー発作発症年齢 (M±SD) は30±13ヵ月であった。合併発作型は失立発作 (62%), 全般性強直間代発作 (70%), 非定型欠神発作 (53%), minor epileptic status (20%), 睡眠時の全般発作 (63%) であった。本症例群は, 急性極期には発作が頻発し, 薬物治療に抵抗性であったが, 最終的には発作予後, 知的予後ともに比較的良好であった。本群は, 睡眠時発作の有無頻度により, A1群: 睡眠時発作なし (22例), A2群: 散発 (15例), A3群: 頻発 (23例) の3亜群に分類可能であった。これらの3亜群は, 睡眠時発作の少ない群ほど予後が良好であったが, 3群間の明確な境界はつけられず, 異種のてんかん症候群と考えるより一連のスペクトラムを有する単一のてんかん症候群とみなすのが最も妥当と考えられた。
  • 小児例を中心とした臨床的検討
    平山 義人, 岩崎 裕治, 鈴木 文晴, 須貝 研司, 豊田 桃三, 桜川 宣男, 有馬 正高
    1989 年 7 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    抗てんかん剤服用中の300名の血中アンモニア値を測定したところ, 66名 (22.0%) に高ア血症を認めた。うち65名 (98.4%) はVPAを服用中で, またVPAを減量することにより血中アンモニア値が正常化したことより, 抗てんかん剤服用患者にみられる高ア血症の大多数はVPAにより誘発されたものと推定された。
    血清VPA濃度と血中アンモニア値は相関しなかった。意識状態の変化, てんかん発作の増強, 元気が無い, 嘔吐などが高度の高ア血症の主症状であった。
    抗てんかん剤の多剤併用, 気道感染, 日常の運動量不足や栄養障害が高ア血症の引き金になるであろうとの結論に至った。VPAを投与中の患者に対しては, 血中アンモニア値を定期的に検査すると共に, VPAの増量後に上記の症状が現われれば臨時に検査すべきである。
  • 渡辺 雅子, 藤原 建樹, 八木 和一, 清野 昌一, 東 卓司
    1989 年 7 巻 1 号 p. 96-105
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    われわれは大発作を主徴とする小児の難治てんかんの7症例を報告する。この7症例の臨床特徴は,
    1) 明らかな推定原因疾患をもたず, てんかん発病までおおむね正常範囲内の発達にあった。
    2) 発病は1歳未満であった。
    3) 初発時および乳児期の発作型は主として一側ないしは全般性間代発作か全般性強直間代発作であるが, 幼児期にいたると全般性強直間代発作をくりかえすようになり, 以後きわめて治療抵抗性に経過した。
    4) 経過中に複雑部分発作とみなされる発作をもつ症例があったが, 一過性であった。
    5) 発病当初には著しくないが, 経齢に従って精神遅滞が次第に明らかとなった。
    6) 発病当初の脳波にはてんかん性発射を欠き, その後全般性棘・徐波複合ないし多棘・徐波複合を呈するようになった。しかしその頻度は, 臨床発作が頻発しているにもかかわらず比較的少なかった。
    以上の臨床特徴は, 独立したてんかん症候群の条件を備えているとはみなされないが, 発作および知能の両面から難治性であるために, 原因および治療の両面の今後の研究が必要である。
  • 福島 裕, 和田 一丸, 斎藤 文男, 橋本 和明
    1989 年 7 巻 1 号 p. 106-109
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    10~15年間にわたって継続的に治療経過を観察しえた89例について, 治療開始後の最初の2年間での治療効果 (初期効果) と長期予後との関係をみた。その結果, 初期効果良好なものは予後良好なものが多く, 初期効果が十分でなかったものには予後不良なものが多くみられ, 初期効果と予後との間に有意な相関がみられた。しかし, このような初期効果と予後との相関は, 発作型などの臨床因子によっても異なることが明らかにされ, 「全般発作」, 「外因なし」, 「合併症状なし」, 「10歳以下発症」, 「発病後1年以内に治療開始」では, 初期効果が良好であれば予後も良いという傾向が示唆された。また, 「部分発作」, 「外因あり」, 「合併症状あり」, 「10歳以下発症」, 「発病後1年以後に治療開始」では, 初期効果が不十分な場合, 予後も悪い傾向が強いことが示された。
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